2016年5月20日

S20エンジン用FS5C71A

3分割ミッション  γ10

 

γシリーズは71Aの3分割ミッションをいかに弱点を克服して保存してゆくかの挑戦ですが、これが必要になる理由はZ432やハコスカGTRのS20エンジン車は基本的には他のミッションの選択肢がないからです。L型エンジンなら迷うことなくコンパチCを勧めるのですが、S20エンジンはフロントハウジングの形状=エンジンとの取り付け面が専用ですのでL型エンジンの71Bは取り付けができません。ただ唯一例外はケンメリGTR用の71Bフロントハウジングがあればコンパチ化が可能で私のところで何例かやっています。こちら 71BコンパチC Ω8クロス 魔法のほうき#3

しかしこのフロントハウジングは極めて数が少ないらしくとても高価になっています。

 

参考で追加します 2016年6月13日ぐらいに終了したもので

某国内オークションにこれが出品されまして120件の入札があり、最終的に落札された価格はなんとベルハウジングのみ単体で487000円   1桁違ってませんかという価格ですが、貴重な品ですからそうなるのも当然かもしれません。

 

これはケンメリGTR用の71B2分割ミッションのフロントベルハウジングのみで、しかも新品と来ています。ちなみに1年くらい前に同様の中古が出ましたがたしか42万くらいで落札された思います。

 

これが有ればというか、これがないとS20ユーザーの方たちはミッションの工面に苦労することが予想されますので、今のz432やハコスカgtrなどのS20車価格を考えると妥当なのかもしれません

したがってこのハウジングを持っていないS20エンジンユーザーの選択肢は71A3分割ミッションとなってしまいます。しかしすでに40年も前のものだし、シンクロもポルシェサーボが効かなくなる、オイル漏れする、シフトが入らないなど様々な不具合が出てきます。今回γシリーズの10基目として私として現在施せる弱点克服アイテムをフルに採用して作ってみようと思います。これはS20エンジンに限らず、フロントハウジングをL型用にすればもちろんL型71A3分割を作ることも可能ですので、とことん純正にこだわるという方にもお使いいただけます。このミッションは完成後販売いたしますのでご希望の方はお早目にメールしてください。現在オークションでも出品中です。

 

組み付けの要となるセンタープレート。ベアリングはすべて特殊クリアランスのセミシールドベアリングとします。フルシールドもありますが回転が重くなるのを避けるためあえてセミシールドです。

 

細かいことですが右側3つ並んだシフトロッド穴はシフトフィーリングに影響大なので滑らかに動くように面取り加工などをします。ベアリングを止めているストッパープレートは純正のプラスボルトからヘキサボルトへ変更することでしっかりとしたトルクで締めこめます。

右1速メインギヤ、左2速のメインギヤです。

 

シンクロリングとブレーキバンドは新品交換。

スリーブはWPC処理品

 

ここで1速なんですが画像と整備要領書と比較してもらうと大きな違いにきずくのですが1速のブレーキバンドが2本あります。通常の71Aはブレーキバンドは1本しかない=片側しかサーボが効かないのですが、これは2-5速と同じくブレーキバンドが2本あります。中央の光っているスラスト受け面の外側にバンド受け面があり、そこに一か所切り欠きがあるのですが、通常の1速はこの切り欠きが斜めに切られており、そこに取り付けるパーツも異なります。

 

 

こちらが普通よく見る71Aのメイン1速で、シンクロブレーキバンドが下側一か所となっていますし、右側の鈎形のキーパーツも異なっています。

 

今回の上記画像右側のメイン1速とかなり違うことが分かります。

 

3速ですがここは通常のシンクロリング、バンド交換、WPC処理スリーブ

メインインプットシャフト

ここもシンクロ系、ベアリング系すべて交換です。

フロント側が組めました。

センタープレートより後ろ側部分、バック関連のパーツです。それぞれのギヤの丸くなっている部分=舳先はシンクロ無しのバックではほとんどが欠けたり削れたりしていますが、このギヤは新品のように原型をとどめています。

5速メインギヤですがこれは71Aの泣き所の一つでなぜかスラスト面が焼き付く場合が多いです。

 ここが焼き付くとどうなるかの見本が 71BコンパチCΩ12で見れます。

 

そこで今回はこの部分に初めての大幅改造を加えることにしました。そのためのパーツが一番下に映っているスラストベアリングです。

 

 

通常の71A5速とM38ナットの関係はこのような感じです。

今回の対策改造はこのようになりますが5速ギヤの後ろにスラストニードルベアリングをセットしています。今回私としては初めての対策だし、私の知る限り他でも見たことはないのでおそらく初めての試みと思います。

そしてこれも初めてですがまずM38ナットがダブルナットからシングルナットに変更して、メインシャフトに加締めで回り止めする方式に変更しました。

そしてさらにM38ナットには私の編み出した技、サイドロックボルト加工で緩みを完全に撲滅します。周り止めワッシャーも併用していますが、おそらく周り止めワッシャーは省いても問題はないと思います。そもそも製造廃止で入手できないパーツですが。3枚前に出ているノーマルの姿と比較するとずいぶんとしっかり感が出ていると思いませんか。

 

 

これも私が作る71Aとしてはもう当然となりましたが71Aのシフトフォークの弱点を克服する対策です。

上側が通常の71Aの1-2速及び3-4速のシフトフォークですがスリーブ押し面が180度まで達していませんのでスリーブが傾きやすいし、爪が異常摩耗します。

 

これを下側列にある3点支持フォークに組み替えていきます。

その効果は説明の必要ないですね。

 

 

ギヤ部分が組み立て完了して精度測定します。

 

バックラッシュ 0.09 0.04 0.06 --- 0.05

エンドプレイ  0.05 0.20 0.12 --- 0.15

 

バックラッシュは理想的

エンドプレイは基準値内ですが1速が少な目、2速が多目ですが問題ないです。

 

 

ケースに組んでいきます。

この鋳物のケースは綺麗にできていますね。この薄い肉厚でアルミを鋳込むことはすごく難しいと思いますし、リブも理にかなった入れ方でしかも美しいです。角のアール付けももちろん強度にすごく貢献するはずですが、何か人間臭さを感じさせると思いませんか。

シフトフォーク部分ですが、画像を詳しく比較したり、71Aに詳しい人は通常と大きくなにかが異なることに気が付くと思います。

リヤエクステンションのシフトリンケージの分解状態です。

丸い白い台の上にあるのがプランジャーピンですがここのオイルシールはピン右側のオーリングですがほとんどがカチカチに固くなってシールできなくなっていますので、ピン左側の少し太いオーリングに交換してゆきます。

 

黒く塗った左側のてこ作用をするリンケージの取り付け方向を前後入れ替えることでフェアレディーとハコスカ両方へ対応できるようになっています。

 

 

組み立て完了後簡易試験機e-zanaraizerへ乗せて、オイルを入れてシフト状態、振動、オイル漏れ、バックランプスイッチ、スピードメーターなどチェックした後、1500rpmで1時間回しっぱなしにします。

 

問題ありません。温度上昇は18度でした。(1500rpmにて)

電気負荷は1.21A

 

完成です。このS20用スペシャルミッションにつきましては販売いたします。

・全ベアリングセミシールドベアリングに交換

・1-4速サーボシンクロリング&ブレーキバンド新品交換

・5速裏スラストニードルベアリング仕様に改造

・M38ナットシングルカシメ仕様に改造&サイドロックボルト加工追加

・1-2速&3-4速シンクロスリーブWPC処理

・1-2速&3-4速シフトフォークを2点支持から3点支持仕様に改造

・リヤエクステンションシフトリンケージフルオーバーホール

以上のスペシャル加工含んで価格は

488000円+送料3000円(シフトレバー含まず)

 

S20用ミッション下取り有時はご相談となります。

ご希望の場合は6月1日までにメール e-za@vintagecraft-e-za.com か

販売のページのオーダーフォームからご連絡ください。

 

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