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2025年6月13日

OH14 サニーGX5 ローバック5速

     56Aオーバーホール

 今回は日産サニーGX5用の56Aミッションのオーバーホールです。私は殆んど71系ミッションしかやらないので、56A系はお断りしている場合が多いのですが、今回は長年のお付き合いのあるショップさんからのご依頼でしたので、引き受けることにしました。

 56系は見るからに小ぶりで、残存数も71系より少ないのではないかと思われます。私もこのミッションについてのパーツ在庫や情報は持っていないです。

 

 

リヤエクステンションを外しました。

もうこの時点ですでに妙なものが顔を出しているのですが・・・

この矢印のところのパーツはどこからか外れて出てきたもののようです。形からしてポルシェシンクロの構成パーツだと思います。

フロント側メインインプットですがこんなに細くほとんど鉛筆かマジックペンかぐらいのサイズです。この先端を指でグリグリしてみると盛大に首を振ります。中にあるベアリングが完全に消耗している状態だと思います。

ギヤ部を取り出しましたが、前述の見慣れない脱落パーツがここから出てきたことがわかりました。やはりポルシェシンクロの構成パーツですが、通常はポルシェシンクロの回転方向でこの反対側の位置に収まっているはずですが・・・。

1速ギヤです。(ローバックですのでリヤエクステ側についています)幸い大きな損傷は無く、ポルシェシンクロリングも無事の様です。71A/Bのポルシェシンクロリングですらすで製造廃止(私は在庫を確保しています)がこの56Aについてはもうこのポルシェシンクロリングは製造廃止で出てこないし、在庫もありませんので、これが破損しているとお手上げです。

この右側が1速ギヤのカウンターギヤとなります。

左側のスパーギヤはバックアイドルギヤとなっていてこれが連結していてこのような形になっています。

3速ギヤ、これも状態としては良いです。

これが問題の2速ギヤ。

ポルシェシンクロリングはかじっていて光っているところができてしまっています。本来は絶対に交換が必要なパーツですが、いまのところ手立てが有りません。

そしてポルシェシンクロリングを分解してみると、決定的な破損が発見されました。このシンクロキーが真っ二つに折れてしまっています。

別の角度から、

折れた断面を見ると最近折れたわけでなく、折れたままでしばらく稼働していたようです。それが何かの拍子に飛び出してしまい、それにつられて最初に見たもう一つの構成パーツも外部に出てしまったとういう事でしょう。最初に見たパーツは飛び出しているだけなので組み戻せばよいのですが、こちらのパーツは折れてしまっているので非常に困ります。

そして何気なくミッションケースの中を掃除していたらこんなものも出てきました。これは形状を見るとすぐに分かったのですが、シンクロスリーブのスプライン舳先です。ポルシェシンクロではこの欠損は良くある症状です。このシンクロスリーブももちろん代替品はありませんので、この欠けた部分をなだらかに仕上げてしのぐしかなさそうです。

このベアリングはメインシャフトセンターについているベアリングなのですが、いろいろ探しても出てきません。一般的にあるものは内径がΦ28なのですがこのベアリングは内径がΦ25となっています。

どうしても出てこなければこのベアリングは再使用するしかないかもしれません。

 

またメインシャフトの各ギヤに入るニードルベアリングもすぐには入手出来そうにありません。

 

リヤエクステのオイルシールはこのような特殊な物なのですが、これはなんと今でも入手可能です。なぜなんだろう。

そしてミッションの鬼門であるこのストライキングレバーの取り外しなんですが、かなり頑張ったのですがやはり取れてきませんでした。パーツが豊富にあればまだやりようがあるのですが、これ一品しかない状態であまり無理もできないので、今回はどうも分解はあきらめるしかなさそうです。

 私は71Bについては何年も試行錯誤して取り外し治具を作ったので71B系の場合はほぼ100%取り外しに自信が有りますが、他のミッションとなるとやはり難しいところがあるようです。

 

部品を調達したらそれでも55年前の車の新品部品がこれだけ出てきました。旧車に携わる側からいうとこういう所に日産の良心と信念を感じます。ありがたいです。

まずは一番の問題部品であるこのシンクロキーの対策から進めます。

自分の在庫の中から何とか流用できそうなものを探し出してきて、各部の寸法を比較しながら創生してゆきます。

一応形的には使えるレベルにまで加工しましたが、実際に使ってみての強度と性能はどうなるかわからず、後は神頼みしかありません。

今回2速のシンクロCリングがダメだったのですが、このパーツは今回私は探し出すことができなかったので、1速のCリングと交換してしのぎます。2速から1速へ激しくシフトダウンする人はあまりいないでしょうから、こちらの方がましだろうという選択です。

一番の問題点で在った2速のシンクロが何とか収まりました。向こう側に割れたシンクロキーがぼんやりと映っています。

そして2-3速のシンクロスリーブですが、矢印の部分がほとんど全滅となっています。ポルシェシンクロではここは非常に多い破損個所で、裏側に見えるシンクロハブの3か所のツノが噛みあう部分になっているので、強引なシフトをするとシフトフォークが撓んでシフト時スリーブが傾いたりするのでこの破損個所に無理な偏心荷重がかかり破損に至ります。これに対処するために私は71Bポルシェの場合は3点支持シフトフォークへの改造を進めてきたのですが、56Aでは今のところこの手立てが取れません。今回はこの破損個所をある程度滑らかにぼかしてこれ以上大事に至らないようにするしかありません。

こんな感じで割れています。

71Bでは時々この部分をはじめから逃がし加工をしているものも見たことが有ります。それほどここの欠損は多発していたのでしょう。

このメインシャフトを保持するセンタプレートのベアリングですが、寸法が現代の規格からは逸脱しているサイズでできていますので入手は非常に困難です。内径に対して外径が規格品より小さくできています。今回奇跡的に日産部品から1個だけ出てきました。次回は何とか手を打たねばなりません。

メインインプットです。

e-リングがなんか変な具合に曲がっています。

その下のワッシャーも皿バネのようにお椀になっています。

メインインプットの中に入っているパイロットベアリングはなんと普通に新品が出てきました。ボールベアリングは規格品と同じ寸法なので問題なく入手できます。

変形していたeリングと皿バネのようになっていたワッシャーを同等品を探してきて交換します。

カウンターギヤです

この56Aのカウンターギヤは2速から5速まで一体でできています。1速だけはセンタープレートの後ろ側なので別体でスプライン勘合となっています。

カウンターセンターベアリングは付いていた純正ベアリングは6303のオープンベアリング(画像左)でボール球が6個なのですが、今回取り寄せた新品ベアリングは玉が7個のものとなります。どちらが良いかは一長一短ですが、摺動する球数が多いほど接触面積は増えるので高強度高寿命と言えるのではないかと思います。

ベアリングを組み、1速カウンターを取り付けてcリングで固定しています。

フロント側の組付けが完了です。

1-Bのシフトフォークですがこのように手のひらに収まってしまうほどコンパクトです。

ギヤをすべて組み込んんでシフトフォークも取り付けました。

ギヤ精度

 1st  2nd  3rd  4th 5th

エンドプレイ

0.15 0.28 0.30 以下測定非対応

バックラッシュ

0.15 0.15 0.18 0.20 ーーー

エンドプレイが少し多き目ではありますが、バックラッシュは良い値で揃っています。良いと思います。

1速-バック側の組み立てです。

機械設計的な仕組みとしては合理的なレイアウトだと思います。

カウンターの前側歯ボールベアリングを使用しないでニードルベアリングとこのプレーンベアリングシムで成り立っています。プレーンベアリングシムはなんと新品が出てきます。銅系のサンドイッチ鋼板の様なものをプレスで打ち抜いている全くの一品物のように見えるのですが、これが出てきます。

フロントケースカバーにもこのようなオイルシールが有りますのでこれらは汎用品でチョイスしました。

この大きなオーリングは線形が0.2mm太い航空機用から選択しました。

リヤシールも純正が出てきます。

ミッションケースに組んで完成です。

今回は56Aなので回転試験機に取り付けできないので、この状態で完成とするしかありません。手で回して各ギヤへシフトすることには問題有りません。