71Bのケースの中身のギヤ類を71Bの最終仕様で組みなおすのがβバージョンで、特徴はシンプルで有る事と、もちろんプロペラシャフトがスプライン差し込みがベストですが、スプライン差し込みペラをお持ちでない場合はフランジ結合のままでも組める事。

71Bコンパチ B’ β14 魔法の箒#5

2019年5月17日

 

 今回はかなり時事ネタになりますが、画像のミッションケースが分かる方はかなりのオークションファンか熱烈なS20エンジンファンであることでしょう。最近熱心な旧車エンスーの方が復刻されたS20エンジン用ミッションフロントハウジングですが、さぞご苦労があることと思いますがその熱意には頭が下がります。

 今回これを扱う理由はさるS20乗りのオーナーの方からこのケースを預けられてβバージョン化してほしいとのご依頼からです。この方は71BコンパチC α28 の初代 ”魔法の箒” をご依頼された方と同じオーナー様です。今回も或る意味初の試みとなります。

 

 私としてはこのインプレッションについて完全に中立の立場で現実をありのままに表現してゆきたいと思います。それによってこのような救世主がどんどん進化してより良いものになることを願います。

復刻版

 

 外観ですが砂型鋳物で作ったと思われる特徴的な鋳物表面です。

当時モノ純正品

 

さすがに純正品は鋳肌がきれいでリブが際立っており何か芸術品的な印象があります。


 

このリブ高さ 15mm

 

純正品は20mm 鋳物でこの薄さでこの高さのリブを成形するのはさすがにメーカーです。


 

こちらから見るとS20用であることがよりはっきりわかります。奥側のフロントカバー取り付け切削面がリブにすこしかかっていることが分かります。

 

純正品は奥側切削面はリブより少し手前側に出っ張っている印象です。


 

内部の状態ですがやはり砂型の粒粒が目立ちます。又右の純正品と比べると2個の穴の周囲が鋳物面で、センタープレート取り付け面からの寸法を測ると2.5mmほど深いです。71Cを組むならば追加工不要の寸法ですが・・・。

 

純正品はこの部分を切削仕上げとしていますが、おそらくベアリング保持板厚を確保するためと思われます。純正品でも後期になってゆくとこの部分は鋳肌仕上げとしているものもあります。


 

肉厚は12.5mm

 

純正品は15.0mmでした。


 

画像数字が書いてあるところの肉厚が気になり、測定です。 3.7mm だいぶ薄い感じがしますが重量軽減にはなるかもです。鋳物は薄く作る方が湯流れ不良で欠損が出来たりして難しいのですがどうでしょう。

 

純正品は7.3mmと十分な肉厚です。


 

ここの加工が少し気になります。バリは面取りして修正します。

 

純正品はマシーンラインで流し生産だと思いますのでさすがに面取りはしてあります。


 

うーん、ツールマーク=刃物が削ったスジ模様が目立つかな。液体パッキンを多めに塗る必要がありそうだ。

 

現時点では外観やノギス程度で測れる部分のみインプレですが、核心となる部分はベアリング穴2か所を基準としてセンタープレートの2か所の取り付けロケート穴の位置精度、さらにミッションとエンジンを位置決めする2か所のロケート穴の位置精度ーこちらはセンタープレート側と通常では同時加工は無理で裏表反転となるので位置決めずれが生じやすい、又強いて言えばシフトロッドの3個の穴の位置精度が出せるかどうかですが、現代のNCマシニングセンターの能力では加工はできると思います。(汎用フライスでは無理です)ただその前に加工位置プログラムを作るための測定が不可欠で、これは3次元測定器でないと無理でしょう。加工機そのもので測定フィードバックする手もありますが精度は?となりそうです。(メーカー設計図が有れば一挙に問題解消ですが)さらに測定対象がそんなに手には入らないですからある限られたもの、ましてや新品となるとおいそれとは無いです。

 

 

純正品は研磨したのではと思うくらいピカピカです。

メーカーのラインでは穴加工などは専用治具を作って完璧に位置決めして加工穴などはやはり専用ラインボーリングのような感じでなるべく関連穴を一発同時加工してしまいますので素晴らしい位置関係精度になります。加工後検査ラインが有り、仮に精度品質に問題出た場合は直ちにフィードバック補正してしまいます。不良品が出た場合はその時点でのロット単位で廃却する場合もあります。


 

こちらも切削条件やツールを見直したいところですが、それらを補正すればきれいにできると思います。機能上はほぼ問題ないでしょう。

 

同じく純正品、必要最小限を削っています。


 

重量は8.5kgでどちらもほとんど差は無し。

 

 

 センタープレートとの位置決めノックピン穴はほぼ同等、センタープレートとの合わせでは寸法は問題なし

、ただしベアリング穴との位置関係は測れませんので不明です。

 

 


 

こういうところも機能には関係ないので少しざらざら感が有りますが問題は無いでしょう。

 

純正品にはこの鋳込みマークが有ります。


以上、復刻品と純正品の比較でしたが純正品はメーカーが何十億円もの設備費用をかけて大勢のエキスパート作業者がそれぞれの分野で作りこんだものを厳格な検査ラインで取捨選択したもので、大量生産でこそ作れる代物ものです。それを、プライベートで作り上げるという努力には敬服します。

 寸法や外観はいろいろ異なるところが有りますが、これからこのケースでミッションを組んで、それをオーナー様が実車に積んで実験確認してくれるものと思いますが、その結果が楽しみです。

ドナーとなるDRミッションをばらしてゆきます。

71B型の最後期に近いミッションで、1-2速は大径シンクロとなります。もちろんフルワーナー

 

全体的にはメーカーで組んだまんまで途中での修理履歴もなさそうで、使用期間も短かったのか、シフトの腕が良かったのかシンクロと舳先ともにほとんど摩耗していませんが、これから分解しながら要対策箇所を調べていきます。

今回は試験的な意味もあるので消耗部品は無条件交換ではなく、使用可能限度内ならそのまま使用するパターンでのオーバーホールとなります。

ギヤ部

現状のギヤ精度

 1st  2nd  3rd     5th

エンドプレイ

0.37 0.17 0.02?--- 0.21

バックラッシュ

0.14 0.15 0.00? ---0.12

 

3RDのエンドプレイ、バックラッシュ共にほとんど0ですのでこれは異常です。

どんどんばらしてゆきますがこのメインインプットのメインベアリングはガタが大きすぎてNG

センタープレートのメインベアリング、内輪の表面色が黒っぽく変色しておりかなりの熱が入ったと思われます。ガタが多めなので交換です。

問題の3速 大きな不具合は見られません。スラスト面の焼き付きが起こるとエンドプレイが無くなったり、過大になる現象となるのですがこれはokです。

裏側もきれいです。

組み付けに入ります。

メインシャフトは曲がりが無いかチェック、0.03mmの振れで問題なし。

3RDは念のためニードルベアリング交換。

旧品は画像左の2列方式のニードルベアリングですが最終型は右側の1列ロングニードルとなりました。

こちらの方が受け面が広くなります。

エンドプレイクリアランスを出すために手持ちのスペーサーの中から適した板厚を選び出します。

さらに固定のスナップリングも選択制なので手持ちの中から適したものを選定します。

3速まで組みました。

メインインプットベアリング交換

カウンター先端ベアリングも右側の今まで使っていたものは内輪に変なすべりマークのようなものが見られ、左側のセミシールドに交換(現在 日産部品製廃部品)

ここだけは現状品でも問題なかったところですが性能アップのためにスラストローラーベアリングを構築改造します。

 5速のギヤ比はメイン26カウンター44という珍しい歯数で計算値で0.83ギヤ比となります。

一次減速は22:31のハイギヤッドタイプ

シフトフォークもこれまた珍しいスライド面にMCナイロンのような樹脂が使われているタイプです。

オーバーホール後のギヤ精度

 1st  2nd  3rd    5th

エンドプレー

0.35 0.18 0.32---0.21

バックラッシュ

0.13 0.08 0.06---0.16

 

全て基準値に入っています。3RDのエンドプレイが最初のほとんど0から0.32と大き目に変化しましたが何だったのでしょう。ゴミでも入っていたのでしょうか。

 

いよいよ復刻品フロントケースに組みました。

取り付けはすんなり出来ましたので精度は良さそうです。

 リヤエクステのこの中のストライキングロッドシールを交換します。ガタガタでした。

センタープレート(黒い部分)に対してフロントケースが3mmほどはみ出していますが、機能上は全く問題ないと思います。反対側は逆に凹んでいます。上下はぴったりあっています。

フロントカバーのこのシムに全体のスラスト方向寸法の不一致のしわ寄せが出てくるのですが今回は組み付け前と同じシム厚で変りなく組めました。

 

いつものとおり回転試験に入っています。オイルは規定量が入ったのでイモノ形状は問題ない様です。ロケート穴もすんなり、シフトロッドもすんなり入りました。

ここに若干問題が有りますがクラッチオペレートの取り付けねじがなぜかM10のP1.25の細目ネジになっています。他の取り付けねじは全てP1.5なので変えた理由が分かりません。画像左がP1.5のネジを入れていますが途中で止まってしまいますが、右のP1.25のネジはすんなり入ります。純正はP1.5ですのでますます?です

 

 とりあえずM10P1.25のネジを用意しましたので取り付けは問題ないですが、アルミにあまり細かいピッチのネジだと強度が出ません。ヘリサートを打つ手もありますが失敗の危険もあるのでやめときます。

そしてこの部分、バックランプスイッチですがDRの時代以降は画像リブの前側にスイッチ位置なのでこのままDR中身を組むとバックランプがつかなくなります。

 ここは純正もこの位置なので忠実に復刻されているのですがどちらが良いか悩むところですね。

 

そしてさらにバックランプが付かないので確認するとどうもこの部分の加工面位置が高いような・・。

ねじ長さに着目してください。

 

こちらが純正品。4mmほどこちらの方が低い(薄い)様です。


仕方ないのでスイッチ側を追い込んで対策しますが、左が対策品で突き出し長さを長くしています。

従って肉厚が少なくなっているのであまり強く締めると破壊します。実際今回は1個破壊して作り直しの結果となりました。

いろいろありましたが試験結果は良い感じでDRミッションの程度も良かったのか回転抵抗が少なかった(試験機のモーター負荷アンペアでわかる)です。

シフトももちろん軽く入り、このβバージョンの特徴「シンプルであること」が良く出ています。

 

 私は最近回転試験時はシール材を付けずに素のまま組んで問題ないことを確認した後に最終仕上げしますので、必ず2回以上の分解組み立てをするようになります。なぜなら仕上げてからの回転試験で問題が出たときに、シールまで固めて組んであると今更もう一度開くかどうかの気力判断が鈍るからですが、人間は誘惑に弱いですからね。

 

 ともかくこれで完成。


 

続く

 

参考として 私がS20エンジン用として準備しているリメイクプログラムです。今回のミッションケースを使った場合、ケンメリ2分割換装に分類されます。 販売のページでも見れます。