2013年2月26日

240Zが見る夢

 

240Zロングノーズ オーバーフェンダー付きですが、持ち主がメカは不得手ということで、某ディラーへ整備はすべて任せていたが、このところディラーでもこの手の整備は不得手?となってしまったのか時間がかかるということで、私が出来る範囲で見てみることとなりました。

 

車検を取ったばかりでしたが、この車検を取るのに某ディラーで2カ月かかったとの事です。

そして乗ろうしたら、もうブレーキが効かなくなっていたということです。

 ガレージで始動しようとして驚きました。チョークのコントロールがチョー難しいというかあり得ない状態です。エンジンが止まりそうになりあわててチョークを引くと今度は4000回転ぐらいまで回ってしまい戻すとエンスト。暖気出来るまでずっとこれを繰り返しました。

よくこれで使うことができた・・・・それより前によくこれで車検整備出来た・・・・?

 

そして、問題のブレーキを踏んでみると足元でブシューというような音がします。もう間違いなくブレーキマスターバックの真空漏れです。いつ穴が開いたのか知りませんが、車検はどうして通したのでしょう?少し走って通常の感覚でブレーキを踏むと全く止まりそうに無く、喉から足が出てブレーキを踏みたいような気になります。

 

問題のマスターバックです。

このZは47年式ですので前期タイプになりますが、マスターバックは私のS31後期型と同じ大径サイズのマスターバックが付いていますので、まだ入手はしやすいですね。でも、日産部品・ジャロ○でもすでに入手は出来ませんでした。

 

 

 部品番号としては47210N3001となりますが、すでに製造廃止です。

どこかでリペアキットを売っているらしいですが、どこかは分かりません。

 

今回はクラブの仲間の兄いから調達できました。

ブレーキマスターバックが手元に届くまでの間に他の不具合を見てみます。

ちょっと目につくところだけでも 大小合わせて38項目の不具合が見られます。

持ち主と相談しながらだんだんと緊急事項を重点に修理を進めていくこととします。

 

先ず、始動性の問題についてチェックする為にキャブを見ます。

問題のキャブですがエアクリーナーを外していきます。

外観の程度としては悪くは無いです。

 でも待ってくださいよ。

こんなところに変なものが付けられています。

この斜めに掛けられたスプリングが、SUキャブの心臓部であるメインノズルの首根っこを掴んでいます。

私がノズルなら悲鳴を上げています。

 

このノズルはチョークを引いたときに下側にリンクで引っ張られますが、チョークレバーを戻すと元に戻らなければなりません。おそらくなんかの拍子にこれが戻ら無くなる現象がでて、こんなものを付けられたのでしょう。よーく見るとノズルの左側の板状のリンクも不自然に凸凹しています。

こんなもん見たらもうキャブを外して全部チェックするしかありません。

キャブを外しました。

キャブ2基を外しました。

程度は悪くないです。

 

問題の変なスプリングはフロート室のネジを利用して仮付けされていました。

こんなものを付けたらノズルは偏芯荷重を受けて片べりや段付きが出てしまいますが、まだそこまで行ってませんでした。

これが問題のスプリングです。

ステーもなにかの有り合わせの物を使っています。

実にダサいです。

 

これは即刻 リストラです。リストラクチャリング

そしてもっと見てゆくと、この棒状のリンクが変な角度で曲がっていることに気が付きました。わたしの持っているSUキャブと比較しても明らかに曲がりがきつくなっています。

このリンクはチョークを引いた時キャブのバタフライをわずかに開いてエンジン回転を上げるもので、暖気運転時のエンストを防ぐ目的です。これをこの様に曲げてしまうと、暖気運転時非常にエンジン回転が上がってしまいます。これは私が持ち主のガレージで経験したことと符合します。

 

暖気時エンジン回転を上げたいのは分かりますが、手段が間違っています。チョーク機構とこのリンクは連動しておりチョークを利かす為にはチョークレバーを目いっぱい引かねばならず、そうするとこの曲げられたリンクのおかげでとんでもなくエンジン回転が上がってしまうことになります。驚いてチョークを戻すと、ノズルが戻り燃調を濃くできません。

 曲げられたリンクは元にもどしました。

 

またノズルの首根っこ掴みですがもちろん取り外して調整してみましたが、ノズルの戻り不良の傾向はみられません。想像ですが、チョークワイヤーの調整が悪く戻り不良になっていただけの様に見えます。それを無理やりスプリングつけて戻そうとしたんですね。

 

キャブはもう一度組み付けていきます。

トックリ上のダンパーをチェックすると指で押さえるのが難儀するくらいの固いオイルが入っています。

これでは超薄めの燃料調整になって出力が望めないと思います。

このプラグを見てください。

さっき買ってきたばかりのプラグの様に

あるいは解けるまえのガラスの様に

あるいは絵具の白の様に

白いです。

BP5ESがついていましたが、燃料が薄すぎます。車検でガス検を通す為に目いっぱい絞ったんだと思いますがあんまりです。

 

SUキャブを取りつけ燃料調整をして。同調を取り、点火時期も調整して、チョーク関係をセッティングします。この状態で始動時はチョークをいっぱいに引き車の外からエンジンキー回しても一発で始動アイドリングしています。2分たったらチョークを1/3戻します。5分後チョークを完全に戻すとエンジン回転は500rpmくらいですが止まりません。完全に温まるとアイドルは800rpmとなり安定します。SUによくあるアイドル戻り不良も出ません。

念の為と思い、ブレーキパッドを確認することにしましたが、開けてみたらこの通りです。

信じられませんが、善良な市民を相手にしている自動車会社ならこれで車検は通しません。

右側のブレーキパッドは残量2mmです。

これが事実なら某○○ディラーは御自身の整備マニュアルと従業員の教育状況を即刻見直すべきです。

 

この画像をアップしている今でも信じられません。

パッドを外しても、ダストゴムももう何年も交換している気配はありません。ずっと某○○ディーラーに任してきたにもかかわらずです。

そして、ブレーキパッドが左右でこんなにも摩耗量が差が出ている事の考えられる原因は次の二つです

1)長い間分解整備していない為ブレーキピストンが片側固着している。

2)ブレーキパッドの動きを理解せず整備して、ブレーキパッドは片側のみとしかしか理解していない

  (80年代以降のブレーキは原価低減の為片側作動(対抗キャリパーで無い)キャリパーになった)

<対策>は

ブレーキピストンのオーバーホール必須

お車のお任せ先の見直し

 

ブレーキについては仕方なく私の持っている中古パッドで仮にしのぐことにしました。正式にはちゃんとしたパッドにこうかんが必要です。

念の為リヤブレーキも確認しましたが、こちらはシューは異常ないようです。

私が手で持っているのが新品シューですが、これと大差ないシューの状況です。ただブレーキシリンダーカップはメンテされているようには見えません。1か月前に車検受けたにも関わらずです。

右側もやはり手を入れられた形跡がありません。

シュー自体の残量は良さそうですが、画像左側シューが減りが多いです。

この様に片べりするのは、ブレーキシリンダーやセット調整が問題ある場合が多いです。

タイヤを外していて気がついたのですがナットとホイールのテーパー面が不自然です。また穴に対してナットが小さい感じです。

ホイール側を見るとナットの当たり(光っているところ)が狭いです。つまりナットのテーパーとホイールのテーパーが合っていません。これだと、ホイールのナット穴が破壊されたり、ホイールの固定センターがずれるということが起こり、非常に危険です。渡辺スポークは専用のスイベル座金付きのナットが必要ですし、渡辺のナットの角度はメーカー純正ナットとテーパー角度が異なります。

これは交換要です。

もっと見ていくといろんなところが問題有りです。

これはラジエター下部ですが、変な色の腐食跡の様なものが見られます。

どうもラジエターのドレンホースから冷却液が少しずつ漏れているようです。

手持ちのラジエターキャップを交換しました。

そしてこれがクラッチのオペレーシリンダーのプッシュロッドですが、数種類あります。

中央がこの車輛に付いていたもの。

今回、やけにオペチンが新しいので怪しいと思っていたのですが、結果クラッチのつながりポイントが高すぎます。もっと短いオペチンでいいのですが、手持ちのなかで 短いのがあり交換してぴったりでした。

上の画像の部品はクラッチのここに取りつけられますが、ここだけ妙に新しく新品で、ホースまで交換されていますが、ここは純正部品が在庫サクサクと出てきたのでしょう。

そしてこの後ですがもっと信じられない状況に遭遇しました。

昼間の内は車のライトはあまり気になりませんでしたが、

夜になりライトスイッチをひねってみるとメインのヘッドライトがつきません。

これが1カ月前に車検を通った車でしょうか?

 ヘッドライトの点検は車検でマストアイテムです。

1か月の間にヘッドライトが腐ったのなら仕方ないですが、こんな冬場にヘッドライトが腐ることは考え難いです。

この車はコイトのシールドビームですが、やはり照度が出ずライトリレーが噛ませられています。この辺が怪しいとにらんでいじってみます。

 

 

リレーはボッシュ製でしたので、ここは犯人から外しました。私はドイツ製品は信用します。フューズも切れていません。

 この様な場合たいていリレーへの信号を従来のヘッドランプカプラーから取りますが、そこもテスターで当たって問題なし。

でも、このリレーってビニールで配線がくるまれてるけどアースはどうしてんだ?見当たりません。電気もアースが無ければフンずまりになります。

 

 

アースを追ってくるとこんなところまで来ました。なんで車の先端のヘッドランプのアースをここで取るのでしょう?理解できません。 しかも室内灯用のアースかと思えるほどの細さです。ここに110wのヘッドランプ電流を流したらこの配線が抵抗線と化します。ヘタすると発熱して車両火災です。

 

しかも、画像をよーく見ると、左側のナットに挟まれるアース端子の所に少し隙間が見えます。

このナットが全くしまっていませんでした。重力や振動でたまたま通電できているときだけライトが点いていた物と思われます。これは締めこみだけで治りますが、こんなところへアースは信じられません。

ついでにプラス側も調べてみました。

赤い太いコードが増設されたライトのコードですが、ここから左フェンダーを通ってボッシュのライトリレーまで行っていますが、こんな配線は信じられません。事故の時一番ぶつかる可能性の大きいフェンダーまでこの太い線でフューズなしです。理解してもらえるでしょうか?

事故でフェンダー内のこのブッとい赤い線がショートしたらたちまち車両火災です。

この様にするなら赤いバッテリー端子のすぐ側にフューズを入れなければなりません。

私の心配しすぎでしょうか?もう、私の常識に対する自信が崩れそうです。

とりあえずこれを作りました。30Aの防水フューズ入れ配線です。

そして取りつけました。これで安心です。

 

 

マスターバックをクラブの兄いから急遽送ってもらったので、こちらの作業にかかります。

感謝

 

先ずドナーのほうの錆を取っていきます。

が、その前に単体でバキュームホースを繋いで作動を確認しました。問題ないようです。

ここはどうしてもブレーキ液がマスターから少しずつ漏れるので、塗装がやられてしまい錆びています。

 

錆をワイヤーブラシで落とし強力防錆浸透剤 RP-1で錆止めし、そのあと黒ペンキで塗ります。

そして患者さんの方のブレーキマスターを外しました。

やはりここもブレーキ液で侵されています。

ブレーキカップの中にはなにやらヘドロの様なものが沈殿しています。

これが1か月前に車検を取った車・・・・いやもう言うまい・・・

 

マスターバックを取り外しました。

この鉄板一枚の所を足で踏ん張るのですから、マスターストッパーを付ける人はよく考えています。

左が取り外したマスターバック、右がドナーの錆処理済みのマスターバックです

問題のマスターバックを分解してゆきます。

カシメを外さなければなりません。今回は壊れるの覚悟ですから大胆にいきます。

これが問題のピストン部分ですが、右上が不自然に凸があります。

拡大しました。

明らかに製造ミスです。使用してこの様になるようなところではなく、組みたて荷締めるときに巻き込みという現象です。そしてこの部分に無理がかかりとうとうゴムが破れたのですね。凸に沿ってずっと亀裂がはいっています。

 

別の角度から

 

 

 

 

取り付けが完了し、ブレーキオイルをいれます。

オイルは320度まで持つエンドレスの最高級品です。

この画像はブレーキの動きが良くないのでスポーツショックを入れてみました の図では無いです。

ブレーキラインのエア抜きを一人でやろうとして編み出した技です。

スポーツショックはガス入りで伸びようとするので、ブレーキをもう一人が踏みっぱなしにしているのと同じ状況、いやそれよりもさらに忠実にブレーキペダルを踏み続けてくれます。

そしてこれはブレーキペダルとマスターバックを繋ぐ時に外したハンドルですが、ホーンパッドの中身が劣化して粉々になってしまいました。

私の手持ちのパッドからパッド部分のみ移植します。

リヤのライセンスランプです。

ここも変なネジでぶらぶらになっていたので修正です。

そしてここでとどめを刺されました。

乗り出し最終チェックでタイヤ空気圧をチェックしているところですが、250kp=2.5kg/cもあります。タイヤは205 65 14インチラジアルですが、常識的に2.1くらいでないですか?私がまちがっているのだろうか?4本ともきっちり2.5kです。1か月前にさるディラーで車検を取った車です。

 

現代に多いへん平率30%などのタイヤは確かに2.3~2.5ですが、このタイヤでこの車でこんなに入れるのは、ないでしょう?違うんでしょうか????。

とりあえず2.1kにします。間違っていたら教えてください。

 

 

いろいろ考えるにプロの某○○ディラーがこの程度の技量であるはずは無いのでは思います。

理由は、40年前のこの車の部品(純正部品)が車検証から追うとほとんどの補修部品が出ませんので

某○○ディラーとしてはしゃくし定規に部品が無いところは直せないということになったんだと思います。かといって車検証とは違う部品を付けることは看板をしょっているところでは出来ないのですね。

 

同じような境遇の方はこのところの事情を良くお考えになることが必要ですね。

 

 

 

 

 

ま、いろいろありましたが私の集中力もそろそろ限界になりまそうなので、今回の手入れは一旦区切ります。裏山の秘密のテストコースへ試験走行に出ます。

 

・この車のエンジンはいいです。とても2400ccとは思えません。SUキャブでも豪快にトルクで引っ張ります。スピードメーターは良くあったサービスの良いメーターの様にあっという間にスピードが上がります。ただ残念なのは5000rp以上で息付きがでます。おそらく燃料が間に有っていないと思われます。燃料ポンプが不足しているか、SUキャブでは口径が小さいのどちらかと思います。5000rp以下の低速トルクは良いのでおそらく電磁ポンプだと思います。2連装すれば良くなりそうです。

 

・足回りはノーマルなので柔らかいですが、ダンパーが抜けているレベルではありません。一般道を走るにはこれで乗り心地が良くていいと思います。リヤのスタビラーザーを付ければこの柔らかさでも安定が増すと思います。

 

・ブレーキはフルブレーキでは後輪が簡単にロックします。プロポーショニングはこの年式ではついてたっけかなー。フロントはロックする兆候は出ませんが、ノーマルではこんなもんです。十分な制動力があり、4輪ともバランスがいいです。

ただ、フルブレーキング時左後ろのサスかストラットからコトコト音が出ていますので、ブッシュ摩耗が考えられます。

 

・ロングノーズはあまり乗ったことがありませんでしたが、やはり高速ではフロントが沈み込むような感覚で安定が増していると思います。

 

今回はこれで持ち主に一旦お返しします。まだ30項目ぐらい不具合がありますがだんだん直します。

240zには少しは良い夢を見てもらえると思います。

 

私のほうは今までだれがどんな整備をやっていたんだろうと考えるとしばらく悪夢にうなされそうです。

 

 

 

つづく  作業の進行毎に順次アップしてゆきます  

 

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