2017年3月30日

240RSは格く語りき

 

今回この非常にレアな車体のミッション関係に手を入れるよう依頼を受けました。知る人ぞ知るという感じの240RS。

 

この国内に数台しかないという車体でヒルクライムレースをやるというのですから相当な信念をお持ちの方ですが、やはり車は走るもので、飾るものではないことには大いに同感です。

外観的にはかなりモディファイ(純正で)されていますが基本はシルビア・ガゼールですね。ただエンジンがFJ2400ccであることを含め各部がレース用としてモディファイされたホモロゲーションモデルですね。

ボンネット・トランクフードともにFRPです。

私も前の愛車はスカイライン鉄仮面でしたのでこのエンジンは大好きです。15年で28万Km走って一度も故障は無く、その後もFJエンジンフリークに引き取られていきました。

 

キャブはソレックス50ですが始動性も良く、気難しいところはほとんど出ないようにチューニングされています。低速トルクが図太いというのかパンチ力が半端ないですし、6000rpmから上の加速感はターボなしでも十分に迫力がありますし、実にリニアでストレート、機械もんはこれでなくっちゃ。

室内はヒルクライム用にセッティングされています。

ミッションについては純正ではこの画像のような直結5速がついているらしいのですが、現状が不明で操作感もいまいちということで、今回ヒルクライムでの操作性第一ということでコンパチC αシリーズに変更するということで進めます。

 

現状ゴーという音がかなり大きくなっており、シフト感もあまりよくありません。

早速ミッションを別途に作っていきますが、基本はFJ20だからということでDR30のミッションをドナーに選びます。

ヒルクライム用ということでやはりクロスギヤを準備。カメアリR32GTS用2-3速ダブルシンクロを使います。

この辺はいつもの通りのシンクロ・ニードルベア新品のギヤ類オイル潤滑化処理で進めます。

 

ギヤが組めました。

71BコンパチC α59クロスとなります。

 

シザースギヤ付

基本がDRですからストライキングロッドはφ16の強化品なのに、ストライキングレバーは71B式の理想的な仕様です。

画像に見えませんがオイルガーターも追加・エア抜きは71Cのホースタイプに変更・DRだとスピードギヤもそのままで行けます。

 

ギヤ精度

        1ST  2ND  3RD      5TH

エンドプレイ 0.25 0.19 0.20 --- 0.20

バックラッシュ0.11 0.14 0.25 --- 0.14

 

取説に書いてあるような値ですが4速と5速以外はすべて新品カウンターも新品ですからまあこうなるでしょう。

シフトフォーク側は3-4速は軽量ジェラルミン製に交換・1-2速はDRもジェラルミンでそのまま・5速バックはS13のようなバックリンクやバックシンクロとは違いシンプルなダイレクトですっきりしています。

交換に入ります。

交換前の状態ですが現在のミッションはフランジタイプですのでαバージョンの場合これをスプライン差し込みタイプに変更する必要があります。(βバージョンならフランジままでもできます)

オーナーが蛇の道はヘビで差し込みタイプのペラシャを探し出してきました。上が差し込みタイプ

ミッション降ろしましたが5速のギヤ比は直結の1.000でした。リブや左側面のニッサンマークのような鋳出しの存在も含めて純正直結5速と思われます。途中のギヤ比ははどうなんでしょう。後で確認してみます。

フライホイール・クラッチは結構消耗が有りましたがまだ使える範囲と思います。次の機会には交換前提でしょう。

シフトレバーは手前の71C用を根元で溶接したようなものが入っていたので向こう側に見えるものに交換します。

 

これは71Bのシフトリンク部(通称うさぎの耳)に支点を追加してクイックシフトにするもの(詳細はこちら)で私が考え出したものです。かんたんに確実にクイック化ができますし、元に戻すのも簡単です。

無事乗せ換えが終わり、試走でもすごくよくなった感触があります。ダブルシンクロなのでかなりクイック化したにもかかわらず、シフトの重さは軽微の増加に済んでいます。クロスギヤなのでこの240RSの高回転型エンジンでは発進がすこしきつく感じますがこれで良いと思います。

シフトフィーリングはカチッカチッという感じでまさにマシーンという感じに変貌したと思います。

これで乗鞍などのヒルクライム走ったら気持ちよさそうでたまりませんね。

2017年6月3日

240RSのオーナー様からヒルクライムで走ったが成績がいまいちだったとのことで相談を受けました。その結果の再訪です。

 

どうも登攀加速でスピードに乗れないということで、ギヤ比が高すぎるようだとのことです。

 

ここでギヤ比について再度おさらいをします。

 

 

 

ギヤ比の件ですがこの様です。

直5(現状) 2.818 1.973 1.470 1.192 デフ4.111(4.6情報)

αverクロス  2.427 1.677 1.258 1.000 デフ4.111

で一速以降カメアリクロスでかなりハイギヤードになっています。

この時点ではポルシェシンクロからワーナーダブルシンクロ変更で操作感を改善できてはいるのですが

ギヤ比は結果的にこうなりました。

デフはS110の純正4.111です。本来は4.6らしいです。

 

いろいろ相談したのですが手持ちに4.875のデフがある(レア!)ということで、デフを交換することにします。ミッションの一次減速(=4速)側を落とす手もありますが、それほど低くなりません。

デフ4.875で計算すると

αverクロス 2.878 1.988 1.491 1.186 デフ4.875

(4速はあくまでも比率的な計算で数値的には1.000です)

となり最初の直5ミッションとほとんど同じオーバーオールギヤ比となります。ちなみに5速は0.89換算となります。

結果的には超クロスミッションが出来たることになります。

(以上240RSオーバーオールのギヤ比比較ですから他の車種に当てはまる訳ではありません)

 

早速デフを見てみますが長年の保管で錆がだいぶ来ています。

サイドベアリングもちょっとやばいです。

ただ、全体的には全く使っていない新品です。

分解してゆきますが、ピニオン側は奥まったところにあるので比較的錆びてはいません。プリロードを測ったところ0.15kgとすこし甘いかなという感じ。

ケースとしてはオールアルミでできています。また上部に純正とは異なるねじ穴があり、どうも測定端子用の様です。

穴は専用プラグを作って塞ぎます。

リングギヤを錆を落とせるだけ落として修正します。幸い錆は表面だけで内部への進行は少なかったです。

バックラッシュについては0.13~0.15と良好。

 

イニシャルトルクを測定して8.5kgでしたのでよろしいと思います。

ホーシングの分解

ドライブシャフト

今回ハブベアリングは問題ないので交換しません。

ハブのオイルシールはまんまる(リップが完全に摩耗)ですので交換です。

いままでついていたデフ。

ケースは鉄鋳物ですごく重いです。

H190

さあ、これで7月にまたヒルクライムがあるようです。次の記録はどうなるでしょう。

 

 

 

 

 

奥に赤いZが見えますがサファリカラーZで、詳細はこちら