旧車のレストアは楽し 空飛ぶZ432 その1 その2 その3 その4

 

2016年11月5日

空飛ぶZ432 

71A3分割 γ16スペシャル

 

オーナーの希望でずっと私の工房においてあったこのミッションを71A3分割 γバージョンでスペアとして準備することになりました。

 

このミッションは確かもともとはL型用5速クロスだったものをフロントベルをS20用に交換したものでつまり432に使われているものと形式的には全く同じものですね。

 

もともとはオーバーホール済み品ということで入手したようです。

でもまずここがうまくないです。

ここにきて2年位になりますが、もともとこの状態でした。

とりあえず分解してゆきます。

 

パッと見状態は悪くないですがうっすらと黒いオイルのようなものがあり、結構使われていた感じです。

現状での精度

        1st  2nd  3rd      5th

エンドプレイ 0.31 0.25 0.05 --- 0.12

バックラッシュ0.10 0.22 0.32 --- 0.12

 

3rdのみエンドプレイ(軸方向隙間)が小さすぎ、バックラッシュが多すぎの状態です。

あとはまあまあかな。

 

 

 

 

シフト関連部品ですが今まで見た中で最も程度が良い部類に入るものです。シフトフォーク爪も方べりはほとんどしていません。

いつも緩んでいることの多いこのM38のダブルナットですが、今回は全く緩まなかったです。1mの延長バーつけて試みたのですが、自分が持ち上がってしまいます。どうやって締めたんでしょう?ただ珍しくこれまではほぼ100%されていたタガネ攻撃はされていません。回り止めワッシャも入っていませんが、それでこれだけ締めれるのはかなりの技術かもしれません。

しかたなくバーナーで炙りますが非接触温度計で測定しつつ150度以下に抑えながら均一にあぶります。

やっと緩みましたがかじりやねじロック剤などの化学薬品の痕跡もありませんので、どうやって締めたのかよくわかりませんでした。

メインインプットですがシンクロCリングの状態、舳先の状態も良いです。

このインプット側はだめレベルです。

3-4スリーブは舳先の丸まりがややみられるが中程度の状態

5速も良い状態です。入手困難な5速シンクロも悪くないです。かじりが発生しやすいスラスト面も良好です。

5-バックのハブですが画像情報のスプラインの一番左端が欠けています。バック側ですね。

ここは1-2速ですが見るからにシンクロがやられています。

2速 シンクロのC口部分開いているところが摩擦材面がなくなって光っていますのでダメです。

これは1速ですがわかりやすくシンクロが逝ってます。もうえぐられていますので、さぞかし1速は入りずらかったでしょう。

1-2速のスリーブですが2速側の中央溝幅が広いところの左側舳先が欠けています。1か所だけでしたが、ひどいものは同様箇所が3か所欠けている場合が多いです。このスリーブはお釈迦です(=使えないものになること)。

 

全体的には整備程度は悪くなかったですが部品が入手難で必要最小限のみ手当した、あるいは言われたところだけやったという感じでしょうか。ベアリングもかなり消耗している感触で欠けて脱落した金属片の影響があったのかもしれません。

これからγスペシャルにリビルトするために必要なパーツを集めます。

2016年11月8日

 

組み付けに入ります。

先ずメインシャフトは見るからに消耗していそうな下側の今までのシャフトから、手持ちの中から程度のよさそうな71Aシャフトを選び交換します。

 

メインシャフトはやはり精度の基本ですから大事です。

1速ギヤとシンクロです。

 

今までついていたシンクロにはこのような樹木の皮のようなところがところどころあり、色が黒っぽいです。かなりの確率でこのようなシンクロが入ってます。

 

こちらが私が使うシンクロですが表面の状態、色合いともにかなり異なります。新品です。


1-2速を組みました。スプラインが欠けていたスリーブはWPC処理済みのスペアに交換しました。

クランクに刺さるところがクレーター状の錆に見舞われていたメインインプットも他の程度の良い手持ちのインプットに交換してゆきます。71Aのメインインプットは歯数が23枚で71Bとは異なりますので入手が難しいです。

今までついていたシンクロですが、このように親指から人差し指の範囲で噛み痕のような打痕があります。まさにドッグティースに喰われたという感じです。このようになっているものをかなり見ますがスリーブが傾くために発生する現象だと思います。

欠けていた5速ーバックのハブも交換。このような破損部品も今のところ自分の手持ち中古ミッションの中であるパーツの場合は予算内で賄うようにしています。これらがなくなってその都度購入するようになるとさすがにそうはできないですが。

 

少し飛びますがギヤ部の組み付けが完了しました。今回オーナーの好みで5速裏はスラストニードル仕様にした状態でM38ナットは純正と同じダブルナットの回り止め折爪ワッシャー仕様で組みました。(γスペシャルはシングルナットのサイドロックボルト+加締め溝仕様でやっています)。

 

ギヤ精度

        1st  2nd  3rd      5th

エンドプレイ 0.18 0.17 0.22 --- 0.06

バックラッシュ0.12 0.07 0.11 --- 0.15

 

ほぼ理想的な値です。

 

この後シフトフォーク類を組みましたが画像取り忘れました。1-2速フォークはじっくりと見たらやはり0.5mmほど摩耗していたので使用不可と判断して手持ちの2点支持の標準のシフトフォークに交換しました。3点支持ももちろんできるのですがオーナーの好みで標準のままとしました。3-4速は今のところ良さそうなのでそのまま2点支持フォークのままで行くこととしました。

 

 

 

リヤエクステ側に入ります。

71Aで消耗の激しいエクステはこのシフトブロックが収まる部分の画像左側の丸く光っている部分が摩耗して陥没しているものが多いですがそうなるとここからオイル漏れしやすいですが、このエクステは良い方です。

このシフトレバーの中立を保つためのアウトリガーのような部分もよく摩耗するところですが、これは良好です。

このブロックの丸い穴の内周に前後オーリングが入っていますが劣化がひどい様です。もちろん交換。

でも待ってくださいよ、このシフトブロックの軸となるこのパーツが抜いてみたら傷だらけです。打ち込みがきついようです。これでは再使用できないのでたまたまあった新品のパーツに交換します。

 

打ち込み時は工夫してかじらないようにして取り付けが必要です。オイル塗っただけではだめですよ。

このボルトの6角も凹んで痛んでいますので交換。

良くオイル漏れのもととなるプランジャーピンのオーリングも交換。右側が新品ですが、左側はオーリングが硬化して角ばってしまっていることが分かります。

組み付け完了して試験機での試験も合格です。シフト感・回転ともにokです。試験機e-zanarizeも改良して最高2000rpmまでぶん回せるようになりました。