空飛ぶZ432

2013年7月1日

S20エンジン用 71Aポルシェシンクロ3分割ミッションのオーバーホール

 

空飛ぶZ432というタイトルですが、飛ぶのはフェアレディーではなく持ち主のほうでご職業はパイロットです。Eさんは私と同じクラブS30のメンバーですが、なかなかいつもお忙しそうです。

Z432はもちろんあのS20エンジンで、ミッションは3分割の71Aポルシェシンクロ(サーボ)となりますが、最近オイル漏れが酷くなっておりギヤの入りも悪いということでOHすることになりました。


2013年7月15日

 

とうとう空飛ぶZ432の持ち主がやってきました。明日16日が成田からロスへフライトということでその行きがけに我が家へご来訪です。奈良を早朝に出発して当工房へ自走して10時半には到着していました。さすがパイロットです。眠気や疲れのコントロールはすごいんでしょうね。

 

そのまま少し休んだだけで、早速近所の日本平(観光地)へ試走に出かけましたときの画像です。


このZ432のコンセプトは完全オリジナルということだと思います。おそらくどの部品の形を見ても、さらに分解して裏返してみても、さらにやれ具合までも時代を正確に表現していると思います。

 

そして最もすばらしいところはなにか透明感があるというか、これはどこにも破綻が無いぞと思わせるオーラがあることですね。


走った印象では足回りは標準のサスを再現しており、ドライブに適した動きをしており、ワインディングもヘンなピッチングやヨーイングも無く、ブシュのヘタリによる腰砕け感も感じられません。

 

エンジンはもちろん”あの”S20エンジン DOHC R380の流れを汲むレーシングレプリカですが、実に良くしつらえられており、良い意味で普通のエンジンとなんら変わりなく仕上げられています。回転上昇もリニアでヘンな谷間などはありません。ソレックス3連装とは仕様を知らなければ気が付かないほどの絶妙な調整です。

このエンジンの真価を見るにはサーキットへ持ち込むしかないでしょうが、この車に限ってみればそんな真価を確認する必要はありません。だって、存在することがこの車の真価そのものですから。

 

工房に戻って打ち合わせに入りました。持ち主は私と同じクラブ所属ですから知らない中ではありませんので、おおまかに打ち合わせして細部はその都度お話ししてゆくことにして、今日はゆっくりしていってもらおうと思ったのですが、ご本人は今日ミッションを下ろして中身確認までやりたいという勢いでした。

 

車の中には特殊工具や部品満載で特に整備要領書やパーツリストの分量と質は半端無いです。

 私の思い違いだったのですが、この人は本当にDIYを志すタイプだったようで、何とか自分で中身を見てやろうという意志がありありで、少しでも時間があると車に触っています。そのうちに、もう配線・配管類を外し始めていました。


さあ、あの S20エンジンとご対面です。私にとっては別の意味ですごい威圧感を感じます。

ちょっと恐れ多くて手をだすのがためらわれる状態です。しかも、このコンディションですので、ほとんど芸術品のようです。したがって私の気持ちとしては、貴重な歴史的芸術品を調査する学芸員になったような気持ちです。(学芸員やったこと無いからあくまでも想像ですが・・・)

こちらがキャブレター側ですが、持ち主ご本人がいつの間にかさささとエアクリーナーやバックプレートなどをどんどん外していきます。配線配管を全部外してこちら側の接続パーツ類はほぼ完全に準備してしまいました。

右下にアールズのフィッティングでオイルクーラーの配管が見えます。

オルタネーターは忠実にIC化前のものが使われています。

ラジエターやヒーターのホース類もやはり忠実に網入りが使われています。

また、やはりそうなんですねという感じですがクランプバンド類やネジがほとんど全て当時のものと同一のものが使われていますので、それらを一つでも無くした場合、厄介なことになります。

もう手に入らないものがほとんどですから・・・。

 

 

 

 

 

 

お昼になったので近所のお蕎麦屋さんで、お蕎麦を食べました。

 

画像がありませんが、このあと結局ミッションおろしは今日中は間に合わないと判断して、別途に分解済みの71Aミッションでギヤの様子やシンクロの仕組みなどについて見て貰いました。

 

そして、私の工房はエアコンなど無いので蒸し風呂状態ですので夕方には 近所の天然温泉 駿府夢広場で温泉で一汗流し、

その後、工房と目と鼻の先にある スパニッシュレストランで生ビールとパエリアなどで乾杯 今日はお疲れ様でした。それとご馳走になりましてありがとうございます。

 

奈良からはるばる来てくださりお疲れでしょうから、この日はレストランの上にある海の見えるスパニッシュホテルでお休みいただきました。明日は大事なロスへのフライトがありますからごゆっくりお休みください。

 

 

 

 

 

 

 

z432を預かってからかなり時間が空いてしまいました。

前に預かっていたハコスカGTR用の亀有クロスを仕上げ無ければならなかったし、

それと暑いのもあります。気分が集中して活動できる時間は限られます。

でも、なんか全部言い訳っぽいです。

 

そんな中で 富士スピードウェイでのミーティングイベントや、静岡掛川のエコパでのサンデーランにBMW R100RSでひさびさに出かけたりで、なんか自分でものらりくらりしているのがわかります。

(BMWには ついに中古のバイク用ナビ ガーミンのZUMO660を取り付けてしまいました。私はこのようなヘビーデューティの軍事用ぽいのに弱いです)

 

理由はわかっています。いつも取っかかる時はある種のアンニュイに陥ります。完成されたもの、精巧なもの、美しいもの、未知のものに自分のようなものが手を出してもいいのだろうか・・と。元に戻せなくなるのではないかという軽い恐怖のようなものがいつもあります。でも・・一旦手を付けてしまえば、頭の中は分解して行く手順と、痕跡の残し方、部品の混乱の防止の工夫、組み立てるときの手順と適したツールの存在、これらのシミュレーションが目の前に見えるものとは別のところでいやおう無く繰り返されるようになるのです。

 

てなことも言っておられず、オーナーからの矢継ぎ早の部品供給と応援を受けてとうとう分解に入ることになりました。

いきなりこのような画像ですが、先ずボンネットを外すので後で組み付けるときにチリを元に戻せるようにボンネットヒンジとの位置関係を記録しておきます。ボンネットのセットは非常に難しく3次元で調整となるのでコツが必要と思います。

反対側です。

これでヒンジ部のボルトを外して行くのですが、ボンネット、特にZのボンネットは長いので重量があり、外すときに2人いると助かります。

手が滑って落としたりしたら、フェンダーがへこみ傷がつきますから全塗装しなおしの刑に処せられます。

そして次にラジエターを外す為に冷却水を抜くのですが、早速画像の様に出鼻をくじかれました。

画像をよーく見てわかる人はわかると思いますが、今折れた俺口いや折れ口では無いです。どうも接着剤でくっつけてあったようです。折れたのは仕方ないと思いますが、直し方が陰険です。後の人のせいにするなんて・・。俺のせいではないですよ(汗)

 

これは部品は手に入ると思いますから折れた破片さえ抜けば問題ないのに。

次にファンを取り外します。このファンは完全固定の仕様でカップリングは付いていません。これ9000rpmのレッドまで回すと結構きついね。でもきわめてシンプルではあります。プーリーが緩やかなカーブが付いていてきれいですが、プレス的には少し難しくなります。


ファンを固定する4本のM6ボルトは緩み止めの為にワイヤリングされています。

このワイヤリングをペンチで切って外していきますとファンが外れます。

ファンは7枚羽で出来ていますが、風きり音の共振を避ける為、たいてい奇数になっています。または羽ピッチを変えている場合もあります。

 

私のZではこのファンの抵抗を減らす為、ファンの先端を8CMくらい斜めに切り取って面積を減らして使っていたときがあります。

ファンの後ろについているアルミのスペーサー(軽量化穴の追加余地がものすごくありそうですが)と鉄板プレス整形のプーリーです。このVベルトの入るところの折りたたみをどうやってやるか知ってます?

一回では出来ませんから何回かに分けてやっていると思いますが、それを日産系は工程と言っています。他の会社ではそれぞれ別の呼び方です。


スペーサーのアップですが、私的にはNGです。真ん中の穴の上側に段つきができてしまっていますが、相手部品に無理やり締めこんだ結果です。せめて取り付ける前に面取りしておけばもう少しましだったと思いますが。これが、斜めに取り付くとファンが斜めにぶれることになりますし、最悪固定ボルトが緩んでファンがラジエターのファンになります。

 

ちゃんと面取りして寸法確認して合っていなければ削りましょう。


ファンが外れたのでツナガリでオルタネーターを外しました後の画像です。オルタネーターは当時のままの発電機能だけのものでいわゆるレギュレーターが内臓では付いていません。ICレギュレーターなんてしゃらくさいもんは機械仕掛けの宝石には似合わないですよね。

 

そして、2本アールズだと思うんですがカップリングで繋がれているホースはラジエター前面に取り付けられた当時モノ日産オプションのオイルクーラーに繋がっていますがこれを外します。

 

この日産オプションオイルクーラーは今では先ず手に入りません。したがってそのやわらかそうなしなやかなアルミフィンにスパナが刺さったらやっぱり貼り付け槍刺しの刑にされますから、早いとこ見えないように合板で蓋をしておかないと衛生上悪いです。右端に合板が見えるのがそうです。

今回はミッションも外すので迷うことなくマフラーも外しました。エンジンだけならマフラーは床に吊っておけば外さなくても済みます。

マフラーは純正のデュアルだと思います。Z432の象徴 この2にあたるところが意味するのはデュアルつまりダブルつまり2です。ちなみに 4は4バルブ 3はソレックスキャブ3連チャンの意でよかったと思いますが。ん、2はツインカムの2だったかな・・・。いや、2ドアの2・・・ん。


このマフラーの中間タイコ部の後ろ側のパイプ溶接部ですが、明らかに亀裂が入っています。

もう片方も同じ状況です。これはどうしても溶接補修か交換しておかないといずれは全周ヒビが回ってマフラーが脱落、轟音で正座補導のパターンになります。


いよいよエンジンとミッションを固定している接続ボルト類を外していきます。

下回りの一こまですが、見づらいですがミッションの丸い黒ゴムの蓋の左側、ミッションの前端下面にオイルのしずくが3滴ほどぶら下がっているのが見えます。オイル漏れです。

エンジンクレーンで支えてエンジンを静かに前方にずらして行くと、ミッションとの接続を外せます。

画像はすでにクラッチカバーがのぞいて見える状態になっています。


あんまり言いたくなかったんですが、やっぱり言います。

Z432のエンジンが空を飛んでいます。

 

この状態でエンジンを落とすと最悪の事態です。

そんなことあるわけ無いでしょと思うかもしれませんが、自分の車では過去落としたことがあります。

エンジンクレーンを上げ下げする行為が発生するのですが、なんとその上げと下げを間違えて操作してクレーンの油圧を抜いてしまったのです。

私はじっと手を見ます。

なんどもじっと手を見ます。

 

それだけ自分にとっては切り取られた空間の出来事だったのだと思います。


クラッチカバーの図ですがL型よりかなり凝った形状です。

 

ちなみにこのカバーはフライホイールに6本M8で固定されますが、このM8ボルト全部がスパナで軽く回るほど緩んでいました。距離を走るうちに何らかの理由で緩むことも考えられますが、通常はこれを締め忘れといいます。ボルトも純正品だと思いますからボルトが伸びることも考えずらいです。言いつけ坊主のようでイヤですが、これを締めた人の為にあえて明記しておきます。

 

このクラッチカバーはエンジンとともに9000RPM回りますから、これが外れるとその運動質量はミッションを貫き、フロアトンネルを破ることでしょう。その後は・・・。

残されたミッション側ですが、やはりオイル漏れのあとが残って見えます。

エンジンヘッド後端下部にもほんの少しですがオイルのにじみが見えます


エンジンルーム全景ですが、非常にきれいな状態です。そしてシンプルですね。

クラッチディスクです


クラッチカバー面 これもきれいです

フライホイールです。なにやら特殊な6本の12Tボルトで締め付けられています。L型とは異なるようです。また、2本ずつ舌付きワッシャーで緩みとめが成されています。

 

 

フライホイールの中央の小さな穴にはミッションのメインインプットシャフトが刺さってくるところで、荷重を受ける為に内部にニードルベアリングが仕込まれており、画像でも確認できます。ここは負荷が大きいところですから出来るだけ交換したいところです。(L型はリン青銅製のプレーンベアリングです)


これはオーナーが指摘していたことですが、フライホイールのリングギヤがズルむけています。良くこれでセルが回っていたものです。何とかしなければなりません。


マフラー外しからエンジン降ろしまでで、取り外した主なボルトナット類はこのようになります。

しかもエンジンとミッションを固定する実質的なボルトは右端のM12ボルト4本のみです。

 

L型の場合エンジンとミッション結合ボルトはM10ボルト4本ですがS20ではこれがM12 4本に強化されていることになります。またバックプレートも板厚が5mmくらいあり、大幅に厚くなっています。

さあ、オーナーの応援もありやっと第一段階のエンジン降しが完了しました。

エンジンスタンドがL型とは異なるので、使えなく仕方なくバイクリフトを合わせて使って保持しています。

 


Eさんがクラッチプレートを比較したいというので、比較です。左が今まで付いていたものでNISSANマークが刻印してあります。右側は日立の製品ですがフェーシングの幅が3mmくらい狭いです。また溝がありませんし、フェーシング材も昔のタイプのアスベストでしたっけ ぽいです。寸法的には同じで有るようです。

ミッションを外しにかかりますが、プロペラシャフトを4本M8を外して切り離します。一応回転方向にマークして復元できるようにしました。

スピードメーターケーブルは一度直角に曲げるギヤボックスが付いていますが、初めて見ました。しかもネジ部2箇所はワイヤーリングされています。

 

後はミッションマウントの2本のM10を外すだけでミッションは降ります。


引き出しましたが、シフトレバーのあたりが黒く油汚れしています。シールに漏れがありそうです。

全体的にはすらっとした印象で、リブの角や高さがはっきり細く造形されていて気品というか、ある種の色気があるミッションです。コメントが変ですか?

 

鋳物はリブを細く高く角を出して鋳込むのは非常に難しいです。通常の鋳物は最低肉厚15mmが限界といわれることが多いです。これ以上薄くすると鋳物巣ができる確率が高くなり歩留まりが落ちます。


ミッションマウントの部分ですが20mmほどのカラーが入っていますが、これが純正なのかな?

通常L型ではこれは付いていないような気がしますが・・・。

 


また言いつけのようになってしまいますが、身の潔白を明らかにしておくため記録します。このミッションは1度分解されているようで、その時にその人がケースを割るときに無理やりこの部分を叩いた結果です。反対側にもう一箇所おなじような変形ひび割れがあります。(ヒビはたぶん内部には及んではいないと思います)

 

私はこの気品に満ちたこのミッションケースに対してこのような仕打ちは絶対にしません。

 


71A S20エンジン用3分割ミッションが、解凍されましたの図です。

 

 

ミッションギヤ部分です。見る限り大きな破綻は見られません。これから分解していきますが、分解しないとわからない部分があります。

ギヤの前にシフト部を分解していきます。破損部があった場合、部品入手はこちらのほうが厄介かもしれません。


上記のアウトリガー部を押しているプランジャー機構ですが、右側のスプリングの方が3mmほど短いです。これが正しいのでしょうか、へたっただけでしょうか?わかりません。

 

パーツリストで調べてスプリングのパーツナンバーが左右で異なっていますことが判明しました。従ってこのスプリングは意識的に仕様が異なることがわかりました。

オーナーのEさんが言っていたとおりシフトレバー支持部のこのアウトリガーのような部分は陥没磨耗しています。この部分はシフトレバーを中立部分に常に戻す働きをしていますので、ここがこのようになるとシフトレバーの左右方向の位置があいまいになると思います。

そしてそのプッシュピンですが、やはり右側=5速側のほうがヘンな磨耗をしています。これはドナーから代わりを持って来るしかないか・・・。


シフトロッド・フォークを分解していきます。1-2速と3-4速のシフトフォークはまったく同一部品を表裏ひっくり返して使っていますがそのほうが部品種類が減るからなんでしょうが、実はそれがこの71Aでは大きな欠陥につながっているのではないかと私は憶測します。持論での理由は、おいおいご説明していきます。乞う、ご期待です。

 

そしてもう一箇所驚いたことがあります。


それはこれなんですが、中央部にある溝のようなものはシフトした時にシフト位置を明確にする為に設けられているのですが、この部分に鉄のボールがスプリングで押し付けられクリック感を出します。

一番下の5-B用のロッドには3箇所溝がありますが、つまり5速とニュートラルとバックですね。

でも上の2本はどうでしょう?一箇所しかありません。つまり1-4速はどこまで押せばギヤが入ったのか感知しにくいという結果になります。そして実際にこの困ったことは操作する人が良く口にすることそのものです。何故こうしたんでしょう?溝つけるのそんなに大変だっけ?ぜんぜん理解できません。

 71Bはもちろん71Cも含め全てのシフトロッドには3箇所ずつクリック溝が当然有ります。

 

EさんがOK出せば、私はすぐにでもこの部分に溝加工を追加したいです。どうしましょうか。

 

 

 

不可解なことが出てきましたが、取り合えずどんどん分解していきます。

 

メインシャフトのM38ネジですが、ダブルナットになっていますが手で回るくらいに緩んでいました。このネジは悪名が高く、この後71Bではシングルのカシメ溝付きに変更、その後さら71Cでは逆ネジに変更となっています。

 

左側に見えるのが5速のメインギヤですが、このことはここに影響が出ます。

 

補足:整備要領書を確認してこのM38ダブルナットの左側のナットとワッシャーの間には舌付きワッシャーが入ることになっていることが判明しましたが、このミッションでは欠落しています。それをネジロック剤で補おおうとした痕跡がシャフトに見られます。結果、ネジは緩んでしまったのですが・・・。ワッシャーには舌付きワッシャーが噛み合う為の溝が2箇所設けられており、外したときにそこが空なので違和感があり調べてみましたが、気がついてよかったです。

 

 

5速ギヤですが画像では一番上の面が先ほどのM38ナットで締められていますが、それが緩んだ結果、ここにかじりが発生しています。この5速ギヤは使用不可です。また5速と噛み合うカウンター側5速ドライブギヤはセット交換指定なので、そちらまでオシャカということになります。

 

でもまだ焼きつかなくて良かったです。焼きつくと後輪がロックしますし、その場合当然クラッチを切っても離脱できません。ここがエンジンと違うところです。

 

一般的にはマニュアルミッションは常時噛み合い式ミッションという機構ですがその場合1-5・バックのメイン・カウンタ側どちらのギヤ・ベアリングもすべて常に回っており、その中の一箇所でも焼きつくとミッション全体がロックします。

バック部分の部品ですが、いつも問題となるバックアイドラーのギヤの迎えこみ山形状は健全で合格です。ここで持ち主のシフトチェンジの技量が出ます。

あとは何時もと同じやり方で分解完了しました。特に問題は見られませんでした。

下側のカウンターの後ろ側ベアリングの後ろにはシム輪っかが入っています。忘れないようにしないと・・・。

ほぼ分解完了です。

 

今回の調査を元に、必要な交換部品類を集める作業に入ります。今回はベアリング・ニードル・シンクロ・シール全て交換で動きます。

 

 

ベアリングなんですが思わぬところで油断していました。各メインギヤの中にあるニードルベアリングなんですが、71Aは71Cより約2mmくらい短く互換性がありませんことはわかっていたのですが、日産部品で2-3日で入手できていたのであまり気にしていませんでした。が、いざ頼んでみるとお盆と重なり2週間後の納期を返答されました。71C用の手持ちはいくつもあるんですが、71A=71Bの手持ちは確保していませんでした。

 

仕方ないので組み付けはお盆すぎ 20日まで延期です。私にはお盆休みは関係ないのでちょっと誤算ですが、他の部分を出来るだけ進めます。

 

 

 

 


エンジンのほうですがクランクリヤオイルシールを交換する作業に入ります。

画像はフライホイールを外したところですが、バックプレートが6本のM8ボルトで固定されているのがわかります。L型はこのボルトはありません。ミッション外すときにバックプレートとミッションを固定しているボルトは外さなくても一緒に取れると思っていたのですが、念のためボルトを外しておきましたが良かったです。気がつかなければバックプレートを曲げていたところです。


しかしこのフライホイールボルトを外した後の部分なんですが、ボルトにネジロック剤が塗ってあったようです。このボルトは緩んだら危ないですが、そのために舌付きワッシャーで回り止めされているのに、さらにネジロック剤を塗ったようです。こうすると今度はこのネジロック剤のお掃除にこまります。ここは厳格にトルク管理されるので異物があると正確なトルクが出ません。

そしてさらにここまでご丁寧にネジロック剤攻撃ですね。スプリングワッシャーは何のためにつけているのでしょう。


いよいよクランク後端までアプローチしてきました。下側半分の色が白っぽいところはクランクベアリングホルダーですね。

右上の大きな6角ボルトはおそらくオイルギャラリーの蓋だと思います。

今まで付いていたフライホイールですがフェーシング面がささくれ立っているし、ところどころヘゲまで入っています。これだとやはりクラッチミートに影響でるし、すべりや焼きつきの原因です。また、このFHはリングギヤのつぶれが指摘されており交換は最初からの予定ですから良かったです。


新しいフライホイールをチェックしたのですが重量は新旧変わらず8.5kg、クランクとの勘合穴径はクランクに対して0.05mmのクリアランスでOKですが、少し気になるところがあります。クランクと合わさる部分の面取りが異様に大きいのです。何故なんでしょう?製造上の問題か?

面取りで2.5mmくらい削られています。

 

 気になるのでクランク側の出っ張り量を測ります。

すこし見づらいですが、FH突き当て面から4mmまでストレートで後は面取りがされています。

絵を描いてみればわかりやすいですが、4-2.5mm=1.5mmしか噛み合っていません。

 

これでいいのでしょうか?ちょっと恐ろしいです。FHを止めるボルトがゆるんで1.5mmゆるんだらFHは円盤投げの円盤ごとくすっ飛んでいくんですね。

 

新しいFHがなんか不良品なのかと思って今まで付いていたFHを計ると同じように2.5mmでした。2個ともに純正品ということなので、ということは2個共に不良品で無い限りもともとの設計がこうだったということになります。私は心配性なのでこのような設計にはしないと思います。社外品が手に入るならこの部分を確認して使ったほうが軽量化よりも安全対策の意味で有効になると思います。(取り付け面の外周に段付き加工がありドナーと異なりますが、関係寸法は合致していてセーフです。理由は不明)

 

この部分のいきさつについてご存知の方居られましたら掲示板でご連絡いただけると幸いです。そうじゃなくてその部分はこういう理由があってそうしてんじゃ!ボケっ!など、ご連絡ください。勉強になります。

前述の2箇所のネジロック剤攻撃を受けたネジ部分について、タップをかけてきれいにしていきます。
フライホイールボルト部についてはM12ピッチ1.25という極細目のタップが必要です。

この後エアーブローして、CRCを吹いておきます。

 

 

つづく

 

進捗次第アップします

 

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以前BMWのヘッドベアリングを抜く為に購入して結局役に立たなかったこのプーラーがやっと日の目を見ました。BMWのヘッドベアリングが何故あんなに抜きにくくしているのか理解できませんが、とにかく引っかかるところがないので、力がかけられません。結局溶接でレースに鉄棒を溶接して抜いた覚えがありますが、素人は触るなというバリアーなんでしょうか?

 

今回のこの部分はスムーズに抜けました。


はい、抜きました。S20の場合ニードルベアリングだし、さらに厳重にオイルシールまで付いています。L型の場合リン青銅のプレーンメタルがはだかで付いています。

そして次にクランクオイルシールを抜くのですが、L型の場合幅も厚みも大きいのでドライバーなどをねじ込んでこじれば抜けるのですがS20の場合幅がすごく狭くドライバさえ入りそうにありません。

ヘンにこじるとクランクやホルダーに傷を付けるとえらいことになります。エンジンがオシャカです。

 

そこでしばらく悩んだのですが、なんとなく考えがすっとまとまって手がすいすいと動いて専用プーラーを完成させました。使い勝手も思いのほか良いです。ゴムの部分から差し込んで鍵部分を回して引っ掛け、金色部分の錘を引いてショックを与えます。これを全周均等に少しずつやりますとスコッとオイルシールが抜けました。

これがそのプーラーの全体です。先端部分の鍵の部分はステインレス材から作りましたのである程度強度があります。引っ掛けるところは釣り針のようにインバースしています。鍵部分の厚みは3mmとしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その2 に続く

 

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