2021年1月16日

S20エンジン用71Aγ33

 

ハコスカGTR用としてディーラー様からオーダーいただきました。

1速、2速ギヤとハブ・スリーブを準備します。

この中で71Aポルシェシンクロではハブとスリーブが重要で、私はこれらのパーツにスペシャル仕上げを実施しています。この2部品は焼き入れ鋼で硬くなっているので加工はすごく大変です。

1速、2速共にシンクロリングの状態は良いです。

メインインプットのシンクロの様子。

ギヤ部の前半分が完成

5速シンクロの状態

今現在この5速のシンクロは完全に新品は絶滅したので手持ちの中古の中で状態の良いものを探しだしてきて組みます。

そしていつもの通りここはスラストニードルベアリングを構築します。5速のリヤ側のスラスト面は焼き入れワッシャーが受け、その後ろにスラストニードルなので、仮に5速のスラスト面が焼けていてもリカバリーできます。

ギヤ部が組めました。

ギヤ精度

 1st 2nd  3rd      5th

エンドプレイ

0.12 0.22 0.20 --- 0.07

バックラッシュ

0.10 0.13 0.10 --- 0.18

ほぼ完ぺきな値です。

3-4シフトフォークは2点支持のノーマル仕様ですが程度の良い中古品を探し出して交換してゆきます。

1-2シフトフォークはスペシャルの3点支持

この方がスリーブを平行に押すことができます。

オイル漏れの多いこのシフトロッドの取り付け部には2重オーリング仕様に変更して対策します。

 

またシフトコントロールプランジャーも2重オーリング化して漏れを防ぎます。

回転試験機で試験しています。

シフトレバーが刺さっているシフトブロックが前後逆になっていますが、仮に組んだだけなので後でハコスカ用に組み替えます。

 

完成です。

シフトも問題なく、回転抵抗も少なく異音や振動も問題ありません。


2021年2月18日

S20エンジン用71A3分割スペシャルγ34

 昨年の大阪レトロカー万博でフリマ出店の折に

ハコスカGTRのオーナー様とお話ししているうちに、その場でご注文いただいたミッションです。このようなご注文をいただくとはるばる大阪までs30zで出張した甲斐が有るんだなとつくづく思います。直接オーナー様とお話しできご要望が聞けるのも張り合いがわきます。

ギヤ組は71Aの場合やり方が確定していますので、各部を点検して組み上げていきます。

 ポルシェシンクロの場合やはり大事なのはCリングとスリーブの組み合わせです。

ポルシェのCリングは日産部品で相当品新品が購入できますが値段がとても高騰しています。なんと1個15800円で、1台分4個でこれだけで63000円、71Bならミッションが買えてしまう価格です。

また、40年経った今となってはシンクロスリーブはほとんどが摩耗してしまっていますが、この新品はなかなか手に入らないので私は良好な中古品を集めてそれに手を加えることで機能回復を図っています。

 

 

ギヤ精度

 1st  2nd  3rd   5th

エンドプレイ

0.12 0.15 0.27ーーー0.07

バックラッシュ

0.15 0.13 0.17ーーー0.07

良い値です。

71Aγバージョンの私の考えた結論

71Aを今まで何台も分解しましたが、問題の起っているのはほとんどが5速ギヤのスラスト面です。その原因はメインシャフトを固定するM38ナットが緩むことがきっかけですが、その対策として5速裏に画像のようにスラストニードルベアリングを構築することなのです。M38ナットもダブルナットでなく一体加締め式として、さらに画像に少し見えているサイドロックボルトでゆるみ止めを完璧にします。

 

 *M38ナットが緩むと5速ギヤのエンドプレイが過大になり、ミッションのオンオフの度に5速ギヤスラスト面が激しく打ち付けられる為その衝撃で焼き付くと推理しています。

そして71Aのもう一つの弱点シフトフォークの設計ミスですが、私は画像のような3点支持のシフトフォークに換えることで対処しています。画像歯3-4速シフトフォーク

そしてこちらが1-2速シフトフォークで同じく純正2点支持から画像の3点支持フォークに変更してゆきます。

 

*純正に2点支持フォークだとシンクロスリーブが傾いたままシフトで押す傾向にあり、その結果シフトが重い、ひどい場合はシンクロスリーブの欠けに発展します。又傾いたスリーブを無理やり押し続けるとシフトフォークの爪が以上摩耗をしてしまいます。71Aについてこのシフトフォークの爪厚みが3mmしかなくなるほど摩耗した例をたくさん見ました。

シフトフォーク・ロッドを組んで内部の組み付けは終了です。

ケース側の加工に入ります。

シフトブロックの所も71Aの泣き所でオイル漏れ多発カ所です。40年前の当時は機械もんはオイルがにじむくらいが普通でむしろそれで各部の潤滑を補っていた感が有ります。オイルが1滴もにじまない現代の機械と比べてしまうとやはりかなり無理があるところではあります。シフトコントロールの中立を決めるアウトリガーのような腕をスプリングプランジャーで押してコントロールしているのですが外付けの様そうです。そしてシフトロッドが出入りする部分も外付けの感じです。このあとの71Bからこれらの機構はどちらも内装されるように設計変更されました。

シフトロッドが出入りするところのオイルシールは2重に改造します。画像にないですがシフトコントロールプランジャーのオイルシールも2重に改造しています。

フロント側のケースも組み付けて回転試験しています。フロントベルハウジングが71A3分割のS20エンジン用であることの最大の特徴です。通常はS20エンジンのハコスカGTRやZ432はこのミッションしかありえません。

*私はこの3分割ポルシェミッションをワーナー化するバージョンを整えています。ワーナー化するためにはどうしてもドナーが必要でその残存数は限られています。ご興味のある方はお早めに。

*ミッションケースをケンメリGTRの2分割や、復刻版の2分割を使えばミッションの選択は大きく広がります。私が「S20エンジンの魔法の箒」と言っているやり方ですね。


2021年11月23日

71A3分割 スペシャルγーw35

sr311用としてスペシャルγーwを作ります。

これはかなり手間がかかる改造ですが71Aミッションとしてはパーツもなく癖の多いポルシェシンクロからワーナーシンクロ化するこの選択が今後のミッション改善に非常に有効です。ただこの改造にネックとなるのはワーナー用のハブスリーブの調達でいまではめったに入手できなくなりました。

 どうしてもこれをやる理由はSR311では71Bや71Cにコンバートするのが非常に難しいからです。S20エンジン車も同じですがミッションケースが限定されてしまうので自由が利かないんです。

ドレンボルトを見ると金属片がついています。かなり大きな塊でギヤ系の欠けた破片のように見えます。

ケースからミッションギヤアッシーを取り出してみると久々にこの状態を見ました。

大事なM38ナットを跡形もなくなるくらい叩き潰しています。ここから見ると、このミッションは一度以上オーバーホールされており、しかも手荒く修理された感じです。このM38ナットタガネ攻撃はいにしえの迷信のようなものでこのようにするとこのナットが緩まないのでやっておけというほとんど”おまじない”のような作業で、事実このミッションはこのナットがすでにゆるゆるに緩んでいます。

このミッションは1速に入ったままでほかへシフトできないとのことでしたがここを見て原因がわかります。シフトフォークのスプリングピンが抜けてどっかに行ってしまっていますので、これではシフトレバーをいくら動かしてもシフトロッドが空振りするだけです。ので2速に入れることができない、3-4速は2重かみ合い防止が利いてシフトはできない、5速、バックはうまくしたらシフトできたかもしれませんが2重かみ合いとなるのでギヤがロックしてしまうでしょう。

ポルシェしんくろはお決まりのがりがりで金属地肌が出てしまっています。

 

 

こんな金属片も出てきました。

 

後から何の破片かわかったのですが、スプリングワッシャーが折れた破片でした。

ここもダメです。5速のシンクロ舳先の裏側がギタギタになっています。

当たったものの正体はここのようで5速のカウンターギヤの側面がこれまたギタギタ。これはM38ナットが大きく緩んだときにおこる現象です。しかし今回ばらしたときはそこまで緩んでいなかったのでもっと以前になったのかもしれません。

 

やれやれ、ほとんど全滅状態かな・・・・

SR311 71A3分割ミッションのワーナー化

 SR311系は車体フレームが有るのでミッションの搭載にあまり自由度がありません。71Cをフロントベル換えで乗せるやり方もあるのですが、ミッションマウントの加工が必要ですし、71Bにするとさらに難しくなります。

 そこでこのミッションをワーナー化する意味が出てくるのですが、71A3分割ミッションはギヤ比が240クロスとほとんど同じギヤ比ですのでこれをワーナー化すると一般乗りに最適なクロスミッションとなるのです。71A3分割なんておんぼろと言わないでください、71系ミッションのご先祖さんですべての元となった仕様なんです。

画像はどちらも3速ギヤですが右が今までのポルシェシンクロで、左がこれから改造するワーナーシンクロの姿となります。

これを1速、2速、3速、4速=メインインプットまですべて改造いたします。

そして1速、2速をメインシャフトに組みました。

この中で最も大きな違いは1速と2速の間にある丸い形のものでこれがスリーブですがこれが前後に動いてギヤチェンジとなるのですが、ここがポルシェシンクロとは全く異なります。当然内部にあるハブも異なります。

小技としてはこのようなワッシャーに71Bではオイル溝が追加になっているのですが71Aにはまだ加工されていませんので追加工します。センターに加工していないところが味噌ですね。この面で数千回転で回るギヤのスラストを受けるようになります。

こんなところもお決まりのことなんですが、バックギヤが大抵右側のように変形してしまっている(バックにガシャンと無理に入れた時にこのように変形していきます)

 左側が健全なバックギヤでどちらも中古ですが扱い方でこんなにも差がでますというサンプルです。

71系の最大の弱点であるメインシャフトの固定ナットM38の緩み防止を私の考え出した技「5速裏スラストニードルベアリングの構築」で対策してゆきます。事実、今回のミッションもナットを叩き潰すぐらい無駄なゆるみ止め対策をしていたにも関わらず結局緩んで5速メインギヤとカウンタギヤが接触するという事態になっていますので、実際的に有効な対策と思います。付随効果でやはり破損事故の多い5速ギヤのスラスト面の焼き付き現象を回避できるようになります。

 M38ナットとしては1体加締めナットに変更してそこに私の考え出したサイドロック方式で確実に固定するとともに、溝加締めも併用してゆるみを完全に防ぎます。ロックボルトはネジロックで固めた後周囲を加締めポンチで固定しています。

ギヤ部を組み付けました。

これが71A3分割に入っていると見破れる人は少ないでしょう。

ギヤ精度

 1ST  2ND  3RD      5TH

エンドプレイ

0.10 0.10 0.14 ーーー 0.05

バックラッシュ

0.06 0.08 0.08 ーーー 0.06

全部そろっていて安定した値だと思います。

特に全体的にクリアランスが少な目になっていることが特徴で、71Aは大抵その傾向にあります。

 

 

1速ー2速シフトフォークはオプションの3点支持フォークを指定されましたので交換して行きます。これも71Aの大きな欠陥でシフトフォークの設計が悪くポルシェシンクロの悪さに繋がっています。

 

これが通常の71Aのシフトフォークですが爪のスライドガイドが2点しかありません。しかも180度よりも狭い角度での配置ですのでこれで丸いスリーブを平行に押せと言っても無理が大いにあります。


シフト系が組みつきました。

ケース側のオーバーホールです。

SR311のこのリヤエクステは分解時気を付けないととんでもないことになる部分があります。そこにはまるとリヤエクステがオシャカ(使えないものになること)になります。

 またSR311系のシフトプランジャー(左側にある2本のピン)にはオイルシールが設定されていませんので、当然オイルダダ洩れとなりリヤエクステ周りがオイルとホコリで真っ黒になります。

右側のようにオーリングを取り付ける溝加工をします

そしてオーリングを取り付けます。

これでも少しは漏れてきますがないよりは全く違います。このオーリングを2重にするという改造もすることがあります。


シフトリンケージにあるオーリングももちろん交換です。前後2本あります。

リヤエクステンションのストライキングレバーが前後する穴ですがここもオイル漏れの頻発カ所ですので、これまた私の考えた技、オイルシールの2重化で対処します。

ケースに組んで回転試験機で試験しています。やはり71A系は回転抵抗が少ないですね。ギヤ幅が狭いし軽い、ベアリングも小さく軽いからだと思います。ちなみにベアリングは当時物はオープンベアリング(玉にカバーが無い)でしたが、71Cを含めて現代はシールドベアリング(玉にゴムや金属カバーがある)に変更して行きますが、シールドにも種類がありフルシールドを使うと回転抵抗になりますのであまり良くないと思いますので、私はセミシールドを使います。

 

回転試験で2000rpmで1時間ほど回しましたがシフト、音、振動、オイル漏れなど問題ないです。完成です。