S20用71A3分割 γスペシャルミッション γ11~γ13

 

Z432やハコスカGTRなどのS20エンジン車は例外(ケンメリGTR2分割71B)を除きミッションの選択肢はこのS20フロントベルハウジング付き71A3分割しか選択肢がありません。

今回3分割ミッションの弱点を克服すべくこのγシリーズを製作しました。

・全ベアリングセミシールドベアリングに交換

・1-4速サーボシンクロリング&ブレーキバンド新品交換

・5速裏スラストニードルベアリング仕様に改造

・M38ナットシングルカシメ仕様に改造&サイドロックボルト加工追加

・1-2速&3-4速シンクロスリーブWPC処理

・1-2速&3-4速シフトフォークを2点支持から3点支持仕様に改造 (フォーク残数限りがあります)

・リヤエクステンションシフトリンケージフルオーバーホール

以上のスペシャル加工(内容詳細はこちら)含んでミッション本体一式の価格は

488000円+送料3000円(シフトレバー含まずミッションのみ)

S20ミッション下取り有の場合はご相談となります。 

 

 

2016年6月21日

S20用71A3分 γ11

 

西の方からNさんが早速この71A3分割のスペシャル改善版 γシリーズをオーダーくださいました。わざわざ遠方から持参してくださいました。

 

早速分解してチェックに入ります。

分割のところに接着剤がはみ出ていることや、叩いた跡があることなどからこのミッションが以前分解された履歴を持つことが分かります。

フロントベル内はこのように油が3mmくらい堆積していて相当オイル漏れしている感じですが、感じ的にクランクオイルシールからの漏れのように見えます。

ケースから取り出しましたがそこまで特に異常はなかったです。良くなくなっているスラストシムもちゃんとありました。

 

ただ、やっぱりこのナットはタガネ攻撃?

今まで見た中の90%がこうなっていましたがどういうことなんでしょう?

 

この状態から見ると緩める時にタガネで叩いたようなので、通常のレンチでは緩まなかったので仕方なくかもしれません。私はある方法でこれを正しく緩める方法を考え出してありますのでこんなことは絶対にしません。またこの画像からM38緩み止め加締めワッシャーが付いていないことに気が付きます。手に入らなかったのかな?

シフトフォークは例外的に摩耗が少なく、交換されてから間もない感じです。3-4速も同じくきれいでした。

5速シンクロ これもかなり新しいようです。問題なさそうです。

メインインプット ここも悪くないです。

3速 悪くないです

バックアイドラー 相当叩かれていますがまだ程度は良いほう。これが完全な平面になっているものもあります。

1速 完全に壊れているレベル。これではシンクロ作用はできません。

1-2速スリーブ  内周3か所の溝の左側のスプラインが3か所とも飛んでいることが分かります。

 

これではさぞかしシフトしずらかったでしょう。

2速シンクロ これも壊れているレベル

 

全体的印象では、各部品は比較的新し目でしっかりしていますが、1-2速だけはやけにダメージが大きいのはなぜでしょう。

 

ベアリングも特にガタが大きいということはなかったです。

 

分解チェックはここまで。これからケースの清掃ですがこれだけひどいとそうとう手間がかかりそうです。

ベアリング類

一速ギヤですがブレーキバンドが両方向あるタイプです。

見たとこなんともないようですが

このとおりブレーキバンドが真ん中からポッキリ

シンクロリングもこのとおり摩耗が激しいです。左が新品で表面に凸凹を付けるようになにか溶射してあるようです。

ブレーキバンドもこの通り摩耗しています。

右が新品

下は折れたやつ

1-2速の部品たち

 

ポルシェはシンクロをパックしてしまえば部品点数が少なくあっさりしています。

真ん中の3角形がハブでこの3か所の角でエンジン出力を受け止めます。

こんな風に組んでいきます。

1-2速を組みました

メインインプットシャフト

ここもシンクロリング・シンクロブレーキ・ベアリングを新品に交換してゆきます。

前側ギヤ部を組みました。

 

スリーブはWPC品

後ろ側5速のこの部分は焼き付きやすいですが、ここはこのように研磨面どうしがまともに接触してスラストを受けています。

 

ここが焼き付くとどうなるかの例がこちらで見れます。

私の作る71Aスペシャルはここをこのようなスラストニードルベアリングを構成することで摩耗や焼き付きを減らす改善をしています。

そしてここも大きく違うところですが最初に出てきた画像と比べるとわかると思いますが、まずナットがシングルになっていて、そこに私の編み出した緩み止めの技サイドロックボルト加工を施し、さらにシャフト側の溝に加締めて完全に固定します。

そして3-4速シフトフォークはこの3点支持フォークに交換。通常は1-2速のみなんですが今回は部品があったのでここも交換しました。

そして1-2速フォーク、この角度から見ると3点支持であることがよくわかりますし、前の方の通常の2点支持よりいかに安定して押せるかが想像できると思います。

 

ただこのフォークはもちろん新品は出ないので私の手持ちの数に限りがあります。それで通常は1-2速のみこれに交換しています。

内部部品について組み付け完了です。

ケースの準備に取り掛かるのですが、まだ分解してなかったリヤエクステンションのこの部分に何やら変なものがあります。

ありゃー、なんだこれ。完全に錆びた粉で埋まっております。しかもプランジャーピンはオーリングが入っていません。

 

これでは外部から水が入り放題でこうなってしまったんだと思います。

ここはいつも完全に分解します。

この時点であるジグが無いとかなり無理な作業を強いられます。私は純正特殊工具などというものは特別なものだとは思っていませんし、その作業をするうえで何が一番のポイントかをよく観察して自分でその工具を作ることで無理しないで作業できるようにしています。そもそも私のギヤ全体の保持ジグは取扱説明書とは上下が逆に反転されています。取扱説明書の絵はミッションが上下逆に固定するよう指示して描かれていますが、それよりは上下そのままのほうが自然ですよね。

シフトリンケージ周りを完全に分解してきれいにしてゆきます。一番右側のパーツはなんとなくクリオネのような恰好をしていますが、この色が元色だと思うのでさび止めをこのまま塗らないでおきます。

こんな感じで組みなおしていきます。問題のプランジャーの錆びは左側1-2速用のプランジャーですが錆びるものは内部のスプリングです。それ以外は錆びないものですのであれだけのさびが出たとするとスプリングがやせ細っていると思いますがとりあえず手持ちがないしスプリング力も問題なさそうなので今回はそのままとします。ここは後からいくらでも交換できるところなので、こういうところはあまり突っ込まないで進みます。オーナー様で問題が感じられるようでしたらスプリング手に入れて交換してください。もちろんお申し付けいただければ私の方でも交換できますが。

そしてシフト関係でこれなんですが見る人がみればすぐわかる部分と思いますがほとんどの個体がこのようになっています。こうなるとシフトレバーの左右の振りが大きくなる一因となります。今回は固めの鉄板のスペーサーを入れてある程度補修しましたが本当に直すなら両面研磨してその分焼き入れスペーサーを入れるような対策となります。それにはそれなりの費用が掛かりますので、あとから出てくる回転試験でそれほど違和感がなかったので今回はこれで行きます。

画像がかなり飛びますが組み付け完了です。

これはハコスカ用のシフトリンク位置ですね。

S20エンジン用3分割 γ11スペシャルミッションです。


S2071A3分割 γ12スペシャル

 

ほとんど同時にご注文くださった大阪のTさん用にこれを造ります。

 

γ10 一号機は鳥取ですでに動き出しています。

 

センターアダプタープレート部

ベアリングは特殊クリアランスセミシールド

バックアイドラーギヤは手直ししました。

ここの皿ボルトをヘキサに交換してゆきます。

今までに一度分解され再利用されていることが分かります。

一速ギヤ

片側のみブレーキバンドタイプ

シンクロへ先は良好

シンクロはダメレベルでしたので

新品交換

2速のシンクロも同じく

ハブとスリーブ スリーブはWPC処理

 

ハブの3か所のツノはスリーブが引っかからないように丁寧に面取りします。この金属はすごく硬いです。鋳鋼?

3速も同じく

 

シンクロ舳先は少し丸まりがあり手直ししました。

フロント側組みました。

リヤ側に行って5速シンクロ

これは交換されていたようですごく良いです。

5速は今新品がすごく高価ですので、重要なことです。念のため反転して組みます。

5速組みました

今回の肝となる5速裏スラストニードル構成をします。通常は細い針のようなものがついたベアリングは無く、金属面どうしで擦れ合っているところですが、そのためすごく焼き付きが発生します。

ここにベアリングを入れるのですからその効果は十分に想像できますよね。

そしてこの大きなM38ネットの緩み止めに私の考え出した技 サイドロックボルトを構成します。

 

そもそも通常の71A3分割はこのナットがダブルナットで締め込みに苦労しますが、私はシングルを探し出してきます。

そしてさらにダメ押しの周り止め加締め。

これで緩みは撲滅できるはずです。

 

ちなみに、71AはM38ナットを締め込みすぎるとロックするので締め合わせ調整が必要という噂を聞くことがありますが、各パーツがしっかりしていればそんなことはなく、ただひたすら占めこむだけです。各パーツのストッパー受け面がめり込んだりしたものを直さないでそのまま絞めるとロックします。

 

シフトフォーク関連の画像を忘れましたが上のγ11と同じく1-2速 3-4速ともに3点支持に改造しています。このフォーク私の手持ちにもすでに限りが出てきています。また何とか集めねば。

 

精度測定

         1ST  2ND  3RD      5TH

バックラッシュ 0.07 0.06 0.10 --- 0.12

エンドプレイ  0.07 0.21 0.30 --- 0.05

 

バックラッシュは抜群に良好です。

3速のエンドプレイが少し大きめですが問題ないと思います。

 

リヤエクステンション

 

ここもパーツがいっぱいあるので面倒なところです。完全分解してゆきます。

オイル漏れで悩む部分ですがオーリングを通常の物(上側)から少し太いもの(下側)に交換します。

 

何回も述べていますがこの部分を流動潤滑でやる必要はないと思います。(この部分にはミッションケース横に連絡通路がありミッションオイルが入ってくる)

グリース封入のリジット潤滑でよいのではと思いますが、何か理由があるのかもしれません。

画像が飛んでいますがこの部分も完成しました。

完成です

 

この前に簡易試験機

e-zanaraizerで2000rpmまで上げて一時間回しその時の油温上昇・電気負荷・オイル漏れ・異音・シフト感・シンクロの効き具合・スピードメーターギヤ・バックランプスイッチをチェックしました。

リヤはフランジタイプ

これ製造廃止だと思いますけど、復刻新品(笑い)

いえいえ、ある部品を流用していますよ。


2016年7月29日

S20用71A3分割 γ13スペシャル

 

これもまたほとんど同じ時期にγスペシャルを東京のWさんからオーダーいただきました。ミッション現物をご自分で取り外して持参していただきましたが、お会いしてみるとイベントで何回かお合いして見覚えのある人でした。まだお若いですがハコスカGTRをお持ちで熱心な日産旧車ユーザーです。

 

2速のアップダウンともにギヤ鳴きするということで不調のようです。早速分解しますが大きな破損は見られないようです。

 

でもやっぱりこの部分はこのようになっています。今回はタガネ攻撃がすさまじい状態になっています。どこかで分解されたことは間違いないようです。

だんだん分解してゆきますが1-2速フォークの固定ノックピン穴はこんなに長穴に。

3-4速をみると原因がなんとなく見えてくるんですがこんなです。