看板車のS30Zをリフレッシュする その1  その2  その3  その4  その5

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ヘッドの加工でバルブ回りの段付き修正が終わったのでインテークマニフォールドの加工に入ります。画像でケガいているようにインマニの入り口径はノーマルヘッドのポート径より全周片側3mmぐらい大きいのでこのままでは吸入抵抗になります。エキゾースト側も同じ状況ですがこちらは吹き出し側なので直接的抵抗にはなりません。

左側ケガキに沿って拡大しています。今回はセミチューンなので奥までは加工しないで、段付きがなだらかになる範囲まで削ります。右が加工前の状態。

 これを奥まで同じ径で加工すればもっと吸入効率が良くなるのですが、奥の方はヘッドの冷却水通路に近くなるので水穴貫通事故の恐れがかなりの確率で有りますので、すごく慎重にやることで時間のかかるさらに高度なチューン内容となります。

大体加工が完了です。

バルブ側の段付きはバルブシート加工前に軽く追加工済みです。

この後圧縮比を計算して仕上げメンケンに出しますが、今回は2mmすでにメンケンされたヘッドだったので表面を仕上げメンケンするのみです。

圧縮比は10.5~10.8を狙うつもりです。

メンケンができるまで車体サスペンションの組み替えに入ります。上が今までついていたバリアブルのスプリングで、私も何回か記事に書きましたがこのスプリングは三半規管の弱い人は船酔いします。取り外したショックもこの汎用品なので余計に乗り味が悪くなります。

 今回はノーマルスプリング+黄色のビルシュタインショックをエナペタルでチューニングしたショックに換えていきます。私は車高調整サスをあまり必要性を感じないので自分のサーキット用を含めて、いさぎよく1発決めのサス仕様にします。S30Z系に限って言えばエナペタルのチューニング仕様を含めてスプリングの仕様も把握できてきました。

今までついていたサスアッパーですが

それをお皿代わりにしてバウムクーヘンを食べようとしているところではありません。底付バンプストッパー用のウレタンゴムが変質したもので、ウレタンは長い時間経つとこのように加水分解してボロボロになってしまいます。これは特にひどいのでウレタンの材質に問題が有ったのかもしれません。

リヤ側交換終了。

リヤ側のアッパーマウントはS31用の厚みの厚いものが付いていました。

フロント側も交換完了です。

フロント側はアッパーマウントは前期タイプの厚みの薄いものが付いていました。車高調整のためだと思います。

下回り繫がりでドライブシャフトのオーバーホールです。長年のグリースと砂の塊りが固まって堆積しています。このドライブシャフトは片フランジで世代的にはS130の世代用ですがデフ側のフランジをドライブシャフト側のフランジと一体化しています。

 現在この片フランジ式はあまり人気が無く両フランジがありがたがられているようですが、私はこちらの片フランジの方が軽量化、単純化を考えると”えらい”と思います。これが敬遠される理由はデフへの固定ボルトの締め付けが十字ジャーナルの隙間からやるのがめんどくさいからなのかな。でもその代わりにフランジ結合のボルトナット4本の締め付けが省略できているんですがね。性能的には差が無いし、むしろ走りの面では軽量になるので改善されると思います。この後DRの時代から十字ジャーナルも敬遠されて、トリボードタイプに変遷してゆきました。私はこのトリボード等速ジョイント式も中間シャフトが細く針金細工のようで貧弱に見えるので嫌いです。伝達効率性能は上がるんでしょうがね。

分解してゆきますがグリースと砂の練ったのでギタギタになっていますが、かなり長い間オーバーホールがしてない感じです。

十字ジャーナルの摩耗的には終期状態で全くプリロードが消えてフランジがスコンとお辞儀する状態です。十字ジャーナルに細かな周期的な傷が有ります。

引き続きプロペラシャフトもオーバーホールします。 

 プロペラシャフトはS30Z専用部品となりますのでこの部品はS30Zを走る状態にしておくためには非常に重要な部品です。対してドライブシャフトは他の車種(ハコスカやセドリックやローレル)も兼用なので球数がかなりあります。

スプライン差し込みタイプのミッション結合となります。S30Zの後期がこれで、前期はフランジ結合タイプでした。フランジ結合タイプは中間に伸縮スライドが有るのでそこが摩耗すると振動や異音が出てくるのは自明の理ですので、スプライン差し込みタイプの方がよろしいです。私はミッション側まで含めてここを変更する改善を何例かやりました。

このプロペラシャフトの十字ジャーナルはとんでもないことになっていました。どうしてこうなったのかはわかりませんが変な摩耗ですがこんなのは初めて見ました。この時点でオーバーホールしていてよかったと思います。このまま走っていたらジャーナルが焼き付いてペラシャ脱落なんてことになりかねません。ペラシャがフロント側で脱落するとクラッチ切っても後ろでデフと繋がっているので、車が動いている限りプロペラシャフトは車体の下で暴れまわります。

 この変な摩耗のペラシャですが走行に違和感が有るかというと私には違和感が感じられませんでした。十字ジャーナルベアリングは4個のベアリングがあるので補完し合ってある程度までこらえるのだと思いますが、その陰でじわじわと摩耗は進んでいるのですね。

 

ドライブシャフト

バラバラにして各パーツごとに色塗りして軸受け部をリフィール仕上げしてゆきます。

先ずはボールスライド部をボールジョイント用高性能グリースで組んでゴムブーツで蔽い、金属バンドで加締め固定しています。ゴムブーツはすごく丈夫で肉厚なのでめったに穴があいたり切れることは有りませんが、その代わり組み付けはかなり苦労します。このブーツが破損していると、ここは車検時の下回り検査項目に入っているので必ずチェックされますので、車検には通りません。

次に各フランジと差し込みスライドを組み立てていきます。十字ジャーナルの丸ベアリングがきれいに見えていると気持ち良いですので、車検などの時に下回りパスタ塗っときますよなんて言われてパスタスプレーでどこもかしこも真っ黒になって帰ってきたら悲しいですので、私は車検出すとき下回りパスタ塗っときますと言われてもきっぱりとやらなくて良いですと言います。ただし下回りで錆びて困る部分は気が付いた時に自分で刷毛塗したりしています。

 

こちらはプロペラシャフトの各パーツです。

プロペラシャフトにはこのような分解組み立て式のものと、十字ジャーナルが加締めで固定されて分解できない非分解式とあります。非分解式は修理ができないので使い捨て消耗部品となります。

組み立てました。

この状態ならいろいろメンテ交換が楽にやり易い部分が有りますのでこの時にやってしまっておきます。

ステアリングダンパーブッシュ ウレタン製で新品に交換します。ここが劣化するとハンドルがシャキッとなりません。前期式と後期式でパーツは異なります。

エンジンが付いている状態でも無理すれば何とか交換できますが、エンジン無ければもっとずっと楽にできます。

コンプレッションロッドダンパー交換

ここが劣化するとタイヤがふらふらと変な動きとなります。ピロボールに換える人も多いですが、ピロにすると動きはしっかりとなりますが確実に振動が増してきますので用途によって選択することが必要です。

スタビリンク

ここは動きが激しいので消耗部品となります。

定期交換必要です。消耗するとコーナーの入り口でハンドリングがリニアーで無くなります。

ステアリングダンパーゴム

これも経年劣化しています。

リヤ側に飛んでリヤサスペンションロアアームの内側の付け根にあるダンパーゴムです。

S30Zの場合驚くことにリヤサスはこのダンパーゴムに固定されており、サスの上下の動きはゴムの内部のねじれで吸収しています。前後方向の動きもこのゴムの耳の部分で押えているだけです。

エンジンについてはヘッドメンケンから戻ってくるまで(なかなか戻ってこないんだけど)今回のスペシャルメニュー クランクラダーの取り付け を進めてゆきます。詳細はこちら

 

 クランクラダーはL型エンジンの長いクランクの振動を抑える事を目標とする開発部品ですが、それは何もフルチューンのエンジンの全回運転にだけ必要なものではなく、一般ドライブで気持ちよくクルージングする上で微振動低減や回転立ち上がりの滑らかさに貢献するパーツであると思います。

クランクラダーフルセットを組み込んでいます。

昨今エンジンのチューニングで最も時間のかかるのは機械加工では無いでしょうか。ヘッドメンケンで1か月待ちは当然の感じで、仕方なくずっと待っているのが現状なのですが、ヘッドメンケンは1度で終わらない場合が多々あります。

 そこで今回は自前でヘッドメンケンをやりましょうということで、いろいろ機械加工をお願いしている地元静岡の精密機械加工屋さんに相談を持ち掛け、やっていただきました。工業製品を加工している精密機械加工屋さんはいつもこなしている機械加工の精度が自動車部品より1桁上回るものなので、ものすごく精密に加工してくださいます。測定もきめ細かくやってくれるのでヘッドがどのように反っているか、治具で締めこむとどうなるか、平行度重視なのか平面度かいろいろとヘッドの実際を考えさせられることとなりましたが良い経験でした。

 

カム側も細かく測定してくれました。

専用治具も準備してくれたので、次回からはもっと手順が簡単になります。

ヘッド容積は43ccとなりました。

排気量から計算すると1.2mmヘッドガスケットで圧縮比は10.6となります。

 

バルブすり合わせ

まずは粗目で加工


 

バルブフェイス

一見きれいに見えますが刃物で金属表面を引きちぎったツールマークが有るのが分かります。研磨加工では無いのでどうしてもこうなります。

 

バルブラップ加工 荒加工


バルブシート側もきれいにすり合わせが出来ました。すり合わせ面と機械加工面との隙間を見るとベストの位置を均一に実現しており、カメアリさんのこの辺の加工技術はますます高度に熟練してきているなと感心いたします。

カムの組み付けに入ります。

今回はストリートチューンですのでカメアリの73度Aというタイプのカムを組みます。

ちょっと寄り道して画像のオイル供給の丸い穴の左上に小さな穴が開いていることにきずきました。なんでしょう。

その穴はここに出口が開いています。どうやらカムチェーンにオイルを供給する穴の様です。カムチェーンはすごく丈夫でトラブルをあまり聞かないのでこのオイル穴の径のチューニングもありかもしれません。この穴を小さくすれば、カムシャフト側の油圧を上げることができます。

それでもカムのプロフィールはかなり過激です。三角でなく台形になっています。つまり急激に開いて最大高さをできるだけキープして急激に閉じるという設定で、バルブが開いている時間を長くすることを狙っています。この仕様を完全に機能させるためにはバルブをカムに追従させる強烈なバルブスプリング力が必須となります。

スライドカムスプロケットを取り付けました。

バーニヤタイプとなっており純正の3ポイント調整スプロケから、ほぼ無限にカムタイミングが調整できるようになる優れものです。8カ所の固定ネジが緩むとエンジン全損となりますが。これが緩んだという噂は聞いたことが無いので大丈夫です。

 スプロケ固定ネジは強化タイプを使用

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