2023年12月10日

S20エンジン用 71A γ46-W

その1

その2 はこちら

 

Z432をほとんど独力で復活したというオーナー様からオーダーいただきました。S20エンジン用ミッションで71Aミッションをワーナー化するバージョンです。S20エンジン用としては復刻ケンメリ2分割フロントベルを使う方式が増えていますが、このオーナー様は純正仕様重視の方ですので71Aのままでシンクロをポルシェからワーナーに変換するγバージョンの選択です。

先ずはワーナー化のドナーとなるパーツを準備いたしますが、調べたところ1速ギヤがこんな状態でスラスト受け面がバリバリにかじっています。

従いましてその受け面側のワーナー方式シンクロスリーブもこの状態で面に凹みができていますので、これをドナーとして使う事ができない状態です。別途再度探し出す必要が有ります。

ミッションの元となるS20エンジン用5速ミッションをばらしてゆきます。

71A5速 クロスミッションです。(240クロスと同じギヤ比です)

M38ナット部はいままで何度か見たことのあるタガネ攻撃がされています。今までに1回以上は手が入っている状態だと思います。ナットは緩んではいなかったです。

それにしてもひどいやり口です、見たところが汚いです。やろうとしている理由と目的が良くわからないです。これが緩み止めになるのだろうか・・・?

シンクロはもちろんすべてポルシェシンクロですが、すでに2速は限界の状態になっています。

ケースのセンターブロックを見ています。71Aは3分割となっています。

この部分ですがひどくたたかれて変形しています。なぜここを叩いたかは理解できません。組付けで押し込むときに叩いたのかな・・・?

リヤエクステンションのこのナットなのですが仮止めなのかこの普通のナットで締めています。

通常はこのキャッスルナットで締めてから割ピンで回り止めするのですが、このミッションでは軸のほうに穴が無いのでこのキャッスルナットでは固定ができないです。この軸の場合は回り止め付きナットが必要になります。

リヤエクステンションです。

ロケートピンの位置でケース側が粉々に亀裂が入っています。これは初めて見ました。どうするとこんな壊れ方をするんだろう?ケースがずれたまま思いっきり叩いたとか・・・・

シフトブロックの部分です。コントロールピンが押した痕ができていますが程度としては普通の状態だと思います。このまま使う事になりますが、問題ないと思います。

このパーツについてはオーナー様が純正新品を持ってきてくれたのですが、開いてみるとこのように変な模様になっています。どうも錆が発生しているようで、この後艶消し黒で塗装しました。

シフトブロックを固定しているロケートカラーですがこのように段付き摩耗していますがほとんどの個体がこのようになっています。このパーツは新品は入手が困難ですので、大抵はこのまま再利用するしかないです。

だんだん周辺パーツから修理してゆきます。

今や貴重なS20エンジン用純正71Aフロントベルハウジング 実勢価格で15万円ぐらいすると思います。実際はめったに売りには出てこないけど、

 

 

S20エンジン用特有のエンジンとの接続プレートとの結合用ボルトが折れこんでいます。

S20エンジン用のバックプレートはL型の様なペラペラの鉄板製ではなく厚みが5mmぐらいもある頑丈なものとなっています。

失敗するとまずいことになるのでビビりながら抜き取り加工しました。でも最悪失敗しても私はこのベルハウジングを数個は在庫していますの何とか代替はできるにはできるので思い切って行きます。

5速-バックのシフトフォークですが、何らかのもので削られてしまっています。位置的にバックアイドラー具やと干渉したものと思われます。シフトフォークそのものは修正すれば何とか使えると思います。

1速ギヤですがこの面が何かがこすれたように光っている部分が有ります。通常はこれは有りません。

5速-バックのハブですがスラスト面がかじりかけています。

このメインインプットのシンクロ舳先の裏も何かがこすれてピカピカに光っています。ここがこすれるものとして考えられるのはカウンターの4速ギヤという事になります。

そのカウンターギヤですがやはりこすれて光っています。

分解してゆく時点でカウンターギヤのこの部分に入っているべき2mm厚のスペーサーが入っていなかったことに気付きました。そんなことは無いだろうと何回も方々探したのですが結局出てきませんでした。 これは手持ちのシムで何とかするしかなさそうです。

センタープレートの固定皿ボルトですが、ガリガリになっています。

どうするとここまでになるんだろう。

こんな風になっていると緩めるときにズル剥けてしまう場合が有ります。

バックギヤについては左が今までついていたもので、右側はオーナー様が準備してくれたものです。今回のオーナー様はかなりの量の純正パーツを一緒に送ってくれています。

バックギヤのギヤ高さがだいぶ高いので少し心配ですが純正ですので大丈夫なんだと思います。

ベアリングを交換してセットプレートを取り付け、ヘキサボルトで固定しました。

1速をワーナーシンクロ化しました。

裏側はこのようです。通常の油溝に加えて2か所溝を追加工しています。

以下、同じように2速、3速とワーナー化してゆきます。

メインシャフトの2速スラスト面はこのようにかじっていますので、ハンドワークで修正します。本当は交換したいところですが、すでに新品は出ないはずですので仕方なくこれで行きます。

ハンドワークしました。

潤滑を改善するために放射線状の研磨目を残すようにしています。

ここが最も問題ですがドナーの1速側のハブがこのようにかじりきっています。本来は交換が望ましいですがそうするためにはドナーをもう1基用意する必要が有り、そこまでは難しいので追加工にトライします。

これが修正した状態です。

カジリ部を削り取って仕上げています。そのためこの部分のクリアランス(1速ギヤのエンドプレイ)が0.3ほど広がってしまいますが、実用上は問題ないと思います。ただ耐久性としてまたカジリが出ないかどうかは保証が難しいです。

1-2ハブで問題が出たため一時棚上げとなりましたので、こちらのオーナー様から支給された新品リヤエクステについて手を入れます。この新品というのは初めて見ました。外観はもちろんきれいですが鈍いアルミ地肌色でこれが本当の色なんですね。

鋳物の性質でしょうか、内径仕上げ面が右上はギリのところにありますが、問題はないと思います。

コントロールピンについて試しにこれまた支給されたこの黒いピンを入れようとしたのですが全く入りません。

さらに試しに今まで使用していたピンを入れてみるとすんなり入ります。ピン径を測ると黒いほうはφ9.03 純正品はφ8.93でしたので、黒いのは0.1大きいことになります。ちなみに使用済みのリヤエクステにこの黒いピンを入れるとしっくり入りました。という事はこの黒いピンは使用しているリヤエクステから採寸して製作しているのかもしれません。

仕方なく旧品をダブルオーリング加工をします。

左が純正品、右がダブルオーリング加工品

オーリングは今度は右が純正品で左が私が探し出したオーリングですが、左のほうがわずかに(0.2ぐらい)線形が太いです。こちらを使用します。

で、取り付けたのですがどうもピンの出寸が少ないように見えます。

このようにリヤエクステの寸法を測りますと新旧で1.5mm異なっており、新が座面までの距離が1.5mm長いのでこのようになっていることがわかりました。これですとコントロールピンの働きが少しスポイルされてしまう事になります。わずかの事のように感じるかもしれませんがシフトブロックアームで拡大されるのでシフトノブのところではかなり感触に差が出てきます。かんたんにいうとシフトノブの左右ストロークで宙ぶらりんの状態が増してきます。

改善するためにはリヤエクステを加工するのが良いのかもしれませんが、座面加工なので私のところでは加工が困難ですので外注することになります。

代替としてはコントロールピンのドライバーで指しているところを1.5mm削る方法が有ります。強度は問題なさそうです。

三つ目の選択はこのままシフトの中立のぶらつきは無視する(71bはみんなそうです)

の3選択となります。

もう一つ問題が見つかりました。

このコントロールピン穴なんですが片側は何とかピンが取り付けできたのですがもう片側がピンが入らず、よく見たらこんな段付きができています。よーく見たら取り付けできたほうにも同じような薄い段付きが見られました。

 私は最初の画像のように黒いピンはそーっと覗くところまでしか入れていないのですが、以前にあの黒いピンをかなり無理やり打ち込んだ痕なのではないかと想像します。

対処としてはエアーグラインダーで磨き修正という事になるかもしれませんがオイル漏れ対策の肝となるところですのでどうでしょうか。慎重に行くにはリーマ掛けですがこのサイズのリーマを持っていません(購入は可能)し穴径が拡大します。でもそうすると黒いほうのピンが使えるかもしれないけど。どうするか思案です。

 

 

オーナー様とのご相談でこの部分は基本に沿って直したいという事で、ハンドワークではなく機械加工でなおしたいということになり、リーマ工具を調達することになりました。

このミッションのしゅうりについて、リーマ工具が入手できるまでしばらく保留といたします。

 

続く S20エンジン用 71A γ46-W その2