デフ,修理,R200,R180,R192,オーバーホール,チューニング,オーバーホール、LSD組み込み,OSスーパーロック,ニスモ,スバル,バックラッシュ調整,ピニオン調整,プリロード調整,LSDイニシャル

R200デフ  その1   その2   その3  その4

                   (このページ)


2021年8月28日

R20 R200デフ スーパーロック

 30年間お持ちでその間ほとんど大きな手入れはしていないというS30Zのオーナー様から、ここで駆動系一式メンテナンスしたいというオーダーです。

 今現在はR200デフなので先ずはR200を外段取りで準備します。ギヤ比はご希望で4.1です。

4.1ギヤ比のピニオンとリングギヤを準備します。

 この後ピニオンを組み込んでテーパーベアリングを打ち込みなおしピニオンプリロードを規定値でセットします。右上に見えるものがセッティング用ディスタンスピースとなります。この時点ではピニオンの歯当たりは類推でしかセットできないので今までの経験でおおよそを選定してセットします。最後まで組んで歯当たりがNGの時は全部やり直しですが、デフのセットはこの繰り返しです。今回はピニオンナット2600Kg/cmトルク締め込みで14Kgのプリロードでセットしています。

LSDは街乗り仕様で引きずりの無いものにしたいというご希望で、私のお勧めでOS技研スーパーロックとします。スパーロックはUターンなどでも引きずりは少なく、必要な時は強力なLSD効果を出してくれる独特のイニシャル負荷機構のものです。

スパーロックにリングギヤを組み込み。もちろんサイドベアリングも新品で交換しています。

LSDをケースに組み込んでいきます。R200は両サイドに打ち込む大きなシムリングでクリアランスを調整します。

 まずはサイドベアリングのプリロードを出します。ピニオンプリにどれくらい上乗せしたかを測定してプリを出してゆきます。今回はシムリング厚トータル4.45mmで7Kgのプリロードでセットしています。

 プリロードが出たら今度はバックラッシュを取ってゆきます。バックラッシュは大きい方から追い込んでゆき左右のシムリングのやり取りで調整します。

今回は0.11~0.14のバックラッシュでセットしました。

歯当たりですが正転側です。良い感じで出ていると思います。

逆転側もほぼ中央当たりで良いです。

完成に近づいています。

LSDはOS技研のスーパーロック

デフカバーも付けてフランジ類も仮に取り付けています。仮というのはコンパニオンフランジとサイドフランジは強化タイプに変更するので、部品待ちまでこの状態で仕上げておきます。

引き続き、駆動系がらみでドライブシャフトのオーバーホール品もオーダーされたので、今回はまとめてできるだけやっています。なぜまとめてやるかというと塗装がネックになるからです。1品ずつやっていると塗装はその都度塗料を作らなければなりませんし、塗料も使い残しが出たりして無駄になります。私は機構部のオーバーホールがメインの仕事ですから外観については本来は触らないのですが、ある程度なら手を入れたりします。

これぐらい集めて分解すると大抵このように消耗の激しいものが見られます。向こうに見えるベアリングアウターはもう穴が開いてしまっています。ニードルベアリングは粉々になってしまったのか1本も残っていません。

ボールスライド・十字ジョイント・ゴムブーツをすべて交換してバンドも締めなおしています。グリースは入れ替え充填していきます。ボールスライドは長い間メンテナンスしていないと大抵ボールがスライド面に食い込んで凸凹になり、スライドの動きが引っ掛かりが出来てきます。

 ほかに必要な部品も集めています。強化デフマウントやデフメンバーブッシュ・リヤサスインナーブッシュなど。これらはデフ交換の際に同じ手順の中で交換できるので効率的です。

2022年1月18日

R23 R200デフ オーバーホール

71Bコンパチミッションを採用していただいたオーナー様から引き続きこのR200デフのオーバーホールを依頼されました。刻印されている部品番号からするとDR30に使われている純正デフとなります。

消耗はかなり進んでいる感じで、フロントコンパニオンを回すとほぼイニシャルトルクは有りません。

ギヤ歯は 35/8と刻印されており、ギヤ比としては4.3となるDR純正の仕様です。

このへんからもあまりメンテナンスはされていない様子が感じられます。

LSDは日産純正LSD

このリングギヤボルトがなかなか緩まずに苦戦いたしましたが、何とか取り外していきます。

カムの角度はDR30の90度でマイルドな設定です。

イニシャルトルクはトルクレンチで測るまでもなく全く”ゼロ”で、これではLSDが付いていないのと変わらないでしょう。

LSDのプレート構成はこのように5枚構成で一番外側に丸いスペーサーが入れられていて、プレートの爪の組方もすごくマイルドな構成です。R200は6枚構成で有る場合が多いのですがこのような仕様も存在していたかもしれません。

ピニオンは4ピニオン仕様ですので、高強度仕様です。

リングギヤ

年式相応の減り方と見ました。これが摩耗が大きければオーバーホールしても良い結果は得られません。

反対側

大きな破綻は無いようです。

ピニオン側

こちらの消耗度合いも年式相応の感じです。

ただここのピニオンリヤベアリングの受けが少しかじり気味になっていますが、これはあまりよろしくありません。

 長い間ピニオンベアリングを交換していないで来たため、プリロードが無くなってベアリングスペーサー側でスラストが当たり始めた結果ではないかと思います。これが酷くなればしまいには焼き付くことでしょう。

ピニオンリヤベアリングのアウターハウジングはこんな変な摩耗痕が出ていました。摩耗が進んでくるとこのような回り方のクセのようなものが出てきて、それはデフのウォンウォンというようなうなり音の原因になっていると思います。

ピニオンフロントベアリングのハウジングにも同じような摩耗痕が出ています。

 

油まみれ、ホコリまみれだったデフケースをある程度きれいにしてゆきます。一般車体整備では錆びない様にとして床下回りを真っ黒にパスタ塗装をしたりしますが旧車にこれをやると台無しになります。なんせ油と砂ホコリの上から塗料で固めることになるからです。

ピニオンのセットに入っていますがピニオンナットの締め付けにはこんなに巨大なトルクレンチで締め付けトルクを管理増します。締め付けトルクは30kG/m=3000kg/cmとなりますので4000kGまで測れるトルクレンチが必要となります。

そしてピニオンプリロードを測定します。

私はこの自作の測定器で管理しています。

今回は18.5kg/cmでセットしました。

この荷重でピニオンテーパーベアリングを常に荷重がかかった状態=プリロード状態にしておくことでベアリングのガタが出ないようにします。ちなみにこの時ベアリングのローラーは目には見えないですがそれぞれほんのわずかに楕円に変形した状態で回っていることになります。

リングギヤのボルト穴 M12ピッチ1.25をタップでさらってボルト締め付けが均一になるようにします。

ボルトはできる限り新品に交換して行きます。通常の使用状態なら再使用は不可能ではないと思いますが、以前にメンテ履歴がある場合は適正トルク無視してめいっぱい締めている場合があり、その場合は通常トルクで再締め付けするとネジ切れてしまいます。

 ボルトは固く締まっていれば固いだけエライというのは都市伝説で、そこまで締めるとボルトは内部ですでに塑性破壊が進んでしまっています。

LSDの組み付けに入っています。

プレートは今までは5枚構成(私は見たことないタイプ)でイニシャルトルクは”ゼロ”の状態でしたのでLSDは形だけ付いてるとなっていた。ただ街中を走るだけなら気にならないことだったでしょう。

 

先ずはここは通常の6枚構成に戻します。スプリングプレートが3枚、フリクションプレートが3枚です。

一番左側は私が準備している特性イニシャル調整プレートで焼き入れ材で硬く製作しています。板厚が何種類かあります。

 イニシャルは16kgから5kgまで調整できますが、街乗りなら5kgでokです。サーキットなら16kgまで高くしますが、そうすると街中のUターンでもタイヤを引きずるようになります。

今回の構成で6.5kg(650kg・cm)となっていますが、これで少し走るとすぐにイニシャルはなじんで落ちてきて5kgぐらいで落ち着くと思います。

次にサイドベアリングのプリロードとバックラッシュ調整

プリロードは4.4kgとなりました。

バックラッシュは0.11から0.14です。

 

調整には画像のようなスペーサーを使いますがこれくらいの数量をいつも準備してどんな場合でもセッティングできるようにしています。

ここまでとんとん拍子で進んできて自分も熟練してきたなーと思ったのもつかの間、歯当たりを確認すると

「 あーあ”ーアーー」

ダメです、完全にダメです。トー側にあたりが寄りすぎです。ベアリングを新品に交換するとピニオンがリングギヤ側にほんの少しなんですが近寄る傾向になるのですが、ここまで激しく出るとは思いまひんでした。

ピニオンまですべてばらしてピニオンの裏にあるシムの厚みを調整(薄く)することになります。

そしてなんとかここまで調整しました。

これならほぼ歯当たりは良好です。

逆転側もまずまずです。

組付けが完了して回転試験に入っています。

120%インバーターで増速して、電流値は190となりいつもと同じ値です。

上から見ると刻印がはっきりと見れ、DR30のデフであることが明確です。

フロントのオイルシールの下側ですが1時間ぶん回し他ぐらいではオイルのシミさえも出てきません。

サイドのフランジ部にも同じくまったく変化はありません。もっともこれくらいでオイル漏れするようでは問題外ですが。

リヤのデフカバー部も異常は見られません。

完成です。

   デフ,修理,R200,R180,R192,オーバーホール,チューニング,オーバーホール、LSD組み込み,OSスーパーロック,ニスモ,スバル,バックラッシュ調整,ピニオン調整,プリロード調整,LSDイニシャル

R200デフ  その1   その2   その3  その4

                   (このページ)