旧車のレストアは愉し

いままで縁あってその修復に携わらせていただいたいろいろな車達の記録のページです。

 日産旧車が多いです。

 

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2020年7月6日

親子のブルーバード510

静岡県内からブルーバード510の修理を依頼されました。

親子でご来訪ですが、この方の場合最初は息子さんが乗っていて、息子さんが乗り換えるということになり、捨てるのはもったいないからお父さんが引き継ぐというパターンです。お父さんはもともとからの旧車乗り、お子さんもその影響を受けて若くして旧車乗りということだと思います。

 

510としては一桁 5ナンバーの由緒正しき車体です。手前側にオーナー様がコツコツと部品を集めて持ち込んでいます。

エンジン一式

アルミラジエター

等々

先ずはエンジン付属のキャブが変なのでチェックします。加速ポンプが全く動きません。

 

このようにフルスロットルにしても加速ポンプが全く動かないし、バタフライも全開できずに8割ぐらいで突き当たっています。どうも加速ポンプの組み立てを間違えています。この部分はソレックスでも機種により差がある様です。このキャブはソレックス44

 

このようにやり直しました。スペーサーとスプリングの取り付け位置が逆転しています。そもそも加速ポンプの中のダイヤフラムとスプリングの関係が逆に組んでありました。


念のため、キャブ内部も確認してゆきます。

大抵古くなるとこのニードルバルブがだめになりますが、このくらいならまだ行けそうです。

 

フロート室の底面にはチョーク系統用ジェットが付いています。今は取り外しています。

 

左が付いていたチョーク系統ジェット#160、右はソレックスビジェのエアージェット、どちらも同じものの様です。


よーく見たら燃料配管もクラックが入っています。

今回はバキューム進角ディストリビューターにするのでマニフォールドのこの位置にバキューム配管を加工します。

1/8管用タップを立ててからこのニップルを取り付けます。

ディストリビューターはマグネットセンサー式のフルトラ用新品を使います。もちろんバキュームアドバンサーが付いています。

エンジン

念のためここのミッションメインインプットが刺さるところのパイロットブシュを交換します。ここの摩耗はミッションにひどく悪影響が有ります。

取り外したものはこのように損傷が見られます。

これは摩耗したというよりはミッション搭載時に無理やり押し込んでメインインプットをぶち当てた跡だと思います。ミッションは無理やり押し込むのではなく、エンジンに対して何回も軸だしして、取り付け面を平行にするように調整すれば自分から吸い込まれるようにスコンと入ります。

エンジンバックプレートを取り付け、かつてミッションドッキングの後にこれを入れ忘れたことに気が付いて全部やり直しということが有りました。

 L4のフライホイールボルトは5本ですね。

L6は6本

FJ20は8本

となります。

超軽量フライホイールを取り付けます。重さは純正10kGに対して4.5kGと半分以下。

フライホイールボルトもきれいにして再使用経済優先、ネジ部にロックタイトで接着回り止めします。

フラホ取り付け

トルクは1500kg/cmで管理

強化クラッチディスク取り付け

位置決めはプラスチックのヤワな治具でなく鉄でできたしっかりしたものを使います。この時点でずれているとミッションがどうやっても入らなくなります。

強化クラッチカバー、最近の強化クラッチカバーは設計が良くなったのか踏力があまり重くなりすぎないようになっています。

スポーツクラッチ系取り付け完了です。

純正と比較してこんなにも大きさが違うので驚きです。

エンジンは準備完了な感じです。

エンジンルームに移って燃料フィルターがこんなことに。嫌な予感がする。

ブレーキマスター下が液漏れで真っ黒になっている。特にこの下にはステアリングギヤボックスとステアリングリンケージが有るので、その上にブレーキ液ガシャモレ・・・。

床下にはいろんな液漏れの跡が点在している。

照らしているところがブレーキ液

その右側はエンジンオイルパンからエンジンオイル

後方はミッションオイル

という感じである。

ミッションは真っ黒なオイルでどろどろ

ここまですごいのは初めてです。ミッションは初期4速

こちらが5速の状態

4速とは意外と取り付けに異なる部分が有ります。

オーナー様から支給された5速ミッション一式パーツで組んだ状態です。

何と5速は4速より5cmほどミッションメンバーの位置が後ろに下がっています。

ミッションメンバーも付属していたのですが右側のがそうですがゴム部分がよれよれで亀裂もあり破断寸前です。左側の互換性のあるほとんど同じ仕様のマウントゴムを探し出しましたのでこれで交換してゆきます。

シフトレバーの突き出し位置が限りなく前寄りでしかも上側に持ち上がりすぎです。

この状態で5速に入れるとフロアー鉄板にゴンッと干渉します。ここにゴムブーツを入れるのに隙間が少ないので取りつくかどうか難しいところです。どうしてもだめならフロアー開口部を切るという手段もあります。

結局干渉部を2cmほど切り取りました。

トンネルゴムは劣化してドロドロになっていたので

このほとんど似ているものを探し出してきて取り付けます。

 

シフトレバーがグニャグニャなので取り外してみたところ支点のブッシュがゴムホースみたいなもので代用されているので、右側の透明樹脂の正規のつば付きブッシュに交換してゆきます。左右2個付きます。

シフト部は何とか形になりました。

支給されたクラッチオペレートはサビサビでピストン固着でNG

今までついていたものは非自動調整の初期タイプでサイズが合わずこれも流用不可

 

結局、手持ち在庫の中古オペレートシリンダーを探し出してきて交換しました。

エンジン回り

支給されたエンジンマウントで取り付けていますがダメでした。

こんなに出っ張るので間違いなくボンネット締まらないです。

厚みがこんなに違うのでエンジンが高くなりすぎボンネットを突き上げてしまいます。

このタイランド製エンジンマウントは620 LD28と書いてありますのでおそらくP510には不適合なんだと思います。パーフェクトにまずいです。

この後すぐにオーナー様が純正のエンジンマウントを入手して持ってきてくれました。

左からヘタリが激しい今までのマウント

中、純正エンジンマウント

右、タイランド製マウント

 

すぐに純正マウントで交換しました。

オルタネーター

かなり時代を感じさせる代物ですが、今回は経済優先でそのまま流用ですが、回転させてみるとベアリングがざわついていて近いうちには壊れそうな感じです。

 

これはオーバーホールするにしても他のに交換するにしても後からでも簡単に取り外しできるので今回は行けるところまで行きます。

このオルタネーターステーも取り付け穴サイズが異なります。これは追加工で拡大して解決。

もう一点このエンジンについているウォーターポンプはファンカップリングが一体となっており分解できません。これではラジエターはともかく電動ファンはとても取り付けできそうもありません。通常の分解できるタイプのウォーターポンプに丸ごと交換するしかなさそうです。

ウォーターポンプはこのタイプへ交換

事なきを得た

吸気、排気系のセットにかかります。

マニフォールドは見てすぐわかるほどぎりぎりまで過激に拡大されています。L型としては最大限に近く広げられている感じです。

 

インレット側

L型としてはこれまた大きなバルブのように見えます。

 

エグゾースト側バルブも大きいように見えます。それに何といってもマニフォールドが驚異的に大きいように見えます。


マニフォールドパッキンを取り付けてタコアシ支給品をセット

この当時のタコアシは鉄製だと思うのですがすごく軽くさびないもので、何か特殊な合金パイプを使っているんだと思います。作りもしっかりしているようです。取り付け精度もぴったしだし、マニフォールド面も取り付け穴も良いです。

まま干渉が有りがちなこの部分も5mmでギリかわしています。干渉した場合はどうするかというと、たいていは叩いてへこます処理が待っています。

タコアシに続くマフラーもオーナーが持ち込んできたものとなるが、そのマフラーの新旧比較。

上側が今までのマフラーで径が2/3くらい細いがそれでも底付して半円になるくらいつぶれている。

 

下が新たに取り付けるマフラーパイプだが今までよりだいぶ太い。

第一段の膨張管の太鼓がちょうどミッションメンバーのところで張り付いている。メンバーに直当たりしているがここは太鼓をなくしてストレート管にするしか干渉を逃れる手はなさそうなので、まずはこのまま行く。

そして少しわかりにくいがリヤ側はリヤトレーリングアームメンバーの壁の中の穴を潜り抜けているのであるが排気管との隙間は10mmあるかないかのギリギリなのでここもメンバーの穴を拡大加工する以外に逃げては無いのでこのまま行く。

 

以上のことによりエンジン稼働時は間違いなくマフラーは車体と干渉してゴトゴト音がするが、オーナーのこだわりの部分なのでこのまま行くことにする。

テールエンドは水平2本だしとなるがやはり車体側の切り抜き形状が干渉するのでこの部部については車体を切り取ることで処理した。

インレットマニフォールドも問題なく取り付けました。これもキャブΦ50でも取りつけれそうなくらい内径が大きくできていますが、今回はソレックス44が持ち込まれています。

燃料系はここにセットしている。

右の丸いのがニスモポンプ

手前がレギュレーター 0.29kGにセット・残りはリターンホースでガソリンタンクへ戻している。

経路としてはガソリンタンク→燃料フィルター→ガソリンポンプ→レギュレーター→キャブ

となる。

510の場合ガソリンタンクがリヤトランク内にあり、室内と直通しているのでリヤトランクへの燃ポンの取り付けは避けた。

キャブへのガソリン配管

循環式を推奨している記事も多いが自分は通常ならこの行き止まり方式がシンプルで好みである。