2019年1月16日

御同類で助け合いレストア

どうしても困ったという古くからのお仲間のこのバイツーがSOSをだしてきましたので、助け合いレストアステイとなりました。現象的には燃調がひどく濃い感じで排気ガスは真っ黒な煤のようなものが出ています。走行は出来ているのですがガレージで排ガス中毒になりそうとのことでこれは何とかせなならん状態です。

エンジンはこんな感じでL28のセミチューンといったところでしょうか、キャブはウェーバー40、少しハイカム、少しメンケンかな、あるいはメンケン無しかも、他は普通ですがきれいに整備されています。

先ずはすぐにこの燃圧レギュレーターを取り付けますが、機械式燃料ポンプは0.4Kgくらいの燃圧の場合が多いのですがウェーバーの推奨燃圧は0.29kgですのでレギュレーターなしでは高すぎるのです。そうするとフロートや燃料ストップバルブがしっかりしている内は0.4kgでも問題ないのですが古くなってくるとこの圧力では少しずつの漏れなどを誘発しやすいですので、レギュレーターで0.29kgに減圧します。圧力が低くなったからと言って燃料が不足するようになるわけではなく、また燃圧が高い方がエンジンが高出力になるなんてことは全くありません。

点火時期をチェックしますがこのバイツーのディストリビューターの調整は画像のように目いっぱい遅れ側にセットされていてこれ以上動かしようが有りませんし、そもそもクランクプーリーの上死点位置が普通とは異なるところにあり(というかディストリビューターが普通とは異なるというべきか)通常の方法では点火タイミングが取れない感じで何か特殊な方法を取っているようで調整出来ませんでした。ただ、エンジンの回転は出来ているのでおおよそは点火タイミングはあっているのでしょう。ここについてはエンジンを最初からチェックしないと解明できないのでこのまま行くしかなさそうです。タイミングチェーンが異常な音を出しているのでタイミング系が普通ではないのかもしれません。

 今のところは燃調の問題が主眼なのでここは触れないで進めるしかありません。

尋常ではない燃調の濃さなので先ずはキャブをチェックしてゆきます。

取り外しました。取り外し調整が比較的簡単なのがスポーツキャブの良いところですが、余計な補器がほとんど付いていないのでいつもの手順で取り外してゆきます。

アッパーカバーを外しました。ここでのチェックは左のフロートがパンクしていないか、振ってみれば内部で水音がするのでわかります。それからガソリンストップバルブがちゃんと作動できているか。この中でメインジェット系やアイドルジェット系は3年細前にoh済みということなので特にチェックする必要は無いと判断しました。ジェット類も当然ですが当たり前の番手が入っていました。

メイン #135

エアー #220

アイドル #55

ポンプ  #40

エアーが少し大きすぎかなと思いますが薄いわけではないので除外です。

 

異常に濃いのでこのチョーク系をチェックします。ほとんどのキャブはチョークは使わない無用のものとなっていながら整備はしていない場合が多いですが、ここが誤作動(チョークバルブが不完全に閉まらなくなる)すると当然燃調はひどく濃くなります。

 チョークバルブはこのスプリングで押さえられていますが、長年放りっぱなしのキャブではこのスプリングが錆び切ってへにゃへにゃになっている場合があります。

スプリングの下にはこのようなバルブが入っています。溝の部分にカムギヤ状のものが噛み合い、チョークレバーを操作すると上下するようになっていますが、上がった時は当然めいっぱい濃いガソリンが排出されます。このバルブの底面がチョーク系のガソリンの蓋、ストップバルブの役目をしておりここに異物が挟まったり、バルブが固着したりするとしっかりと閉まらなくなります。

右側のがカムギヤで、チョークレバーの裏側で動いているのがこれです。

 

今回6か所のチョークバルブのうちの1か所が左側の画像の短い方のスプリングで代用されていましたが、作動的には問題ないように見えましたが一応正規品に交換しました。

キャブ3個ともに同じようにチェックしてゆきます。前の画像でスロットルレバーが違うものが付いていましたが、これも正規ウェーバー用に交換しました。

全体的にはバタフライやスロットルシャフトの状態は悪くなかったです。

 スロットルレバー取り付け時これらのキャブの弱点であるシャフトへのスロットルレバーの食い込み=ナットを締め付けすぎて起こる事を防ぐための工夫をして取り付けていきます。レバーが食い込むとボディーとこするようになりスロットルが戻り不良になる場合があり、アイドル戻りが不安定になったりします。

エアークリーナーボックスを取り付けました。このボックスは優れものでファンネルを付けた状態でセットできるので同調テスターがそのまま使えます。箱に当たってダメかなと思いましたがぎりぎりテスターをファンネルに押し付けることができるサイズです。良く考えられています。

 リンケージについては全て固定を緩めて完全フリーの状態にしてからセッティングしてゆきますが、

手順としてはスロットルレバーへのコネクティングロッドを3本とも外して各キャブスロットルレバーだけの状態にしてからアイドリングを決めます。アイドルアジャストを目いっぱい緩めてストッパーに当たらない状態まで緩めてからほんの少し触るところでセットします。3か所ともセットしたらぎりぎりアイドリングできる状態=多分500~600rpmで3か所の当たりを取る(モグラたたきと同じ要領です。正確にはテスターを使います)をしてから、アイドルミクスチャースクリューをセットに移りますが、アイドルミクスチャートは最初は規定量=1回転と1/2回転でセットしてそこから半周ずつ前後させて回転が高くなるところの中央値でセットします。戻し回転数にはあまりこだわらずエンジンの回転音に集中して調整しますが、最初の設定でアイドル回転を目いっぱい下げることが重要でそうしないとアイドルミクスチャーの変化を察知しずらいです。

この後コネクティングロッドをスロットルレバーに繋ぎますが、3か所のうちまず一か所例えば1番側を固定してしまいます。  (補足:たいていのリンケージではコネクティングシャフトの戻しスプリングが付いていますが、セットし直しの時は戻しスプリングは開放してしまいます。そして今回の場合1番のロッドを繫いだあと軽く戻しスプリングが効く程度にセットしておき、戻りの調子を見ながら後からまた調整します。ものすごく戻しスプリングを強く利かしている場合もありますがそれは良くないことで、どこかの動きが悪いからそうなるのであって本来は戻しスプリングなしでもキャブに内蔵するスプリングで十分戻るはずで、強くしすぎるとシャフトのねじれや軸受け摩耗などいろんなところに悪影響が出てきます。)   

 1番のロッドを固定したらアクセルを少し押した状態=スロットルレバーのアイドルアジャストがストッパーから少しでも離れた状態 を針金などでアクセルリンクを引っぱるなどの工夫して造りだしますが回転数は1500rpmぐらいでOKです。あんまりエンジン回転を高くするとエンジン音がうるさいですからね。そしてシンクロテスタを使って1番の基準の負圧値を拾い、2番、3番が同じ負圧値になる様コネクティングロッドの押し量を調整します。これで同調が取れます。

この状態でプラグを見ますが5番プラグがこのように真っ白になりましたがこれでは焼けすぎですね。調整以前は5番プラグが煤で真っ黒の状態だったので調整で良い方向に来ているようです。ジェット的にはアイドルを#55を#50に落としただけなのでここまでの変化は出ないはずですので何か他の部分の変更が影響していると思います。

 少し焼けすぎなのでこの後プラグは6番に変更しました。キャブについてはこれで何回かチェックを繰り返して問題が出ないか、つまり朝一の始動だったり、信号待ちの後のスタートだったり、通常の走行状態でのシフトチェンジだったり、走行後のエンジン停止からすぐの再始動だったり、つまりさりげない日常でのふれあいが大切です。


S30Zの時計修理

キャブがひと段落したのでもう一つのご要望、不動時計の修理にかかりますが、時計はコンソール外して取り外す人もいますが大がかりになるので私はグローブボックスからアクセスして取り外しますがそれでも室内はこのようにものすごいことになってしまいます。後期はバンド止めタイプなので時計の下側のバンドの端にある+ネジを1個外し、カプラーを外し時計を後ろ側に押し込んでからグローブボックス側に移動させれば引っ張り出せます。前期は裏側にステーがあるので同じく止めねじを外せば良いです。同じ要領でメーターは3個ともに取り出すことができます。

 

取り外しましたがこのバイツーは最後期型なのでこのようなクォーツの3針式で時間表示がクロームに光るバーインデックスでカレンダー付きの豪華仕様となっています。

分解しましたがどうもクォーツ回路がだめの様でモーターは動くには動くがギヤがひくひくして回転できない状態で、これはよくある症状です。

電気回路部を外してチェックしましたがやはりだめののようです。同じS30系でもこの最後期の時計ではクォーツ回路(青い丸筒のコンデンサーの上側にある楕円柱がクォーツが入っています)と現代のと比べるとすごく大きいけどICチップでできていますがこんなところでも産業の進歩と時代の流れを感じます。

 

S30Zの時計の種類については こちら で見ることができます。

今回は私の手持ちの同じ種類の時計をリプレースして納めました。しばらく様子を見ましたがこの時計は恐ろしく精度が良くほとんど時間が狂いません。


 

さてもう一度キャブに戻って、プラグは6番でもかなり焼け気味(薄い)なのでメインジェットを#135から#140に替えエアージェットも#220を#200に換えました状態がこれです。思えば最初のチェックの時ガスが濃いということを前提にしたので#135はめいっぱい薄いのでこれ以上下げようが無いなと考えたのですが、ここに来てなんと今度は濃い方に調整してもまだ薄いくらいです。なんか変なのですが確かに最初はテールパイプから真っ黒い煤と墨汁のような液体が出ていたんですけど・・・・?。

 メインジェット#140に濃くしてもまだプラグの状態はあまり変化ないのですがエンジンのふけ上りはすごく良いと感じました。調子いい時はエンジン回転の上がり方、鋭さ、音、加速感、滑らかさ、さらにエンジン回転の下がり方もきれいに同調していると感じる瞬間が有ります。人間までも同調してしまい、アクセルが自分が踏んだのではないがごときに、床に吸い込まれる錯覚を覚えるときがあるのです。(注:実際にバタフライが吸気圧で負けて勝手に開いている時もありご注意!)こんなときリヤから巻き込まれてきた排気ガスのにおいが少し花火などの火薬が爆発した時のようなにおいがするときが有り、自分はこの状態になってきたらだいたい調子が出てきたなと考えています。

 メインジェット#145も試しましたがアクセルのつながりが重くなったように感じたので#140にもう一度戻しました。この状態でもプラグはやけ気味ですからプラグを6番から7番にするべきかもしれません。