S20エンジンご用達、R192デフのオーバーホール

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2024年3月12日

R192デフ R38

ハコスカGTR用で岐阜のオーナー様からオーダーいただきました。

 ハコスカ用独特の大きなアルフィンデフカバーが付いています。

R192はこの角度から見るとやはり横幅がありますね。

リングギヤにはこのような手書きのマークがあります。D刻印に続きC147B15 と読めます。

歯数を数えたらリングギヤ 40歯 ピニオンギヤ

9歯でしたのでギヤ比は4.444という事になります。

バックラッシュは0.2くらいで少し大きいですが、それよりもばらつきが大きいのが気になります。図るたびに変化してしまい、値が判断できないです。

正転側刃当たり

当たりはまあまあですが、形が少し変です。

ストレートの線が出ていますが、本来はピーナッツを細長くしたような形になるはずです。

位置によってこのように差が有り、その程度が大きいです。

バック側は完全にトー側に寄っていて、すでに場外になっています。

LSDを取り出しました。

これから分解してゆきます。

ピニオンのプリロードは完全に無くなっており、この測定ゲージがスコンと下に垂れ下がってしまいます。つまりピニオンのベアリングがガタガタで位置が定まらないので、先ほどのバックラッシュも刃当たりもばらついてしまっており、正確な判断はできない状態です。

ピニオンを外した。

ピニオンリヤのテーパーベアリングはテーパーコロに回転筋がたくさん入っている。

恒例のベアリングレース

テーパーベアリングリヤ レースこれだと横スジが一杯見えるが、程度としてはそんなに悪くないレベルだが、再使用はありえない。

テーパーベアリングフロント

横スジは少ないように見えるがクレーターの様なものが沢山ある。これもNG

LSDのイニシャル測定

測定で4.5Kgと出ているがこれは使用済みのR192では良いほうの値で有る。

LSDを分解した。

標準的な構成であることがわかる。

プレートはかなりカジリ傷が目立つ。8枚のうちまともなものは3枚というところか。

R192のプレートは絶滅しているのでこの中で何とかやりくりするしかない。

 

 予算が許せば〇〇技研のLSDが新品で購入できるので、それも一つの解決策ではある。

ピニオンの組付けに入った。

ピニオンフロント。リヤベアリングともに新品にして、分解したときの刃当たりの状況やピニオンプリの状況を考慮して、使用するシムを選択(自分はある程度の狙い値表を作り続けている)してまずは仮組している。実際はこれ一発で決まることは先ず無い。

 ピニオンプリについてはこの時点で試行錯誤して17Kgというプリロード(ベアリングにわずかに与圧がかかっている状態)を得た。コンパニオンフランジに取り付けた測定治具が水平のままとどまっている。この治具の腕に手前に見えるドーナッツ状の重りをぶら下げてもプリロードと釣り合い腕はまだ下がらないで持ちこたえる。

刃当たりについてはすべて組み込まないと結果がわからない。

続いてLSDですが、傷んでいるプレートについては左側の状態から右側のようにハンドワークで修正している。特に外周部がカジリ気味なので補修した。

 このLSDのイニシャルは4.5Kgとなっていたが使用済みのR192としてはイニシャルが高い。

 プレートを調べてみると4×4の8枚構成でそのすべてが2.00mmの板厚で、通常のR192の純正板厚1.70mmに対して厚くなっており何らかのチューニングとなっているようだ。まずは今までどうりの設定で組んでみた。

 

その結果イニシャルは7Kgも出ている。(オーバーホールしてオイルをきれいにしたLSDはトルクが高く出る傾向にある。これで使用してオイルにつかると7割ぐらいに下がるのが通例です)

 この値は街乗りにしては高い値で、その結果がLSDプレート類の損傷に繋がっているような気がする。

スポーツ用としては良いチューニングだが、街乗りとなると耐久性やLSD引きずりの心配があると思う。

そこで4枚中の1枚のプレートを手持ちの純正プレートの1.65mmに左右それぞれ変更してみることにした。

結果は今度はイニシャルが下がりすぎて3Kgを割るところまで下がってしまった。これでも走行に支障は無いし、LSD引きずりは発生しない状態ではある。

が、しかしあまりにも低すぎていざというときにも(歩道に乗り上げて段差で亀の子になったときとか)

脱出できない事態になりそうでやはりまずい。

結局この虎の子のニスモ純正新品の1.85板厚の在庫を使って調整することにした。左右セット交換です。

これで4Kgのイニシャルとなったのでこれで良しとします。街乗りではこれで良い値だと思います。

 

これでLSDとしては完成とします。サイドベアリングを打ち換えておきます。

LSDにリングギヤを取り付けて

サイドフランジのベアリングレースも交換していよいよシム調整するための試組付けです。

サイドフランジのシムを調整してサイドベアリングのプリロードが出るまでシム調整をします。

プリロードが出たらバックラッシュ調整をします。

バックラッシュが出ていない場合は、サイドフランジシムの板厚総和は変えないでその中で左右のシムをやり取りしてバックラッシュを出してゆきます。

そしてこの場合は刃当たりが内側(トー側)に寄り気味でNG判断です。

逆転側は悪くは有りませんが、やはりトー側寄りです。

いつものようにまた全バラしてピニオン裏のシムを調整してゆきます。

だいぶ良くなりましたがまだトー寄りと思います。

3回目 これなら良い状態だと思います。

バック側はかなりトー寄りになりましたが、正転側を生かそうとするとこちら側は我慢するしかありません。ピニオン歯も稼働すればどんどん摩耗してゆくので仕方ないことだと思います。

この後最終仕上げのために再度全部分解するので、その時にピニオン側も観察した。ほぼ歯面の真ん中付近に歯当たりが有る。

最終仕上げの為に全部分解した。

この後シール類の組付けとねじ類のトルク締め管理をしながら組んでゆくことになる。

ピニオンを一度外しネジ部を脱脂してからネジロックをセットして例のダブルナットを2日間かけて固定しました。まず1段目の大きいほうのナットを規定トルク20Kgで締めこんで、ピニオンプリロードが14Kgあることを最終確認してそのまま一晩おいておきます。これでネジロックが固まりますので次の日に小さいほうのナットを締めて行って専用工具で締め合わせします。このようにしないと大きいほうのナットが緩んでしまう事が有りまます。専用工具も含めてこういうところがR192は気を使います。締め合わせしてピニオンプリが変化していないかを確認します。

その後フロントベアリングを打ち込みCリングで抜け止めします。

その後フロントシールを打ち込みます。

そしてフロントコンパニオンフランジを打ちこんでからこのM10ボルトにオーリングをセットして締めこみます。

次にサイドフランジカバーにサイドフランジを挿入して軸に在るCリングで抜け止めします。ここにもベアリングがあることがわかります。

サイドフランジカバーには大きくて太い専用のオーリングを溝の中に入れています。

サイドフランジにはシールを事前に組付けてあります。選択したシムを元どうり組んでサイドフランジプリロードがちゃんと出ているか確認します。そのあとリングギヤのバックラッシュ測定です。

サイドフランジプリ 2.9Kのときに

バックラッシュは 0.16~0.18

でした。

デフカバーを取り付けます。

これはオーナー様が支給してくれた巨大なアルミフィンが付いているスポーツパーツです。

内部には特徴的な金色をしたデフオイル制御板が付いています。(しかしこの時点ではわからなかったのですがこれがある不具合を起こすことになります。)

それにしてもこのデフカバーの面加工はひどいですね。一般的なフライスで普通に削ればこんなガリガリに削るほうが難しいくらいですが。

 

組付けが完了しました。

この後回転試験をするのですが思わぬ不具合が生じます。

回転試験をしている最中にこのエアブリーザーからオイルがどんどん流れ出てきてしまいました。

リングギヤは内部で後方への回転をしているのですがその回転力で押されたオイルがエアブリーザーまでせりあがっているようです。

 

回転試験をやっていなかったらデフカバーからオイル漏れしているように見えたことでしょうから今見つかってよかったです。

デフカバーをもう一度はぐって、中についているこの金色のパーツを取り外すことにします。これがリングギヤのすぐ後ろにあるのでオイルがここで上にせりあがってしまうのだと思います。

取り外したんですがここにまだこんな鋳物形状が付いています。

 

これで組んで再トライしたのですが状態は殆んど同じでした。

 

最終的にエアーブリーザーの種類を変えることで解決しました。良かった。


プロペラシャフトのオーバーホールも並行して進めて行きます。まずは分解して現状調査です。

十字ジャーナルはこのように判り易く段付き変形しています。分解する前の感触でコクコクとクリック感が出ていたので、こうなっていることは予想できていたのでやはりこの状態かと納得。

ジャーナルのスラスト方向、丸い形状の平面部にも何か変な当たりが見られます。少しカジリかけているようです。

こういうところが何かで叩かれたように変形しています。このような箇所は殆んどすべてこのようになっています。

ここも叩かれているように見えます。

想像ですが過去に一度は分解された履歴があり、その時にジャーナルのベアリング蓋を外すためにここを叩いて外したのではないかと想像します。かなり荒いやり方ですね。

ジャーナルだけでなくここもこのように叩かれたようになっています。

ここも同じです。

観察してゆくとほとんどすべての接合部分を何かで叩いて分解したりしているのではないかと思います。

(*少なくとも私がやったことではないことを証明しておかなければならないので記録しておきます)

 

 

これからこういうところをできるだけ修正して機能を保全できるところまで戻して整形してゆきます。

 

 

何とか修復して、ジャーナルは交換して組み戻しています。