S20エンジン用 71A3分割ミッションスペシャル γ26SP~28

2018年12月14日

S20エンジン用 71Aγ26スペシャル

 地元静岡でZに乗られている方が、シフトフィーリングを安定的に改善したいというご相談があり、私的にも長年考えていたある仕様を実現できるかやってみたいという思いもあり、今回パイオニアになってくださるということで進めることとなりました。

 

 通常の71Aは3分割ミッションでポルシェシンクロとなりますが、ポルシェシンクロは完調に組めばよい性能なんですがなかなか個体差や使用履歴で扱いが難しいことを時々耳にします。今回これを大幅に変更することが目標ですができるかどうかはやってみないとわからないところが有ります。

 

 画像のドナーは以前静岡県伊豆市のOさんからγ化を依頼されたときの下取りで入ってきたもので、もともと今は無きさる有名な I 自動車で組んだものだとのことでした。

 

 

 

Oさんからはシフトストロークが短く感じるということでしたが、まずはこの部分の寸法を測っていますが48mm

 

こちらが他の71Aのストロークですが48mmぐらいで同じくらいです。のでシフトリンケージ類は同じなので何か他の部分に違いがあるのかもしれません。


ギヤ部ですが見た感じでは普通そうです。

シフトフォークなどにも特に違いはありません。

M38メインナットはお決まりのタガネ攻撃がされていますが、緩みはなかったです。当時このタガネ攻撃(M38ナットを緩まないようにするおまじない。逆に言えばそれだけ緩む事例が多かったということ)が流行っていたようで今まで見た中で70%ぐらいはこんな風になっています。

5速の部分も普通です。

シフトフォークも普通の2点支持ですが、ただほとんどの中古71Aのシフトフォークは摩耗して爪の部分がすり減っている場合が多いのですがこのフォークは摩耗が少なくそれだけシフト時の遊びが少ないことはあると思います。

 

シンクロ系でシンクロCリングも普通ですがやはり摩耗が少なく鉄地肌が出ているなどということもなく摩耗が少ないと思います。

 ただシンクロスリーブの1速(または2速かわからなくなった)の画像の歯が一か所欠けていますので、ここのギヤは入りが悪かったことでしょう。この歯が欠けるのも時々見られる不具合で、シフト時シフトフォークの2点支持の爪で押されたときスリーブが傾くためで1回シフトしようとして入らずもう一度シフトしなおすと入るなどの現象はシフトフォークの中でスリーブが傾くためです。ですからゆっくりシフトすればよいかというとそうでもなく、ある程度回転上げて回してスリーブが自由に動ける状態の方が入り易かったりします。また、入らないのでそのまま強引に押し続けるとスリーブとギヤ舳先が傾いたまま当たることになりこのように破損に至ります。私はこの現象を防ぐためシフトフォークの3点支持化をオプションで設定していますが、これにすれば少なくともスリーブの欠けの防止効果があると思います。

2019年1月7日

71A3分割のワーナー化挑戦

 

ミッションケースについてきれいにしてゆきます。

お金はかかりますが見事にきれいになります。

外観的にはこの方がやった感が倍増します。とはいっても性能は中身次第ですけど。

 最初の画像から比較すると違いは歴然ですが、私はサンドブラストは使わないようにしていますが、理由はブラストメディアが中に残った場合悲惨なことになるからですが、これはサンドでは無いので最悪少量なら問題は出ない感じです。もちろんしっかりと養生して入らないようにしているのですが。

 

いろいろ工夫して左2速、右1速ともにワーナー化しました。ギヤ数を数えてみればわかりますがS20エンジン用71A5速クロスギヤ歯です。

 71Aポルシェのワーナー化はかつてはやった事例があるかもしれませんがパーツが僅少となっている現在でやるには並大抵では無かったです。いろいろな条件選定・部品探しと絶対に失敗しない集中力が必要でした。

 

と言っても本当に完全かどうかはまだこれからやらなければならに事を全部クリアーしてからの話ですがともかくは形にはできそうなところまでは来ました。

 

以前のポルシェシンクロです。いろんなパーツが複雑に組まれています。大まかにいえばドラムブレーキのサーボ機能と似ていると思います。

 

3速です。左のポルシェと比べると差は大きいです。ワーナーは舳先の前にはテーパー面があるだけのシンプルな機構でこのテーパー面積が摩擦で食いつくことでシンクロ作用を得ています。


右下がポルシェシンクロの要 ボークリング=cリングですが特殊鋼リングに特殊な摩擦材が溶射されているようで、近年その価格がうなぎのぼり中

 

左がワーナーのボークリングでまだ入手は比較的容易です。


こちらはメインインプット

 

この様に合わせてみるとぐっとメカ感が出てきますね。71Aのカウンター(下側ギヤ)は右側に伸びているスプラインがなぜか71B・71Cと比べて太くなっています。歴史的にこちらの方が古いですから当初は5速のギヤ負荷を高く想定していたか、金属材料的に弱かったかそんなところだと思います。

このために後から出てきますがある問題が起こりますが、ここは仕方ないかもしれません。

メインの1速側ワッシャーですが71Aは全くの溝無しなのでこのように溝加工してオイル供給を行います。

 

ここまで組むと71B・71Cとそん色ない景色となります。

5速は前に述べたとうりポルシェシンクロのままで組まざるを得ない状況です。理由はカウンターのスプライン軸が太く他のギヤと互換性が無いからですが、ここはまだこれからの課題となります。

 

 ただしシンクロCリングは良好なものを使い、スラストにはニードルベアリング仕様オプションで組みます。M38ナットは一体加締め仕様でさらにサイドロックボルトで緩み止め万全と思います。

ギヤ部分については組み終わりその精度は

 

    1ST  2ND  3RD   5TH

EP 0.10 0.12 0.13--0.06

BR 0.15 0.15 0.18--0.05

良好な値です。

 

 

 

シフトリンケージのアウトリガーのプッシュピンは2重Oリングを使用していますが、このアイデアは自分のではないです。オイル漏れ対策として販売もされているものですが、自分は現品追加工で作っています。

 

シフトロッド貫通穴もオイル漏れの多いところですが、この部分についても2重オーリング化しています。これは私のオリジナルのアイデアです。

ケースへの組み付けも終わり簡易試験機e-zanaraizerで回転試験していますがこの段階で問題は見られません。回転負荷も1.5Aと71Cの1.8Aに比べてもすごく少ないです。歯厚が薄いので摩擦が少ないからですね。

 

もう一つこの仕様で良い点はプロペラシャフトがフランジ結合の純正のままで行けるところです。コンパチCのα、Ωは基本的にはスプライン差し込みペラなので専用ペラの準備が必要(少しは私の在庫が有ります)です。コンパチでも71B2分割のβバージョンはフランジペラで行けます。

ここまで何とかまだ試験管レベルですが良い状態で製作できました。

 

このミッションについては最終的にはこのS30Zに取り付けてシェイクダウンテストとなります。近日中に取り付けとなりますので結果が楽しみです。

 

エンジンはきれいに組まれたS20エンジンです。

2019年1月17日

いよいよ71A3分割の中身を71Aクロスのワーナーに替えた新作のミッションを乗せ換えます。

ミッション降ろしてゆくところでこんなところも気になります。どうもプロペラシャフトの長さがアンマッチの様です。

クラッチをいつもの通りチェックしますがフライホイール・カバーともに問題ありません。クラッチ板が少し摩耗の感じでしたのでこの際新品に交換です。

 

ミッションの画像が出てきませんが乗せ換えはいつものように終了しました。ミッションの外観自体は同じなので当然ですが。

ミッション自体はサクサクと乗せ換え完了したのですがリヤサスを見るとブッシュがこんなでこのままにしておくことはできないほど変形しています。s30のこの部分のブッシュは取り付けが独特なので何の注意も払わないでそのまま組むとこうなりがちです。こうなるとリヤサスのアライメントは無茶苦茶になるし、すでにボディー受け面とリヤサスアームが金属同士直接こすれる状態でした。急遽交換となりました。

この後試走に出ましたがほぼ問題なく、シフト感は普通の71Bワーナー的というか現代のマニュアルシフト車に似た感じになりました。71A純正クロスのワーナーシンクロの完成となります。


2019年2月3日

 

ミッション取り付けで人さまには恥ずかしくて言えないようなチョンボが有りまして緊急で積載車で回収して再度ミッションを降ろすことになりました。

 

走行距離は100kM程度でしょうか、ちょうどよい機会なので新たに作った71A3分割ワーナーを内部までチェックしてみることにします。ミッションハウジングにこのようなものが見られます。ちょっと慌ててびっくりするのですがどうでしょう。

取り外して良く見ればこのように何でもありません。

 慌て見たのでどっきりしたのですが、よく考えてみればこのようなものはたくさんあります。これはケースを鋳込むときの鋳物の型側の亀裂が転写されたもので、本当は無い方が良いのですがメーカーもそこまでは管理していないようです。もちろん機能的には何ら問題はありません。


 

こういったのもそうで細かく見ればたくさんありますが問題はありません。

試しに亀裂状の模様の両サイドをこすってみるとこのように普通の鋳肌面が出てきますので、ただの模様であることが分かります。

今回は徹底的に駆動系とエンジンをチェックするためクラッチ、フライホイール、バックプレートまで外します。ミッションとエンジンの間からオイル漏れが見られるからです。

ミッション内部はこのようでオイル漏れの跡は見られませんので、やはりエンジン側をチェックしなければなりません。ミッション側がオイル漏れする箇所は71Aでは通常天狗の鼻と言われるクラッチベアリングのガイドが別ピースで取り付けられているところが多く、そこのオーリングがだめになるとオイル漏れとなり下側の丸い黒ゴムの蓋の部分にオイルが溜まるようになりますが、これには全くオイル跡はなく乾いた状態です。

バックプレートを外すとこのようでエンジンのオイルパンとの接合部に液体パッキンを塗ってあるのが気になります。また両サイドに張り出したエンジン形状の袋状になった部分にオイルが溜まっていたようでかなりオイルが溜まって見えますし、オイルはエンジンオイルだと思います。

バックプレートのエンジン面側で見るとこのようにはっきりと見て取れます。

オイルパンに塗ってあった液体パッキンを取り除いてみますとこのようです。

ミッション側はこの際だからとケースから取り出してチェックしてゆきます。大きな異変は見られないようです。

ギヤ精度

    1ST  2ND  3RD    5TH

EP 0.10 0.12 0.18---0.05

BR 0.10 0.17 0.15---0.05

 

問題の見られない値です。

 

またケースに組んで回転試験しての一連のパターンを繰り返します。

完成してジムニーの荷台に乗せて車屋さんまで来ました。

オイル漏れについてはオイルパン全周から少しずつ漏れているようですでにシルバーの液体ガスケットでほとんど全周を補修されていましたが、本来はそんなことしなくてもコルクガスケットで十分に漏れないはずなんですが、このS20についてはそこでかなり苦戦しているようです。ちゃんとするにはオイルパンをはぐってガスケットを替える必要があるでしょう。

 

 今回は一番の漏れの大もとで有りそうなクランクの最後端のベアリングキャップの取り付け合わせ目を黒い液体ガスケットでコーキングしますが、ここも本来はいったん取り外してシールをやり直すべきですが、ミッション交換からはすでにだいぶ逸脱しているのですが見過ごすわけにはいかないのでこの応急修理でオイル漏れが止まることを祈ります。

クランクパイロットベアリングも念のため交換します。

フライホイールを取り付けてトルクレンチで規定トルクで締め付けます。S20engでは本来このフライホイールボルトに板状のボルトロックが3枚付くはずですがこのエンジンでは分解したときからすでにロックプレートは取り外されており有りませんでした。ロックプレートはもちろん製廃ですので簡単には入手できないし、そもそもフライホイールチェックがミッション交換の手順からは逸脱しているのでこのままいくしかありません。L型などでは最初からロックプレートはありません。

クラッチプレートを取り付けて、この後クラッチカバーも取り付けました。

ミッションを取り付け戻しました。

マフラーを取り付けましたがこのミッションメンバーの部分で完全にマフラーはボディーと張り付いて接触しています。マフラーの位置はフロントはタコアシの眼鏡フランジで位置決めされリヤはテールエンドでゴムバンドで吊りあげられますので今回の組み合わせではどうしてもここの干渉が逃げられませんでした。もちろん取り付けボルトのガタの範囲でいろいろ調整しているのですがだめでした。 荒療治ではマフラー全体を曲げるとか、マフラーパイプの干渉部を凹ますとかありますが、お預かりしている車両でオーナー様の許可なくそんなことはできません。

そしてさらにマフラーはこの部分で鉄の端材で作ったリジッドステーにゴムホース締め付け用バンドでがっちりと固定されておりました。

 

私のところでは絶対にありえないやり方ですが、やはり勝手に変えるわけにはいかないのでこのまま行きます。くれぐれも当方のやったことでは無いので説明画像として記録しておきます。

 

これでマフラーとボディーの張り付きはさらにがっちりと固定されたわけですが下手にぐらぐらつけているよりこの方ががたつきがすくないかもしれませんか・・・・。

ともかくも何とかまた元の状態に戻ってきました。

試走に入りましたがやはり71A3分割のワーナー化は素晴らしくシフト感が素直でシフトが楽しくなります。前回は車輌により状態がいろいろ異なりますので(例えばエンジンをOHしたばかりで高回転は回せないとか、さらに旧車の場合いろいろな事情でイエローゾーンぐらい回しただけで不調になる危険性がある場合もあるのですが)私は試走の時は必要最低限のエンジン回転までしか回しません。もちろん壊れても責任は問わないからフルアクセルで確認してくれと言われればやりますんですが。

 今回は恐る恐るイエローゾーンまでは確認しました。マフラーがボディーと張り付いている割には思ったよりはひどい振動は出ませんでした。ミッション取り付直しで問題点は解消されているようです。

エンジンとしては残念ながらS20の胸のすくような回転上昇感とはなっていないようで、低速から高速までなんか不調感がありありです。キャブ調整を始めとしていろんなところのセッティングが不十分なのではないかと思います。完調のS20エンジンはもう車から降りたくないと思わせるほどの高揚感が有ります。

 

以下、オーナー様からのコメントです。

 

こんばんは

 

本日は本当にありがとうございました

 

 

 

ワーナー化については、最初乗った際は違和感がありましたが

 

(単身での違和感では無く、ポルシェからワーナーへの違和感)

 

帰りの途中からは、すでにその感覚に慣れてきましたので

 

ワーナー化の良さが、どんどん身に染みて感じられるようになり

 

本当にやって良かったと思いましたよ!

 

 

 

本当に素晴らしいものを作って頂き、感謝します!!

 

 

 

今まだ、乗れてない中での感じですが、14は全く別物ですが

 

5速へアップするときだけは、ポルシェの名残が少しある感じ?です

 

5から4へ落とす時はそんなに感じないんですけど

 

でもまぁ僅かな事ですが(笑)

 

 

 

最初は少しなじませる?ように優しくシフトしてた方が良いんでしょうか?

 

ついつい小気味良いので、シフトしてしまいたくなるのですが(笑)

 

 

 

MTオイルとか、一回は早めに交換した方が良いのでしょうか?

 

 

 

ドラシャは少し考えたのですが、やはり中期から後期はデフが

 

前期より後方にマウントされてる?のではなかったでしょうか?

 

自分の車両は内装は全て前期に交換されてる?ようですが

 

実際は中期ボディですから(笑)

 

だとすれば、後期のドラシャが長さ的に合う?のですかね??

 

まぁそもそも前期後期で長さが違うのか、シャフトの互換があるのか

 

自分は不明ですが。。

 

 

 

で、やはりバネはなんとか交換したいと思うようになってきました

 

一つクリアで、また次へとって事で(笑)

 


2019年2月10日

ハコスカGTR用 71A3分割         フルオーバーホール  γ27

ハコスカGTR用としてR192のオーバーホールに引き続き71A3分割ミッションのオーバーホールを依頼されました。ミッションを受け取りましたがかなり消耗が激しい状態です。

 

メインインプットの錆が有ります。ミッション保管の上でここは外気にさらされるので必ず対策が必要です。他の部分はほとんどが車に乗っている時と同じように外気にさらされていますが、この部分はクラッチボックスの中で保護されていますが分解するとすぐに錆が来ます。

シフトリンケージのこの部分は不足しているパーツが有ります。手元に普通この部分は残さないのでおそらくパーツ取されているのではないかと思います。

ギヤ部について取り出しています。

このミッションは日産で組んで以来一度も分解されていない感じがします。いろんなところがオリジナルのままで損傷が少ないです。内部も分解した様子が感じられません。

1速のポルシェシンクロはやはり少し金属地肌が出ています。2速も同じような状況でした。

いつものようにシンクロ関係を見直してゆきます。

これは1速ですが、シンクロCリング、ブレーキバンドは交換してゆきます。

センタープレートより前側、1速~4速まで組んだところです。

5速側はオプションのスラストニードルベアリング構築。これで5速裏の焼け(71Aではすごく多い不具合)を防止できますし、シンクロへの負担も減少します。

オプションの1-2速シフトフォークを3点支持としていて、シフトフォークの又のところにもスライド面があることが分かりますがこれにより丸いスリーブの中の爪が3点(通常の71Aは2点)となり安定してスリーブを傾けないでシフトすることができます。

 

3-4速も可能ですが構成がすごく難しいのでよほどシフト感に敏感なオーナー様以外にはやっていません。やった場合はもちろん費用アップになります。

従来からやっているストライキングロッドシールオーリングの2重化でオイル漏れに効果があり、これはオプションではなく漏れなくやっています。

さて、これが今回の目玉で初めての試みですがストライキングロッドが通るカラーにブッシュを入れ込んでいます。わかりにくいですがシルバーに光っているところが少し見えています。これによりシフトレバーのアウトリガーからのオイル漏れを軽減することを狙っています。

上の画像ではわかりにくいですが説明を続けるとこの画像となるのですがここまでくるとこの部分のオイル漏れに悩んでいる人はピンと来るはずです。

このシフトレバーが取りつくところの私的にはアウトリガーと言っている部品の固定はこの円筒状のカラーをケースに打ち込むことでやっていますがそのカラーの中間にこのオイル穴が有りましてミッションオイルが入り込むことで、このアウトリガーとカラーの間のオイル潤滑するようになっています。アウトリガーの両端とカラーの間にはオーリングが入っていてこの潤滑オイルを止めるようになっていますが、車が急加速したり、坂道を上る場合はミッションオイルが大量にリヤエンド側、つまりこの穴に流れ込み圧力が高まりオーリングを押し破ってオイル漏れします。

このカラーの中にシフトのストライキングロッドが通っているのですがこのように大きな隙間があるのでミッションオイルはこの隙間を通って先ほどオイル穴に流れ込みます。ストライキングロッドの後ろ側は前述のダブル化したオーリングでオイルを止めています。全体的にはなんでこんなスローな摺動面をミッションオイル潤滑にしているのかの理由が分からなく、グリース潤滑で十分ではないかと思うのですが仕方ありません。

今回対策としてカラーの前端側にこのブッシュを構築してミッションオイルの入る量を必要最低限に抑えることを狙っています。

ギヤ部分が組みあがりました。

ギヤ精度

 

エンドプレイ 

0.10 0.17 0.26 --- 0.07

バックラッシュ

0.15 0.13 0.12 --- 0.21

 

エンドプレイが少し振れ幅が有りますが

おおむね良い値です。

ケースに組んで回転試験しています。完成です。今回もブラストかけたので外観は新品以上にきれいになりました。


2019年6月28日

71A3分割単純オーバーホール γーs28

 オーナー様のご要望で必要最小限でのオーバーホールを実施します。当方のジャンルでは単純オーバーホールと言いますが各部品の再使用限度内で有ればそのまま流用するやり方で、ただし限度の下限すれすれの場合もありますのでオーバーホール後の保証をすることができません。(金額は155000円~) また、単純オーバーホールで分解して内部を見たら、損傷がひどくやはり交換が必要となった場合はその都度その金額が上乗せとなっていきます。もちろん71Aの弱点改善のプログラムは施さないでノーマルのままです。

これまでに1回以上はオーバーホールした様子が有りますがドレンはこんな感じでかなり鉄粉が多いです。

分解するまでもなく分かりやすくこの3速のシンクロリングが破壊されていることが分かります。ここまで激しい摩耗はあまり見られません。

3-4速のハブとスリーブもかなり摩耗してて、特に画像左側=4速側の摩耗が激しく隙間が見えていますが、見た感じではまだ使えそうですがこの後はこのまま継続して摩耗してゆきますのでシフトの前後ストロークにガタが出てくることでしょう。摩耗がひどいものは2mmくらい隙間ができているものもありましたがシフトそのものは一応できていました。

メインシャフトを固定する大事なM38ナットですがやはり画像のとおりタガネ攻撃されています。このやり方も時々見るやり方で当時流行した緩み止めのおまじないと思われます。今回は緩み自体は出ていなかったですが当方では改善策でここをシングルナットの加締め方式にしてさらにサイドロックボルトで完全固定しますが、今回はこのやり方でも緩みは出ていないようなのでこのまま行ってもokかもしれません。

ここは大した問題ではないですがスナップリングが変形しまくりで組まれていますね。

5速のカラーですがニードルベアリングが転がった跡が段付きとなって表れています。爪でひっかるぐらいの段付きですが使用できないかというとそうでもないです。ただ、ニードルを再度組んだ時この溝とニードルが元の鞘に収まってくれるかどうかは調整できないのでこのままだとできなりで組むことになりますが、それでもいずれなじんでしまうのですぐに問題がでるかというとそうでもありません。

5速のハブのスラスト面ですがこの茶色の変色が有りますが焼き付いているわけではなさそうなのですが、若干焼き付き気味というところでしょうか。磨けば修復できるレベルとは思います。71Aの5速は弱点でこのようなスラスト方向の故障例はたくさんありますので、当方では5速裏にスラストニードル構築の改善プロググラムを用意しています。

3-4速スリーブですが分解前にすでに摩耗が観察されていましたが分解してみるとこの画像で溝の左側に段付きが有り、明らかに摩耗しています。このパーツは焼き入れされていますが表面近くが特に固くなっており、硬い層を通り過ぎて内部まで摩耗すると急激に摩耗が進むようになります。この状態で0.2mmほどの摩耗ですので、一応使えるレベルかなと思います。

メインシャフトの3速側スラスト面は軽く焼き付き気味。やすりで修正するしかありません。

メインシャフトの反対側2速のスラスト面、やはり軽く焼き付き気味です。やすりで修正するしかないです。

1速のスラスト受けにいれるワッシャー、これも銅のような色の焼き付き気味の表面になっています。

 

ここまでですべて分解が完了ですが

・ギヤ類に大きな欠けやスラスト面の焼き付きは見られない。

・シンクロリングは3速と4速メインが交換必至

・3-4速スリーブが摩耗があるが使えるレベル

・5速にうっすら焼き付き傾向がみられるがやすり修正して修復

・シフトフォークは3個ともに良いレベル

・メインシャフトスラスト面に焼き付き傾向がみられるがハンドワーク修正で修復

・ボールベアリングはメインインプットとメインセンターがガタが大き目なので交換。他のベアリングは再使用とする。

・ニードルベアリンは摩耗判定が難しいので形状破損がない限り流用

組み立てに入っていますがオーナー様より3-4速スリーブはやはり交換ということで+8000円となってしまいますが中古良品で交換しています。

 

又、5速についてもニードルベアリング構築オプションでやってくれということで+30000円になります。

かじり気味だった5速のハブのスラスト面は旋盤にくわえてある程度磨きましたがこのような感じです。なんとか行けるレベルと思います。

ギヤ部組み付け完成。大事なM38ナットは 2分割から1体加締めタイプに交換、サイドロックで緩み止めとなります。

 

エンドプレイ

0.12 0.15 0.21 --- 0.07

バックラッシュ

0.11 0.13 0.15 --- 0.15

申し分の無い値だと思います。特にバックラッシュがきれいに揃っていて大変摩耗の少ない状態のギヤだと思います。

ケース側の整備に入りましたがリヤエクステンションのシール打ち込みの壁にこのような傷が入ってしまっています。こちら側にも1本合計2本入っています。

 前回メンテした時の方がかなり荒い整備だったようで、オイルシール抜くときに工具がこの壁を削っていることに気が回っていなかったのでしょう。 ーーーもちろん私のやったことでは無いので身の潔白の為に記しますーーー

 ここは液体ガスケットを塗って漏れを防ぐしかないですが、これならまだ大丈夫でしょう。

 

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