2015年4月14日

激しく摩耗した240クロス

今回、オーバーホールを依頼されましたこの240クロス、

激しく消耗しているようです。

今まで走っていれた事が奇跡的な状況です。

先ず、このメインインプットの状況ですがこんなの初めて見ました。間違いなくベアリングの球抜けてるなと思いました。

反対側にゆするとこのようになります。

中身はいったいどのようになっているのでしょうか?

先ずはギヤ部を抽出してからケースが無事か測定します。

メインインプット側はマイナス0.03で無事でした。


カウンター側は+0.04mmで摩耗している状態です。値はまだ少ないですが0.04mm大きくなってしまっていますので、カウンターベアリングが0,04mmガタつく状況です。

なんとか使えるレベルですが基本的には交換した方が良いと思います。

3-4シフトフォークですが目で見てわかるほど摩耗しています。スリーブかフォークどちらか或いは両方交換が必要です。

スリーブですが基準7mmにたいして7.3mmあるようです。

そして内側は左右2か所飛び歯になっている部分ですが、完全に欠損しています。しかも裏表両方です。これでもシフトできるんですね・・・・。

そしてハブ側ですが画像センターのツノの様になっている部分本来は手前側から奥側までストレートになっているはずなんですがかみ合い摩耗して凸凹になってしまっています。

そして一番の問題はこの画像の様にギヤの歯面が摩耗していることです。白ペイントした部分が摩耗の証ですが、もちろん全歯また全ギヤすべて同じように摩耗しています。この画像はカウンターギヤです。

拡大するとこのようになっており歯面で艶消し状になっている部分が有るのがはっきりとわかりますが、幸いクレーター摩耗まではしていませんがバックラッシュが大きくなってしまうことは避けられない状況です。バックラッシュが大きくなるとアイドリング時のガチガチ音、走行時の唸り音などが間違いなくでます。

ギヤをガイドするニードルベアリングですが、分解する傍からこのようにボロボロと飛散してしまいます。しかも全てのニードルベアリングがです。通常はあり得ません。

これは衝撃的な映像ですがメインインプットシャフトのベアリングですがどうでしょうか、この傾き具合。ガタガタです。

 不思議な事に保持器は飛んでいません。通常このようになるのはたいていベアリングがはじけたり異物が噛みこんで保持器が飛ぶケースが多いと思うのですが。


このケースでは外観上は通常の状態なんですがただひたすら摩耗しています。

これは2速ギヤですが槍状にとがっている部分、私は舳先と呼んでいますがドッグティースともいいます。この2速に限ってはかなり丸まってしまっています。ただ不思議な事に他のギヤはすべてまるで新品の様にとがっていて申し分のない状態なんです。

例えばこの1速ですね。これでも丸まっている方で3-5速は凄くとがっていて摩耗していません。

ただこの1速と言えどもスラスト面はこのように摩耗しておりエンドプレイはガタガタになりそうです。

 

ここでひとまずまとめてみます。

・ケースはなんとか使えるという状態ですが、保障できない状態です。

・フォークやスリーブやハブは交換ですが私の手持ちが有りますのでなんとかなります。

・問題はギヤですが240クロスとなりますと今やレアになりつつありますので、簡単には代替できません。

 依頼主がパーツ持っていればもちろん交換です。

 私のところに240クロス在庫ありますが、交換となるとやはり費用が発生してしまいます。

 

そうすると選択肢は次の様になります。

1)240クロスギヤ類はこのままで交換パーツ有るものは交換して組み上げる。この場合動作としては一応可能だと思いま

  すが、寿命や異音については全く保障できないです。ベアリングのガタやシフト関係のガタは減るので当初はある程度改善す

  ると思います。

2)240クロスギヤはあきらめて通常のs30のギヤ比にして全ギヤ交換してしまう。

3)どうしても240クロスギヤ比にしたい場合は私の手持ちの240クロスで補充する。これは費用アップします。

4)この際だから71BコンパチCにしてしまう。もちろん費用アップですが寿命は段違いに向上します。

いかがでしょうか。

 

また、こうなった可能性のある原因推定ですが、今までの履歴を知らないのであくまでも想像の域ですが

1)ノーメンテナンスでとんでもなく走行距離長かった。30万Km以上か。

2)常にサーキット走行と同じくらい高回転で走り続けた。

3)オイルを間違えてミッションオイルでは無いものを使っていた。

4)このミッションは過去に分解した痕跡が有る。多分その時に外観でショットブラストをかけている。

 

です。これ以外にも有るかもしれませんが私はある程度4)に目星を付けています。

 


依頼主はここから1時間以内の近所ですから、直接相談することになりました。

依頼主と相談して 今回は亀有の71Bクロスにすることになりました。今までの240クロスが乗り易かったのでそのギヤ比に近いものと言うことです。 71Bコンパチcクロスでも出来ますが費用がかなりのしてしまうのでの選択です。


亀有71Bクロスにはギヤ比が2種類有りますがそのAタイプ 1速2.624のタイプです。

1速、2速、ハブスリーブです。

亀有クロスはワーナータイプですから今までのポルシェからワーナーになります。ハブスリーブは71Bワーナータイプ中古から探し出して来て交換です。

シンクロやベアリングも新品交換。

カウンターももちろん亀有新品です。

亀有のギヤは全て丸ごと表面処理されているのでまっくろです。

 

この中で真っ黒く見える3部品が亀有クロスギヤです。あと写っていませんが3速ギヤが亀有パーツです。

これは1次減速=4速ですがここのギヤ比で全体のギヤ比が決まりますので、今回は指定どうり32/21のギヤを探し出してきました。


これで1速ギヤ比2.624となります。

これでフロント側の組み付けは完成。


このあと反対側の5速、バックを組んでいきます。やはりワーナーシンクロでギヤ比は0.813となります。





















ギヤ部は組み付け完了して精度確認


    1ST  2ND 3RD   5TH

BR 0.05 0.08 0.07 0.10

EP 0.32 0.20 0.15 0.23


やはりギヤがほとんど新品になりましたから素晴らしい値です。5速のみEPがすこし(0.04)大き目。

もうこれはお決まりとなりましたが新たに編み出した技サイドロックです。カシメと併用していますのでこれで先ずM38が緩むことは無いと思います。

内部は完成

シフトフォーク・ロッドも交換しましたが、今までの鋳物タイプからワーナー用のアルミタイプに変更します。かなりかっこ良くなりました。


この中で今までの部品で残っているのはセンタープレートのみとなりました。


ギヤ比は 2.624 1.814 1.360 1.000 0.813

となり、走り易そうです。

ケースの準備に入りますが問題発生。


リヤエクステのペラシャフト差し込み部がガタガタです。このミッションは回転部はことごとく激しくすり減っています。

こんなになっていますので、これは使い物になりません。


そうするとプロペラシャフト側も心配です。また先端側のクランク後部パイロットベアリングもダメかも・・・・。

左側のドナーを探し出してきました。交換です。


これで元からあった部分はフロントケースただそれのみとなりました。後は全てスクラップです。


組み付けも完了しました。回転試験して、上昇温度量は7度cでした。71Cは10度c、71Aは5度cくらいの値であることが多いので、やはりその順でフリクションに差が有りそうです。ギヤがほとんど新品になったので振動やチャタリング音もすごく少ないです。ポルシェからワーナーになったのでカチャッと言う感じで全シフトシフト問題なしです。もちろんオイル漏れやスピードメーターギヤ回転やバックランプスイッチも問題ないです。


完成です