2020年11月7日

デザイナーのS30Z

白いボディーとオーバーフェンダーやインスペクションリッドやボンネットルーバーのガンメタの対比がきれいなこのZはモックアップモデルのデザインまで手掛けるというデザイナーが持ち主です。

全体的にフロントエプロンやリヤウイングも含めたバランスが良い感じがします。

 エンジンはチューンしてあるということで素晴らしい走りをしています。排気音も良い音で、その太さはφ80ほどありますが決して爆音では有りません。触媒までついています。

今回はデフ、ミッション系を中心にレストアして、さらにフロントステアリング系のリフレッシュもしたいとのこと。


 

先ずはこの部分から手を付けます。購入した時からこのイモビライザーが付いていたけど現在はつかっていない、しかしながらバッテリーが1週間で上がってしまうということで、このイモビライザーのどこかでまだ電気を食っているようです。

なぜこんなやり方をしたのかはわからないがやたらと元々の本線から何カ所もスピードコネクターで配線が括り付けられています。

全部取り外しました。

上部の黒い箱がイモビ本体です。あとは通信パーツとセンサーへの配線。リレーも2個ほど見えます。

センサーはダッシュ裏の振動センサー、両ドア、リヤードアー、ハンドブレーキ、フットブレーキ等。置いてある15センチ物差しとその分量を比較してみてください。

このスピードコネクター(正式名称は知りません)が数えたら全部で20個使われていました。電気配線の方法の中でこのコネクターは最低最悪のものだと私は認識しています。

なぜならこれを使うと元配線が画像のように切り刻まれた状態になってしまうからで、このコネクターは金属のギロチンのようなものを配線に押し込み導通するまで押し込んでゆくという強引な配線方法なのです。場合によっては配線の銅線半分くらいまで切り込みますし、走っている間に接続が切れる可能性も大です。

今回は全部取り除き切り刻まれた配線部分に何重にも黄色の電工テープで絶縁処理しておきます。

 これで保管中もバッテリーは上がらなくなったはずです。


本題であるデフを見てみます。

減速比4.1の純正オープンデフで間違いがないようです。

ドライブシャフト

外観的にはきれいで、各部のガタは出ていないですが、十字ジャーナルがかなり緩くなっておりあまりよろしくない状態です。ジャーナルの部分は自重で垂れ下がらないくらいのプリロードが正規となっていますが、これはカクンと落ちてしまいます。

プロペラシャフトはきれいでジャーナルも適度な硬さで問題なし。ジャーナルは加締め式で非分解となっています。49年式ぐらいを境に。この加締め非分解式に変遷してきているようです。

デフの分解

リングギヤは内径110mmボルトはM10P1.0の純正サイズ。サイドフランジはねじ止めタイプとなります。

デフ球

純正のオープンデフです。

サイドベアリングのレースはやはり未交換と思われ、摩耗痕がはっきりと見えます。

 

ピニオンベアリング側の最も大きなベアリングリヤのレース

 

拡大すると回転傷だけではなく異物噛みこみとみられるダコンも多い。


先ずは本体をきれいにして色塗りしています。

必要な部品をだんだんそろえていきます。

この部品、ピニオンベアリングを押しているスペーサーを新品にしてゆきます。

ピニオンを組み付けてプリロード調整をします。ベアリングを新品にするとなかなかプリロードの設定が難しく、何回かやってみないと狙いがつかめません。今回は調整シム

2.53mmでプリロード高すぎ 何回か調整で

2.58mmで16.9kgcm

と良い値となりました。テーパーベアリングなのでこの付近の0.01mmの差で大きくプリロードが変わります。プリロードが適正でないことは、フロントハブベアリングのプリロードと同じでギヤがふらふらしてしまいますが、ほとんどの中古デフはプリロード不足です。M27ナットは新品を使い、1500kgcmトルクで締め込み。

 

LSDとしてOS技研のスーパーロックを準備しました。このLSDは従来の皿バネ式多板LSDとは機構が異なり、引きずりが無いということで街乗りで不快なチャタリングが出ない優れものです。

 

リングギヤ内径φ110

取り付けボルトM10ピッチ1.5mm

サイドフランジの固定はボルト式

で準備しました。


LSDカムとしては1.5way

画像上下方向が回転方向で上方向回転が前進です。

普通の多板式、例えばニスモと比べてカム角度が小さい(おきている)のが分かりますが、多板式の枚数が非常に多く摩擦力が強いのでこの角度にしているのだと思います。反対側のエンブレ側はもっと角度が立っていて効きを弱めている仕様です。標準S仕様

 

リングギヤとサイドベアリングを取り付け

取り付けボルトはM10の新品を使い、ロックタイトのネジロックを使用して750kgcmトルクで締めました。

このタイプの場合イニシャルトルクという呼び方でいいかどうかわかりませんが、画像のように片側固定しておいてもう片側にトルクレンチ掛けてどこで滑り出すか測定すると16kg/mと出ました。

 

サイドベアリング交換してサイドフランジ取り付け、バックラッシュ調整とサイドフランジのプリロード調整です。サイドフランジベアリングはテーパーベアリングですからやはりプリロードがかからないとサイドフランジ間でリングギヤが遊ぶことになるので最も重要な調整です。これはピニオンプリロードを正確に測り記録しておいて、サイドフランジを取り付けた時にどれくらいプリロードが増したかを計算することで測定できます。調整はサイドフランジに挟む複数枚の0.1~1.0ミリのシムで調整します。プリロードが出たところで次にバックラッシュの調整で、先ほどのシムを左右で増減させて両方の合計シム厚が変化しない様にやり取りしてバックラッシュ0.1~0.18を目指します。

今回の場合は今までの状態で同じシム条件で戻したときサイドフランジプリロードは測定できないほど大きすぎだった。(ベアリングを新品にしたから?)、バックラッシュは規定値の0.17mmをキープしていました。

左0.5mm右0.75mmシム プリ過大 バックラッシュ0.17

左0.5mm右0.80mmシム プリ5kg バックラッシュ0.13~0.14

で調整しました。

歯当たり調整 前進側 ど真ん中です。

歯当たり調整 バック側 少しトーよりですがokです。

デフカバーはまたこのスペシャルを使います。これは私の富士スピードウェイへの挑戦用S30Zと同じ仕様です。詳細はこちら

これにすることで放熱リブでデフ温度も下げれるし、デフ油料も若干増やせます。

しかもボルトオンですのでメンバー類も一切変更不要です。

デフへの取り付け状態です。

メンバーへの固定スタッドボルトの取り付けピッチは純正と同じですのでメンバー側の改造は不要です。また増設油量は最小限ですので後ろ側への出っ張りが少なく、S30Zのリヤメンバーに一切改造することなく取り付けが可能です。