2013年1月29日  e-zanaraizerをつくる  自給自足 ここまでくると合掌

 

 ミッションをもう10台以上いじってきたでしょうか?その最初の1台は私のs31zに搭載して、新東名から裏山のテストコース、挙句の果てに 富士スピードウェイとそれこそこれでもかと酷使しまくりましたが、壊れる兆候はありません。それどころか、他のエンジンやデフのほうが先に根を上げてしまいそうです。ですから、あるていど自信はもっているんですが、常にどこか不完全感がぬぐえない10代・・いや10台なのです。

 

思えば、前職からの知識で ATミッションはデリケートなので必ず生産した全個体を稼働試験していることは知っていました。大量生産では通常抜き取り検査で、しかも測定検査だけが普通ですが、ミッションは実際に回して性能チェックしていたと思います。

ならば、私もそうすればいいのですが、それらの性能試験機は当然1台で数千万円単位の値段がする専用機です。売ってもいません。

 

ではわたしのガラスの10台(古い・・)をどうしたらいいかというと、そうです自給自足です。自分で作ればいいんです・・・・・。

 

というわけで、迷わず(いや さんざん考えましたが)ミッション稼働試験機を作ります。

名付けて e-zanaraizer  イーザナライザー  かなりうさんくさい 予算一数万円 へっ!

早速いつもの行きつけ材料商社 某ホームセンターに行き材料の購入です。

でもこんなもん写しても面白くないですよね。

私が扱った中ではもっとも頑丈そうな角鉄パイプを切りだして、ミッションの取り付けジグを作ります。気分は鉄工場のおやじです。溶接が日増しにうまくなっていきます。

「この直角がうまくでねえんだよなー」

ごく自然にこの様な独りごとがでます。

部品がだいぶそろってきました。

中央部の内側スプラインの筒は、右側のプロペラシャフトパーツからもぎ取りました。

 

プーリーやピローは近くの商社から購入です。

 

○ノタローなどのウエブ商社のカタログを駆使して品物を探し出し、近くの卸ろし問屋でその規格を言うと、「はいっ!ありまっせー」 と返事してくれます。たいてい次の日にはそろいますので便利ですし、送料がかかりません。

φ25のステンレスのシャフトを削り込んでいきます

削り込み完了です。

このシャフトを右側のスプラインシャフトに固定していきます。

シャフトの圧入部を打ち込んだ後、溶接で固定しました

次にこのプーリーを加工します。

中央のシャフト穴は個々に加工できるようになっていますので、

自分が欲しい穴径で仕上げます。

この部分についてはだいぶ形が出来てきました。

右側に見えるのはミッションドライブシャフトの先端を切った物ですが、これで現物合わせしていきます。

先に作ったシャフトをピローベアリングに入れ込み、その後端にプーリーを固定します。

このセクションのパーツは完了です。

今回、一切設計図は書いていませんので、すべて頭の中と現物合わせで作っていきます。

一品だけ作るならこの方が効率がいいですが、リピートは難しくなります。

 アングルに取りつけ、これがミッションの駆動側になります。

そしてこれがアウトプット側に取りつける部品です。

ゆくゆくはここに負荷をかけたいのですが、まずはミッションオイルが噴き出さない為のフタの機能としてとりつけます。

いよいよメインフレームの組み立て準備が整いました。

 メインフレームを組みたてました。こんな単純なものでも、結構作るのは大変です。

ミッションを仮付けしました。ここで難しいのは取り付けボルトの穴位置合わせで、いつも1か所くらいはずれたり、あるいは見当違いのところ、反対側だったり ヘタすると全部裏返しなんてこともあります。

でも、今回は鉄工場のおやじの年季が入ってきたので、一発でどんぴしゃです。ちょっとうれしい。

後ろ側のミッションマウント部に支柱を付けます。これで、このミッションは車の車体に取り付けたときと同じ条件で設置されていることになります。

 フロント側のベルハウジングの下面すれすれにアングルで受けをつけました。ミッションは手で載せるしかないので、ボルトを締めるまでは、一旦ここで受けなければとても支えておれません。

 あらかじめ作って置いた駆動用のシャフトを差し込んでみます。プーリーを回すとスムーズに回ります。心配していた芯ずれもごく少ないようです。使用したピローブロックはぐりぐりタイプで多少の芯ずれは吸収してくれますし、シャフトそのものの固定もミッションに合わせてからボルト固定ですから、すごく柔軟です。

 この様なやり方だと最終的にプーリーの傾きが多少は出てしまいますが、このプーリーはVベルトで駆動しますので、多少の傾き偏芯は吸収してしまいます。

 そして、これはインバーターというものです。機能は3相交流200Vの周波数を変換するもので、60ヘルツがマックスでそれを0までバリアブルに白いボリュームひとつでコントロール出来ます。通常のモーターは裸の状態では1500rpmくらいですが、それを遅くする側にコントロールします。(2相100ボルトでは使えません)

 私はこれを旋盤の回転数調整や、ボール盤の回転数調整に使っています。かつては歯車変速機やプーリーで回転数を変えていたのですが、便利になったものです。機械加工にとって回転数は非常に重要で、削る材質や使う刃物で微妙なコントロールをしないとうまく削れません。ボール盤では、ドリルの径が大きくなるほど回転数を落とさないと、削る部分の周速が早くなりすぎますので、危険でさえありますが、そんな時これが活躍します。

 

 今回のe-zanaraizerはこのインバーターの機能を利用します。インバーターには過負荷検知装置が内蔵されており、負荷電流がインバーターで処理できる範囲を超えて異常な値になると、アラームがついて停止するようになっています。これは、このインバーターの性質上低速回転になるほど顕著になります。なぜなら、このインバーターは低速になるほど駆動トルクに敏感になる性質があるからです。

 今回のe-zanaraizerではモーターを0.4kwの3相交流モーターを使用し、そこからプーリーで減速比1/2でミッションを駆動しますから最高で750rpmで回すことになります。 プーリーを付け替えていけば、増速も可能ですが、

あんまり早く回すと危険な場合もありますから、まずはこの回転でいきます。今回の仕様でうまくいけば次はプーリーを変えていって3000rpmくらいまで行きたいですね。 この状態でミッションに異常がある場合は過負荷がかかって停止してくれれば、目的を達成できます。

フレームが何とか完成しました。

ミッションを載せた状態です。

ほぼ完成の状態です。

モーターはボール盤からもぎ取った0.4kw3相200vです。

これで、先に出てきたインバーターのコンセントに仮でつないでみました。

試運転です。

スイッチONでガコガコチャタリングするだけで滑らかに回りません。

インバーターの出力をいろいろ調整してもだめです。

ガコガコしながらも回転は出来ていますので、少しチェンジレバーで変速してみましたが感触的には車載の状態と似ている感じはしました。

 

原因は、モーターの起動トルクがミッションの回転抵抗に負けている為です。

ミッションはニュートラルでもベアリングやギヤが回転するときの摩擦でかなりの引きずり抵抗があります。手で回すとかなりの粘性があるも何とか回せるレベルですので、0、4kwで回せると思ったのですがだめでした。

いうなれば、力のない人が床に置いた40kGの重量を持ち上げようとして持ちあげれなくヒクヒクしている状態です。モーターは4ポールなので電磁石が4分割つまり90度ずつに有り、それに対する電磁石がやはり90度ずつであるはずなので、モーターの起動トルクはその磁石の吸引力で決まります。

それがミッションの粘性抵抗に負けている状態です。

対策は

1)負荷を少なくする=プーリーの減速比を大きくする

2)モーター直結でなく間にクラッチなどを入れて慣性力を使う

3)モーターを大きくする

などだと思います。

電気系の人なら負荷トルクを求めて、それに対するモーターの起動トルクを計算して減速比を計算するでしょうが機械系の私は面倒なので現物確認行き当たりばったりで行きます。

今回の場合、プーリーの減速比を上げることで 進めます。

 

やっと大サイズのプーリーが手に入ったので加工してゆきます。プーリーの直径は私の旋盤で加工できる限界のサイズ200mmですので、減速比は約1/3となります。したがって回転数は500rpmということになります。

これで進めます。

プーリーも加工し終わり、モーターを仮付けして回してみますと、今回はスムーズに回ります。

とりあえずこれで試験をしてみます。

 初期不具合の確認用ならこの回転数で問題ないかもしれません。

 

モーターもこの前のボール盤からの借用でなく専用品を購入しました。これが思いのほか値段がかかりました。

 

 

一応なんとか完成です。付属物があっさりしていますが、まずはここからスタートです。必要な物はだんだん付けていきます。

 

今回は動画で報告です。動画の操作方法の勉強も兼ねており、今回はプロモーションビデオばりにBGMも入れてみました。動画の操作の練習です。

 

シフトチェンジテストでやはり4速と5速のシフト音が違うのが分かると思います。ここは従来の71Bと同じ仕様が残っているところです。シフトテストの途中5速でシンクロ増速する様子が分かると思います。

 

このなんちゃって試験機は絶対値は判定できませんので、あくまでも相対的な判断しかできません。調子のいいミッションはこうだったけど、調子の悪い時のミッションの時はこうだったという比較しかありません。

今回の被験者は今度作った71BコンパチC OSクロスです。これはかなり完璧だったと思うのでこのときの感触を覚えておきます。またインバーターで60サイクルフルパワーでは突入ロードでは稼働できずオーバーロードとなっていました。

 

 

 

人間の感覚だけだとそのときの人間のチョーシで良く感じたり悪く感じたりと言うことが起こりがちですので、文明の利器を少し利用することにしました。赤外線温度計ですが非接触で自分の計りたいところの温度をピンポイントで測定できます。

 e-zanaraizerで 1時間 60hz(500rpm)で 5速でまわしたときのミッションの温度上昇を計ります。結果は7度~10度の上昇が見られました。

 

もしも、ギヤのかみ合いが不都合だったり、どこかのクリアランスが悪く競っていたりしたときは温度が異常に上昇してくるはずです。まだデーターを増やしてばらつきを見なければなりませんが、一応の目安にはなります。

 

でも一番体感できるのは振動ですね。不具合が有る場合は振動がおおきいような気がします。バランスが崩れるからなんでしょうね。

 

この温度計はサーキットなどでもタイヤ温度やブレーキ温度をチェックできます。

またエンジンの各気筒を測って燃焼ばらつきも見れるようです。

その他にもいろいろ使い道がありそうです。