71A3分割ミッション スペシャルγ18~γ21

 

Z432やハコスカGTRのS20エンジン・SRやSPのU型エンジンでは取り付け可能なミッションは71A3分割に限定されてしまいますので、スペシャルリメイクいたしました。

(例外でS20ではケンメリGTRのケースが有れば71Cコンパチ化は可能です。)


2017年3月6日

71A3分割 スペシャルγ18

 

S20エンジンと同じくSR311もこのミッションでの選択支が限定されます(スペシャルは除く)ので対応します。

 

SRはがっちりしたフレームが床下にありますので、ミッションだけでの取り外しが不可能ですので、エンジンミッションまるごと降ろしますこの時代のエンジンやミッションはある種の高級感というかメカの手作り感的な美しさが残っている感じがします。

現象は1走行で250ccという激しいオイル漏れで、止まったそばから地面にオイルが垂れてたちまち10cmほどの池ができます。フロントケース内にたまっていることからもここから漏れていることが判明します。

分解してゆくとすぐにここにあるはずの1.4tのシムが無いことに気つきます。

この部分の裏側のところですね。

シムが無いとこの天狗の鼻の根元のオイルシールが効かないのでかなりひどいオイル漏れになります。

 

これは空飛ぶZ432のEさんも指摘していました。

さらに分解してゆくうちにこんなワッシャーが・・・・。

見ていくうちにわかりましたがカウンターの後端のストッパーねじが外れて取れていました。外れたボルトも出てきました。カウンターギヤは4mmほどガタガタになったところでベアリングがケースに突き当たって止まったようです。

そしてさらに見てゆくうちにカウンターのセンターベアリングとセンタープレートの間(奥に映っている)に入っているべき2mmのシムが入っていないことに気が付きました。これは分解時ベアリングに油で張り付いたりしているので無くしやすい部品で私もいつもマークしているところです。 今回は手持ちの1mmシム2枚で代用します。

 

これが入っていないと前画像で締め込みボルトが宙に浮くので緩んでしまったのだと思います。

シフトフォークは例によって爪部分が段付き摩耗しています。

シンクロ類は通常の摩耗程度で完全にダメというものはありませんでした。ギヤのシンクロ舳先はやはりすでに丸まっているものが多く、ある程度ハンドワークでとがらせましたが新品の様には戻せません。画像は1速メインギヤですがやはりSRまではシンクロブレーキが両回転方向にあり、両方向サーボが効いたのですが、これがS30Zのころから片方だけに変化したようです。

 

私はシンクロCリングとともにすべてのブレーキバンド(三日月状の板のような部品)も新品に換えていきます。

問題は5速ですが、このようにすでに焼き付きが発生しています。円周上に光るスラスト受け面の部分ですね。裏表ともにダメでした。

スラストを受けるハブ面もこの画像右のようにダメでした。左は正常なもの。

 

このようになると5速が溶着してハブと固着するようになってきますが、そうなると5速は問題なく入るのに他のギヤが入りずらくなります。5速がギヤを引きずるためシンクロが出来なくなるからですね。完全に焼き付くと他のギヤには入らなくなる先ずです。

71Aの5速は今や貴重ですのでなかなかスペアもなく、現品を何とか修復するしかありません。この画像のようにスラスト受け面をいろんな手で仕上げて復元しますが、精度が無いとすぐに焼き付いたり、うなり音の元になったりしますので慎重にやります。

そしてこのように私が考え出してオプションで設定している仕様、5速裏にスラストニードルベアリングを構築する改造を加えます。今まで何基も見てきましたが71Aにとってここは鬼門の場所です。

ここに焼き付きが発生して他のギヤが入りにくくなり無理してシフトするのでシフトフォークが摩耗する・スリーブが傾いて欠ける・M38ナットに無理がかかって緩むことで5速が抜ける・などのことが連鎖して起こってくると思います。

M38ナットの側面にあるボルト穴はこれも私が考え出した技サイドロックボルトで固定するものです。加締めも併用しますが回転物を止める最強の技はロックボルトであると思います。

 

そしてシフトフォーク(1-2)は画像の3点支持シフトフォーク化します。(前述の段付き摩耗シフトフォークと比べると違いが判ります)

これらの改造はすべてもちろん純正では存在しない仕様です。

ギヤ精度

        1st  2nd 3rd       5th

エンドプレイ 0.09 0.11 0.05 --- 0.05

バックラッシュ0.13 0.15 0.15 --- 0.13

 

3rdのエンドプレイが少なめですが大丈夫と思います。

他は良い値です。

オイル漏れの定番であるシフトリンケージもフルオーバーホール。

 

この中で右側のプランジャーピンはシフトレバーの左右中立をコントロールするパーツですが、SRはピンの中間にオーリングが無いのでオイル漏れ放題ですが、これを下段2本のようにオーリング付きに変更してゆきます。そのまま交換しても問題が出ますのである改造をしてから組みます。

そしてさらにこのシフトロッドが刺さる穴のオーリングも画像のように2段回に変更します。(通常は1本しかない)ここもオイル漏れのしやすい箇所です。

一番最初に問題だったオイル漏れの対策として純正より線形を太くしたオーリングを準備し、もちろん入っていなかったシム(今回は1.6mm厚)も復元します。

完成後簡易試験機e-zanaraizerで1500rpmで回転試験とシフト試験をします。この時点でシフト不良やオイル漏れなどが有れば再度分解してやり直します。いままで最高4回やり直したことが有ります。

フライホイール・クラッチプレートともに通常の摩耗程度だったのでそのまま組み戻します。クランクのパイロットブッシュは必ず新品に交換します。

SRはエンジンルームが狭く組み付けはぎりぎりの状態です。

無事組み付きました。

X型フレームが見事です。


2017年3月27日

71A3分割スペシャル γ19

 

5速が空回りしてしまったというこのGTRの3分割ミッションもやはりS20エンジンですのでこの71Aの選択となります。

さてどうなっているでしょう?

ここのシムはちゃんとありました。

見てすぐにわかりましたが、やはり5速のシンクロスプラインが圧入が外れて空回りしています。中央部の平行なスプラインがそれで、本来はここに見えていてはいけないところです。なぜこうなるかというと左側にある大きな六角ナットM38が緩んだからです。M38はダブルナットですが角をタガネではつった跡がありますが、タガネ攻撃されていますので一度分解されたものですね。M38が緩むと5速ギヤはハスバですのでスラストを発生しますので左にずれていきます。そのとき右側のシンクロ舳先はカウンター側の5速ギヤにサイズ的に面が引っかかってしまいますのでそれ以上下がれずここに取り残されることになります。このときにはゴリゴリというような大きな音が出ていたと思います。

ここまで完全に抜けてしまうとシンクロスプラインとギヤスプラインが干渉してしまい、この画像のようにガリガリにかじります。ここまでくると復元が難しくなります。ただずれただけならいろいろ工夫してもう一度押し込めばなんとか元に戻ります。

もう一つ、シンクロスリーブの舳先ですが画像の通り舳先の頂点が削れて三角形の平面が出来てしまっています。ほぼ1-4速全部だめでした。ギヤチェンジのときにギャリンといったときにはこの面が出来てしまっています

。こうなるとチェンジの時に面どうしが当たりますのでギヤが入らなくなります。

さらに、このメインシャフトの2速側のスラスト受け面がこのようにかじりがありました。2速ギヤの相手面は何ともなかったので不思議ですが、途中で2速ギヤだけ交換したのかもしれません。

本来は新品に交換したいところですが、今回はハンドワーク修正でメンテしてゆきます。2速ギヤ側が健全なので大丈夫と思います。

もう一か所このシフトリンクの部分ですが、中央部の丸いブッシュの縁が無理やり叩かれて変形が見られます。どうも以前に抜き方がわからずいろいろ無理なことをしたようで、このブッシュの反対側もぼこぼこになっていました。

このブッシュは向こう側に打ちぬくことで分解しますが非常に固いのでしっかりした治具とあるおまじないと集中力が必要です。SRなどのショートは向こう側に打ち抜くだけのスペースがないのでもっと難しく、知恵の輪が不得意な人は復元不可能に陥る可能性が有りますのでご注意を。

またいつものようにシンクロCリングやシンクロブレーキバンドニードルベアリング・ボールベアリング・各シールすべて新品に交換するとともに、各部の仕上げとオイル潤滑化ハンドワークを加えながら組み立てていきます。

今回いちばんの問題であった5速ギヤ抜け対策としてどうしてもこの5速裏スラストニードルベアリング機構の構築はやった方が良いです。これは私が考え出したオリジナルでもちろん標準ではありえない仕様です。 (私のオーバーホール作業費用の中では追加オプション費用扱いとなります。)ここをスラストニードルを入れるとM38ナットに回転力がかからないのでM38は緩みませんが、面受けだとギヤが回転するたびにナットを緩める方向に摩擦力が生じるのでいくらダブルナットにしようがタガネ攻撃しようがしまいには緩んでしまいます。

 

この後、M38ナットはダブルからシングルの加締め仕様+私の考え出した技サイドロックボルト仕様で緩みを撲滅します。これでタガネ攻撃はしなくても良くなります。

ギヤ精度

        1ST  2ND  3RD      5TH

エンドプレイ 0.22 0.20 0.15 ーーー 0.05

バックラッシュ0.05 0.16 0.10 ーーー 0.22

 

1STのバックラッシュが小さいですが大丈夫と思います。

 

回転試験をして完成です。

 

これでまた1台楽しく乗れるS20GTRが復活してくれるとわたしとしてもやりがいがあります。


2017年8月27日

71Aスペシャルγ20

 

 最上段のsr311と同じく71Aトランスミッションの依頼を受けました。今回は手持ち在庫の71Aを仕上げて完成品にしてから発送します。こうするとお車をリフトアップしている時間は1日で済むことになります。

 

画像は1-2速の部品達

シンクロ・ブレーキバンド・ニードルベアリングなどすべて新品に交換してゆきます。

こちらは3-4速

 

シンクロスリーブも痛みが激しい場合は程度の良いものに交換してゆきます。

そして5速裏は71Aの鬼門ですが、ここは私の編み出した技スラストニードルベアリング構成で対策します。M38は一体タイプ化して回り止めカシメ溝追加して、さらにサイドロック止め加工をします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギヤ精度    1st  2nd  3rd      5th

エンドプレイ 0.35 0.19 0.20 --- 0.10

バックラッシュ0.14 0.09 0.12 --- 0.07

フォークはやはりオプションの”3点支持化”が望ましいいですが、今回は見送りました。ただ、今までのはやはり編減りしているので、程度の良いものを探して交換です。

このリヤエクステ部分のシフトリンケージもオイル漏れの仕方ないところではありますが、できる限りシール関係をしっかりとやります。

このストライキングシャフトのところはオーリング2重化

SRの場合、ミッションマウント取り付け部はタップが切ってありますが、調べたらネジ部が半分ずる剝けだし、ねじもM12のピッチ1.75でした。正規はM12ピッチ1.25らしいですが、今回M12ピッチ1.5でヘリサート修復します。


2018年4月3日

71A3分割スペシャル γ21

 

γシリーズもとうとう20基を越しました。

今回は積車でこのきれいなハコスカGTR(本物)がご来訪です。

 

 

 

エンジンもこんなきれいなS20がまだあるんだというくらいきれいです。

 

アクセルを煽るとこのエンジンに誰しもが虜になる理由が分かります。何とも言えない魅力があるのですが、あえて一言でいえば回転上昇がすこぶる軽い事だと思います。感じ的には自分がアクセルを踏むほんの少し手前からエンジンがすでに回転を上げてしまってくる感じです。

 

この様な自分のガレージにS30Zとハコスカがあるシーンは旧車乗りが一度は夢見るシーンではないでしょうか。

 自前ではとてもこのようにはできないので、今回は束の間ですがそれでもなんかうれしくなってきてしまいます。

 

早速ミッションを降ろしに入ります。

ミッションはすでに降りてクラッチですが、私の場合かならずクラッチを外して中の様子をチェックします。せっかくミッション降ろすのですから、この同じ手順で確認できるところはなるべくチェックします。

クラッチディスクはここまでくるとほぼ摩耗限界です。リベットで残厚1.0MM(新品は1.7mm)でした。

 フライホイールとクラッチカバーも経年の消耗はありますが普通に走る分には問題ないレベルです。

かなり画像が飛んでいますが降ろしたミッションをすでに分解してチェックしています。この中央のM38ナットは画像のとおりタガネ攻撃を受けています。このようなのを何回か見ています。意味の無い事ですね。

問題の3速シフトフォークは完全に摩耗して段付き摩耗しています。メンテナンスをしてない71Aミッションではこういう摩耗が頻繁にみられます。

メインインプットギヤ(=4速)のシンクロリングはだめレベル。

1速のシンクロリングもだめレベル。

メインシャフトの2速スラスト受け面に錆摩耗が見られますがこのレベルならまだセーフです。

 

 

すでに組み立てに入っていますが、この画像でγバージョンのオプションの5速裏スラストニードルベアリング構築の様子がよくわかります。その効果はノーマルの平面受けとは比べるべくもなくその回転抵抗は飛躍的に減少するでしょう。

 特にこの71Aはここが弱点で5速が焼き付く、5速が空回り・シフトが入らないなどの現象の多くがここが原因です。

そしてここも71Aの弱点、M38ナットですがもはやダブルナットですらありません。

 シングルナットで加締め溝で留めるタイプに改造して、しかも私の編み出した技、サイドロックボルトで完全に緩みを撲滅します。

 もちろんタガネ攻撃などという姑息な手段は取りません。

さらにこれも71Aの弱点シフトフォークが2点支持で不完全?であるところを、この3点支持のシフトフォークへ変更して対策してゆきます。親指のあたりにある平面が3点目の支持面となるのですが、通常はこの面が無く両側の2点だけでスリーブを押しています。いかにも無理が有りますので、今回有は1-2速に加えて3-4速も3点支持にしました。

 

 

 

 

 

 

ギヤ精度

        1st  2nd  3rd      5th

エンドプレイ 0.10 0.11 0.10 --- 0.04

バックラッシュ0.10 0.15 0,18 --- 0.05

これもかなり画像が飛んでいますが、ケース側の組み付けに入っています。画像はシフトロッドが通る穴ですが、ここも弱点でオイル漏れが発生する場合がありますので、このようにオイルシールを2重にして万全を期します。(普通は丸いシールは1個しかありません)

どんどん進んでいますがS20エンジンのミッションメインシャフトが刺さってくるところのパイロットベアリングはニードルベアリング(L型はプレーンブッシュ)ですが、このようにシールまで油まみれで摩耗していますのでベアリングともども交換です。

GTRへの組み付けが終了してさらに試走していきますが、もちろん3速と1速のギヤ不入りは治っています。

 

 ポルシェシンクロが調子いい時はそれはそれで独特のシフトチェンジ感が楽しめます。

シフトノブを少し押し込むとシンクロがかかり、それがサーボ機構でさらに増幅されて、

最初は少し抵抗があったシフトノブを押す力が、あるところで急に、フッと軽くなってきて

そこから少し長い距離をジワリとノブを押してゆきます。(よくバターをナイフで切りこんでゆくときの感触に例えられます)

ポルシェのシフトで無理押しは避けなければなりません。

抵抗が大きすぎる場合は少し待ちます感じで、抵抗が無い場合は素早くそのままスッとチェンジします。

これらの調子が結構、状況で変化してゆきますので、ここをうまく操るのが魅力と思う方は少なくはないでしょう。