2021年7月19日

新規開発のL型エンジンクランクラダーの取り付けです。このエンジンは腰上だけのセミチューンの予定ですが、エンジンを降ろした手順でクランクラダーを取り付けます。エンジンがおりていれば簡単にクランクラダーが取り付けできます。

 画像ではヘッドはチューニングの為にすでに取り外して加工内燃機屋さんへ送られていて待ちの状態です。

オイルパンを取り外します。エンジンとしてはF54のL型2800ccのノーマル状態です。S30Zなので後ろだまりのオイルパン・ストレーナー位置です。

クランクラダー構成としてはフルセットの3セットを取り付けるので先ずは1-2番のクランクキャップを取り外します。M10のボルトを2本取り外してボルト穴に2本のネジ先端を指してぐりぐりすると次第にクランクキャップが浮き上がって外れてきます。

クランクキャップにはセット位置が決まっているのでこれを間違えるとエンジンがうまく回りませんので、必ず識別記号を書いておきます。矢印模様の鋳出し記号は取り付け方向を示しており、必ずエンジン前方に向けて取り付けます。

1番キャップのクランクメタルの状態

両サイドに少し光っている部分が見えますが、そこはメタルが消耗してきている状態です。鈍く銀色になっている部分はまだメタルが残っている部分です。ほとんどのL型エンジンはこのようなメタル消耗となっていると思いますが、これはやはりクランクキャップが煽られている(傾いている)証拠であると私は見ています。 メタルの損傷状態としてはメタルが剥けてかじりだしているという状態は見られないのでこのまま再利用できなくはないです。今回は当初、腰下は手を入れないという設定でしたのでこのままで行けそうではあります。

2番のクランクキャップ

センターに深いスジが入っていますがクランクのオイル穴でかじられた跡ですね。摩耗状態としては1番と同じ感じです。メタルとしては中程度使ったという状態でしょうか。

クランクラダー取り付け面を平たんにするため1番2番のボルト座面を共加工でフライスでさらいます。クランクラダーの固定面が干渉しない様に面を確保します。

 キャップの底面から座面までの厚みをそれぞれ測ると想像以上に差が有り、高い低いで0.3mmもの差が有ります。メーカーラインで流し生産しているはずなので高さはそろっているだろうと思っていたのですがそうでもないです。(ボルト1本締めならそれでも何ら問題は無いんですがね)

1番キャップに取り付ける場合のみ黄色矢印部分を削る必要があります。エンジンとしてここは開放面で有り、削っても強度的な問題はありません。私の魔界エンジンも削っていますが富士SWでフル稼働しても問題は出ていません。私も機械力学をかじったものですので見ればそこの形状と強度はおおよそ類推ができます。

 削る方法なのですが機械設備が整っていてスマートにやるには機械に乗せてあっという間にきれいに加工してしまうでしょう。でも、機械もなく手間もかけずに削りたい場合もあります。

その場合このように削るところ以外をすべてマスキングしてハンドグラインダーで削ります。削るのは簡単で時間もかかりませんが、マスキングの作業の方が時間がかかるくらいですが野戦的に実施できます。他の機械加工と一緒にやる手順なら加工屋さんについでにやっといてねと言っておけば良いですね。

クランクキャップを取り付けてクランクラダーを取り付けるとこのようになります。面取りとしては高さ8~10mmで角度は60度となります。

 この加工は1番キャップのみで他の所のキャップ取り付けには必要ありません。

1番ー2番間へクランクラダーを取り付けました。L28クランクと純正コンロッドではクランクラダーとの隙間はこれくらいになります。LDクランクだともっとボルトが近ついて隙間は1mmくらいになります。

そしてもう一点、丸印部分がオイルパンと干渉する為逃がし加工が必要です。この1カ所のみで、加工もわずかです。アングルグラインダーで少し削りますが、これは取り外して外作業でできるので気楽にできます。

次に3番キャップ

メタルの状況は同じレベルで、やはり中央のオイル穴かじりと両サイドのメタル消耗が有ります。

4番キャップのメタル

ここはクランクのスラスト方向の位置決めをするために唯一前後方向にもメタルがツバ状に付いています。

ここはクラッチを踏んだ時の反力を受けるので、クランクキャップはまともに横方向に押されるわけですが、やはりメタルのはじの方が光った面が広範囲に出ていてキャップが横にあおられている証拠ではないかと思います。

3番ー4番クランクラダー取り付け

 

ここにはオイルパンからオイルを吸い上げるストレイナーが取り付けられているの、その台座部分とクランクラダーは干渉が厳しいですがギリギリかわす寸法で設計しています。

5番キャップメタル

状況としては同じ感じです。両サイドに細長い楕円形上のメタル摩耗痕が有るのが特徴的です。

6番キャップメタル

ここは両サイドだけでなくもっと中央寄りが消耗がしているようで光っている部分が多いです。フライホイールが暴れる余波がここに出やすいのだと思います。中央にオイル穴のかじり傷が出ています。あそこの面取りどうみてもデリカシーが無いもんな、無理もない。

これで新規開発クランクラダーフルセットのセッティングが完了です。私の作業でオイルパンをはぐるところからここまでだいたい4時間でできたと思います。

クランクラダーなしの最初の画像と比較してその剛性感は見ただけで格段の差が有るように見えませんか。

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