S20エンジンご用達、R192デフのオーバーホール

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2023年1月20日

R192デフ オーバーホール R27

4ピニオン化

 

R192デフが続きます。

今回はR26前回品とほとんど同じ作業内容となります。

サイドフランジは塗装がしてなく、金属メッキ出しとなっています。

このリヤデフケースのドレンプラグが特殊サイズになっています。

下側は21mmくらいで、通常の専用工具は入りません。

上側はなぜか細くなっていて15mmしかありません。

ギヤ比は4.444

刃当たりは前進後退ともに良好です。

ここの溝に入っている物質が何であるか最初分からなかったがオーリングが経年劣化した残骸でした。

サイドフランジカバーはかなりひどくあっちこちたたかれています。

LSでゃ現在は2ピニの純正で、イニシャルは安定して5Kgでした。

今回はリングギヤボルトの緩み止めワッシャーは一つも欠けませんでした。やはり材質が異なるようです。本来はもっと固い材質であるべきだとは思います。

リングギヤの歯面は少し変な摩耗痕が見られます。

バックラッシュを測ってみたら0.39mmもありましたからバックラッシュ過大で常にギヤ同士がガチャガチャ当たっていたんだろう結果と思います。

LSDです。

今は純正の2ピニオンです。

2ピニオンです。

そして今回もこの4ピニオンに交換するという事ですので、こちらのチェックも必要です。

イニシャルはやはり10kgを振り切り測定困難でした。

プレートは1.65mmとちょっと薄い仕様で(普通は1.70mm)表面が梨地の様なざらざらした面のものとなります。

ピニオンもばらしました。

黄色い塗料はペンキの様で何でここに塗られているのかよくわかりません。

摩耗はそれほど多くは無いようです。ここに段ができるほど摩耗しているともう使う事はできません。

ピニオンフロントベアリング

一度も交換されていないと思います。

 

こちらはピニオンリヤベアリング

もう末期症状です。クレーター状の剥離破壊現象が起こっています。

組み立て調整に入りました。

ピニオンベアリング交換とピニオンプリロード調整です。今までプリロードはベアリング摩耗で全くゼロの状態=ピニオンががたがたの状態でした。これをベアリングを打ち換えてゆくとたいていの場合プリロード過大になります。ベアリング摩耗していたものが元に戻るのでその分当たりが強くなります。

 したがってここからピニオンの調整シムの模索に入ります。何回もピニオンを分解することになるので、それもかなりの場合ピニオンベアリングを交換しないで済ませてしまう要因なのかもしれません。今回も何回かやり直してピニオンプリを11Kgまで回復しました。

4ピニLSDの組付けです。サイドテーパーベアリング(オーナー様ご持参品)を使います。現在のものと比較すると機械的な寸法は同じですが、それ以外の面取りの仕方だとか角Rの付け方・仕上げなどが異なっています。40年も経つと機械パーツの中で最も規格化されているベアリングといえども変化があるようです。材質については検討がつきません。安来鋼かな・・・・。(ちょっとお笑いです)

サイドベアリングを取り付けました。ベアリングのゲージが出っ張っているのでベタ置きご法度です。

4ピニのカム角

日産の普通の純正はカム角が90度の場合が多いです。ニスモ仕様ではこのような130度くらいの角度になります。

今までの使用状況があまり良くなかったらしくリングギヤに特徴的な摩耗が見られます。バックラッシュが大きかったのでギヤ同士がガチガチ当たってできたものと考えられます。まだ歯の端のほうなのでそれほど影響は出ないとは思います。

リングギヤ取り付け前にボルト穴をタップ掛けしてきれいにします。M10P1.0という特殊なサイズです。

リングギヤを取り付けました。

締め付けトルクは900Kg/CM。

これをあまりに強く締めるとボルトがちぎれて悲惨な状態になります。またボルトの再使用はしないように推奨されていますが、この特殊サイズ・形状のボルトはなかなか今では手に入りませんので、仕方なく再使用です。

サイドベアリング・カバーの取り付け準備です。

テーパーベアリングのレースを入れ替え、サイドフランジシャフトを支持しているボールベアリングも交換します。

R192もR180と同じようにサイドベアリングのバックラッシュとプリロードはこのようなシムで行いますが、今回のシムは取り付け方が悪かったようでこのように挟まれてフランジ状に変形していました。

 これは手持ちやオーナー様持参のシムと交換してゆきます。

 まずはプリロードをだします。サイドベアリングもわずかに押し込んで負荷をかけた状態にしないとガタガタになります。これはホイールベアリングと同じ理屈で与圧が必要となります。

今回は1.16Kgでセットしました。

これが出ていないとバックラッシュをいくら調整してもダメです。当然バックラッシュ値は安定しません。

そして刃当たりを見ます。

画像ではリングギヤの内側に偏って刃当たりが有ります。これでは全然ダメな状態です。ピニオンベアリングを新品にしたのでピニオンはどうしてもリングギヤ側に近くなりますので、こういう現象になります。

で、またピニオンまで全部ばらします。

そして今度はピニオンのテーパーベアリングを抜いてその向こうにある調整シムを入れ替える必要があります。このテーパーベアリングの引き抜きですが、これがまた一筋縄ではいかないんです。私は何とかジグを作ることでやっとテーパーベアリングのゲージを壊さずに抜く方法を見つけました。

そしてまた何度かやり直して組み立ててやっとこの状態を得られました。これなら刃当たりはど真ん中で合格です。ただ、2歯目の刃当たりがまだら状になっているところが気になりますが、分解のところで見たように歯面が変な模様が出ていることと関連していると思います。稼働してゆくうちに何とかなじんでくれることを期待します。

 

ここでさらにバックラッシュ調整をしてバックラッシュは0.11~0.14に調整しました。

やっとすべてのセッティング条件が整ったので、ここでまたすべてを分解します。今度はオイルシール類を取り付け(プリロードはオイルシール無での値が指定されている)、ネジロック材を付けて緩み止めをしながら組んでいきます。

最終組み立てをしています。

 

逆転側の刃当たりの画像が無かったのでここで再度記録しておきます。

完成です。

リヤカバーについているスタッドボルトが付いていませんでしたので、現在のデフから移植が必要となります。このスタッドボルトも特殊規格なので、入手が難しいです。