2014年11月14日


Z432 71A3分割 5台目 γ6


京都からこのミッションを持参してきてくれたZ432の持ち主、71Bと71Cも一緒に持ってきてくれました。素性の判る下取りは歓迎です。


 この方はZ432を近くの山中で放置保管になっているものを20年ほど前に入手してずっとレストアの夢を描いていたという方で、Z432はもちろん書類付で奇跡的にボディーの状態も悪くは無かったとのこと。こういうこともあるんですね。


画像ミッションはショットブラストがしてあるので外観は錆び汚れは無いです。



分解前に現在の精度を確認します。

    1ST  2ND  3RD      5TH

EP 0.25 0.22 0.26 ーーー 0.10

BR 0.07 0.13 0.10 --- 0.20


かなり良い状態です。1STのエンドプレーが規定より小さいですが、問題ないと思います。


ただ、3-4速のシフトフォークですが、画像のように3mmくらいも摩耗してしまっています。これではまともにはシフトチェンジはできなかったと思います。また表面にはなにやら金色の物質が張りついていますが、シフトフォークの削れたもののように見えます。


私見では通常の71Aのシフトフォークは鋳鋼製で爪のスライド部には表面に溶射で摩耗防止材がコーティングされているとみているのですが、このシフトフォークは先端に銅合金が鋳こまれている感じです。なにかほかの機種のものを使っているような気がします。いずれにしてもこれは使用不可で新たに調達せねばなりません。

取り外してみるとこんな感じに両側ともに均等に減っていますしあまりにも幅が違いすぎるので、摩耗したというより最初から幅違いの部品を使った可能性も考えられます。

スリーブ側もものすごく固い金属でクロモリ材ぐらいを焼き入れ処理している感じですが、それでもこのように幅が0.5mmくらい摩耗しています。


こんなにひどい摩耗具合は見たことがありません。

もちろん、これも使用不可能ですので、調達が必要ですが、さて71Aのこの部品あるかなー・・・・。


オーナーは準備の良い方で、いままでずっと補修部品を買い集め続けていたようで、貴重な新品パーツがザクザクあります。


シフトフォークも新品がありました。


さすがにスリーブはありませんでしたので、私の手持ちの中をひっくり返して探すしかないです。

いつものように組み付けていきます。


ベアリングはシールドタイプへ変更


固定ボルトはヘキサボルト

メインシャフトもカウンタシャフトも精度確認していきますが、振れで0.01mm以内と良い精度です。

1速の部品達


シンクロ舳先(ドグティース)はとがっています。


今回特に三日月状のブレーキバンドも供給されたので新品交換です。

スラスト面については全てカドの面取りとオイル供給溝追加工をしてゆきます。

ブレーキバンドの新旧

2速


同じく舳先はとがって良い状態です

ブレーキバンドを新旧比較するとこのように曲率が異なることが判ります。左が新

画像が見辛くて済みませんが、この部分にはこのようにヘドロが堆積しています。遠心力で集まってくるようです。

今回、左のシンクロハブも新品交換


すごく丈夫なので傷んでいることは少ないですが、160馬力を伝達するパーツですから疲労がないとはいえないです。


新品を供給されたので交換

1速のベアリングスリーブですが、新品があるのですが合わせてみるとすごく勘合が固く交換はあきらめました。


以前、これが固いものを打ち込んで行ったら縦筋が入って割れてしまいました。ここはあまりゆるいとベアリング反力で共周りする可能性が有りますが、M38ナットで締めこまれるところなのでそれが緩まない限り大丈夫です。

3速も同様


舳先もしっかりしています

3-4速ハブ・スリーブ


ハブはやはり新品 に交換



スリーブは私の手持ちの中から探し出しました。


4速=メインインプットシャフト


舳先ok

バックー5速スリーブはやはりかなり変形が見られますが、この程度なら問題ありません。このまま行きます。支給部品の中にはこれはありませんでした。

バックアイドラーですが、すごく小さいです。比較のために71c用を隣に置けば判り易かったですが、1/3くらいしかありません。


このギヤは71bで径が大きくなりました。

71cではさらに厚さが厚くなりました。

かなり問題の有ったところのようです。


ただそれはかなり扱う側の操作方法に問題の原因があったと思います。


もう歯先がぼろぼろと欠落している状態ですから、このままにしておくと加速度的に壊れてゆき、しまいには歯がボロッと脱落します。また、これらの摩耗粉も問題ですね。


新品が有れば交換ですがすでに欠品ですので、ひと歯ずつグラインダーで創生してゆきます。


画像は修正後

5速です


71Aの5速シンクロリングは完全に品切れ状態で新品は手に入りませんが、この方はちゃんと確保していました。貴重品です。袋は紙袋で当時モノの雰囲気が出てますね。


5速ギヤも舳先OK

5速のベアリングカラーですが、これについてもかなり勘合が固かったですが、寸法的に測ると0.03mm小さい状態でした。これなら打ちこめると判断してこれは交換しました。

ギヤ部のアッシーが完成です



精度は

    1st  2nd  3rd 4th 5th

EP 0.18 0.22 0.20 --- 0.04

BR 0.16 0.22 0.09 --- 0.04


5thのエンドプレーが少し小さめ(規格は0.02~0.19)ですが、あとは良い値です。


シフトリンケージ側


1-2速シフトフォークは3点支持タイプに交換

シフトリンケージ部も全バラ

組み付けていきます

リヤエクステンションベアリングもしっかり入れて。 


簡易試験機に取り付けて、回転試験をして問題がないことを確認します。


完成です。