2014年10月21日

グロリア71A4速コラム

 

今回は今までに扱かったことのないミッションです。

71系ですが3分割で、4速ですのでリヤエクステンションはスプライン差し込みタイプです。

シンクロはワーナータイプで5速の様なポルシェシンクロではありません。

 

ギヤの構成も異なっています。

 

型式でいえばRS4W71Aですね。

 

これはR3W71A3速にオーバートップの4速0.784を付けたもので、高速向けの位置付けだとおもいます。

大排気量でトルクでゆったり走る大陸的な走りに適していて、ギヤチェンジを頻繁に繰り返すような走りかたでは無いですね。

一番の特徴は3速が直結=メインインプットとドライブシャフトが固定される となることで、このギヤが最も効率が良い状態になります。一番右が3速、右から2番目が2速です。 右から3番目の大きなギヤが1速で、その左のスパーギヤ(平歯車)がバックとなります。そして一番左がオーバートップの4速でこれは片側にしかフォークは動きません。

分解してみてゆくと、1速はシンクロは思ったより減りは少ないです。舳先の丸まりもまあまあ。

 

画像は2速ですが、かなりシンクロ隙間が少ないです。

2速、新品シンクロにすると金色のシンクロと三角状の舳先の隙間はやはりかなり大きくなります。

 

 


これはバックギヤですがシンクロ舳先と同じようなかみ合い形状がありますが、かなりひどく丸まっていますが、これは補修のしようがありません。バックですから、気を付けてシフトしてもらうしかないです。

そして3速ですが、これは完全に摩耗限度を超えています。

これではシンクロ作用はかなり弱くなっていたはずです。

結果、チェンジ時ギヤ鳴りするなどの事が起こります。

シンクロを新品に換えるとこのように金色部分と三角状のシンクロ舳先の隙間が大きくなります。これでシンクロが強烈にかかるようになったはずです。


メインインプットシャフトのベアリングですが、回してみてすぐに異常があることが判るほどがたがたでした。異音が出ていたと思います。

再度組み上げました。センタープレート左側に小さなバックアイドラーギヤがありますが、5速とは逆になっています。

 

メインシャフトの締めこみナットM38はダブルナットで回り止めとなっています。ネジは右ねじ。

コラムシフトの為にリアエクステンションのこの位置にレバーがあります。

 

全部分解してゆきます。

ここもコラムシフトの場合は大きく機構が異なります。当然ストライキングロッドはありません。

 

右側に棚の様なものがありますが、ここはリヤのスプライン差し込み部へ潤滑オイルを送る役目をします。

 

天井部分右側に何かで削られたような跡がありますが、以前に何かミッションブローなどの事故が有ったのでしょうか?

 

内部パーツには特にそれらしき痕跡は見られませんでした。

このようなところにオーリングがありますので、これも交換してゆきます。

 

ここは外界にシャフトが直接顔を出しており、大胆な設計です。

何かで蓋した方が良いように思いますが。

 

組み上げて簡易試験機 e-zanaraizer で稼働試験をしました。

 

オイル漏れ・シフト・異音・バックスイッチ・スピードメーターに異常が無いかチェックして、

4速で1時間 500rpmで回しっぱなしにします。 

問題ないようです。 

完成です。

 

コラムシフトのリンケージってどうやってるんだろーと常ずね考えていたのですが、理解できました。

技術者はいろいろ考えるもんですねー。

 

これと同じように昔のフォーミュラーカーのミッションは車の一番後方にあってリンケージで操作していますが、

どうやってるんだろーと思っていましたが、ここになんとなくヒントが有りそうな気がします。

 

 


2014年12月25日

 

問題発生!。

 

4速が空回りするということで返送を余儀なくなったこのミッションですが、受けとって分解してみてびっくりしました。

 

画像のように4速オーバートップ(5速ミッションなら5速)の状態がこのようになっていました。

 

11月頭に納品して以来2カ月、最初は通常に走れたようですが、2か月でカラ回りでは問題だと考えざるをえないです。

私は基本は異音についてはよっぽどひどい音で無い限り対応は出来ないのですが、今回の様な明確な問題は直感的に何かあると感じます。 

なんとかしたいので返送してもらい探求します。

 

画像からどうも右側のM38メインシャフトの固定ナットが緩んだようです。それにより4速ギヤはシンクロスプライン部が抜けてしまっています。シンクロコーンの径の方が大きく下側のカウンターギヤにかかっているので、4速ギヤだけスラストがかかり抜けたということですね。シンクロコーンが抜けてしまったため4速は空回りするようになったということですね。

 

 

いいわけではないですが、本来右側の2重になっているナットの左端のワッシャーとの間にナットをロックするプレートがあったはずなのですが、それが失われていたのでそのままにしてしまった私の判断が甘かったです。2重ナットを目いっぱい締めこんだつもりなのですが緩んでしまったのですね。このロックプレートは現在製廃となっていて入手できません。

 

 

 

 

 

 

仕方なく製廃となったロックワッシャーを作成します。

 

ステインレスのワッシャーを右側画像のように

加工して使います。

 

このワッシャーは4速のスラストを焼き入れワッシャーと背中合わせで直接受けますので、面が出ていないと4速のエンドプレイ=遊びに影響します。このワッシャーを外してしまう理由はそれが調整しずらいからだと思います。

 

話が判りづらくなりますが、本来この部分は2重ナットで締め合わせ調整ではなく、受けワッシャーに当たるようにカラーを入れて止めてそれをM38で目いっぱい締めこむやり方が普通の機械設計です。事実、71AでもポルシェシンクロのFS5C71Aや、71Bからはそのように変更されています。

 

 

 

 

 

追記:説明不足で誤解されやすいところが有りましたので訂正します。上記のM38ナットに突き当てカラーが無い件ですが、同じ71Aの中でも今回のRS4W71Aなどのワーナーシンクロ系はそうだということで、FS5C71Aなどのポルシェシンクロ系はちゃんとカラーが入っていますので、通常はM38が突き当ってロック出来ています。ただ、パーツリスト上ではFS5C71Aでもロックワッシャーが存在しており、これは過渡期の名残かも知れません。現実には付けていない例が多いです。それはカラーで突き当り締めつけに問題が無いから省いてしまっているんだろうと思います。あった方が良いですが、ロックワッシャーが無いからと言ってすぐにM38緩みに直結するということでは無いです。

でも心配だという場合は、もちろんロックワッシャーやM38サイドロックボルト加工は安心材料にはなると思います。

 

 

 

 

 

そして転んでもただ起きないというのが私のモットーですので

こんなものを考えました。 

 

M38ナットを追加工してロックネジを取り付ける方法を考え付きました。 

 

このM38ナットの緩みは71系ミッションの一つの弱点であったらしく、N社さんも何回も設計変更をしています。

この後、ロックかしめ溝が追加されそれでもNGで

そのあと71Cの時に左ねじに変更され、ロックかしめ溝追加に変更されました。

 

今回私は画像のようにロックネジ追加対策を発案したのですが、なぜN社はそうしなく前述の左ねじ可締め溝対策を採用したのでしょうか?

いろいろ実験して決めていると思いますので、何らかの理由があるとは思います。またコスト的な問題もあります。でもネジの緩み対策でもっとも強烈なのはこの方法だと思うのですが、そうでもないでしょうか?

 

 

 

N社さんの考え方はもう知るよしもないので、私は今回考えたロックネジ追加工で対策としてゆきます。

 

考えられる懸念点として、ロックネジが回転遠心力でゆるんで脱落する危険性が有りますので、ネジロック剤を使うとともにナットロック後ネジの周囲をポンチで打って固定してゆきます。

 

左側に見えるようにM38ナット左側には復刻ロックプレートを2重の対策でセットしています。

 

これで2重の安全対策となります。


今回これで組んでもう一度搭載してもらい、結果を確認したいと思います。