2019年3月20日

S30Zはやっぱり「ウエ・タコ・デュアル」

このS30Zはやはりお仲間のS30Zで、出たまんまの1オーナー車です。レアですね。これはこれで貴重ですが、オーナー様としてはやはり一度はやってみたい「ソレックス・タコアシ・デュアルマフラー」いわゆるソレ・タコ・デュアルですが、今回はソレックスではなくウェーバーで変更してゆきますウエ・タコ・デュアルです。 

換気ダクトがここにダミーでなく有りますので初期ボディーであることが分かります。

 

メモ

車高

左前665 右前667

左後667 右後665

そのためにリヤサイドのオーナメントは穴無のオーナメントです。

エンジンも当時のままのSUツイン

ディストリビューターもポイント式

セミトランジスター方式にはなっています。

ラジエターファンも当時ままの単純明快固定式

この後、温度感応型ファンに変遷してゆきます。

先ずはウェーバーキャブですが、このように準備できました。ヒートプレートはワンオフで製作しています。

いよいよ後戻りできないところに入ります。

マフラーを外しましたが全体が真っ赤に錆びていますが不思議と穴は開いておらず、またまだまだ穴は開きそうもありませんが、こういうところが昔の作りの良さなのかもしれません。この時代にはセンタータイコさえもありませんがそれほど音が大きいわけでもありませんでした。そしてなぜか重量が非常に軽いのですが、いったいどんな鉄板材質で作っているのでしょう。

エアクリーナーを外していきます。私は分解するときは全ての小物部品はもとよりボルトナットに至るまでもとあったところに仮止めしていきます。こうすると部品の紛失や取り付け位置の間違い、ボルトナットのちぐはぐなどが防げるからです。一旦とったものを又つけるので面倒と思うかもしれませんが必ずやった方が良いです。

外した部品はこのようにパート毎に箱に入れて保管します。このなかで銅パイプが曲がりくねったものが有りますがSUキャブのフロートにつくエアー抜きで、すごく凝った作りですがめったについていないパーツでレアだと思います。

SUキャブ本体を外しましたが、この鉄板はエキゾースト熱の遮熱板ではありますがそれとともにSUキャブのスロットルリターンスプリングの支持部材の役目もしておりこれを無くすと厄介なことになります。かつては私はそのために別途に専用ステーを工作したりしていた時もあります。

 中央部のスロットルリンケージも通常よく見る?マーク形状ではなくT字形の作りになっています。これもレアかな。

 インテークマニフォールドにはラジエターから冷却&保温用の水路がつながっていますが、ほとんどの場合この通路を外してしまうので、このようにつながっているのは珍しいくらいです。

マニフォールドを外しました。

 

あと残るのはエキゾーストマニフォールドですがこの人間の内臓のような形の物体がマニフォールドだとわかる人は少数派でしょう。旧車ですらほとんどがタコアシに換えられている場合が多いですから。とにかく鋳物製で重いのでこれを交換するだけでもすごく軽量化できます。

 これだけ集合部までの距離が短いと例えば気筒1番の排気ガス圧力は間違いなく気筒2番の排気バルブ付近まで吹き返して排圧影響を及ぼしても不思議はない感じはします。

エキゾーストマニフォールドを外しましたが、特にエキゾースト側は長年の煤が溜まりきっていて、厚さ2mm以上ありそうな膜になってへばりついています。ここまですごいのは初めて見ましたが、出口付近の取れそうなところだけはかじりだしておきますが、この状態だと内部のバルブ回りまでいっぱいになっていることでしょう。今回はエンジン本体までのメンテは予定されていないのでこのままいくしかないですが、本来は見過ごせないところではあります。ただエンジンの調子が悪いかというと決してそんなことはなく普通に走れていますのでかなりマージンがあるんですね。

オーナー様が準備してくれたタコ足

最新版ですね。

取り付けました。

当時モノのインテークマニフォールドを取り付けました。マニフォールドはサンドブラストかけたのできれいになっています。マニフォールドは形状が単純なのでサンドブラストでも砂残りなどの問題は出にくいです。

ウェーバーキャブを取り付けました。タペットカバーがきれいになっていますが2000OHCの磨き品に交換しています。

そしてこれを取り付けます。これだけだとなんだかわからないものですが。

このようにキャブ下に取り付けてヒートインシュレーターとなります。いろいろなタイプがあると思いますが3連一体の巨大なインシュレーターはほとんどが取り付けがキャブの固定ナットで共締めとなるのでそれを避けたい、又取り付け自体もステーなどの構成が厄介です。インシュレーターの目的はキャブのフロート部分の熱遮蔽が主だと思いますので必要最小限をねらってみました。これならタコアシも隙間から覗いていますし、取り付け外しも簡単。本当は両サイドもフランジ立ててガソリン漏れ受けとしたかったのですがそこまで工作が回りませんでした。これでもヒートするようでしたら裏側にグラスマットなどの断熱材を貼る手段も選べます。

エアクリーナー仕様なのでこのエアクリーナーを取り付けます。

一般的に売られているものですがこれも取り付け外しが蝶ナット1個で完了できるものです。前後長さが長いので短いファンネルならこの中に取り付けできそうです。

リンケージ類も取り付けて同調も取りました。ここからやっとキャブ調整に入れるようになったわけです。

S30Zのシート修理

キャブ調整に入るには走行試験が必要ですが、運転席のシートがこの通り。座ってみるとしりが穴の中に落ちたようになってしまいます。ここの修理も頼まれているのでここでシートの修理に入ります。

シートを外してみてびっくり、こんな有様でした。

白いベルトは本来は体重を受けるためにシートの底面でスポンジを受けていなければなりませんが、完全にこの形で硬化して篭のようになっています。

分解してゆきますがここのネジ1個がどうしても緩みません。

旧車では必ずでてくるボルトが固着して取れない場面ですが、そんなときはこのようにドリルで揉んで破壊してゆきます。この技が出来ないと修理は進みません。

中のボルトの残骸もドリルで削りぬいてしまいますがネジには極力刃が当たらないようにしてゆき、最後にはタップで仕上げます。ねじがだめになった場合はヘリサートを打ちます。

分解が完了しました。スポンジは思ったより劣化は少なく原形を保っています。ひどい場合はスポンジが劣化してボロボロと粉のようになっている場合もあります。特に運転席右側のサイドサポートの部分がへたりが激しいです。

このベルト、元はまっすぐなベルトだったはずなんですがこのように焼いたスルメを裂いてほぐしたようになっています。初期型S30ZはS字状のコイルスプリングが入っていないでこのベルトのみでクッションを受けるのでこれでは座面スポンジはひとたまりもないでしょう。このゴムベルトはやはり寿命がある様でこんな長い時間使うことは想定されていないと思います。この後中期からS字状の鋼線バネとゴムベルトが併用される仕様に変遷しています。

先ずはベルトを張り替えますが、一応元どうり4本構成にして、画像縦列のベルトは横列を交互に縫うように通してクッション力を均一化するよう一工夫しました。私の考えではこの本数ではベルトが少なすぎるように思うのですが、本家さんが検証して決めているのでこのまま行きますが、自分でやるならこのフレームに隙間が見えなくなるくらい、後5本は追加したいところですが、あまり固くなりすぎておしりが痛くなっても困るのでこれで行きます。

用意した替えのシート着ぐるみですが質感はまあまあではないかと思います。

組み付けに当たってこの中央の黒いレザー部分も大きな役割をしますのでしっかりと準備します。純正のシート地はこの部分が布なので大抵破れて機能していない状態になっています。

さらにちょっとピンボケのこのパーツも付け忘れると大変なことになります。市販の着ぐるみには付いてきませんでした。

スポンジを入れ込んで座面を再現しました。

シートバックと合体

シートバックの鳩目が一つとれていますが全体では状態は良いので鳩目単品を手に入れてそこだけ直した方が良さそうですのでこのまま行きます。

 

シートを取り付けようとしているとシート下フロアに鳩目が落ちているのが見つかりましたので、そのままつけておきますが又すぐに取れてしまうかもしれません。ちゃんと固定するためにはやはり新品の鳩目を入手して加締め直さないとだめですね。

 

また、念のため助手席側の座面下に手を入れてバンドを確認してみると、バンドについては運転席と全く同じように完全に硬化して篭のようになって垂れさがっていますので、これは使用頻度の問題ではなくバンドの材質が40年までしかもたないということでしょう。

シート取り付けて完成です。

ハンドルについてはこれもオーナーさんが選択したマッハレプリカで交換しました。

タイヤは最新横浜HFD 元のタイヤより明確にグリップが上がっています。

 

ホイールは鉄チンからラリーマグレプリカ。このホイールはアルミでの再現品ですがオフセットがマイナスなのが特徴でリムが出っ張っています。

 

車高は整えてこの状態でぎりぎりスプリングが遊びません。

 

秘密の試験コースでテストを繰り返して何回かジェットセットをやりなおしました。

最終的に

メイン  #145

エアー  #220

アイドル #55

ポンプ  #45

 

この値は個々のエンジンやキャブの仕様に左右されるので他の車両に当てはまるかというとそうでもなく、だいたいこの当たりとかの目安にしかならない場合が多く、やはり試行錯誤が必要となります。今回、ガソリンタンクの詰まり錆が多いとのことでだいぶそちらの影響との判断に迷いました。

 

最終のジェットセットでのプラグの焼け具合

BP5ESで焼け気味ですので6番に換えなければならない感じです。

 

 

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