71系ミッションのシフトリンケージについて

やっぱりクイックにしたい

 

 


 ケース側の加工に入りますが、画像はアウトプット側=リヤエクステンションケースです。


完全にばらばらにしました。今回 クイックシフトを取り付けてほしいという要望があるので、この部分はかなり変更が必要です。

組み付けた状態ではこのようになっていますね。

 

耳のように出っ張っているところにある穴が支点になって、その下側にぐりぐりがあってストライキングロッドを前後に動かしています。このストライキングロッドにストライキングレバーが付いていてシフトキーを動かしています。簡単に言えばテコ棒ですね。また、このセットは丸い軸部分を中心に左右にも倒れることでシフトレバーの左右の動きができます。

一番上がケンメリスカイラインの純正オリジナルです。ほとんどストレートであることがこのシフトレバーの特徴です。

上から2番目はフェアレディーzs30zの純正シフトレバーです。

 

 

そして注目すべきは一番下の いわゆるクイックレバーの典型的な商品です。これは現在でもアメリカで販売されている古典的なクイックシフトです。71B系ミッションのクイックシフトといえば、これしか見たことがありません。

原理は単純でてこの原理で支点の距離を伸ばせばストロークが減るということを利用しています。

ノーマル標準はあらゆる使用形態を網羅して万人に問題なく使用できることを前提にしていますから結構ダルイ設定になっていますが、これをクイックに変更するマージンは結構あるはずです。

クイックにするとシフト操作が微妙になったり、シフトに要する力が必要になるので、ケンメリでもゆったり走りたい人には問題がでます。 

 

さて、この最下段の古典的なクイックシフトですが画像の四角いプレートで現在のシフトリンケージの上にアダプトするのでシフトレバーの根元が かさ張り、ゴムのダストブーツが取り付けできなくなっていたと思います。

 

 

 

 

 

少し話は逸れますがそれでは71Cはどうでしょうか?71Cは71Bとはこのシフトリンケージの形がまったく異なります。画像のように巨大な鉄の塊と化したぐりぐりが71Bの支点に該当するところです。このシフトレバーはストライキングロッドと直結していませんから、左右の動きを出す為にストライキングロッド側に腕を出してそこを動かしていますので、連接部がさらにもう一箇所増えたという形になっています。もうほとんど71Bのシフトリンケージの上にもう一つシフトリンケージを乗せたようなもので、それであんなに巨大なリヤエクステンションになったのですね。

裏側です。


これも分解して71Bと比較してみますがレバー自体の長さは変わりありません。巨大なぐりぐりは71Bの軸受けが画像のような薄いナイロンブッシュで磨耗や振動などが出たために変更したのだとおもいますが、それにしても大きくしたもんです。また、シフトレバーは2重構造になっていて間にゴムを焼き付けて振動対策となっていますが、それでシャフトの黒い部分がものすごく太くなっていて、それと引き換えにダイレクト感はスポイルされたと思います。


で、問題のクイック度ですが画像のとおりほとんど差はありませんし、全長もほとんど同じなので71Cの前後シフトストロークは71Bとほとんど変わらないはずとおもいます。

 

ただ中間にもう一箇所連接部を設けたことで左右のシフトストロークも変更することが出来るので71Cは71Bに比べて左右のシフトストロークが少ないのではないのでしょうか?71Cのシフトキーの部分でも触れましたが71Bに比べて左右の厚みを増した為そのままではシフトレバー先端ではすごく左右ストロークが多くなってしまいますので、このような構造にしてそれを補正したのではないでしょうか?

あれっ、どこが出発点だっけ?分からなくなってきました。

でもまとめるとシフトの置き去り現象が出た→シフトキー部分を頑丈にした→シフトの左右ストロークが増えた→シフトリンケージを2重構造にして左右シフト量を変更できるようにした→リヤエクステンションのシフトボックスが巨大化した

とこのような経緯をたどったのではないでしょうか?

 

私は部外者なのでこの激しい設計変更の真意は知りえる立場にありませんが、この変更がイレギュラーな原因で発生した不具合を何らかの形でまるく収める為に成された過剰適合でないことを祈ります。

 


そして面白いことにこの71Cのシフトレバーにもクイックシフトバージョンが存在します。やはり71Bの場合と同じくシフト支点から先の長さを長くしてクイック化していることが分かります。でもこれってすごく作るのが難しいはずなんですが、どうやって作ったのでしょう。この丸いぐりぐり部は研磨されていますが、この加工は非常に難しくジグや加工設備も特殊なので、現実的には純正品を作っているのと同等設備と技術を持っているところでないとこの製造は出来ないような気がします。

 

 

 

 

 

 


話を71Bシフトのクイック化に戻しますが、このようなものを造りました。上側はケンメリスカイラインのノーマルシフトレバーですが、それにたいして下側のが私が造ったクイックシフトです。支点から計ってレバーが14mm長くなっていて30%シフトストロークが短くなります。

 

また支点から上側のシフトレバーを40mm短くしていますのでここで18%シフトストロークが短くなり、トータル35%シフトストロークを短く出来ます。

 

そして支点周囲の形状も丸型から小判型に変わっていますが、これによりより広い面積でストライキングブロックと接触することになりブッシュに無理な力がかかりにくくなります。

そしてこの自作クイックシフトレバーに組み合わせるストライキングブロックも当然このスパン拡張に合わせて長くしなければ意味がありませんが、私はこれを探し出し、さらにおまじないを加えてこれを造り出しましたので、これなら57mmの支点からのスパンに適合します。


そしてこれがケンメリスカイライン用に造って取り付けた実例ですが、シフトの前後ストロークは片側45mmから30mmへ減少していましたので、元のストロークの65% つまり35%のクイック化です。例えば1STから2NDへの総シフトストロークは90mmから60mmへ減少します。

 

ただ当然シフトに要する腕力は35%増えますので、腕力を鍛えねばなりませんし、またシフトの動く範囲が狭まったので少しでも動かす方向を誤るとシフトミスするリスクが増しますので、男のシフトレバーまたは零戦仕様ということになりますね。

 

 

 

 

そしてこれはおまけですが、フェアレディーS30Z用の同様のクイックシフトバージョンもあります。

こちらはレバーに曲がりがありますので造るのが少し難しいです。

 

 

 

 

 

さらに、71Aはどうかというとすごく古典的なビンテージのお姿ですが、感じ的には古い工作機械の鋳物のような美しさがあります。機構的には71Bと似ていますというか、71Bがこの廉価版といっていいと思います。


71Bと大きく異なるところは右側に張り出しているアウトリガーのようなもので、これは左右にあり下側からプランジャーピンでプッシュされており、シフトレバーの左右の動きを中立に保つ働きをしています。従ってこのプランジャーのスプリングの強さを調整することで操作感の変更が出来ると思います。

 

71Bではこれが1個のプランジャーでカム山を押すタイプに変更されています。おそらく原価低減の狙いとおもいます。あと71Bの方がより内臓式になり機構部が外部にさらされないし、オイルモレを防ぎやすかったと思います。