2012年12月11日

だいぶ寒くなってきましたので、屋外作業は身にこたえます。かといって私の工房は隙間風だらけなので屋内でも相当寒いですが・・・。なるべく屋内でできる作業で、71BコンパチCを創る作業を進めます。

今回はS14シルビア用のバックシンクロ付き71Cがドナーとなります。

シンプルではありますが、部品的には少し重くなっているかもです。

調べてみるとこれでもバックのシンクロスリーブはかなり攻撃されています。

せっかちな人が多いんですね。

 バックもシンクロ無に比べれば全然健全だし、そのほかの部分も非常にきれいで、丁寧な取り扱いで有ったことがうかがえます。

 

 

 

ミッションの程度としては良い方です。シンクロやギヤに変なスラッジの付着や傷などが少なく、きれいな光り方で稼働していたことが分かります。

このタイプはカウンター後端のベアリングがローラーベアリングで強度が大きいです。(画像2枚目)これは高級ベアリングで非常に高価だし、さらに現在では製造廃止で入手できません。

不自然に刺さっているロッドはリアエクステ内のシフトロッドを外して仮置きしているものです。

シフトの様子が分かります。(画像4枚目)

分解する前にリビルトに必要な部品を揃えます。ボールベアリングはすべてメタルシールドを使いますが、標準はオープンタイプですのでオイル管理が悪かったりするとベアリングが摩耗しますが、それを防ぐことが出来ます。ミッション前後のオイルシールも新品に交換することでミッション外側にオイルが漏れて汚れることを防ぎます。

画像には無いですがフロントカバーのガスケットも新品に変えます。

 

 

これ以降、自分の記憶力に自身が無いので自分の備忘録としてあわてて記録している部分が多々出てきますが、読む人には意味不明になっているかもしれませんが悪しからず。通常ミッションを実際に使用するには意味の無い事柄ばかりです。

 

 

全部分解した後、ギヤとシンクロの状態、シンクロ摩耗の程度判定をして、組みつけに入ります。

背後に見えるのはスペシャルメインドライブシャフトで、当然71Bの長さで、71Cとは異なりますし、スピードメーターアウトプットの位置が全く異なります。また各部の寸法、特に軸方向の寸法が少しずつ異なります。直径は0.01mmの単位での差は有りますが、同じといっていいと思います。これらの寸法は71B・71C双方を寸法取りしてCAD(キャド)にインプットして照合しています。 また、ギヤ固定方法が大きく異なるので、或る工夫をしないとギヤの固定が出来なくなり、非常に危険です。この為には旋盤とフライス盤が不可欠で、長い間かけて準備した私の工房の設備をありがたいと思った瞬間です。

私はこの方法に確証が持てるまで、実際に自分の愛車にこのコンパチCを取りつけてサーキットで試走することで微調整を繰り返して得た結果です。

 

手前分解してあるギヤは2速のダブルシンクロのパーツです。

 

 

 

一番左が1速ギヤですが、シンクロは71Bに比較して格段にサイズアップされています。

中央上がシンクロスリーブ これをシフトフォークでスライドさせます。下はシンクロハブでこのスプラインが280馬力を受け止めます。

右側は前図で出てきた2速ギヤ ダブルシンクロで金色の輪っかが2個とシルバーのテーパーリング1個で成り立っています。

これはクリアランス的に都合が悪い例です。クリアランスの成り立ち、71Cに設計変更したときの設計者の思考回路をバックツーザフューチャーすることで何故こうなったのかを類推します。そしてそれを補正してゆくのです。私ならこう設計すると・・・・。 

 

71Cは31.5mmですが、71Bは29mmです。いつもこれを失念してパニックになります。

 

また71Cの2NDギヤ受け面厚は32MM ハブ厚は18.2mmでした。あとから71Bと比較します。これが異なっているはずです。

左から 2速 シンクロ機構 1速 と組みました。

この状態になればOKです。

何も考えずに組むとこうなりません。

かく言う私も今回 何回か組み合わせを失敗してやり直しました。

 

1STの内部のニードルベアリングが受け面からはみ出していないかチェックが必要です。

左からバックギヤ シンクロ=ここはなぜかキータイプ そして5速ギヤ=このベアリングは半割です。なぜ?シンクロは普通サイズだと思います。

 あとから思い当りましたが、このシンクロはおそらく71Bと共通なんではないかと思います。だんだんヘアーピンタイプにキーを変更してきたのですが、71Bのこのメタルキータイプが在庫でかなりの量残っていたんだと思います。それで、ここで在庫処分しているのでは・・・というのは考えすぎでしょうか?でも、わたしならそうします。

 

 

B-5のシンクロスリーブは面取り側が5速側です。目視では差異が分からないので、これを覚えておかなければなりません。シンクロキーは前後は無いようです。

そしてこれが3速ギヤと3-4シンクロ機構 

71Bより大きくなってしかも、やはりダブルシンクロです。

 

キーはヘアーピンタイプです。 

そして3速とシンクロを組みましたが、ここでも大きな問題点があります。

画像は都合が悪い例です。このまま組んだらとんでもないことになります。

この様にならないように、スラスト方向のクリアランスを一つ一つ測って、

スペシャルパーツで調整します。

 具体的には、他のミッションで使われている2.8mm厚焼き入れワッシャーを流用し、スプライン干渉部のみ旋盤にかけて超硬バイトで削り込んでいきますが、切りくずは真っ赤に熱せられて燃えてしまいそうな勢いです。最近の超硬バイトの性能はすごいです。

 またもうひとつスナップリングはなるべく厚手を選択し、リング溝部だけペンシルグラインダーに超硬カッターを付けて削り取って溝にしっくり入るようにします。

 

最終的にスラスト方向ガタが極力少なくなるよう組んでいきます。

スラストが大きいとギヤが踊り、長い間にはガタが大きくなり破損に至るそうです。

何とか組みました。ただのワッシャーとスナップリングを取り付けただけではありません。

両方とも裏面でいろいろ工夫しています。

ワッシャーは表面が焼き入れ研磨されていて、スラスト摩耗を防ぎます。

そしていつもの様にメインドライブインプット=4速とカウンター4速を同時に打ち込んでいきます。これは同時でないと組めません。

上側のメインドライブにはシンクロリングが未固定のままなので、カウンターギヤを打ち込む度に踊りますので、これを左手で押さえつつ、同じくシンクロハブにはヘアーピンの様なシンクロキーが3か所挟んで有るだけなので、ちょっとした衝撃で外れるのでこれに注意しつつ、当金のパイプを左手の親指で持ちながら右手でハンマーで打ち込みます。

 打ち込みだけにあんまり集中すると、シンクロリングがずれていることに気付かずそのまま叩き続けて、気が付いたらシンクロリングがオシャカになっていたなんてこと、・・・ありました・・・。

 

 

 

なんとか

組み付けは完成です。

この状態で各部の回転 シフトスリーブの動き スラスト隙間 バックラッシュなどを確認します。

 

 

全体的にはしっかりとまとまりよく組みつけられ、素性の良いミッションであったことが伺えます。

 

また今回は、カウンターの前端にギヤ打音防止シザーギヤーをそのまま移植して残します。

バックシンクロ+シザースギヤで71系の最終の輪廻に変身しました。

 

 

フロント リア ともにオイルシールは無条件で交換します

 

 

シフトフォークも組みつけて一応内部の組みつけは完了です。

今回は、カウンター前端にシザースギヤを取りつけていますのでフルスペックです。

そのために、フロントケースのシザースギヤ部は逃げ加工を追加しています。

アルミ粉だらけになりながら、リューターでケースの内側を逃がします。

 

 

ギヤ比について

              1速    2速    3速    4速    5速

71BコンパチC α4号機 3.321 1.902 1.308 1.000 0.759

71B5速標準       3.321 2.077 1.308 1.000 0.864

 

ですので、5速が超ハイレシオです。高速がほとんどという現代の道路事情では、5速が高い方が燃費改善、静粛性向上に貢献しますし、もっと高速でもL型のトルクのおいしいところで走れます。

 

シンクロ残量 (規格1.8mm 限度 0.8mm)

        1速    2速    3速    4速    5速       

        1.4   1.4   1.3   1.4   1.4

バックラッシュ

        1速    2速    3速    4速    5速

        0.06  0.11  0.08 (0.12) 0.01

 

 

フロントケースに組みつけ、このあとリヤエクステンションも組み付けますが、どちらもL型純正71B用ですので、当然71Bと完全コンパチです。

今回はなぜかバックランプスイッチが機能しませんでした。そこでチェックするとカムのストロークが不足しているというか、スイッチの付きだしが足りないという状況であることがわかり、画像の一番左の様にネジの根元を3mmほど旋盤で追いこんで突き出しを増したら問題なくOKとなりました。

スピードメーターのアウトプットギヤです。これにはギヤ歯数で何種類かあり、デフの減速比により選択するようになっています。それなのに相手側のウォームギヤはすべて共通なんですが、どうしているか分かりますか?実は、このギヤのギヤ軸は保持部分に対して中心がオフセットしています。それで保持機の回転位置をギヤサイズによって調整することでギヤ間ピッチを調整しています。

 71Bではこのアウトプットが機械的な同軸ケーブルとなっており、それがバルクヘッドを貫通してスピードメーターのお尻まで機械的につながっていますが、71Cでは中期からパルスカウント方式に変更になってきています。現代の車はほとんどパルスカウントになっていると思います。

画像は左が71B用 右が 71C用。71B用のほうがありがたそうに見えます。かっこいいです。 

フロントケースに組んだ時点で、シフトチェンジと回転を確認します。

ここで確実に確認しておかないと、あとで問題が出たときにフロント、リヤどちらに問題がるのか分からなくなり、全部初めからということになりますので、ここで必ず関所を作ります。

 

 

 

画像がかなり飛んでいますが、すでに71Bのケースに取りつけてシフトチェンジの感触をチェックしています。シフトのサイド方向の動きと角度は申し分ないようです。直感的にはシフトレバーが全体的に左側に寄ってしまいそうな気がするのですが、この時点ではほぼ中央がセンター3-4速で、違和感は無いです。ドライバは仮にシフトロッドの抜け止めで差しています。

もちろん前後へのチェンジも問題なく出来ます。今回はバックシンクロで変なリンクは廃止されたので、バックにもステキな感触でチェンジできます。今回はバック誤操作防止機構付きのリヤエクステを使いますので、5速150kM/hからシンクロ効かせてバックに入るなんて命取りな操作にはフールセーフが働きます。

 

この後、何回かシフトチェンジの感触を確かめたのですがやはり1速が引っ掛かり気味です。どうしてもこうなってしまう事は、71系ミッションのシッポのページでも類推していたことでした。

 そこでやはりコントロール部分を旋盤かけて削ります。今回は5.5mmまで削りました。両サイドは7mm残し、中央部まで半分は削る必要があります。

 

 

 

実はこの後シフトして各ギヤに入れてインプットシャフトを回して回転チェックするのですが、2速で問題がでました。何かが内部で干渉しています。今までの3台ではこの様な事は無かったので、バックシンクロ付きの特有の現象の様です。

 最初はシフトロッドの半月逃がしが不足してギヤと干渉していると思ったのですが、2速のみというのも変です。何回もシッポ=リヤエクステを脱着して当たりそうなところをチェックしますが分かりません。10回ぐらいやったでしょうか?・・・・でもだんだんわかってきました。そして修正しました。このエクステ(フランジが薄いタイプ)のバック誤操作防止機構は71Cより5mm低いです。

逆にいえばシフトロッド側が5mm長いということになります。これに適合する部品を探して交換しました。

 

この様な原因不明の時やアイデアが浮かばない時は、2日ぐらいずっと考え続けると、説明しずらいですが頭の中にリヤエクステンションの内部でシフトロッドやギヤがどう動いているのか自分がその中=リヤエクステの中で小さくなって存在してそれを眺めているような状態にトランスする瞬間があります。そういう状態になるまでが大変なのですが、そうなるんです。で、わかるんです。

 

3日目でならなかったら一旦すべて忘れ去ります。それ以上やっても前進はできませんから、別の仕事を始めます。そしてしばらくしてそのことが再び頭に浮かぶようになったらもう一度チャレンジします。そういうことを3種類ぐらい並行して進めて行くのが、在職中も含めて何年も前から私のスタイルになっていますが、はたからみたら不真面目・飽きっぽい・統一性が無い などと思われるかもしれません。

 

 

 

なんとか完成しました。今回は中身は71系輪廻の最終昇華形、「2、3ダブルシンクロ、バックシンクロ、シザースギヤー付き」フルスペックです。自分のに付けたいです。が、この前交換したばかりなのでもう少し耐久を続けます。

 71BコンパチC α8

リヤエクステはDR

ストライキングレバー S13 Bシン

ベアリングはすべて 完全密閉シールド

シンクロ残量  1.3  1.5  1.7  1.1  1.3

 

 

 

こちらでこれと同じ手法で作った71BコンパチCα1号機を私の愛車で試験した様子が見れます。

 

 

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