Z432Rのことーーー2017初夏

2017年6月30日

今回新たにお世話することになったこのZはかなり数奇な運命ともいえる生い立ちが付いて回る車といってよいと思います。

私の工房にやってきました。

 

Z432関連の人たちが見ればああ・・あの車というような特別存在であると思います。

この車は出所のはっきりしたZ432Rで、現存する本物のRで動いているものはそう多くないですが、おそらく世界中でも10台に満たないのではと思いますがこれがその中の1台です。

 

もともとは有名な静岡浜松のコレクターが長年持っていたものですが、数年前に九州に渡って、その後今年になってまた静岡浜松のオーナー(前とは別の人です)が購入したものです。

よくよく静岡に縁のある車だなと思いますが、下世話な話でそのお値段も驚きです。

「何と600万円かー Zとしては高いかな・・・

んーーーん アレー桁が一桁違う・・・--」

 

Zの世界の人たちはどう桁が違うかはお分かりだと思います。(もちろん”0”が一つ多くなります)

 

私のところに来た訳は九州のさる有名なスーパーカーディーラー(こちらが販売仲介者)から静岡に販売したこのZ432Rの面倒を見てくれないかという一本の電話からでした。

 

触るのにも気が引ける貴重さのお車ですが、静岡人であることや、自分もこのZ432Rを見てみたいという探求心もあり引き受けることにしました。ただし、お預かりはしませんよ。やっぱり。無理です。で、通いでのお世話ということに。

 ちなみに私がZ432Rに手を入れるのはこれで2台目となります。1台目の記事は こちら

Z432やハコスカGTRはたくさん扱いました。

かなり凝った形のファンネルをつけていますが、ご自分でいろいろ検討して作ったとのことです。

 

エンジンも言うところが無いほどきれいです。

ミッションは純正の71A3分割。こちらもきれいです。

下回り 40年前のものとは思えません。

画像がぼけましたが、トンネル上のエンジンスイッチ・10000rpmタコメーター・100L燃料計・半抜きステアリング・グローブボックスレス・コンソールレス・バケットシート・オーディオレスなどなど全くスキがありません。

100Lタンクなのでスペアタイヤはこのようになります。

今回のお題はこのデフが目玉となりそうです。

 

工房前のいつもの試験路を同乗させていただきましたが、エンジンはすこぶる好調ですが、デフ・ミッションあたりから音が出ていて、高速になるほど音が大きくなります。アクセルオンオフほとんど差がありません。

 

高速ほど音が大きくなるならば、デフの可能性は高いです。ミッションはエンジン回転数と関係が深いはずです。

デフはR192

デフをやりましょうということで方針が固まったので早速観察をいたします。

                                           左が180 右がR192

サイドフランジ幅   225  250

コンパニ~リヤマウント 500 510

コンパニ~サイドフランジ400 400

リヤマウントピッチ   80  80

重量 (LSD付)  31Kg  31Kg

 

 

R192・R180ほぼ同じですが幅と長さが少し大きい

今回右側のR192をオーバーホールしますが

現状 ギヤ比は40:9 4.444

バックラッシュは実測0.21 少し大きめ

オーバーオールプリロード 2.73kg/CMとかなり少ない(しかもシール付きで)

LSDのイニシャルトルク 3.5~4.0Kgとまずまずの値

ピニオンのプリロード   1.28Kg かなり少ない(摩耗している)値です

 

入手できる補修パーツは限られますので、完璧にするのはかなり難しそうですが、プリロードは何とか復元したいものです。

 

 

R192のピニオンシャフトを完全分解しました。

 

分解前のプリロード測定でほとんどプリロードが無かったこのピニオンベアリングはかなり摩耗しているのか、シム調整が甘かったのかどちらでしょう。

R192のLSDASSY分解しました。

分解しましたがプレート類は4枚構成です。フリクションが2枚でスプリングプレートが2枚

 

ピニオンは2個です。

カムはニスモタイプよりもっと角度の浅いカムで効きは良さそうです。カムで押し易くして過大な無理な力はフリクションプレートを滑らせてある程度逃がすという構成でしょうか?

 

プレート類はどれも1.95mmと若干薄く、新品の2mmからある程度摩耗しているようです。

サブアッシー完

再度イニシャルトルク測定で4.5Kg~5.0Kg出ていましたので規定内です。

最も重要なピニオンリヤベアリング

 

新品に交換します。

そして大事なバックラッシュの測定

全周の6か所で測りますが、最初は分解時と同じく0.19~0.23mmと大き目の傾向でした。(規定は0.15~0.20)

ここからサイドベアリングケースとデフの間にあるシムを入れ替えてこれまた何度もやり直します。結局0.05mmでは足りず、0.10mmでやっと落ち着きました。

 

バックラッシュは0.17~0.20mmとなりました。

リヤカバーも取り付け、完成です。

デフは何回も調整が入るので、根気と体力(重いので)が必要です。

 

R192デフのオーバーホール詳細は こちら


2017年7月21日

Z432Rのデフ交換

 

R192デフが完成したので交換作業に入ります。

Z432Rのご来訪です。

いつもの一緒にやっている車屋さんで作業に入ります。

リフトアップ。ここから転落なんてことないように祈ります。

マフラーは純正に似ています

ガソリンタンクはこの特徴的な角ばり形状の100リッタータンク。ガソリンフィラーチューブも専用の様に見えますが私はここに知識がありません。

このデフを交換してゆきますが、作業そのものは普通のZと同じで良い様です。

R192は後ろに長いのでデフオイルの入り口がメンバーに隠れてしまいます。無理すればプラグの作業は出来そうですが、今回はあらかじめ取り付け前にオイルを入れておきました。今後の交換時はメンバーを外すか、特殊工具を作るかしないとオイル交換が難しそうです。

取り付け完了

無事に地上に戻ってきました。

 

このあと今回は今まで以上に入念に試走しましたが今回問題となったデフの騒音はきれいに消えました。交換前は40Km付近からはっきりとわかるガー~ゴー音がしていて、それが速度に比例して大きくなり、100Km以上の高速では轟音になっていたのですが、それがすっかり無くなりました。

 

ベアリングをほとんどすべて(ピニオン前除く)換えていますので大きな問題は出ないはずです。

 

この日はそのまま浜松のご自宅へ戻っていきました。

 

 さて後日ですが、確かにひどい騒音は無くなったのですが、今度は逆にデフ独特のうなり音がわずかにあるというところで気になりだしたようです。40年経ったデフとしてはそれ程大きなうなり音ではないと思うのですが、防音材もなく鉄板も薄い競技用ボディーのこのZ432Rでは下回りの音はまともに入ってきますので余計に耳につきがちです。

 

ということで継続してデフの改善作業は続きそうです。