2014年9月29日

 

Z432用71A3分割ミッションですが、オーバーホールを依頼されました。

3分割ミッション自体はまだときどき見かけますが、Z432のS20エンジン用となるとフロントケースが専用の為なかなか希少となっています。またそのために、L型用などの71Bや71Cへのコンパチ化が難しいです。

 

今回もオーバーホールで対処します。

今のところシンクロ4速までの在庫やシール類を持っていますのでなんとかなります。

ベアリングは最新のものに変更していきます。

この辺りオイル漏れが見られますが、シフトリンケージのアウトリガーのようなところのプッシュピン部から漏れていそうです。

 

これからオイルを抜いて分解に入ります。

ドレンプラグの鉄粉付着はこれくらいでしたが、まあ普通より少し多いかなのレベルかな。

この部分のスラストシムはちゃんと入っています。

こちら側が本体側のカウンターベアリングですが、71Cに比べると全く小さいですね。

 

しかし問題はこの部分にはカウンターのスラスト調整のシムが入っているはずなのですが、これにはありません。

スラストがシム無で適正値なら無くてもいいのですが、これはどうでしょうか?測定しないとわかりません。

リヤエクステンションが全然抜けないのでおかしいなと思ったのですが、良く見るとシャフトの中のスペーサーがドライバーのようなもので打ち込まれているので、荷締まってしまっているようです。なぜこうしてしまったのでしょう。

 

これを外すのに少々特別な作業が必要でした。でも無理にエクステンション叩き続かなくて良かったです。気つかずに強打するとエキステンションにヒビが入ることがあります。

そして良く見るとエキステンション側の内周も何かでこじったような跡があります。まだオイル漏れに直結するような傷では無いですが何をしようと思ってこんな大事なところへ何かを突っ込む様な事をしたのでしょう?。機能を判っている人なら絶対にしない作業です。

 

また画像忘れましたがこの奥のベアリングとCリングの間に入っているべきスペーサーが存在しませんでした。スラストを受ける所では無いですから直接の問題は出ないかもしれませんが、どこへやっちゃったのでしょう。余ったはずですが。

3分割ミッションのケースとギヤアッシーが分解できました。

 

ざっと見それほど消耗は見られませんのでギヤ類の程度は良い状態だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時点で現状のギヤ精度をチェックして損傷度合いを類推します。

 

    1ST  2ND  3RD 4TH   5TH

BR 0.13 0.08 0.13 ---  0.08

EP 0.10 0.32 0.05 ---  0.18

 

でしたが、2速のEPは少し大きすぎますね。逆に1速が小さすぎます。

 

ただこんなことをやられています。中央部のメインシャフトを締めこむ一番大事なM38の六角ナットですが、やはり何かでつぶされていて工具さえ入らない状態になっています。では何を使って締めたのでしょう。謎です。まさか・・・タガネ・・・・。

どんどん分解していきますが、バックギヤのメイン側ですがやはり欠けや変形が多く見られますが、まあほとんどはこのような状態で普通ですね。部品があれば交換しますが無ければ修復するしかないです。

バックのカウンター側。やはり欠け変形が見られます。

 

バックに入れるときにしっかり止まってから1秒ほど間をおいてシフトすればこんなことにはならないのですが、結構ブレーキ掛けてまだ少し惰性で動いている間にクラッチ踏んでチェンジする場合が多いのでこのようになります。

 

ところで、この欠けた破片はどこに行くかというと、ミッション内でオイルと一緒にかき回され、ベアリングに達します。オイルフィルターなどはありませんからオイル交換しない限りずっと踊り続けます。ベアリングは球がむき出しのオープンですからすごく悪影響が出ます。

カウンターの精度チェックですが振れで0.025mmほどですがまあまあです。

いきなりの画像ですがメインベアリングを固定するプレートを締めつける皿ネジですが右側の今までのプラスネジからヘキサゴンネジに換えていきます。

ベアリングも全て右側のオープンタイプから左側のシールドタイプへ変更してゆきます。

1速のシンクロのサーボキー部分です。1速はサーボが片側だけです。

 

問題は外周にあるギザギザのシンクロスリーブかみ合い部ですがまるまりが見られます。

c型をしたシンクロリングもこのように溝状に摩耗してしまっています。

この部分については画像のようにダイヤモンドやすりで1歯ずつとがらせて行きます。このやり方でなんとか修復できるレベルでした。

 

シンクロリングは新品に交換します。

2速メインギヤですが縦方向にギザギザ状に立っている部分がシンクロスリーブがかみ合う部分となりますが丸坊主どころかほとんど平面になっています。これでギヤを入れることはすごく難しかったと思います。というか、これでギヤ入れれる人はギヤチェンジの達人です。この部品は2速ギヤとスプライン圧入されて一体となっているので、交換するならギヤごととなりますが71Aのギヤはなかなか入手できません。

これだけ損傷していると1速のようなやすりで仕上げぐらいの方法ではとても修復できません。

 

しかたなく今回は奥の手を使って現品を修復しました。すごく手間がかかりました。

メインシャフトも測定しますが、0.01mm振れでこれは良好

サブアッシーまで来ました。

ここでまたもや問題発覚です。カウンター先端のベアリングを取り付けようとしたのですが、全く打ちこめません。変なので径を測定してみたら先端側が0.15mmも膨らんでいます。思い起こせば外すときにやけに固かったのはこのせい。

 

推測すると前に組んだ人がこの先端を強烈に何かで叩いた結果、先端が座屈して膨らんでしまったようです。

仕方なく、画像のようにペンシルグラインダーで少しずつ修正して0.00mm~0.02mm以内の寸法に仕上げます。

 

 

当然ですがここの寸法は重要で無理にベアリングを打ち込むとベアリングの内径が押されてクリアランスが狭くなり、結果としてベアリングが焼きつきやすくなります。組んだ時は判らないですけどね。

あばた状に欠損し、丸まったバックギヤ

修復


同じくバック5速のスリーブ。やはりあばた状欠損とまるまり。

修復後


そしてここでとどめを刺されました。

丸いリングスペーサーの上に乗っている丸まった鉄くずの中に十字の様なものが見えるものは何だと思いますか。

 

このリングスペーサーの中には回り止めのベアリング球が1個入っているのですが、それを無くしてしまったのでしょう。それでそれに似ているものと言うことで、この十字頭ボルトの上を切り取って使ったんでしょうね。

後ろ側も組み終わりメインシャフトのM38ロックネジも締めこみます。タガネで叩かれていたナットも修正してレンチがちゃんとかかるようにしました。ため息・・・・。

ギヤ部分は完成です。

 

この中でカウンタ先端ギヤの取り付け間違ったところがありますが、ケース組み付け後気がついて一度やり直しています。

 

やはり基本を守らないと痛い目に会います。

 

ギヤ精度

 

    1ST   2ND   3RD  4TH  5TH

BR 0.12  0.15  0.22  ---  0.15

EP 0.18  0.25  0.07  ---  0.10

 

1STのEPが規格よりやや小さいですが、これ以上調整すると別のところに悪影響が出てきます。

このミッションは分解前からこの傾向がありましたが、やはり個体差があるようです。

ここをどの値でセットするかは組む人の差の出る部分かもしれません。

シフトリンケージの部分ですがリヤエクステのオイル漏れの原因のOリングを交換していきます。

特にシフトレバー左右の中立を保持するプランジャーが画面下の丸いピンですが、オーリングはぺしゃんこにすり減っています。ここはもともとオーリング線径が細く漏れやすいので左側の線径の太いオーリングを探し出して交換しています。

これが今や貴重なS20エンジン用フロントハウジングです。

そしてケースに組んでベアリングの軸方向クリアランスの調整に入りますが、ミッションに魂を入れるときです。(大げさすぎか・・・)。

 

左側のメインインプットベアリングのシムはもともと付いていたものでドンぴしゃでした。

 

しかし、シムが全く入っていなかったカウンター側のクリアランスは、測定してみるとなんと1.05mmも隙間がある状態でした。

1.05mmですよ! 規格は0.2mmm以内です。

 

ったく。  手持ちのシムを探し出してきて調整しています。

外観だけでは素性が判らなくなるので識別のためにここに刻印を入れています。

 

いつも夜組み上げて次の日まで液体パッキンが固まるまで待ってから、次の朝簡易試験機で回転試験するのですが、どうも気になります。

完成間じかになった時は今までの画像記録を見直して作業のおさらいをするのですがどうもここが気になります。

で分解することに・・・・・。

 

・・・・。やっぱりです。

 

ここに入れるべきオーリングが見事に付け忘れています。

いつも他人の欠点ばかりあげつらうのですが、人間ってやっぱこんなもんですね。

 

ただ、フランジタイプの場合のここは外観から見えないのでチェックが難しいです。

固定観念に縛られた頭では取り付けてから中を疑うのは難しかったですが、

今回は危うく気がついて良かったです。

 

まっ、回してみればオイルだだもれで判ることですけど。

で、回転試験に入ります。

 

音、振動問題なし。

オイル漏れなし

バックランプスイッチok

スピードメーターギヤok

各シフト良好 ただ、やはりハブが丸まった2速は修整はしたもののほかと比べればシフトが重いです。

 

オイル温度上昇量は今回も4度の上昇で非常に抵抗の少ないミッションであることが判ります。

(71cは10度上がります)

 

これで完成です。

 

これを宅急便で送ると実質額40万円のものを送ることになりますが、金額もさることながら紛失したら入手できない危険が大いにありますのでドキドキです。