2012年11月16日 障子の張り替え
ほとんどの方は障子の張り替えは自分ではやらないでしょうし、障子そのものが無くなりつつありますので興味のない方が多いと思います。したがってこのページは自分の備忘録として記録しておきます。
次に張り替えるのは5年後ぐらいでしょうが・・・・。
私が子供のころつまり昭和○○年ごろは、12月になると大掃除の一環として必ず障子の張り替えを一家総出でやりました。子供としては作業の間中 周りを遊びまわっただけですが、一つだけ楽しみがありました。それは張り替える障子の古い障子紙をはがす作業です。普段の生活の中では障子に穴をあけたり破いたり落書きしたりするとこっぴどく怒られたものですが、この日だけは解禁日です。こぶしで、指で時にはつま先でパツンパツンと穴をあけて破きまくります。普段あんなに怒られていた事が、ある日突然どんどんやれとせきたてられる行為になるというところが子供心に不思議でした。
そんなことを思い出しながら冬まじかの乾燥し切った庭に障子を引っ張り出して作業です。
手順としては古い紙をはがして新しい紙を貼るだけのの作業ですので、楽勝ということでどんどん作業に入ります。
はがし方は水を付けて糊をふやかしてからはがすということはおぼろげながら覚えていましたので、タオルで水を含ませて桟に沿って水を付け、しばらく5分~10分くらい浸み込ませておきます。そのあとならペラペラとはがれるというはずだったのですが、頑固に残る部分があるのです。そこにはさらに水を付けたタオルでこすれば落ちるということになっているのですがだめです。取れません。
仕方なくここはマイナスドライバーを使ってスクレーパーの要領ではがしていきます。そうです、エンジンのヘッドガスケットの残りかすをはがす時と同じです。あんまり強くやると桟=ヘッド面に傷が入りますので角度が大事です。
古い障子紙を取り終わったら、ついでですからというかこの時にしかできないのですが、入り組んだ桟の隅まで絞った濡れタオルで全部拭いてしましまいます。全体に水をかけて洗ってしまう人もいるようですが、桟がそったりして痛む様ですので御法度です。
普段紙が貼られていると目立たないのですが、この障子の造形というのは実にきれいに作られています。交差している部分はどうしていると思います。この字形に掘りこみを入れてそれを向かい合わせに組み合わせているのですが、その状態でそれぞれの面に目で見ただけではまったく段差が生じていません。段差があったら障子紙を貼った後にその段差が汚く目立ってしまいます。とにかくすべての交差面はびっしりと平面です。プラスチックならもっときれいにできるのにという意見が蔓延したら日本も終わりかなと思いますが、もう半分くらいそうなってますよね。そして当然ですが、この全体のどこにも木の節は有りません。あったらそこでぽっきりとなるでしょう。ひょとしたら厚めに作っておいて後で裏表を仕上げ削りして規定の厚みに仕上げているのでしょうか?
画像で小さい方は雪見格子というもので左側の引き戸の両サイドに掘られたスライド溝の中にはめ込まれます。そしてガラス面を状況に応じて障子にしたりガラスにしたり調整出来ます。1ボックスカーにあるスライド窓ガラスみたいなもんです。
何とかはがし終わりました。これで1/3分です。
この後2時間くらい乾かすと指示している場合もあるようですが、多少湿っていても問題ありませんでした。
さて、ここからは貼りこみに入ります。
必要なものは 障子紙 のり はさみ カッターナイフ 定規 テープなどですが最初はどこの家庭にもあるものですからそれを使えばいいやと思っていたのですが、これが間違いでした。
順を追ってその理由と道具が出てきます。
障子紙には素材として天然和紙と通常の紙がありますが、この通常の紙はどうも洋紙っぽくて見たとこ真っ白できれいそうに見えるのですが、障子紙としては×です。ひどく安っぽくなってしまいます。
紙だけは最上級を使うべきです。といっても私の場合ホームセンターの範疇で ということですが。
画像は 障子紙を仮セットしているところですが、セットするとはどういうことかというと、画像では左側1面を桟の貼るべきところぴったりに合わせます。そして動かないようにマスキングテープで固定します。こうすれば1面はカット不要となります。
マスキングテープは剥がした後糊が残らないので最適です。カーボディー塗装と同じですね。これは糊を付ける前にやらなければなりません。なぜなら当然 仮合わせしたとき思わぬところへ糊が付いてしまうからです。
セットしたら、ロールを場外に戻しておき、そのあと桟に糊を塗っていきます。
子供のころ見たのは フエキ糊とすごく幅の広くて穂先の無い平刷毛 です。
でも、今はワンタッチ糊というものがありまして、スマートにやれると思ったのですが、どうもこれが間違いだったようです。
これがワンタッチ糊で、右側にガイドが付いていてそこを桟の淵にひっかけながら糊をチューブ状に押し出してゆきます。簡単にできますし、糊がはみ出すこともありません。ただ交差部ではガイドが引っ掛かるので注意が必要です。
で、何故これが良くなかったのかですが、貼った後で気が付いたのですが糊がたくさん付きすぎるのです。もう、べったりと付きます。チューブ状の時は細いのでこりゃ足りんなと思っていたのですが、それが貼るとつぶされるのでこんもりと桟の上に残ってしまうのです。そしてさらに悪いことは、粘度が高すぎるのです。何故粘度が高いかというと、粘度を低くするとさかさまにした時流れ出てしまうからだと思います。利便性のみ追及して消費者に受けがいいように作ったとしか思えないような、まさに21世紀を象徴するような商品といっていいと思います。いいすぎかなー・・・・。ていうか、そんなとこにこだわるー?・・・・。
ということで最初はこのワンタッチ糊を使ったのですが途中からフエキ糊+刷毛に先祖帰りしました。
やっぱり江戸時代からやっていたことに進化の先端があったということか。
貼ったならば次は切りですが、障子紙の余分な所を切り落としていきます。
これは完全になめていましたが、結果的にはここが一番難しいところでした。
最初はカッターナイフでいいやと思ってよくある刃を折って交換していくタイプのカッターを使ったのですが、これだと紙が完全に湿って柔らかいところに来ると切れずにそのまま引きずってしまいます。
そこで、やはり専用の道具があることを知り採用です。これがすごくすぐれものです。値段は300円くらいとリーズナブルで、しかもヘラ付きでこの両方ともこの作業に必要不可欠のものといっていいです。左がその画像ですがどこのホームセンターでも売っていると思います。左が切れ刃で右はへらです。
先ずへらの側で桟の上から接着面を押さえこみます。これにより紙と桟が完全に密着し、しかも後から出てくる切りの時にどこのラインで切るかが分かりやすくなります。
これが切り刃の側ですがメーカーは貝印 カイカットともいいますか そして刃の形は柳刃ですが、この形が濡れた紙をきるのに適しているそうです。
画像がありませんが、この切れ刃で切ってゆくのですが必ずガイドする定規、しかも金属製のが必要で
そして今回の自給自足作業の中で最大のポイントは、この切り筋を完全な直線にすることなんですが、これがチョー難しいのです。集中力、根気、体力(かがんで作業するので腰の悪い人は御遠慮ください)が必要です。さもないと切り口がカギ裂きになったり、切り損ねてだらしなく毛羽立ったりしますし、一番汚いのは切り線がよれて桟の木肌が不必要に露出してしまうことです。
この作業だけは見かけを気にするなら熟練が必要と思います。
なぜならこれらの不具合は、家の中に入った時妙に目に付くのです。
恥ずかしくて人さまに見せたくないものになってしまします。
以上、今回の作業はやけに自分の中では激した作業でした。何故なんだろう・・・。