魔界エンジン MEー6 製作開始

 静岡県内の方から魔界エンジンの製作依頼がございまして、開始いたしました。 画像は今まで使っていたエンジンを支給されたもので、ある程度はチューニングされているが調子が良くないとのことで、不具合箇所は修理してほしいという要望です。

ME-6ー1 素材エンジンの調査

ME-6-2-1 ヘッドチューニングその1

ME-6-2-2 ヘッドチューニングその2

ME-6-2-3 ヘッドチューニングその3

ME-6ー3 腰下加工

MEー6ー4 エンジン組み立て・調整

 

ME-6ー4-1

エンジン ヘッド組付け

ロッカーアームビボットブッシュを取り付けている。黒い色の長いナットの様なもの。

 このブッシュなんですが純正仕様書データーでは締め付けトルク8KG/mとなっているが、これが限界の強さで、それ以上のトルクで締めるとヘッド側のアルミが変形してしまう。ただしあまりトルクが小さいとブッシュが緩む可能性もあり難しいところだ。ネジロックを併用したほうが良いかもしれない。

メンケンした状態

ビッグバルブの突き出し寸法は42.5mmとなっている。

今回のチューニングはN42ヘッドで73Aカムでは通常はノーマルバルブを使うところを、ビッグバルブに変更している。バルブスプリングは耐久性重視の9000rpm

バルブスプリングを仮組しているが純正1.0mmスプリングシートでスプリング取り付け長は平均41.0mmとカムリフト8.8mmの73Aではほぼ規格値の長いほうの規格に収まっているのでこれでも行けそうである。

1番のみバルブを組んでいる。

カムホルダーラダー(ブルーのパーツ)を組み込んでいる。これは私がクランクラダーとともに開発したL型エンジン補強パーツです。L型エンジンはカムホルダーが間飛びして5個しかありません。

1番2番 4番 6番7番

なぜこうなのか間全く理解できません。本来なら同じ条件で全部カムホルダーを付けて7個にするべきではないかと思います。生産経済的なところもあるのかもしれませんが、一歩譲っても

1番 3番4番5番 7番

とすれば同じ5本でできたはずで、こちらの方がずっとバランスが良いです。

なぜなら、1番と7番は受ける荷重がほかのカムホルダーの半分しかないですからこのほうが良くありませんか?

 私は3番 5番カムホルダーを増やそうとかなり深く考えたのですが、ヘッドとカムホルダーとカムまで改造しなければならないので諦めました。その代わり、このカムホルダーラダーを作りました。これである程度カムホルダーに掛かる荷重を平均化できるし、カムホルダーの倒れを防げるのでカムに掛かる曲げ応力も低減できます。

反対側から見たところ。

カムホルダーの抜け具合が良くわかります。

ロッカーアームの組付けです。ロッカーアームには若干の軽量化加工とその後バルホス処理をしてあります。

ロッカーアームを組み込んでいます。1番気筒のみ組んでカムも組んでカムとロッカーアームの当たりチェックをおこないます。

ロッカーガイド厚み 3mmの時のカムの当たり

わずかにビボット側に寄っています。

ロッカーガイド3.5mmの時の当たり

こちらの方が良さそうです。

バルブスプリングワッシャー

今回は念のため0.5mmを追加で準備した。

純正1.0mmにプラスして0.5mmで1.5mmのワッシャー厚みとする。

ワッシャーを取り付けた

ワッシャーは1、0mmと0、5mmの2枚を使用

バルブステムシールを取り付けた。

良くオイル下がりで青煙が出たなどの時に交換するパーツです。

このシールを取り付けると後からではさきほど置いたバルブスプリングワッシャーのインナー側は取り付けられなくなりますので、忘れないように組付けます。

バルブスプリングを取り付けた。

スプリングリテーナーはクロモリ強化・オフセット0です。チタン製もありますが、やはりここ一番しか持たないのでクロモリが安心です。

スプリング取り付け長はワッシャー0,5を追加したので最初の41mmから40,5mmになり、規定値の中央値にセットしました。カムリフトが8.8mmなので少し悩むところですがスプリングのへたりも考えて少し強めにしました。

カムホルダーの最終組付け。

奥の方にカメアリツインスライダーのギヤも見えている。

カムホルダーをすべて取り付け。

カムホルダーラダー(青色の私が考案したパーツ)を組付け。

さてここからがより一層の集中力を必要とする作業となる。

先ずはピストンの圧縮上死点を振り分け法で正確に決め、手前側にある全周分度器の0点をセットする。ここがすべての原点になるので以降是帯にこれが動かないよう固定する。

分度器を固定したところで、赤い指示針を0に合わせて固定している。ここでは1度の差はエンジン出力に対してかなり大きな影響力を持っています。

エンジンヘッドを乗せます。

圧縮比の計算からヘッドガスケットは1.5mmと出ていますのでメタルガスケットを用意しています。

ヘッドボルトはARPの高強度ヘッドボルト

純正のヘッドボルトが頭付のボルトで締めこむのに対してARPはスタッドボルト式なのでナットで締めこみとなり、締めるときのボルトのねじれ分の誤差が排除できる良さが有ります。

ヘッドを乗せてヘッドボルトを渦巻き締めで3回に分けて締めこんでゆき最終指定の8.3kg/mでトルク管理します。

カムスプロケはバーニヤタイプを使います。

ハイカムとなるともはや純正のカムスプロケの3か所の調整穴をずらしてとか、市販品の8穴スプロケで調整してとかの神業は通用しないし、できないのでありがたくバーニヤの恩恵にあずかります。

IN側バルブリテーナーの頭にダイヤルゲージを当てて、1mmリフトした時の分度器値を読みます。

先ずは#1シリンダーのIN側の開き始めの角度を測定して設定します。

1mmリフト位置で25.5度となっています。

仕様では25度となっていますので、0.5度ずれ

ここまで何回か修正が入っています。バーニヤと言えども0.5度以下のセットとなると難しいです。

次に#6シリンダーのIN側を同じように計ります。

#6は27度となっていますので25度に対して2度早くなっています。#1と#6で差が有るので、もう少し調整してゆきます。

 

結果 IN側

    開      閉    中心角

#1 24.5  47.5  101.5

#6 25.5  48.0  101.25

仕様 25.0  48.0  101.5

EX側

   50度   22.0度 104.0

仕様 50度   23.0度 103.5

 

このように現在はセッティングしていますが、今回のようにカムチェインもカムスプロケもチェインテンショナーもすべて新品という場合は慣らし運転ぐらいでかなり馴染み摩耗誤差が出てくる可能性があると思います。

慣らしが終わったら最終セッティングをやったほうが確実でしょう。

 

これでヘッド・バルブ・カムのセッティングは完了です。