2020年1月8日
HLS30Z 帰国子女の車会復帰
テキサスから逆輸入されたばかりというこのHLS30を日本でもしっかりと走れるようにしたいというご要望でお預かりしました。
S30Z帰国子女の室内レストア
S30Zのメーターメンテナンスと照明光量激増
S30Zを夜間に運転したり、室内を見たことのある方はずいぶんと照明が暗いと感じるはずです。現代の車はメーター板の裏から照明を透過する方式ですのでくっきりはっきりメーターが読めますが、50年前のS30Zの時代は間接照明でしかもニクロム線豆電球ですので光量が出ません。明るさを調整するボリュームが付いているデラックス仕様でもボリューム目一杯上げても追いつきません。そこで、私の考えた対策は照明ランプをLED化することですが、そんなことはどこでもやってると思うかもしれませんが、そこはもちろんビンテージクラフトは出来る限り工夫を怠りません。メーター外しかけていますがテキサスの砂がここにもびっしりと堆積しています。
どんどんと外してゆきますが、スピードメーターが一番苦戦しましたが、当初からオーナーさんがスピードメーターがひどく左に回転していると言っていた理由がわかる気がするのですが、固定している蝶ナットをめいっぱい締めこんであり、指の力だけではどうしても緩みませんでした。特殊工具を製作してやっと外しました。しかもこの車は左ハンドルなのでこの方法でメーター外そうとするとどうしても左手でないと外せない様になっていまして、もう少しで左利きの応援を頼もうという気になりそうでした。
この部分もいずれは加工が必要になるのでコンソールを外しています。この最初期のコンソールはFRPでできているようで非常に丈夫です。
グローブボックスも外す必要があるのですがすでにこのように穴があります。ETCの配線を通すためだったのでしょう。この時代のボックスはボール紙のようなものでできており、少し引っ張ると破れてしまいます。
ボックスの下側でくちゃくちゃとなっている配線はこれだけですべてETCの配線で、買った時のそのままを丸けて突っ込んであります。
そしてここが唖然とするのですがETCの電源をたどっていくとこのブレーキペダルの根本のブレーキランプスイッチの配線に割り込ませています。ETCの常時+電源をここから取るのはまあ100歩譲って良しとしましょう。しかし、ETCのACC電源をこのブレーキランプスイッチのマイナス側から取っているのはどういうことなんでしょう?結果、この車はブレーキを踏むたびに例の”ETCカードが挿入されていません”のアナウンスが流れてきます。なんじゃこりゃー。
ま、とにかく本題に戻ってメーター修理に入ります。
このメーターはメーターガラスの固定が破損してバタバタしている状態なので全バラしてやり直しています。
初期2針式のこの時計も不動でしたので全バラで修理します。モーターは動いているので何とかなりそうです。
本題のS30Zの照明を明るくする件ですが、このような豆球互換のカプラーにさすだけのLEDランプが売られていますのでこれに交換するのはここまでくれば訳ないんですが、実はこれではs30zのメーター照明を劇的に明るくすることはできません。LEDにはたくさんの種類があり、仕込まれたLED基盤の枚数、取り付け方向、レンズの有無でそれぞれ拡散光と集中光用があり、さらに明るさの基本のワット数もいろいろです。
この豆球互換タイプは大きさの制約なのか0.5W程度かそれ以下のものがほとんどでこれでは大きな光量は得られません。ただ、これでも豆球よりは明るいしランプ切れの回避には有効ではあると思います。
これはこの通りS30Zの照明ソケットにカプラーオンで取りつきますの楽に交換できます。
ビンテージクラフト イーザがやっている方法はこんな方法が一例となりますが、使っているLED玉は劇的に(先ほどのLEDの4倍ほど)明るいですし、光色も白色、アンバー、ブルー、イエロー、グリーンと各色あります。これだけ明るくしても豆球のように熱害が出る心配がありませんし、玉切れの心配も不要です。取り付けについては純正のカプラーは使わないですが、メーター側には何の改造もしないで取り付けできるようにしています。(これらのキットがご入用の方はご連絡ください。一式販売ができますので販売フォームからどうぞ)
メーターを再度取り付け戻しました。時計も修理完了して取り付け戻しています。
さて、劇的に明るく改造したLED照明ですがこれだけ明るくメーターもくっきり見えます。スピメが少し曇っていますがこれはメーターのガラス自体の劣化ですので仕方ないですね。
今回の改善点は照明の明るさを調整できるようにしたことで、現在の状態が100%時です。
これが50%です。
これが10%
ノーマルのs30zの場合ほとんどこれくらいの照度となると思います。街灯などが少ない田舎道や山道ではこれくらいの方がまぶしくなくて運転しやすいと思います。
ここから10段階で一番初めのめいっぱい明るい状態までスイッチを押すだけで調光できます。おまけとして、そのまま全部消すこともできますが、使う場面てあるかな・・・・
帰国子女のコンソール回り
前期型46年式のミッションは71Aの3分割ですがこの帰国子女にはなぜか71Bの4速ミッションが付いてきました。そのためこのシフトレバーの部分に無理が来ていますが、ボディー形状自体は同じなのですがフロアのトリム形状が異なっている状態です。
しかし、こうすることで操作が難しく、壊れやすく、補修部品も少ない71A3分割ポルシェミッションから解放されます。L型エンジンなら絶対に71Bにした方が良いです。S20エンジンの場合はケンメリGTR用2分割71Bケースが有れば同じように改造できます。
シフトレバーの前側をこれくらい切り取りますと、中後期型のダストブーツがちょうど取り付けできる状態となります。ダストブーツの全形状合わせなくても良いなら切り取る量はこの半分ぐらいでも収まりそうです。
中後期のダストブーツゴムを取り付けてその後ビニール袋に入っているブーツリテーナーで固定しますが、このブーツリテーナーは私が板金して作ったものです。
ビスで固定しておきます。こうなるとこの部分だけは中後期の様子と同じになるし、中後期用の71Bミッションがそのまま付けられるようになります。
さて、引き続きコンソール回りですが左側にこのスイッチがさしてありましたが、スイッチ形式から電動アンテナ(今は固定式のアフター品が付いているだけだけど)の上げ下げスイッチを後付けしたようですが配線はコンソールの奥で宙ぶらりんになっていましたので、即ぶった切ります。そもそも、ラジオに立派なアンテナスイッチが付いているのになんでこんなの付けたんだろう。
そしてこちらはコンソールの右側にやはりこんなスイッチが付いていますが形状からクーラーの温度調節スイッチ(クーラーは付いていないけど)ですのでこれも即引っこ抜き。
コンソール右奥の配線集合部はこんなことになっていてぐりぐりに配線かき回し、引き直しされています。
ラジオも外してみる必要があり、エアコントロールパネルも結局外してこの部分も全バラとなりました。
前期のエアコントロールはレバーに直でワイヤーがつながっているので分解するときは気合を入れないとできません。
ラジオも取り外しました。埃だらけですが、ちゃんと動きました。良かったのかどうか。
手前側にあるのがアンテナの上下スイッチで作動も問題なし。
左のノブが自動選局スイッチで押し込むとちゃんと選局できましたので、50年前の機械でこんなに埃だらけのよれよれでこれは立派。
帰国子女のドア
なぜかガラスがここまでしか上がらない状態になっています。これ以上上げようとしてもレギュレーターハンドルが空回りします。これでは高速がつらいし、防犯上もよろしくありません。
もう一つ、このビタローニの後付けのサイドミラーもオーナー様が言っているとおりぼってりしていてこの車には不似合いですので純正をご実家から取り寄せます。
ドアを全バラします。
レギュレーターを外してみるとギヤが変形してしまっています。
こんなになっていますので、ハンドルが空回りするわけです。
レギュレーターについてオーナー様が入手して送ってくれてあったのですが、ちょっと見きれいで形も似ているので交換すれば問題ないやと思っていたのですが、よーく見ると全体的に1.2倍ほど大きく何とか取つけようと思ったのですが、全くダメでした。
ちゃんとしたレギュレータを探すしかないかなと思い始めたのですが、いろいろ悩んで結局こうしました。まず、1.2倍大きいやつのギヤ部全体をはぐって交換しようとしたのですがギヤの曲率まで1.2倍大きくだめでした。次に考えたのが1.2倍大きいやつから画像左側のギヤが痛んでいる部分の大きさだけ切り取って移植するという方法。これでうまくできましたが、あくまでも暫定処置なのであとでちゃんとしたレギュレーターを入手して交換した方がいいですね。
ところで切り貼りするときにギヤの位置決めをどうしたと思いますか。画像をよーく見るとギヤは上下2面付いていてその上面を使っている訳ですが、では下面のギヤは何のためについているか。これは上面を切り込んだ時の名残、つまり上面を切り取った跡なのです。プレス加工で材料費の節約と加工費の節約のためにする工夫で上手なやり方なのです。ですからもうわかりますよね、この下面部の凹ギヤを上面部の凸ギヤのつなぎ部分へ噛ませて溶接すればいいわけです。
ドアガラス、サッシを組み戻して動きが問題ないことを確認した。
この部分には今回もリモコンドアロックの為のアクチュエーターを取り付けている。
オーナー様のご指定でこの支給されたドア内張を取り付けていきます。この後全ての内装をこの色合いで統一してゆくことになります。
このボードは中古なのでフロント側にスピーカー取り付け穴が加工されています。
ちょうど合うスピーカーを探して取り付けます。
ボードを取り付けました。
そしてこのサイドミラーももともと付いていたぼってりした社外品からUSA仕様純正品のこのミラーに交換しています。
ヒーターホース交換のためにブロアーモーターを取り外し。
ヒーターホースのアッパー側エンジンルームではこのように大動脈瘤が出来ています。
下側のホースは以前変えたらしく新しいし、この位置に取り付けられていたがどうもホース配置が上下逆らしい。
今回は痛みのひどいアッパー側ヒーターホースだけをそのまま交換したが、本来は?型のホースは下の穴から入ってくるのが正しいようだ。(遠藤さん、ご連絡ありがとうございます)今は下から入っているホースは本来は上から入ってくるのが正しいようだ。機能的には問題ないので今回はこのまま行きますが、次にやるときは入れ替えましょう。
このレカロのシートも外してゆきます。
シートも外してコンソールも外して現状はこんな状態になりました。ため息が出そうです。まだ先は長い感じがするし、今後のことを考えるとめまいがしてきそうです。
内装をとにかく全部剥いた。プラスチックの内装パネルもすべて外した。
46年の前期タイプなのでリヤラッゲージに工具を入れるところの蓋が無く、その部分にはタコ焼きプレートのようなくぼみがいくつもあるが、それが普通はφ50くらいのエンボス加工された肉抜き穴なのだが、この車はおわん型に底が付いている。よく見ると一カ所だけ穴が開いているが、そこを解く見るとどうもおわん型のものはボディー制振剤が熱で溶けて垂れ下がったものであることが判明。すごい暑かったんですね。
センタートンネルに新しいシートを張り込んでいる。最初はカーペットもはがして直接鉄板に貼ろうかなと考えていたのだがせっかくきれいなカーペットがあるのだから防音や制振の為にもそのままにしておいてその上からかぶせることにした。
リヤストラットタワーの部分にシートを貼りこんだ。タイヤハウス後ろ側はシートがだぶついているが、シートの成形の所以なのでどうすることもできなかった。
コンソール回りも復元している。ラジオも問題なく動作している。
ラジオアンテナは元はこのような汎用の手動式のロッドが付いているだけだった。
純正の電動アンテナを探し出して取り付けた。中古なので内部の錆がひどかったのを、さび落としして錆転換剤で処理したが完璧にするには磨いてメッキをかけることが望ましいが今後のこととしてまずは動作が問題ないようにした。アップダウンスイッチはもともとラジオに設定されていたのでそこを配線復元して動かしている。
S30Zにはやはりこのアクセントが無いとカッコが悪いからね。
2020年3月23日
S30Zのシート
前述のようにこのS30Zには社外品のレカロのシートが付いていたので、オーナー様からこの純正シートの中古品と、珍しいブラウンのシート表皮とシートリクライニング機構とシートレールと支給されているので修理する。
シートバックの背当てはこのような工業製品であるのにクッション材として棕櫚のような天然素材が使われているがこの当時でもクッション材としてこれに勝るものがなかったのだろう。この棕櫚は人間の汗や水分を含むと時々発酵したような異臭を放つときがある。
棕櫚はなかなか手に入らないし、発酵問題もあるのでこのような最新素材を探し出した。化学素材材なのだが形的に棕櫚のような即席ラーメンのような空間の多い繊維構造となっている。
ブラウンのシート材をかぶせた。ポイントはヘッドレストの所の引き締めと、腰部分にさらに異なる特殊クッションを帯状に仕込んで、背中が丸くなる純正シートの運転ポジションを改善するようにする。
シート座面も同じく棕櫚のようなクッションが使われているのでこれも特殊化学繊維へ置き換える。また、シートクッションのへたりやサイドサポートのグダグダ感を補正するために要所要所へ補強材を仕込んでゆく。
シートクッション単体での改造が完了
シートリクライニング機構を取り付けて組み立てした。どうもシートバックと座面の間の空間が大きすぎるのだがクッション量がどうのこうのというレベルではないほど空いているのでこれらのパーツのどれかがアンマッチのパーツではないかと思う。なんせすべてバラバラに集めた物を組み立てたので素性がわからん。
運転席側を取り付けたが支給されたシートレールがこれも素性が分からず全く異なるもので、日産用ではあるようだが他の車種の物っぽい。仕方ないので切り貼り穴空けで無理くり取り付けたが、シートスライド量や前後位置も何とか納得できるところに来た。
こちら側からの景色は一応完成なのでどんな雰囲気になるか想像できる感じになった。
ハンドルはこれまたオーナー様から支給していただいた当時年式の穴なしスポークの深リムハンドル、レアで貴重だしかっこいい。