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240クロスのオーバーホールからコンパチ化改造まで
・240クロスを含めた71系ミッションの輪廻転生 記事はこちら
71Bのケースの中身のポルシェシンクロ・ギヤ類を71Bの最終仕様のワーナーシンクロで組みなおすのがβバージョンで、特徴はシンプルで有る事と、もちろんプロペラシャフトがスプライン差し込みがベストですが、スプライン差し込みペラをお持ちでない場合はフランジ結合のままでも組める事。
240クロスは全てポルシェシンクロですがこれをワーナー化するバージョンを開発
71BコンパチB’ 240クロス プロペラシャフトはフランジでもスプラインでも製作が可能
2022年3月31日
71BコンパチB’ β27
今回は純正にこだわるオーナー様から71Bポルシェのままで240クロスをオーバーホールしたいというご依頼です。オーナー様は「安心して乗れる大人の240ZG」の持ち主となります。
今回のドナーは2速が入らないということでしたのでシンクロがもう限界の状態で、金属地肌が出ている状態ですのでこれではシンクロ摩擦力を発生することができないのでギヤは入りにくくなってしまいます。
2速に限らず1速から4速まですべてシンクロリングとシンクロブレーキは交換してゆきます。
こちらが新品の状態のシンクロリングで、表面にくすんだ金色のような金属が溶射だと思われる加工方法で乗せられています。リング本体はスプリングのような素材で手で握るとかなりの反発力で広がろうとしています。表面の金色の金属は真鍮系のような金属で、摩耗を防ぎながら摩擦力は生じるというようになっていると思います。
これがシンクロブレーキでシンクロリングの中に入っていてつっかい棒のような作用をしてリングを外側に開く作用をしています。ここがサーボシンクロと言われている所以で、少しのシンクロのきっかけが大きなシンクロ摩擦力を生むという原動力です。これはドラムブレーキでいうところのサーボブレーキ力と似ていると思います。これがうまく作用するとシフトのちょっとした押し込みでヒュイーンという音がしてギヤがシンクロするという気持ちのよさがあります。うまく動くとですけどね。
シンクロ関係の部品をセットしたところでこの後上から大きなスナップリングのような板で押し込んで固定します。
2速まで組みました。
今や貴重な240クロスです。
メインインプットも同じシンクロリングのつくりとなっています。
フロント側を組みました。
リヤ側5速はもう何年も前からシンクロリングは新品では手に入らなくなっています。私は中古ではありますが程度の良いものは補完するようにしていますのである程度在庫はあります。
今回の5速は元々程度が良かったので裏表を裏返しておきます。
バックギヤは71系の鬼門でほとんどがこの左側のように破壊されている場合が多いです。71Bは全くシンクロ無のガチのギヤ噛みなので車が止まりクラッチを切ってギヤ内部の慣性回転が止まるまで一呼吸おいてからバックにシフトしないとこのようになってしまいます。R32の71Cになってからバックリンクという機構で機械的にギヤ慣性回転を止めようとしたのですが全くダメでした。そこでS14の71Cではとうとうバックにシンクロ機構をつけたのですが、これもあまり効果が無かったといえます。(バックギヤの舳先が丸坊主になる現象が多発)
いずれもドライバーが無理をせずにバックにシフトすれば防げることなんですが、せっかちな人が多いんですね。今回はギヤ交換します。
ギヤ部分が完成です。
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ
0.28 0.15 0.13 --- 0.05
バックラッシュ
0.15 0.13 0.10 --- 0.10
きれいに出ていると思います。
2022年4月13日
240ZGミッションの調査
β27と載せ替えて下したミッションの状態を調べます。試乗時はシフトはまあまあ普通に無理なくできてはいましたが、1速でギヤ鳴りが多く、2速でも少しギヤ鳴りが見られました。シフトは一応できているという状態でした。
ケースから取り出しました。
今回の240ZGはプロペラシャフトがスプライン差し込みタイプでした(フランジ結合であることが多い)ので、240クロスとしては珍しいタイプなので
まずはギヤを調べますがこのカウンターの1速、白いペイントがあるギヤの歯数が16枚であるか数えます。240クロスは16枚で、普通のギヤは14枚ですが、このミッションは16枚で間違いなく240クロスといえると思います。
分解してゆきますがこのメインシャフトの要、M38ナットですがやはり手で回ってしまうほど緩んでいました。溝でカシメられているのでかろうじてそれ以上緩んではいませんでしたがやはり71系のこのネジは弱点であったと思います。71Aではダブルナットで緩みまくり5速のスラスト面焼き付きが頻発しましたので、71Bでシングルネジの溝カシメに変更、それでも緩みが出て71B終期では逆ねじ+溝カシメに設計変更されて71Cの終期までそれが採用されてきました。それでも緩みがあるものがかなりありましたので、私のミッションはここをネジのサイドからロックネジを打ち込む「サイドロック方式」にさらに設計変更?!して対処しています。
5速ギヤとポルシェシンクロまあまあ良
メインインプット=4速 シンクロにうっすらと金属地肌が見えてきています。
3速、シンクロはまあまあ良
凸凹している焼結金属のような面がシンクロ時の摩擦力を生み出すところですが、少しツルッとした曲面になりつつあります。
1速、シンクロは完全に金属地肌が出ている状態でシンクロ機能は末期状態といえると思います。
2速、シンクロはやは少し金属地肌が出てきている状態で限界です。
1速側のシンクロスリーブをチェックするとシンクロ舳先が一か所欠けています。これでも普通に走れていたのですが、このかけらはどこへ行ったのか不明です。このようにこの部分が欠けるのはポルシェシンクロでよくみられる事で、シンクロが効かない状態で無理にシフトを押し込むことでこのように無理がかかり破損してゆくのです。このまま使い続けるとほかの同じような箇所がだんだん破損が進行してゆき場合によっては6か所すべて破損しているものもあります。
全体的にはポルシェシンクロミッションの寿命の終期に近いところだったと思いますので、今回のミッション交換は良いタイミングだったと思います。