2016年9月17日

71BコンパチB’ β6

 

神奈川のSさんより以下のメールでやり取りしています。同じようなことでお困りの方の参考になればと要約してアップします。

 

<神奈川 Sさんより>

 ホームページを拝見し、初めてご連絡させていただきます。

 当方 神奈川県のSと申します。どうぞ宜しくお願いします。

以下質問させてください。

 方、HLS30を個人なお方より購入し3年くらい所有しているのですが、

 購入当初より3速2速時に噛むよう様な現象があり、オーバーホールを

 したいと思っていたところ、こちらのホームページにたどり着きました。

 当方、ミッションを下ろす等物理的にできずまた、近くに対応できる知り合い等も

 いない為、このような勝手なプランは可能でしょうか?

  前オーナーより聞いている所によると240クロスが乗っているとの事

  私自身このミッションが乗りやすいと感じているため、出来ればこのミッションを

オーバーホールしていただきたい。しかし、ミッションを下ろす術がありませんので

そちらへ車でお伺いし、何かレンタルミッション的なものと一時的に交換していただき

 オーバーホール完了後、再訪し交換していただくというような、勝手なプラン

を考えてみたのですがいかがでしょうか。

 

<e-zaよりご返答>

こんにちは S様 お問合せありがとうございます。

  ミッションの修理の件ですが、S様のご提案で可能です。

乗せ換えは6時間ぐらいです。

ただしその場合乗せ換えが2回になるので2回の費用が掛かります。

  おすすめは

私のところにも240クロスが在庫しているので、

それをケースごとフルオーバーホールして作っておいてから

こちらに走ってきていただいてその日のうちに交換試走で、

乗って帰れます。今までにも何件かやっています。

 これなら乗せ換え費用は1回で済みますし、必要ならクラッチディスクやフライホイール

クランクシールも手順内でチェックできます。

  費用につきましては240クロスが下取り交換との前提で

フルオーバーホール+改善仕様で208000円+乗せ換費用

   オプションで5速スラストニードル仕様 

もございます。

 以上ミッションの修理も結構費用が掛かってしまいますが、こちらでオーバーホール

 していただければすごく乗りやすいフェアレディーになると思います。

よろしくご検討願います。

 

以上のようなやり取りがあり、結果

・事前仕上げ 一日乗せ換え日帰りコース

・フルオプション 5速スラストニードル 

で依頼されました。

 

 

先ずは現状を確認しますが、これはいろんな部品が35年の間に標準とは変化している場合が多々あるからです。特にミッションは交換されている場合があります。このミッションはフランジタイプの2分割で間違いないようです。

 

Sさんはお急ぎとのことです。その前のβ5がまだ未完成ですが、β5は10月で良いとのことで平行してやっていくこととします。

2016年10月14日

時間的に前後してしまいますがs様に今まで使っていた調子の悪いミッションの調査を宿題でもらっていますので分解してみます。

分解した瞬間から全体が真っ黒なので嫌な予感がしてきます。240zを個人売買で購入してから3年ということですが、通常の使用では3年でこんなに真っ黒にはならないのでかなり前から交換してないようです。

 

また、以前に1回以上は分解されているのは間違いないですが、その時にシールは液体パッキンの余計な併用、ねじ類に不必要なねじロック剤の使用が見られます。これらは百害あって一利無であると思います。ねじはことごとく簡単には緩まないほどロックされていました。ねじロック使うならせめて低中強度にしましょう。

もうこの時点で1-2速のシンクロリングがだめであることが見て取れます。

これは 5速ーバックのシフトロッドのチェックボール部分ですがこの溝にチェックボールが当たってシフト決めしていますがここにこんなもの、間違いなく液体パッキンが入り込んでいます。チェックボール納めるときに蓋のねじに塗る必要もない液体パッキンをこんなとこだけ「こんなに気を使っているんですよ」とばかりに塗りこんだ結果、余った液体パッキンが入り込んだと思います。これではかなりシフトが変な感じになっていたことでしょう。

これは3速ー4速のシフトスリーブで、親指の部分の歯が欠けていて120度ピッチの同じ部分がそれぞれ欠けて合計3か所が欠けていることがわかります。これではシフト時引っかかりが出ていたと思います。

上記の壊れたスリーブを無理やり押していたのでシフトフォークの爪も1mmほど摩耗していました。

カウンターの1速部分ですが歯の右側の淵が1か所かけているのが見えます。反対側にも1か所で合計2か所欠けていました。

 

歯数は16Tで間違いなく240クロスですね。

1速のシンクロリングが分かりやすく筋状に光った部分ができていますが、これではシンクロ作用はできません。

1速ー2速シンクロスリーブですがやはり2速側の親指の部分の歯が欠けています。同じような部分がこの中で2か所欠けています。

 

今後240クロスはこのスリーブが生命線になる可能性があります。このスリーブは製造廃止だし、他の流用もできないパーツですので困ります。

 

私的にはある方法で240クロスに近いものをいろんな方法で代用できるよう造る方法は考えてはありますが。

問題の2速のシンクロリングもこの通りわかりやすく限界になっています。

ベアリング類(これで全部ではない)も真っ黒

 

今回のこのミッションは限界まで使ってしまって、ダメージがダメージを呼んだという例であると思います。このミッションを修復しようとするともう一台240クロスが必要になるほどのダメージです。こうなる前に、少なくとも5万キロぐらいで、または素性が分からなくなっている場合は早めに正しい方法でオーバーホールしておくべきだと思うし、3-5万キロくらいのペースでメンテしていれば長く使うことも可能になってくると思います。


2016年9月18日

 

71BコンパチB’ β6の製作

ドナーとなるミッションを分解して不具合個所をチェックして交換部品を交換してゆきます。

このドナーは北海道のさる有名な旧車ショップから送られてきたもので、下取り品として入庫したものです。

 

M38ナット緩みから5速のシンクロスプライン抜けなどはありましたがギヤそのものはまだ新しそうでした。

シンクロリングをチェックしてみるとこんな跡がありますが、これはシンクロスリーブが当たった跡のように見えます。

 

M38ナットが緩むとメインシャフト全体のパーツがガタガタになり、シンクロスリーブも傾いてこのようになるんだと思います。

もちろん交換

1速です。

ギヤと鍵形のキー以外すべて純正新品に交換します。

ギヤは良好です。

メインシャフトの曲がりは0.015でまあまあです。0.02を超えると使いません。

1-2速とハブ・スリーブ。スリーブはWPC処理

カウンターは71B240クロスの証、1速が16Tです。

曲がりは0.01でした。

3速とハブ・スリーブ

すこし飛んで、5速ですがドナーはシンクロスプライン抜けと焼き付きがありましたのでスペアと交換します。ギヤ比は0.86の純正比

ここに焼き付き対策としてスラストローラーベアリングを入れます。純正ではありえない仕様ですし、ここが回転抵抗が少なくなると回転が軽く走行が楽になり、メインの固定ナットM38が緩みにくくなります。

M38を目いっぱい絞めてから、私の編み出したM38緩み撲滅アイテム、サイドロックボルトで完全に回り止めして、さらにシャフトへの加締めも併用しています。

ギヤ部が完成です。

 

ギヤ精度

         1st  2nd 3rd      5th

エンドプレイ  0.35 0.17 0.20 --- 0.05

バックラッシュ 0.15 0.17 0.15 --- 0.15

 

ほぼ理想的な値です。

ケースに組みたてて簡易試験機で試験

 

調子は良さそうです。

 

完成です。

2016年9月28日

いよいよβ6240クロスのオーナー 神奈川のSさんがやってきました。今回は奥様とお二人で来ましたが、乗せ換えの間の6時間余りを市内観光で楽しむとのことで、軽自動車ではありますが代車がございますのでお使いいただきました。コースとしては世界遺産 三保の松原ー清水港のお寿司ー日本平ー静岡日本平動物園のコースで楽しかったようです。人によっては乗せ換えの過程に興味あるというメカ派は自分でリフト下にもぐって飽きない人もいますし、今度のように一日日帰り乗せ換え+市内観光コースもありだと思います。場合によっては他の整備も同じパターンで可能かも。

 ZはHLS240ZGで外観と下回り。内部機関もで自然な感じで良い感じです。

 

乗せ換えの合間に他の箇所もついでにチェックしていますが、リヤサスアームのブッシュ周りはウレタンに変えられておりまだ十分に機能しています。当分大丈夫でしょう。

ここがだめだと車がまっすぐ走らなかったり、ギコギコと異音が出てきます。

フロント側のナックルとタイロッド部分のダストブーツはやはり定石の消失状態です。とりあえず走る分には問題ないですが長い間には消耗してしまいます。

 

スタビライザーのブッシュはウレタンで通常使用に問題なし。

一番びっくりはこのフロントサス(リヤサスも多分同じ)ですが、画像の通りスプリング高さが10cmほどしかありません。これだとばね乗数を相当硬くしないとすぐに胴つきしてしまいますから乗り心地はかなりスパルタンのはずです。またその分ストラットケースが異常に長いですが何を使っているのでしょう?もちろん純正はこんなにケースが長くないので純正追加工でもなさそうですが・・・。それともケース全部を入れ替えた?ちなみに車高はこれがいっぱい上げた状態のようです。

ミッションが降りました。2速がひどく入りずらい状態とのことです。

 

このミッションンは下取り扱いとなりますが、内部の状態チェックを依頼されましたので、後日分解してみます。この下取りミッション分についてはもちろん値引きしますし、ミッションを保管したり、発送する手間もかかりません。通常ならミッション降ろすと動けなくなりますのでリフトアップしたままの長時間保管場所や保管費用が掛かりますがそれも発生しません。

クラッチ側もいつも必ずチェックしますが、今回はフライホイール含めて新しめで交換したばかりと判断してそのままとしました。フライホイールはピカピカで、ディスクのシャフトも光っています。クランクシールの漏れはなさそうです。

ミッションについてはこの後問題なく順調にβ6と交換して復元完了です。

 

試走前にエンジンルームもチェック。赤系でまとめられています。

 

すこしトラブルもありましたが、今回は順調な乗せ換え作業でした。

私の最後の試走チェックが終わった午後2時にちょうどSさんご夫妻が市内観光から戻ってきました。

ミッションとしてはシフト・走行感ともに問題ありませんでした。

 この後、オーナー様のSさんと運転を代わり私の工房までチェックを兼ねて自走してもらいます。

そして工房に到着して少し話こんでから、神奈川までの100Km余りを乗せ換えたばかりのNEWミッションで無事お帰りになりました。