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R180デフのオーバーホール その1 その2 その3 その4 その5
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2021年8月15日
R180デフ R18
R180のデフですが外観がかなり異なります。
デフの底面にオイルパンのような形のものが構築されています。私は今までに見たことが有りませんものです。厚い鋼材が溶接で付加されています。
依頼主からは異常な音がしていると連絡を受けていますので内部に何かありそうです。コンパニオンフランジを手で回すと一応回るのですが感触が全く変です。
底面に追加されたプレートにはこのようなまさにオイルパンという感じのものがアルミ製でネジ止めされています。
リヤカバーを開いたらこのようになっていまして、形からピニオンのギヤ歯の欠けた物と思われるものがマグネットについています。
LSDとリングギヤを取り出しました。
リングギヤには欠けは見られません。
LSDのカムは90度鋏角の純正らしきものです。
LSDを分解してゆきます。プレート構成は片側4枚構成でスプリングプレートは1枚で組まれていますのでイニシャルは低いし効きもあまり良くは無かったことでしょう。
プレート構成
1枚が溝無ですが2枚は渦巻溝有り純正
溝有は効きがマイルドになります。
4ピニオンとなっています。
最初これが何なのかよくわからなかったのですが、観察しているうちに中央のナットを取り付けるためにプレートで溶接したものであることが分かりました。しかも、溶接のお団子が一カ所とれています。
ナットを付けた理由はお分かりと思いますがサイドフランジ差し込み式のデフをサイドフランジネジ止めに改造することが目的だったのでしょう。
このギヤは特殊合金でできているので普通の溶接ではこのようにうまく溶接できないことでしょう。あまりうまくない方法です。これ使えんのかな・・・・。
反対側はもっとひどく溶接がほとんど天ぷらでナットも手で取れてしまいました。これ修復できんかいな・・・・。
さて、問題のピニオンです。当然ダメした。2歯欠けています。
取り外すとこのようになっています。この破損の仕方、私の感では一発で壊れた破損面であるような気がします。
つまり、何かがピニオンとリングギヤの歯の間に挟まり一発でバリンといった感じです。
ピニオンはすごく丈夫でめったに壊れませんので400馬力ぐらいかかっても歯欠けは起らないし、もし壊れる場合でも一番弱いピニオンの首の根本の角から輪切り状に壊れます。
そしてこの不思議な部分ですがデフボディーの底面を大きな面積で平たく削り込んでそこに鋼材を溶接して蓋をしています。鋼材には画像のような丸穴が5個開いていますが何の規則性もなく開けられているように見えます。そこに左側のオイルパンのようなものをかぶせているのですが、画像のように深さは1CMぐらいしかありませんので、オイル容量を増量する目的に対してはあまりにも少なすぎる量です。又アルミのフィン状のもので冷却性能向上を狙ったにしてはあまりにもフィンが浅すぎますし、オイル通路が丸穴5個ではほとんどオイルの循環が望めないのでその点でも冷却能力は?です。
ちょっと見は珍しい形でマニアックな感じですが、どうも形だけの改造と私には見えます。
こんな鋼材の塊をこんなに頑固に溶接してデフケース本体のひずみ変形など出ていないのでしょうか?
このデフは
・ピニオン・リングギヤ全滅
・LSDで使えるのはケースだけ
・ベアリング類はもちろん全滅
・デフボディー本体も私の見方では使えない
詰まり8割がた使えないものと思われます。
これでは修理するよりほかのデフを探してそちらをオーバーホールした方がうまく直るような気がします。
オーナー様と相談してこのデフ素材で仕上げたいとのことでしたので補修パーツを入手してゆきます。
一番肝心なギヤ比4.1のピニオンとリングギヤを他のドナーのR180から抜き取ってきます。ピニオンとリングギヤの単品の新品は入手できるかどうかわからないけど入手できたとしても高価となりますので、今回は他のR180デフをつぶして部品どりしています。
こちらはLSDの部品です。
サイドフランジの抜け止めナットが溶接されていた笠歯ギヤ(中央部の2個)からナットをプレスでもぎ取りましたが点付け天ぷら溶接の部分はぽろぽろと取れてきました。特殊鋼に溶接するとその部分だけ熱で焼き入れが入り硬くもろくなりさらに体積膨張するので、溶接の境目から亀裂が入ります。
何とか溶接痕をきれいにしてから、画像のように専用のネジ構成部品を入手して取り付けていきます。
純正の4ピニオンLSDのカム部分です。鋏角がおおよそ90度ぐらいであります。ニスモはこの鋏角が120度くらいと大きくなります。
このLSDの両サイドにはこのような3,7mmくらいのムクの円盤が入れられていますが、これによりプレートを4枚構成に抑えて過大なLSD作用が発生しないマイルドな設定になっています。街乗りならこの仕様の方が乗りやすくなるし、Uターンでバキバキ言わない仕様となります。
LSDを組み立ててイニシャル調整して組みますが、サイドベアリングが新品になり、ピニオンリングギヤも別の個体になりますのでバックラッシュ、プリロードともに最初から手探りでセットしなおしします。
こういう機械ものは適合品を元どうり組んだからシムは元のままで良いですとは絶対に言えません。
シムについても日産から出るものは限られていますので足りないものは製作して準備しています。
ピニオンプリはナットを1900Kg/CMでめいっぱい締めこんで16.9KG/CMとなる様調整しました。サイドベアリングプリは1.7Kgにセットして、この時のバックラッシュは0.12~0.16となります。
正転側歯当たりほぼ良い当たりと思います。
逆転側歯当たり
少しトー当たり気味ですがこれなら許容範囲と思います。
ほぼ元の状態に戻ってきました。
最後にこの部分を復元しますが、この追加改造されている部分の面が黒皮のままなので、厚めの紙パッキンを切り出して製作してさらに液体パッキンを厚めに併用して組み立てます。
オイルパンを取り付けます。
回転試験機をセットして最終確認しています。
回転の状態は良い感じです。回転抵抗はものすごく少ないです。
完成です。
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