R192デフのオーバーホール その2

2018年1月17日 

            その1はこちら

Z432やハコスカGTRなどにはデフとしてR192が使われていますが、このデフは手が込んでいます。その分オーバーホールも容易ではありません。

 

今回水色の冶具を作り作業をしやすくしています。

またこの冶具は最終回転試験もできるように工夫しています。簡易試験機 e-zanaraizer for デフ

です。

分解してゆきます。

サイドフランジをはずしてLSDを摘出

イニシャルトルクを測ると3Kg~3.5Kgとかなり少ない値です。

ピニオン側も分解してゆきますが、ここのベアリングケースが何か傷をつけられています。おそらく外輪の供回りを警戒しての作業と思われますがもう少し丁寧なやり方は無いのでしょうか。

ピニオン分解です。

 

右側のピニオンフロントベアリングは入手不可能でしたが今回特別にある数量だけ製造していただきました。(私の販売のページから購入できます)

また、中央部にあるシム類もプリロード調整で必要ですがこれも製造廃止なので、0.1mmから0.5mmまで何とか揃えました。(私の販売のページから購入できます)

 

長らく交換していないベアリング面はよく見るとこのように傷だらけです。

 

こちらは新品ですが当然ですがこのようにきれいです。


準備したシム類

 

プリロード調整シム 0.6mm→0.75mm

これだけベアリングが減っていたということですね。

 

フロントフランジのシール面もガリガリですが修正です。

 

同じくサイドフランジもガリガリ


サイドフランジですがR192はデフ玉を受けるテーパーベアリングとサイドフランジをガイドするサイドベアリングが構成されています。R200などはサイドベアリングはありません。

LSDを分解します。構成は通常の構成で、ピニオンは2ピニですね。

 

このLSDはスプリングプレートの組み付けで間違えたのか、意図的なのか1枚がそれぞれ逆組になっていました。

今度はイニシャル5Kg間違いなく出ています。

サイドフランジを組んでいきますがこの星型のような形のシムプレートも製造廃止です。

これも今回特別に0.15mmから0.8mmまで製作しました。(私の販売のページで購入できます)

 )

逆転側の歯当たり良さそうです。

 

正転側の歯当たり。あまりよくなく、ヒール側内径側に当たっています。これだとNGでピニオンまで全部分解してやり直します。デフはこれをひたすら合わせる作業です。

 

何回目かで何とかこの状態となりました。

シムを3.30mm→3.25mm


リング40枚 ピニオン9枚 4.444

ピニオンプリロード10.5Kg

オーバーオールプリ13.5Kg

バックラッシュ 0.09~0.18mm

LSDイニシャル 5Kg

 

値的には良いですが、ピニオンギヤリングギヤともに目視でわかるほど摩耗痕がありましたので、どうなるかは微妙ですが、かなり戻せたとは思います。

 

交換したベアリング類(シールが一部映っていません)

最後にe-zanaraizer forデフ で回転試験します。


2018年12月8日

GTR用R192 オーバーホール

東京のGTRオーナー OさんからR192のオーバーホールを依頼されました。

 

LSD付のギヤ比は4.444

オイル管理が良くなかったのか全体が真っ黒ですが特に大きな異常はなさそうです。

分解前に現状を知るために精度測定をします。

バックラッシュは0.19~0.25とかなり大きめですので、アクセルON、OFFでガチャガチャ音が大きめだったと思います。

 

正転側歯当たり 問題ないです

 

逆転側歯当たり 理想的です。


イーザ製特殊工具でプリロードの測定をします。中心から1㎝のところに何キロ発生しているかが測定ですのでこのようにして数値換算すれば問題なく測定できます。

 

サイドベアリング+ピニオンベアリングのオーバーオールプリロードは5.42Kg/CMで規定の11~17に対して大幅に不足。

 

この後サイドベアリングを外してピニオンだけで0Kgでしたのでピニオンに全くプリロードがかかっていない状態です。これではこの状態でいくら歯当たりが良くてもパワーがかかれば全く状況が変わってしまいます。

逆にサイドベアリングのプリロードは5.42Kgと規定内ですのでよくあるパターンですがピニオンベアリングが入手できない、あるいは困難なのでベアリング交換をあきらめてしまうパターンです。ピニオンベアリングはあんまり消耗しないから交換は不要ですよ などとよく聞く話です。

 とくにR192のピニオンフロントベアリングは製廃・市中でも入手できなかったので、私は懇意のベアリング商社を通じて限定数だけ製作していただき販売していますが、残り僅か(一桁)です。ご入用の方はお早目にこちら販売のページからどうぞ。

 

LSDを摘出しました。

イニシャルトルクは3Kgと少な目。プレート厚が1.95mmで新品の2.0mmから少し摩耗しています。

プレート類は4枚構成の通常の状態で、ピニオンは同じく2ピニの純正でしょう。大きな損傷はありません。

 

プレート構成は

内側から 内爪フリクション 1.95   

     外爪フリクション 1.96

     内爪プレッシャー内凸 1.96

     外爪プレッシャー外凸 1.97

     キャリアースペイサー 1.98

フロントベアリングは真っ黒。どこもかしこも真っ黒ですね。ひょっとして40年前のオイルか?

ピニオンを分解しました。

尚、この左側にあるダブルナットはものすごく固くロックタイトで固定されている上にハウジングの奥深くにあるので通常の工具では回せません。私は自分で特殊工具を作って対処していますが工具の固定は工作機のテーブルに万力に取り付け、回す延長棒は3mの足場パイプを使っていますが、これらが無いと先ず分解は難しいと思います。

 

ピニオンフロントベアリングのアウターレース

やはりかなりの摩耗・傷そして特徴的な模様が軸方向に断続的等ピッチであるのが分かります。拭いて取れるものではなく、デフのウォンウォンなどのうなり音の結果できたものと思われます。

 

ピニオンリヤベアリングのアウターレース

状況はフロントと同じでこちらはさらにくっきりと断続マークが見て取れます。


 

新品のピニオンフロントベアリングアウターレースはこのようにまっさらです。

 

このピニオンフロントベアリングは数量限定で当方で復刻販売しておりますので必要な方、あるいはスペアー準備しておきたい方どうぞ。こちら

ピニオン完全分解

ピニオンハイトアジャストワッシャーの現状は2.75・0.32・0.32

分解したときの逆の手順でアッシーに入ります。

先ずピニオンベアリング新品にしてプリロードを調整します。

ピニオンディスタンスワッシャーは今までどうりだと0.31*2枚でしたがこの状態でプリローで高すぎで、何回かやり直しましたが+0.22mm厚くしてやっとプリロード16.9kG/cmで合格です。

(この+0.22ですがベアリング摩耗分にしては大きすぎますので、今までの調整が有っていなかったんだと思います)

 

次にLSDを復元してサイドベアリングを新品にして組んで今までどうりのアジャストワッシャーは

左 1.05+0.25

右 1.05+0.10+0.25

この組み合わせでプリロードは+1.9とまずまずですのでこちらのベアリングは頻繁に変えていたのでしょう、摩耗していません。最終オーバーオールプリロードは18.1kg/cm

 

この後歯当たり調整に入ります。

 

 

正転側歯当たり。

歯当たりが完全に内側に寄っておりこれではNGです。

ピニオンベアリングリヤの交換はここに影響が出ますので何回か調整が必要で、すべてをばらばらにしてやり直しとなります。

 

 

逆転側は悪くはない。


 

何回かやり直して良い状態になりました。

ピニオンハイトアジャストワッシャーをー0.10mmさせて完了ですがベアリングがこれだけ摩耗していたということですね。尚、このピニオンハイトアジャストワッシャーも製廃ですので当方で復刻しています。

 

 

逆転側も問題なし。


この状態でリングギヤのバックラッシュを測定して0.15 0.18 0.19 0.18

でしたので良い値です。これがまたダメだったら振出しに戻るというパターンなんですが。なんだかスゴロクゲームみたいですね。とにかくこれであがりです。

 

 画像では最終回転試験をイーザナライザーforデフで実施していますが、1600rpm(実車では4速60km/hぐらい)オイル漏れ・異音・電流値(60hzで2.1アンペア)・昇温51度などをチェックしています。