2017年4月29日

海を越えてやってきて無事戻られたこのサファリZですが、今回は陸伝いにやってきました。

前回はスピードが100Km/H以上でない状態だったこのZですがその後キャブ調整などでなんとか普通のL3.1の走りとなっていました。詳細はこちら

 

今回はさらに加速感を追求したいということでの再来ですが、ご本人曰く「びゅ」と加速するようにしたいとのこと。試乗してみると確かに「びゅーん」という感じで加速のはじめはL3.1のトルクで十分な加速ですがそのあと5000RPMから先はしりすぼみの様です。

これ以上にするにはどうしてもエンジン本体を調べてみる必要がありますので、今回はエンジンを下します。

こんな感じで一緒にやっている自動車屋さんでエンジン降ろします。

マフラーですが海を何回も越えた影響か、錆がかなり進行していますが、とりあえず穴空きまでには至っていないようです。次回はステインレス製に換えた方が良いかも。

エンジン降ろした後私の工房に運んでこれからいろいろ調査と改修に入ります。

 

赤いヘッドカバーがきれいです。

キャブマニフォ関係・タコアシ取り外し

ブロックN42 ヘッドP90となっています。

タイミングギヤーは純正ではなく、他のものに換えられていますがメーカーはよくわかりません。

 

タイミングの遅れ進みを見るための切り欠きが見当たりませんので判断ができません。

先ずは現状のカムを調べてみます。

こんな感じで全周分度器を取り付けて、バルブに20mmストロークのダイヤルゲージを取り付けて動きを追います。分度器の真上に特設圧縮上死点の位置を示す指示針を取り付けています。

結果

排気側 開弁開始 105度

    最大開き点110度(250度)

    閉弁点 35度

カム呼称で72.5度

 

吸気側 開弁開始 45度手前(315度)

    最大開弁点 110度

    開弁終了点 265度

カム呼称で77.5度

 

排気と吸気で角度に差があるので何回も測ったのですが同じでした。

 

カムは純正P33を加工したカムでリフトは7.6mm(純正は7.0mm)ベース円は33mmから30mmに片側1.5mm削られていますがカムリフトはなぜか0.6mmしか高くなっていません。

カムの後端には68度とBの刻印

Bの刻印は通常でもありますが68はありません。

右が付いていたカム

左がノーマルですが

形状はほとんど差が無いように見えます。計測上は角度の大きなカムのように見えますがほとんど低空飛行の状態ではないかと思います。

しかもこのカムはカム山がだいぶ痛んでいるように見えます。ざらざらという感じです。

カムレバーは12個全数このようでした。クレーター摩耗というのでしょうか、なぜこのようになったのか見当が付きません。左半分が大きくへこんで面が歪んでいることも見て取れます。

 

全数おしゃかです。(使えないものになること)

マニフォールドは手付かずのノーマルのままですね。インテークには鋳物の合わせバリが残っています。

この部分不自然に液体ガスケットが塗りつけられています。

バルブ回り

スプリングのセット長が長い様です。

カムリフトが短いのになぜかわかりません。

燃焼室はP90のハート形燃焼室で、カーボンの付着も比較的少ない様です。大きな破綻は無い様です。

 

この燃焼室はボリュームがN42の43ccと比較して大きく54ccもあります。

ヘッド高さは107mm(純正108mm)ですから1mm面ケンされているようです。

クランクは実測で83mmストロークでLD28用と思われます。

ボアは89.50mmでした。

圧縮比についてはヘッドボリュームを計測する必要がありますが簡易的に計算すると

ヘッドvol 54cc-6.2cc=47.8

ヘッドガスケットvol 7.46cc

ピストントップ面位置 0cc

リセス 未測定

排気量 521cc(3131cc) L3.1

 

計算すると圧縮比10.4と出ますが概算です。

 

 

バルブを外します。

バルブスプリングコンプレッサーは40年前にエンジンのチューニングを夢見て買った当時モノです。

貴重かも。

 

バルブなんですがP90ヘッドは長さが114.5mmのはずなんですが、このヘッドには116.5mmのおそらくN42ヘッドのと思われるバルブが付いていました。これだとスプリングの仕様にもよりますが通常のスプリングだとすると荷重がダルダルとなってしまうと思います。よっぽどすごいバネ定数なら別ですが。もう一つカムレバーがバルブ側が高くなってしまうのですが、加工カムで基準円が小さくなっているのでその補正をしたのでしょうか?

バルブの傘部分ですが当たり面がめり込んで逆アールになっています上に当たり幅が2.0mm以上あり流入抵抗になっていると思います。当たり幅は広ければ良いことはありません。接触面積が増えるので均一に当たることが難しくなると思います。1mmくらいの幅で均一にあれば単位当たりの接触圧力が増すので密閉性は良くなるはずです。追加工せねばなりません。

マニフォールドの特に排気側右上のところ少しつついてみましたがこの厚さでカーボンが全周付いています。これだけでも相当な流入抵抗ですので取り除いていきます。

 

またバルブ当たり面は打痕は入っていなくて良いのですが、面が微妙に曇っています。これだと漏れがあるかもしれません。インテーク側は普通の状態です。

 

他のヘッドでは中にはこの当たり面があばた状の異物噛みこみ痕が入っているものが少なくありません。

右がもともとの燃焼室ですが、左側のように軽くカーボン落としをしてゆきます。カーボンは煤のようなかんじで付いていただけなのでブラシやツールでなんとか落ちました。 完全にカーボンが焼き付くとグラインダーなどで削るようにとらなければなりません。

実際のヘッドボリュームを測りますが私の使う測定道具はこのようなものですべてホームセンターで売っているものです。

 

ポイントは試験管の目盛りでここが幅が広い方が見やすいです。20ccずつ3回入れていって満杯になった時に何cc残ったか見ればボリュームが計算できます。

これでほぼ満杯ですが、試験管には20cc×3回

60cc入れて、9cc残りましたからヘッドボリュームは51ccです。最初の計算値では1mm面ケンで47.8ccの計算でしたがやはり計算値とは差があるようです。再度圧縮比の計算をします。

ヘッドVOL 51cc

ヘッドガスケットvol 7.46cc

ピストントップ面位置 ー0.31cc(0.05凸)

リセス 2.5cc

 

排気量 522cc(3132cc) L3.1

 

以上から再計算すると 圧縮比は9.60と出ます。今までのカムからするとまあまあかと思いますが少し低いです。

 

 

 

マニフォールドについては手付かずの様で、やすりで示した部分には凸の削り残し段付きが出ています。これでは間違いなく吸入抵抗です。

今回は大規模なマニフォールドの形状変更はしないので、最低限の吸入抵抗部分のみ削除します。

 

ヘッドをメンケンする前にこれを済ませてしまいます。仮にバルブ面に傷が入ってしまった場合はメンケン後だと再度加工屋さんへ送ってバルブ切削が必要になりますので先にやっておきます。

 

マニフォールド拡大までやってバルブシート打ち直しなら気にせず削りまくりますが。

 

この後ヘッドはメンケン加工屋さんに送ります。

腰下側も分解しないのでできる範囲でカーボンを落としています。シリンダー面はきれいな状態です。

クラッチはノーマルで減りは少ない様ですのでこのまま行きます。

プレッシャープレートもまあまあ使える状態ですが、今度は3.1Lのフルパワーがかかりますので圧着力は負けて滑るかもしれませんが、レースとかやるわけではないので経済優先でこのまま行きます。

フライホイールもかなり使い込んだという感じで重量は7.5kGで純正を軽量加工しているようです。

フライホイールの面としてはできるなら変えたいという状態で、特徴的な円周方向と直行する縦筋が見えています。金属が疲労した時の典型例ですね。

 

普段使いなら一応使えるというレベルですので、これも費用削減でこのまま行きます。


エンジンとともにミッションも降りているのでこの際手順で手を入れることにします。5速のギヤ抜けが試験走行でも現象確認していました。

 

ただ外観からするとミッションはS130のミッションでしかも一度開けられている痕跡があります。(通常は全速ポルシェシンクロのFS5C71Bのはずです)

 

当時のこのミッションをそのまま流用したとするとある問題が出てきます。

ミッション開けましたが1-4速ワーナータイプであることは良いのですが、S130ミッションは一次減速が低く設定されている場合が多いです。

 

もともと車重が重くなったS130に対応するために減速を落としているのですが、これをL3.1の軽量s30に使うとギヤ比が低すぎ車速の伸びが無い状態になります。おそらく一速は使わないでも発進に問題ないくらい低いギヤ比だと思います。

問題の5速についてはポルシェシンクロがそのまま残っている(S130の通常の状態)で、外観は特に問題となるところはみあたりませんでした。よくあるM38の緩みもありませんでした。ギヤ抜けはポルシェシンクロの摩滅が影響しているのかもしれません。

また、ここのギヤ比は71Bではほとんどが純正で0.86というやはり低いギヤ比ですので、L3.1などのトルク大きい車では高速で十分にその恩恵にあずかれないギヤ比です。

1速ギヤ比の問題は今回、一次減速(=4速)を変更することで少しハイギヤード化します。これで1速が3.3から始まる第2世代71B(DR30など)と同じギヤ比になります。5速まで全体的にハイギヤード化となりますのでL3.1で使いやすくなります。 私の作るバージョンで言えば71BコンパチB” のβバージョンに近くなります。

ミッションバージョンの詳細はこちら

販売のページ こちら 

ただし今回はベアリングとシールのみ新品としてシンクロは限度内なら使用する経済優先で仕上げます。

5速はギヤ比0.86→0.83に変更します。そして5速裏にはスラストンベアリング構築、M38ナットサイドロックと万全の仕様です。

アルミシフトフォークで組んでギヤ部はほぼ完成です。

ギヤ精度は

エンドプレイ

0.32 0.18 0.08 ー 0.08

バックラッシュ

0.09 0,07 0.10 ー 0.08

クラッチオペレート取り付けねじズル剝けでヘリサート修正

同じくセルモーター取り付けねじズル剝けでヘリサート

 

結構ケースの痛みがひどかったです。

プロペラシャフトがささるところ、縦筋はドライバーなどを打ち込んだ跡がかなり深くえぐられています。今回は液体パッキンを厚めに塗り込んでしのぎます。

ここには絶対にドライバーなど打ち込まないでください。ケースそのものがおしゃかになりますので、シールの内側のシャフト穴からタイヤレバーなどですくい上げるように外すと傷なく取れます。

シフトストライキングパーツを完全分解してシール交換と、おまけでウサギの耳のシフトレバー支点を上側にもう一つ追加します。

 

このS130ミッションを流用するうえでの問題点としてこのウサギの耳支点の問題があり、S30の支点間距離43mmにたいしてS130は38mmに変更されていて本来は互換性が有りません。無理やり使うと、シフトレバーの根元が干渉してギヤシフトストロークが不足します。

 

その対策としてこの支点増やしを実施します。もちろんe-za方式クイックシフトにも対応します。

e-za方式クイックシフトの詳細はこちら

ミッション完成して簡易試験機e-zanaraizerで試験しています。今回はバックアイドラーギヤに問題があり音が出ていることが判明したのでやり直しましたが、バックギヤのスラスト面がだめでした。バックの時だけだからあまり気にならないかもしれませんが、完全にしておきます。

さて、ヘッドが研磨から戻ってきたのでエンジン再開です。

さすがプロの加工はすごくきれいで鏡面に研磨されています。

ここで再度ヘッドボリュームを測りますが、60ccからこれだけ残りましたので都合2mm面ケンでボリュームは46.5ccとなりました。

 

計算すると圧縮比は10.3となります。

街乗りにはよろしい値だと思います。

ハイオク仕様です。

 

そして次にバルブの仕上げに入りますが今回はバルブシートの切り直しはしませんので、やはりこのような簡易的な工具でシートの逃げ面のみ軽く削ります。カーボン落としのようなかんじですが、完璧にするならやはり加工屋さんに出してシート再研削をした方が良いです。ここは性能にかなり影響するはずです。今回はストリート使用ですからここだけ良くしてもトータル性能は変わらないのでそこまではやりません。

こんな感じで削りくずが出てきます。

最低限このラッピングだけはします。

ラッピングするとこのように当たり面のところどころにクレーター状のものが現れてきます。本来は削りたいところですが、それほどひどくはないのでまだ使用に問題はないと判断してこのまま行きます。

光明丹であたりを見ていますが問題ない様です。

ヘッド組みたてに入りますが、2mm面ケンしたのでカムホルダーに2mmスペーサーを入れて戻します。カムホルダーを締めるボルトのヘッド側ねじが微妙に舐めかけているところがありトルクが150kGしかかからない問題発生。その部分はヘリサートしましたが、このネジ部は当然アルミなので本来は全数ヘリサートした方が良さそうです。特にこの激しいカムの運動やスプリング力を受ける部分ですからレーシングなら絶対ヘリサートですね。

カムホルダー復元していきます。

左が今までのカムで右が交換するカム。

カム形状が全く異なることが分かります。

またカムリフトも7.6mmから8.3mmと高くなります。バルブの立ち上がりが急になるので、それに追従する強化スプリングが必要になります。

カムレバーは虫食いだったので、全数手持ちの中古に交換します。そしてカムとの当たりを見ていきますが、このようにビボット側半分ぐらいしか当たりが無いのはNGですので、バルブガイドの厚さをこの場合は厚くしてゆく必要があり、結局 今まで3mmだったガイド厚みを5mmとしました。

目安をブルーのマジックに換えましたが、これでほぼガイド中央部に当たりが来ましたが、めいっぱい幅使っていますので、これ以上ずれるとガイドの端でカムを削りかねません。

 

このあとカムレバーを全数仮に取り付けていきます。その後ヘッド全体を腰下に乗っけることとなります。

ここまではフロントカバーは外さないでそのまま行こうと考えてチェーン脱落防止ストッパー入れて固定していましたが、中央部のチェンガイド固定ネジ部で、ねじ穴が切りかかれていて半がかりとなっています。これではチェーンの張りの調整が難しいのでここでフロントカバーを外してチェーンガイドを新規に取り換えることに切り替えます。これをやるとオイルパンの取り外しも必要になり、またやることが増えていきますが仕方ありません。

フロントカバーはずしました。

オイルパンも外さざるを得ない(強引に外さないでフロントカバーだけ外すやり方はしません)

 

 

ピストンはカメアリの鍛造品と思われます。

うーん・・・・

この画像でいままでL3.1と信じて疑わなかった思い込みがもろくも崩れました。

P30刻印のL28クランク

 

コンロッドも日産マーク入りのL28そのままと思われます。

気を取り直して、飛び出し防止付チェーンテンショナーとチェーンを取り付け。

チェンガイドも取り付け穴を長穴加工してチェーンの押さえをなだらかにセットします。

タイミングギヤはバーニヤスライドタイプ

これでないと正確なバルブタイミングはとることはできないと断言してもよさそうです。

微調整しながら最終的にはここの目盛りで調整します。純正の3穴や加工8穴では偶然でもない限りハイカムのバルタイは合わせられないと思います。

バルブタイミング調整が完了しました。

今回、富士の岡田さんに監督をお願いしました。

フロントクランクオイルシール交換

タコアシも取り付け

ソレックスキャブ3連取り付けてエンジンとしての復元は完了です。

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