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S30Zをドンガラからやり直しているオーナー様からエンジンからドライブシャフトまで駆動系一式のフルオーバーホールのご依頼です。
・ミッション 71BコンパチC Ω37
・デフ R17 R200 3.9 OS技研スーパーロック ピニオンまでフルオーバーホール
・ドライブシャフト ボールスライダー、十字ジョイント脱着交換グリースアップ クリアランス調整
・プロペラシャフト 十字ジョイント交換フルオーバーホール クリアランス調整
・エンジン L型3.1 フルチューンエンジン=私の魔界エンジンとほぼ同じ仕様となります。
N42ヘッドレース用バルブシート・F54腰下ボアアップ・77度カム・最軽量鍛造ピストン・最軽量I断
面コンロッド・等々
2021年5月8日
71BコンパチC Ω36
S30Zをドンガラボディーから一人でレストアしているという方から駆動系製作のご依頼をお受けしました。この方はボディーの製作が大好きという方で、ボディーの補修は全く苦にならず楽しいとお話ししていましたが、私とは全く逆でそう意味ではバランスが取れているんですが、それはそれで良いめぐり合わせだと思います。
まずはミッションは4速まで大径ダブルシンクロのΩバージョンです。メインシャフトは新品使用、手前はメインインプットギヤです。
早速2速、1速の順で組んでいきます。
3速は純正新品使用
ダブルシンクロも純正新品です。
3-4速ハブとスリーブ
これも純正新品を使います。
最近、71Cの中古品ですら程度の良いものは流通価格が上がってしまい、却って純正新品を使った方が安く上がる場合が有ります。
純正のメインインプットギヤ=4速
すでにダブルシンクロに改造しています。
メインインプットの中に入るベアリングですが最新版はこのようなサイズアップしたものを使います。最新の71Bはこれに変遷してきていますが、強度アップなのでしょう。
フロント側ギヤが組み付け完了です。
リヤ側も組みました。
バックにシンクロが付くバックシンクロタイプです。
これも71Cとしては最終バージョンの仕様となります。71系はこのバックギヤの欠けがずっと泣き所であったらしく71Aから比べたらバックアイドラギヤがどんどん大きくなってきて、R32でリンクタイプとなり、その後このバックシンクロまでつけたタイプにしてバックギヤ破損対策をしたのですが結局どれも決定打にはならなかったようです。でも、操作する人間がせっかちすぎることが本当の原因なんですがね。
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
バックラッシュ 0.38 0.20 0.15 ーーー 0.10
エンドプレイ 0.15 0.12 0.08 ーーー 0.13
どれも良い値ですが3RDギヤのバックラッシュはさすがに新品なのでベストの値です。
フォーク・シフトロッド類です。
こちらも純正新品をたくさん使っていきます。
シフトフォークまで組み付け完了です。大まかには71Cの最終型の仕様となります。
ミッションケースに組んで試験機で試験して今回も完成です。
今回はオーナー様のご希望でこのアメリカで販売されている超クイックシフトシステムを取り付けています。シフトレバーの上端で前後シフトストロークは片側で30mmぐらいしかしません。
このクイックシフトは純正シフトブロックの上に挟み込みで支点プレートをかさ上げしますのでどうしてもこのようにボルトやプレートが追加されてきます。
上から見たところ
フロントハウジングの2この穴は支給されたベルハウジングに初めから加工されていたもので、クラッチの冷却穴というところでしょうか。
2021年6月7日
R200デフ3.9スーパーロック R17
オーナーは上のミッションと同じ方なのでこのページで連続して記載します。
画像はR200デフの素材で部品番号からわかるようにDR30用のデフです。バラバラにしてこれからレストアしてゆきます。
分解前はピニオンプリロードはほとんどゼロの状態でしたのでピニオンを分解してメンテに入ります。ピニオンテーパーベアリングはかなり摩耗していました。
先ずはデフケースの錆取をして塗装してきれいにしてゆきます。塗料は2液式ウレタン塗装なのでガゾリンなどでも禿げません。
ピニオンベアリングのレースをデフケースから抜いて新品のテーパーベアリングをセットしていきますが、こうすると必ずピニオンのプリロード、さらにはリングギヤとの歯当たりがずれますので全くゼロからのセットとなりますが、ひたすら何回もやって試行錯誤でセッティングを詰めていきます。と言っても私は今までの手を入れたデフセットの値をデーター化してまとめていますのでおおよその狙い値はつかめてきているので3トライくらいでまとまるようになって来ました。また、使用するシム類も独自に製作していますのでシムが無いから今までどうり組むなんてことは無いです。
今回のシムは0.10mm 締め付けトルク20Kg/mでプリロードは19.9Kgcm
LSDはオーナー様からOS技研のスーパーロック仕様の指定ですのでOS技研と相談してR200用を作ってもらいます。リングギヤボルトはM10です。
OS技研スーパーロックはイニシャルを皿バネで掛けているのではなくコイルスプリングでやっているので低速での引きずりが無い設計です。またフリクションプレートの枚数が格段に多いのでロックも強烈にかかります。
部品をそろえて組み込んでいきます。
ここでサイドテーパーベアリングのプリロードとリングギヤのバックラッシュ調整をするのですが、LSDが別物となるので今まで使っていたアジャストシムも選定しなおしとなります。私はここの部分のアジャストシムもたくさん用意していますというか、これが無いとセッティングはできません。
まずはサイドベアリングプリロードを掛けます。これがちゃんとしていないとバックラッシュも意味が有りません。シムを入れ替えながらプリロードを測りますが、ピニオンプリロード(今回は19Kg/cm)に対してどれくらい荷重が上がったかを見ています。
最終的に21Kgとなりましたので、サイドベアリングプリが2Kかかっていることが分かります。
この時のコツはバックラッシュが広くなる設定の方から攻めて行くということで、これを逆にやると測定値や設定値が泥沼に入ることになります。
この後左右のシムの合計板厚を変えない様にして左右シム厚を追い込んでバックラッシュを出してゆきます。
今回のバックラッシュは0.10~0.12 リングギヤ背面振れ0.03 となりました。
そしてこの時のリングギヤ歯当たりを見ます。
これがだめな場合はまたピニオンを抜き取るところまで戻ってやり直しとなります。これを3面ぐらいやるとかなりへこみます。
画像のように正転側歯当たりはほぼ完ぺきとなりました。
逆転側歯当たり、少しヒールよりで先端よりですが中古ギヤの場合はどちらもど真ん中はなかなか得られません。
バックラッシュ測定
0.10~0.12とすごく安定した値で、アクセルON、OFFで出るガチャ音を最小限にしたいので基準範囲の狭い側いっぱいでセットしました。
設定作業は何とかまとまったので、これから付帯部品の取り付けとシール類のセットをしてゆきます。
フロントコンパニオンフランジとサイド強化フランジはオーナー様の指定品となります。
デフカバーをブラスト処理して取り付けています。デフのドレンボルト、ミッションも同じですがアルミの薄壁にテーパーネジが切ってあるので締めすぎるとデフカバー側に亀裂が入ります。
このプラグはオイル漏れが心配でギリギリ締めがちですが、例えば私が試験機で試験するときは指で締める程度でもほとんどオイル漏れはしません。つまり締め込み程度が問題なのでは無くシールテープの巻方やネジ表面の状態の問題だと思います。
テーパーネジなので締めこむと楔効果で締め切り感はほとんど反応ないのでほどほどに締めましょう。漏れませんよ。プラグの出っ張りがかっこ悪いと思ったっ場合はテーパータップを切りなおしましょう。
リップシールも付けてリヤカバーも付けてほぼ完成です。この後オイルを入れてモーターを取り付けて、回転試験を実施します。
私の試験機ではモーター120Hzの時に負荷アンペア140mA以下が目標です。
駆動系繫がりでデフのカバーのブラスト処理が返ってくるまでこのドライブシャフトのオーバーホールに入ります。十字ジョイントの動きとしては悪くなかったです。ゴムブーツを固定している金属バンドの形状がカクカクした形であまり見たことのないものです。
十字ジョイント、フランジを分解しました。永い間メンテしていない場合は十字ジョイントが固着していて分解するときに無理がかかりやすく、丁寧に粘り強くやることが必要で力任せに分解するのはダメです。
十字ジョイントの動きとしては悪くなかったですが、中身のベアリンググリースは真っ黒に変質しています。
一見きれいに見えた十字ジョイントのシャフト研磨部も拡大してみるとこのようにダコンが見られる場合が有ります。
ボールスライドのブーツを取り、ボールスライド内部のベアリングをチェックします。
ボールスライドですが4本の各溝に、ベアリングパーツが入っていますが画像では
金属ボーループラー金属ボーループラ金属ボール
となっていますが左端の金属ボールの左側には本来はプラスチックカラーがもう一つついているはずですが外して有る様です。かつてR200が流用され始めた時にここのプラスチックを外さないとスライドが縮じんだ時にボールが胴突き破損するという情報が流れた時があり、その名残だと思います。私は何回か検証したのですが寸法的にはそうはならないと判断しています。よっぽど特殊な、例えばラリー車のような超ロングストロークサスなら問題かもしれませんが通常は問題ないと思います。デフ形状がリングギヤ側に大きく張り出し偏りしているのでドライブシャフトは左右で異なるのではと思う人もいるかもしれませんが共通部品で使用で問題ありません。なぜならデフは車体に対して右寄りにずれて取り付けられているのでデフからタイヤまでの距離は左右で同じになります。
塗装して必要パーツを準備して組み付けに入ります。
先ずはボールスライドを組み立てます。分解前に各部品の位置関係は必ず刻印して元の位置に戻すようにします。ボールスライドは特殊グリースを入れてくちゃくちゃになりながらセットすればいいんですがこのゴムブーツの取り付けには意外と苦戦します。私は何回かやるうちに専用治具を作っていますので、今はすんなりとできるようになりましたがかつてはヌルヌル滑って何回もやり直しました。
左右のジャーナルヨークの位置ですが画像の位置であることが必要です。組もうとすれば45度ズレ、90度ズレも組めてしまいますが、振動発生の原因となります。
私はこの位置にロゴマークを刻印して記録用にしています。
十字ジャーナルです。たくさんあるC型のパーツがジャーナルベアリングの調子を調整するシム兼固定クリップとなります。フランジが自重でお辞儀をするようではガタが有りすぎ、フランジが手で全力で押さないと動かないようではクリアランス詰めすぎとなります。正式には引きハカリで引き荷重を測定して選定することになっています。
フランジを取り付けて完成の状態です。十字ジャーナルの丸いベアリングの頭が黒く塗られていないですっきりしていると気持ちが良いですね。
引き続きプロペラシャフトのオーバーホールです。
これは十字ジャーナルがスカスカで完全にメンテ必要な状態でした。フランジが自重でお辞儀をするとあまりよくない状態です。部分的には動きがカクカクしている部分もありました。
ジャーナルを分解してゆきます。
ジョイントを観察すると研磨面が焼けて変色しているところが見られます。ブルーに変色していると300度まで温度が上がったことになります。このまま行けばいずれは焼き付いていたことでしょう。
焼き色がついているところを拡大するとこのよう周期的な模様というかへこみが観察できます。これがカクカク動くところの原因です。
プロペラシャフトを塗装して十字ジャーナルを準備して組み付けに入ります。やり方はドライブシャフトと同じ様です。
完成画像を取り忘れましたが、この後無事組み立てて完成となりました。