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71BコンパチC Ωバージョンは71Bミッションの中身を71系最終バージョンの71Cに入れ替えて性能回復を図るバージョンです。Ωバージョンは純正でも存在しない4速まで強烈なシンクロのかかるダブルシンクロとするバージョンです。バージョンとしてΩ、α、β、γ各バージョン×クロス組バージョンが有ります。
2023年3月9日
71BコンパチC Ω53
S31Zにお乗りのオーナー様で、エンジンをL31に変更するのに合わせてミッションからデフ、ドライブシャフトまで駆動系をすべて刷新したいというご要望です。
まずはドナーミッションの分解から入ります。
ドナーとしてこのミッションを支給されました。長年の使用や保管でほとんどのミッションがアルミの錆やオイル汚れでこんな感じになっています。
分解したあとケースについてはきれいにするためウェットブラスト処理に出します。
このドナーの中身はポルシェシンクロのギヤ組でした。これでオーバーホールもできなくは無いですが、ポルシェシンクロはだんだんパーツが枯渇しつつあり、日産部品でシンクロリング1個が15800円という価格にまで値上がりしてしまっています。4個でシンクロリングだけで63000円になってしまいます。
オーナー様の選択で、このミッションを71BコンパチC Ωバージョンで改造してゆきます。
いつもの通り組み立てに入ります。
向こうに見える箱はメインシャフトです。
1-2速組付け準備
こちらは3速組です。
3速は箱入りの新品
手前のビニール袋はハブ、スリーブの新品
で組みます。
もちろんダブルシンクロはすべて新品です。
いつものように組み進めて、ギヤ部は全部組み終わりました。
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ
0.32 0.12 0.16 ーーー 0.20
バックラッシュ
0.05 0.10 0.09 ーーー 0.11
これからシフトフォーク関係の組付けに入ります。
シフトフォーク組付け
ミッションケースに組付け
ミッションケースはブラストを掛けたのでピッカピカです。最初の画像と比べると違いが判ります。
ベルハウジング内
使用したものはクラッチの摩耗カスとオイルが混じったものが層になって堆積していますが、ブラストでそれもきれいになっています。
駆動系刷新という事でこの画像のデフ・ドライブシャフト・プロペラシャフトが送られてきています。
先ずはデフから修理してゆきます。
このデフはR180でケース上部に” K ”マークが鋳出し文字でついていますので、LSD付きであることが多いタイプです。また、ドライブシャフトフランジが付いていないタイプで、ドライブシャフトはスプライン差し込み方式です。
リヤデフカバーを開けましたが、見ての通りオープンデフとなります。S31Zは純正ではデフはオープンなので街乗りならばこれでも問題ないです。
さらに見てゆくとこのコクインの通り38*8のギヤ比なので4.375となります。これは車重の重い日産車、例えばS130などで使われたギヤ比です。
S31Zの純正ギヤ比は3.9または4.1が適しますので4.3ではかなり減速比が大きい(各ギヤですぐに吹けきってしまう事になる)。エンジンをL3.1にするのならかなりもったいないギヤ比で、スポーティーには走れないと思います。ただ街中で信号ゴーストップでは加速が良くなるので100Km/hぐらいまではうまく走れると思います。このデフのギヤ比をどうするかオーナー様とご相談しなければなりません。
オーナー様とご相談の上、このままのデフ仕様でゆくことに決まったので再びオーバーホールに入ります。
デフ玉を取り出しました。
ピニオン一式を取り外しました。
今回は駆動系一式なので、同時にドライブシャフトとプロペラシャフトもオーバーホールします。
長年のグリースと砂が固まってコテコテになっています。ドライバーでつつくとそれらが皮のようになってはがれてきます。
ほぼ全部(ボールスプライン部はこのあとやっています)分解しました。この後そうじをして塗装に入ります。塗料を作るとなるべくいっぺんに塗ったほうが効率的なので、この後塗るべきところはいっぺんに塗っていきます。
ピニオンを取り外したので恒例のベアリング調査です。
リヤ側 大きな傷は無いですが表面には横スジがたくさん入っています。中央1/3が当たりが強くなっていることがわかります。
フロント側 同じような感じですがこちらのほうが少し横傷が多い感じです。 こちらは 中央1/4ぐらいに偏って当たりが強くなっています。 これは私の考えではベアリングプリロードが不足している結果だと思います。
デフ玉からサイドベアリングを抜き交換します。このベアリング抜きはオープンデフの場合プーラーがかかりにくいので思いのほか難しいです。LSD付きの場合は分解すれば裏からポンチで打ち抜けるんですが。
サイドベアリング交換してこれからサイドプリロード、バックラッシュ、刃当たりの確認と続きます。
前進側刃当たり 良好となりました。
ピニオンプリ 12Kg
サイドベアリングプリ 3Kg
バックラッシュ 0.10~0.13
とセットしています。
結果的にいままではものすごくサイドベアリングのプリロードが高い状態であったことが調整シムの厚みの差で分かりました。バックラッシュはプリロードの掛け方でも変化するため、バックラッシュ調整だけに専念するとこのようになりやすいです。
こちらは逆転側 良い状態です。
ギヤ部が調整完了です。これからこれをまた全部分解して、今度はオイルシール類を組みながら完成品としてゆきます。オイルシールが付いたままではベアリングのプリロードがわかりにくいのでこのように手順を踏まなければなりません。
デフリヤカバーを取り付けました。
この後の回転試験に備えてサイドフランジを仮付けしています。
外観的には最初の錆とオイルまみれの状態とは雲泥の差があります。車検などの時に行う真っ黒な塗料の下回りパスタ塗りで本来はアルミのきれいな面であるべきところまで真っ黒になっていましたが、今度はメリハリ良くなっていますので見てかっこいいと思います。このままの状態を維持してゆくためには車検整備で下回りパスタ丸塗りは避けたいです。手塗りならまだよいかもしれません。
回転試験です。2000RPMまでぶん回します。
LSDが無いと回転が静かで音も少ないです。
デフと一緒に分解して塗装まで一緒にやったドライブシャフト
これも消耗部品はすべて新品で組みなおします。
上にあるプロペラシャフトは非分解式だったので、塗装のみやっています。きれいになりました。