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71BコンパチC Ωバージョンは71Bミッションの中身を71系最終バージョンの71Cに入れ替えて性能回復を図るバージョンです。Ωバージョンは純正でも存在しない4速まで強烈なシンクロのかかるダブルシンクロとするバージョンです。バージョンとしてΩ、α、β、γ各バージョン×クロス組バージョンが有ります。
2024年9月12日
71BコンパチC Ω62クロス
神奈川県よりオーダーいただきました。
71Bが送られてきました。
外観的に71Bでも比較的後期タイプのS130用が送られてきました。このタイプにはバックへの誤シフトを防ぐためのバックチェック機構が備わっています。シフトブロックのウサギの耳は高さの高いものとなっており、イーザ方式クィックシフトへの改造が可能なタイプです。ミッションギヤとしてはS130の重量増を補うためにローギヤッド寄りのギヤ比なのでコンパチ化でこの部分も修正できるので良い組み合わせとなります。ましてや今回はクロスギヤ組なので申し分なく良いです。
ミッションの組んである感じを見ると、私の見る限りケース側は一度も分解されてない感じです。
フロントカバーについてはやけにきれいだし、画像で見てわかる通り天狗の鼻が長さが短くカットされています。ここをカットするのはトリプルクラッチを取り付けた痕跡とみてよいと思います。ツインクラッチまではメーカーにもよりますが天狗の鼻のカットは不要のように記憶しています。ここをカットするとクラッチレリーズのガイドが短くなるのでトリプルクラッチ以外を付ける場合は問題が有ります。
ギヤ部分を取り出しました。
通常の71Bのワーナータイプであると思います。5速までワーナーとなっているのは後期型であるS130の71Bの特徴です。これ以前のミッションでは5速だけポルシェで残っている場合が有ります。5速のポルシェシンクロは完全に欠品ですのでシンクロが壊れた場合はそのままでは修復できません。(私のところではそれでもポルシェタイプをワーナー化する改造手段があるので何とかなるにはなるのですが。)
組付けに入ります。
メインシャフト・メインインプットギヤは新品箱入りを使います。
クロス組なので1-3速ギヤとカウンターギヤは亀有クロスを使います。
1-2速まで組みます。
クロスギヤである3速まで組みました。
Ωバージョンなのでメインインプットは純正の大径シングルシンクロから大径ダブルシンクロへ改造してゆきます。新品インプットを改造するのは不思議な感覚です。
メインインプットを大径ダブルシンクロに改造しました。メインインプットの中に入るニードルベアリングは右に見えるスモールニードルから真ん中に見えるビッグニードルに変更します。この部分の強度がぐっと増すはずです。
1-4速まで組付けました。
この中で中古なのはハブスリーブだけで。それ以外はすべて新品での組付けとなります。
5速まで組付けました。
5速は0,75ギヤ比でのオーダーで、今回はバックリンクタイプ=R32構成となります。
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ
0.28 0.28 0.13 ーーー 0.25
バックラッシュ
0.15 0.18 0.15 ーーー 0.15
やはりギヤ類が新品が多いのでバックラッシュが揃ってきます。良い値です。
シフトフォーク関連を組付け
71Bケースに組付けました。中身は71Cとなります。ミッションケースはウェットブラストオプション採用ですので新品のようにピッカピカ。
左側面に小判型パーツが取りついていいるバックチェック装置付きです。
フロントカバーは現状調査で天狗の鼻カットの見立てをしたのですが見誤りでした。通常の天狗の鼻でそのままシールを交換して組付けです。
リヤエクステ側
シフトブロックにはシフトレバー支点を純正の上に追加工するクイックシフト対応可能な仕様で、サービスで加工です。クィックシフトレバーを準備すればクィックシフト化できます。S130リヤエクステの場合シフトレバー支点間距離が38mmである場合が多く、純正S30Zのシフトレバーを使う場合は追加した上の支点に取り付けがマストです。
ここの情報は こちら
2025年1月22日
71BコンパチC Ω63クロスー魔法の箒8
埼玉からハコスカGTR用としてコンパチミッションをオーダーいただきました。画像のケンメリGTR71B2分割ミッション復刻版を使って中身71CのΩバージョンを作る「魔法の箒ー8号機」となります。
画像下から71C用メインシャフト・亀有クロスミッション2-3ダブルシンクロの71C用・メインインプット71C用新品
今回の特殊な仕様としてこのメインインプットをローギヤッドを使い、全体的なギヤ比をより71Aの純正クロスに近いギヤ比にすることとなります。
ギヤ比について
1ST 2ND 3RD 4TH 5TH
Z432やS30Z初期中期型に使われている71A3分割ポルシェシンクロミッションのギヤ比は
71A3分割5速 2.957 1.858 1.311 1.000 0.852
これをΩバージョンにすると
71C Ω ver 3.321 1.902 1.308 1.000 0.752(0.83)
これは71Aに比べるとワイドになっています。
これだとスポーツ向きではなく一般的なレシオなので
そこで亀有クロス化するのですが
Ω ver クロス 2.427 1.677 1.258 1.000 0.752(0.83)
これは完全なスポーツ仕様(5速は選択で0.83が有ります)ですが71Aと比べると1速からかなり
かけ離れてハイギヤードとなります。これだと一般道では難儀する場面があるかもしれません。
そこで今回のスペシャルは一時減速をすこし落として全体をローギヤッド側に振ります。
Ω ver クロス 2.624 1.814 1.361 1.000 0.821
となりますので、1速も無理が無く、2-4速も程よい値になりそうです。
5速は71Aに対してすこしハイギヤードの0.821となります。
今回センタープレートは画像のオイルバッフル付を使います。これはR32GTRでフル加速時にミッションオイルが慣性力でリヤエクステ側に偏ってしまい、フロント側の潤滑不足が起こったことへの対処の様です。メーカー純正の不具合対策品です。
画像左側がミッションのフロント側となります。鉄板のフラップがスイングしてオイルをほぼ一方通行にしてフロント側にとどめています。また71Bとの大きな違いですが、71Cはこのセンタープレートのオイル流通穴が71Bでは沢山空いていたものを、どんどん少なく小さくしてきた経緯があります。この時点ではオイル流通通路はこのフラップ穴だけになってしまっています。それでは大事なプロペラシャフトのスプラインが刺さってくるリヤエクステのメタルブッシュのオイル潤滑はどうしているかというとミッションケース内側にギヤで掻き上げたオイルを受ける樋の様なものが通っており、その樋がリヤのメタルブッシュにまで通じています。ここは大事なところでミッションを組むときにこの樋を変形させたり、ひっかけて外してしまったりするとリヤエクステのメタルブッシュが見事に摩耗して無くなってしまいます。そうなるとそのメタルブッシュは交換できないのでリヤエクステンションはオシャカです。
メインシャフトは新品を使います。
カメアリ3速クロスギヤセットです。
1-2速を組みました。
今回はメインインプットギヤ=一次減速が通常の22/31ではなく21/32のローギヤッドを使います。これでクロスギヤを使いながらも街乗りで楽に走れる仕様となります。右下はアイドリング時のチャタリングを軽減するシザースギヤです。
メインインプット内のニードルベアリングは画像左側の大きくてがっしりとしたタイプを使います。右側が71Cの良く使われている一般的なニードルですが大きさが一目瞭然で違います。
そしてこれが71BコンパチC Ωバージョンであることの証である大径ダブルシンクロです。4速の大径ダブルシンクロは日産純正では存在しません。
シザースギヤも当然ハイギヤードとローギヤードでは歯数も大きさも異なります。
1-4速まで組み込みました。
カメアリのクロスギヤは表面処理がしてあるので元々真っ黒です。
リヤ側5速-バックも組んでギヤ組は完了です。
今回はバックにもシンクロが付いているバックシンクロタイプです。(71Cにはこのほかにバックリンクタイプというものもあります)いずれもバックへのシフトでギヤ鳴りが起こることへの対処です。
71Bはバックは何の仕組みも無く、ただギヤとギヤをテーパー呑込みで嚙合わせるだけなので、ミッションが完全に回転停止しないと必ずギヤ鳴り=ギヤの摩耗破壊が起こります。従ってバックに入れる前にクラッチを踏んでから3秒~5秒ほど待ってミッションの回転が止まるのを待たなければいけません。が、ほとんどの人は待ちきれないんですね。
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ 0.25 0.18 0.10 ーーー 0.20
バックラッシュ 0.18 0.20 0.13 ーーー 0.14
さすがにほとんど新品ギヤで組んでいますので各管理数値がきれいに揃って出てきます。
エンドプレイを規格内で大きめに出ていますが亀有はいつもそのような値になります。
71Cの巨大なシフトフォークを取り付けました。