2016年6月8日
s30z3針式ストップウォッチ時計 の修理
また久々にこの時計の修理をやります。
動いているには動いているがときどきふっとみると1時間以上遅れていたりします。秒針の動きは滑らかっぽいので、どうもときどき気を失う状態のようです。
ノブ2個がちぐはぐですが長い年月の間に失われたと思われます。
分解してゆきます。
内部は金属製の小さなギヤがぎっしりあり、エンジニアリングプラスチックがほとんど主体の現代の時計とはだいぶ様子が違います。
いままで何例も見てきたので真っ先にこのパーツを取り出しチェックします。
下側は磁石になっていてインダクションモーターを構成している部分でパルスを受けることで回転力を生じます。そのうえの丸ワッシャーを挟んでエンジニアリングプラスチックの歯車がありますがやはり歯スジがギタギタでこれでは安定して回せないです。
ギヤ部分を外そうとペンチでつまんだら軽くばらばらになってしまいました。プラスチックが風化して飴のようになっていますが40年が限界のようです。
他のギヤは金属製なのでまだ大丈夫ですが、なぜこの要のギヤをエンプラにしたのでしょうか?不明です。
左上がリプレイスするスペシャルギヤで、もちろん市販品では無いです。また、一品一葉的なところがあって圧入代や歯の形を微妙に現物合わせしないとすぐ動かなくなります。
組み戻しました。
右側の金属の円筒形のものがモーターですがその左側に金属の柱がある間隔で立っていてその中に先ほどの磁石が入り回りますが、ここでオシレーターのパルスを受けて一定速=計時を生み出していると思います。
もちろんしたがって蚊取り線香のようなテンプはありません。
動き出したら各部の清掃と専用オイルを注油してゆきます。
組み戻した後時間調整に入りますが、電源を切ったりつないだりしたときに100%起動できるかなんどもチェック=時計にとっては一番つらい場面です。そしてできるだけ長い時間回して遅れ進みを調整しますが、オシレーターに調整ネジがありますが1分/1日以上の大きな変更はできないようです。そのままでも大抵1分以内にはいりますので、この時計にそれ以上の精度求めても意味ないですね。
完成です。
2017年3月15日
Zの時計修理依頼がだいぶたまってしまった為、まとめて修理に入ります。ミッションとは同じギヤで構成されている機械式ですが、時計は小さいので対応の切り替えをしないと取り掛かれません。
右から、前期3針オシレーター付き時計
中央、最後期のクオーツ式3針時計
左 中期3針カレンダー付き時計
先ず左側の3針カレ時計ですが、
この時計には内部に電子パーツが有り、この中のコンデンサーやレジスターの不良というか寿命が来ます。特にコンデンサーは寿命が有ります。40年が限界か?
この3本ある柱の上に電子部品が付きます。中央部にはテンプともいえるゼンマイ仕掛けのものがあり、この部分で秒針を送る仕掛けがあるのですがそこの調整が難しいです。
この時計がうまく治ったときはテンプのゼンマイが1秒ごとに大きくなったり縮んだりするのでまるで心臓が動いているようできれいです。私はこの3種の中で構造的にはいちばん好きです。
次にこのZとしては最後期のクオーツ3針
文字盤に英語でクオーツと書いてあるタイプがこれです。これが完調の時は恐ろしく精度が良く、日差で数十秒です。なんせ、そもそも遅れ進みの調整ねじも見当たりません。
オシレーターの代わりに四角い光った箱の
なかにクォーツ機構が入っています。
これも電子パーツやモーターが故障する場合が多いです。
これがモーター部分
この上に先ほどのモーターと電子部分が載っています。
ギヤ類を外して掃除してゆきます。画像にはありませんが時刻合わせの際機能するパーツが有ります。
これがまた凝っていて時刻合わせのためにノブを引くと秒針を0に戻す機構となっていますが、ここまで凝るんですね。
これらのギヤパーツを洗浄液で洗うと、これだけゴミや汚れや摩耗カスが出てきます。
そしてこのオシレーター付き3針時計
一度修復した履歴があるようです。配線の色が異なっています。
これがオシレーターの内部ですが、今回は音叉の配線が片方切れているという不具合で、片方がつながっていたのでなんとか動くため作動音もしていて最初は問題なしと思っていたのですが、最終テストで動きがおかしく再チェックで不良が発覚しました。(画像はサンプル画像です。1対1の画像ではありません)
そしてお決まりのモーターギヤ部分もダメで硬化していますので代品に交換です。このモーターの調整は気難しく、また軸受がエンプラなので摩耗が大きい場合があります。もう部品は無いですから、代品ギヤの全歯についてハンドワークしたり、モーター側の部品を調整して、その条件でいろいろやりくりして最低限動くところまで修復します。消耗部があると匙を投げてしまう場合が多いですが、じっくりと見続けていくとある瞬間に、何とかする手段が見えてきます。
2017年12月16日
s30zの中で一番シンプルなこのjeco2針時計の修理です。
外観、中身共にきれいですが動きません。
タイプとしては前期タイプです。
この時計はテンプに動力を伝えるのに電気モーターを使っています。機構としては単純な部類に入りますが、すごく丈夫で故障は少ないです。
先ずはモーターを外して確認しますが、モーターは全く問題なかったです。
どんどんばらしていきますが、この時点で各ギヤーにグリースのように固まったオイル状のものが付いていますので、これが動かない原因と思われます。このようになるとこのワニスのような油でギヤが回ることを妨げてしまいますので、これらをすべて取り除く必要があります。どうも、使われていたオイルが粗悪なものを使っていたようです。
ほとんど完全にばらしました。各パーツは錆もなくメッキがまだきれいで新品のように見えます。
このように変な油がいっぱい付いています
これらのギヤ類をすべて洗浄剤の中に漬けて油を溶かし流しすることが必要です。これは洗った状態。
ギヤ類を洗浄したら組み立てに入りますが、その際にベースプレートのギヤ軸受に時計専用のオイルを適量(ベルジョンの専用オイラー使用)滴下しておきます。
ギヤ部復元完了
この中で難しいのはテンプ(ゼンマイが付いた部品)とガンギ車、アンクルの取り付けです。それらは組み立て時軸受の中で直立するほど軸受長さは無く、先端を支持するだけなので、コツとしては軸受の上にぐらぐらさせながら3本を置いておき、その上からアッパーベースをかぶせてその上側軸受けに少しずつギヤ支点を寄せてゆくという作業になります。このとき絶対に無理な荷重を掛けないことが重要で無理すると支点の先端の細い部分が折れます。
修復完了です。元がきれいだったので、これで当分手入れは必要ないのではと思います。
2017年12月20日
時計修理依頼が続きます。
何か周期のようなものが有るのでしょうか?
S30Zのストップウオッチ付3針時計です。
すごくアナログな感じですが、この時計を付けるとS30Zの3連メーターがより引き締まる感じがします。なにかに似ているなと考えてみると航空博物館にある昔のプロペラ戦闘機の計器に感じが似ている気がします。
不動とのことで送られてきたこの時計ですが、こちらで回してみると問題なく動きました。
手付かずで動くのでどうしますかとオーナーとご相談したところ予防的にオーバーホールしてくださいとのことで、進めることとしました。
横から見ると前期タイプの時計であることがわかります。前面の傾きと、後ろの取り付けステーが特徴です。
分解してゆくとこの油が付いているのが分かります。動きが悪いところがあったらしく、通常の機械油を注したようですが、これは逆効果です。
内部が見えてきました。
中身はかなりきれいですが、中央部のモーターについているいつものギヤがやはり黒っぽくなっています。
外してみますとやはりプラスチックは飴のような感じに硬化していて、軸部からヒビが入って内部まで浸透しているのが分かります。これが全周にて3本あるのが分かります。
下部のギヤ部も形は残っていますがギタギタに変形している状態ですが、これでも時計精度は保たれていたので、すごくマージン持っている優れた時計だと思います。ギヤはスペシャルギヤで置き換えていきますが、そのまま付けようとしてもうまく付かないのでかなり合わせ調整が必要です。でもギヤ新品になればギヤの寿命はあと30年大丈夫です。
同時にアンメーターの動きがおかしいということで見てみるとコイルが真っ黒に煤けていて過電流があったようです。
念のためこちらのタイプのコイルに交換します。形は違いますが機能は同じです。
2018年5月29日
ケンメリの時計修理
いままで自分の車と同じs30zの時計を専門に見てきましたが、今回ケンメリの時計の修理を依頼されました。内部の構造が分かりませんがs30zと時代的には近いので受けてみることにしました。
これが駆動モーターですがマブチモーターによく似ているような気がします。
この画像でモーターの上側に小さなゼンマイが見えますので時間計時はテンプによる機械式ということになります。
ここでモーターのウオームギヤによるリダクションが見えます。歯車類や軸受には時計用のオイルを専用オイラーで給油してゆきます。機械部は見たところきれいで問題ないように見えます。
モーターなどの駆動部についてみてゆくとモーター単体では回転することがわかりました。
ここが駆動をコントロールする部分の様で、モーターから受けた駆動力を細いスプリングにいったん預けるようになっています。そのスプリングがモーターの左側に見えています。なぜこのようになっているのかよく分かりませんが、他の時計ではモーターが直接テンプに駆動力をかけているのですが、モーターの原価低減のためかもしれません。(あくまでも想像です)
さてここがモーターの力をスプリングに受け渡すコントローラーの部分ですが、全体的には400メートルリレーのようになっていて円周上の180度地点でバトンを渡すようにスイッチが入ってスプリングをモーターで巻き上げます。もちろん巻き上げ続けるとスプリングや各機構にダメージが来ますのでバトンを渡したらモーターは止まる構造になっています。その後はスプリングの巻き戻し力のみでテンプに駆動をかけ続け、また180度が来るとモーター巻き上げとなり、つまりモーターが間欠動作しています。今回の不具合はこの部分の部品の劣化と接点の調整がめちゃくちゃとなっていることが原因です。私の想像ですがこの時計は過去に電源の逆接をされた履歴があるのではないかと思います。通常は時計配線はカプラーなので逆接は考えにくいので、バッテリ端子のところで逆接したのではないかと思います。一瞬でも逆接するとこの時計は壊れます。
修理としては劣化した接点パーツの補強と接点磨き、および完結動作を一瞬たりともミスらないような接点のセッティングとなりました。修正後24時間回して一回も止まらず、時間も正確です。後少し回し続けて止まらなければ完了かと思います。また、電気時計の場合は電源を切った状態から電源を入れたときに起動できるかどうかも重要ですので何回か電源の入り切りも交えて稼働試験し行きます。
2018年7月10日
JECO2針時計の修理
長い付き合いの奈良のEさんから時計の修理を依頼されました。JECOの2針時計でこの時計は単純ですが最も故障が少ない時計と思います。精度も良いですし、気楽に使えるし、シンプルです。
届いた時計に通電したのですが全く動きません。
内部はこの様になっていてこの時点ですでにモーターは外してありますが、モーター単体では回転に問題はない様ですので、一安心です。動かない理由はこのギヤ類の中にあります。手前側に蚊取り線香のようなゼンマイひげが見えていますが、この部分がテンプでこの時計の骨格をなす部分でこれで時間計測をしています。
分解しました。全体的になにかヤニのような黒いべとべとしたものが目立ちます。
本体側も同じく黒いヤニ状のものが目立ちます。
こんなになっていますが長年の稼働でオイルが劣化した結果と思います。幸い針のようにとがっている軸先端は無事の様ですが、このまま動き続けたら軸先端がすり減ってオシャカになるところです。時々軸が無くなっているものが有ります。
こちらが軸受側ですが、材質はリン青銅系の金属だったり、エンジニアリングプラスチックのところもありますが、思ったよりは減っていません。高級腕時計にはこういう部分に固い宝石類を埋め込んで摩耗を防いでいます。
2019年7月20日
久々に今日は時計屋さん
静岡市内のご近所さんのS30Z用時計の修理を依頼されました。時計としてはカレンダー付3針時計で51年式ぐらいの仕様と思います。内部にテンプ機構を持つタイプの最終型で、この後の最終型でクォーツ+モーター式に替わります。
通電しても動きません。
内部はかなりきれいな方で通常の消耗具合と感じますし、電子部分もあまり消耗していない感じです。
作業するときはこの工業用拡大鏡や時計用のルーペを使ってギヤ部を拡大して作業します。
これがテンプで下側にひげゼンマイが付いていて左右に振れるときの一定の周期=時間を生み出しています。これだけでは左右に動く力はないので、電子部品にある金色のコイルとこのテンプにつく永久磁石の反発力で稼働しています。
この後軸受けやギヤの汚れや摩耗をチェックしながら洗浄と時計専用オイルの注油を行いながら作業してゆきます。
組み戻しています。
地球ゴマのようなテンプの上下につく軸受けの締め合わせ調整が微妙です。また、テンプの左右振れ周期を秒針の一方通行の動きに変換するところにも微妙な調整機構が有ります。
ひげゼンマイが心臓の鼓動のように膨らんだり縮じんだりして動きます。手前側に見える黒い柱にらせん溝が切られたパーツは時計の遅れ進みを調整する機構でこれを回すことによりひげゼンマイの固定位置を変える=長さを変化させることで可能になります。
この後ずっと回し続けて稼働試験ですが、カレンダー付時計の場合完全にするには1日~30日まで確実にカレンダーが切り替わるかチェックが必要ですので最低でも1か月テスト期間ですが、そこまではやりきれないので三日間くらいカレンダーが動いたら後はユーザー様でのチェックに移ることが多いです。