木リムは異次元の乗り心地
今回はホイールの紹介です。大変珍しいのではないかと思いますが、木製のリムとカンパのグランスポルトの組み合わせです。木リムはニップル穴が深いので長いニップルと、木がめり込まないための特殊なワッシャーが必要です。
なぜ木リムかというと、木リムの乗り心地はジェラルミンリムのカチンカチンの乗り心地とは異次元の振動吸収性だという伝説が有るからです。これを確認したいのです。西部劇に出てくる馬車の車輪は木ですし、自動車も当初は木ホイールでした。現代でもスポーツの場スキー板などでも木は使われています。1960年代までの競輪用自転車のリムは竹が使われていたようです。
1年前に何とか前後仕上ました。しかし少し問題が・・・・
ちょっとわかりずらいですが、木リムのホイールです。1年ぐらい前に組みたてました。メーカーはCBLです。
前後有りますが前輪は問題なしです。
しかし、後輪で気になるところがあります。
メーカーラベルです。
木肌は白っぽいベージュの様な色で、木目が出ています。
アルミに木目模様のビニールシートを張っているわけでは無いですよ。
本物の木です。
ハブはカンパニョーロのラージハブ グランスポルト 1960年代でしょうか。
軸の部分は鉄製でメッキ、そしてフランジ部分はアルミでこれを接合しています。
いわゆる 継ぎハブ というものですね。
実に美しい創りです。
フランジ外側のベアリングカバーは一体で作られていますね。
撮影のためにクイック込でセットしています。
クイックはビンテージ的には直レバーのはずですが、入手できませんでしたので、画像の通りアールのついたレバーです。
この画像をみて何か気が付くでしょうか。
そうです。スポークが入っていない穴が何か所かあります。なぜかというとカンパGSの後輪ハブはスポーク穴数40なのに対してCBL木リムのスポーク穴数は32なのです。普通は組めないですが私はどうしてもこの組み合わせで組みたかったのです。どうしたかというと片側4か所両側で8か所90度ピッチでハブ穴を飛ばしてゆけば組めるはずです。スポーク長さは8本は特殊になります。そして実行しました。
結果的には組めました。しかし最初に申しましたように問題があります。振れが取れないのです。どうしても・・・。1mm弱残ります。しかも横と縦両方です。そしてそれが90度ピッチでやってきます。察しの良い方は気がついたと思いますが、上の画像でフランジのこちらと向こうの空の穴位置が一致していますが、これが良くなかったのではと思います。均一化できていないのですね。今回はこれを45度ずらしてみようと思います。
片側だけ分解しました。このあと組み付け直しますがスポークの組み方がややこしいです。
やっとなんとか組み直しました。ここまで来るのに3回ほどやり直しています。苦戦しました。
なぜかというと 32穴リムを40穴ハブに組むという変則のためスポーク長さが掴めなかったのです。
今回の組み方はjisタンジェント組みで6本どり(変則7本取り)ですが、スポーク長さは計算式で算出します。私はCADで疑似3次元でホイールの形状を描いて、そのスポーク長を直接描きますがなかなかうまくいきません。
結局市販されている一番長いスポーク306mmを入手しなおして、仮セットし1本1本直接長さ調整するという最終手段に出てやっと組めました。
組み終わって分かったことは、今回の場合 外取り内取り2本ずつ4本セットパターンが1穴飛ばしで4回出てきて4×4=16本(片側)となりますが、その4本セットで全部長さが違うことです。
左から 外300内298外304内294
という結果でした。通常はすべて同じ長さで当然なのですが、こんなことになりました。
やっとなんとか目標の振れ1mmになりました。ジェラルミンの場合ほとんど振れ0にできますが、木ではこれが難しいようです。経時変化もありますので何回かに分けて調整です。
ここまで来るのにスポークを画像の様に10本ほど無駄にしました。再度ねじ切りして短い方へ再利用です。
使用した工具です。あとは気力が必要です。集中できないとムシャクシャしてストレスが溜まります。
スポークテンションはボス側15kG 反対側 8kGでセットしました。かなり緩いですが、木ですのでだんだん何回かに分けて張っていきます。
これで一応完成です。前後まとめて写しています。
乗り心地をチェックすることが必要ですが、もったいないので仮にチューブラーを糊なしで貼って
直線コースのみ試乗してみようと思います。
インプレッションできたらまた報告します。
もうひとつの木リム
木リムのインプレッションですが、今回完成したCLBはどうしてももったいなくて試乗は出来ません。
実はもう1セット木リムを持っていまして、こちらは私が初めて木リムを組んだ時の物です。
しかし痛恨の失敗をしでかしてしまい、1本リムの接着をはがしてしまいました。木リムはスポークを張らない状態では極めて弱く、ほんの少し押しただけでつぶれてしまいました。そのためフロントとリヤの木リムの種類が異なっています。
前輪ですがメーカー名はJCBあるいはJCRと読めます。グレードはスーパーチャンピョン フランス製ですね。
これは形状としてはトラディッショナルなチューブラーリムの形をしており、スポーク穴には金属の鳩目がインサートされていましたので、スポーク組みには何の問題もありませんでした。ハブはサンシンのラージです。
こちらは後輪ですが、こちらは難しかったです。形状としては今で言うエアロリムの様な形状!です。幅もエアロの様に極めて細いですね。
スポーク穴は木に直接開けられているだけですので、ニップルが長いものが必要です。しかもスポーク穴は40穴開いています。かなり古いハブでも36穴がせいぜいですからこれに合うハブはめったにありません。
探し回って見つけたのがすごく古いサンシンのピストハブです。セミラージで なんと継ぎハブとなっていますし、しかも左右両方にボスがある両コグです。これで組みました。
メーカーは日本製の様ですが、ラベルは劣化して読み取れません。
またタイヤはこれまた古いチューブラーでクレメンのクリテリウム セタ セルジオコルス です。
まるで魔法のおまじないのような名前ですが、セタは絹のことで、タイヤ内部の補強材として絹のコードを使っているのかもしれません。何百キロ走っても脚にこないタイヤと言われていました。
本日久しぶりにこの木リムに乗ってみました。
印象としては 思っていたより硬い乗り心地です。路面の凹凸を拾います。
後輪はどうもピスト用のリムのようで、しかもスポークが#14で40本もありますから、硬いのかもしれません。(この木リムは40穴です。ハブはサンシンのラージピスト40穴) 古いバイクは総じて当時の道路事情(舗装はうねり凸凹が多かったし、砂利道も多かった)に合わせて作られているので、現代のきれいな舗装路を走るだけではその真価は見られないかもしれません。
ほんの数メートル走っただけですが、走りだしは軽いような気がします。するするとスピードに乗っていきます。ブレーキについても問題ないですが、摩擦が大きいので引き加減を調整必要です。ブレーキシューはカーボンリム用が望ましいかもしれません。
このリムの真価は長距離乗ってみないと現れないとは思います。しかし私はその姿だけでも素晴らしいと思います。
木リムについてはこれで一旦記事を完了といたします。