スカイツリーに棲む快人z432面相 ーその2ー
ここから組み付けに入りますが、メインシャフトの振れはほとんど 0 でした。
メインベアリングを交換していきますが、もともとの純正オープンベアリングから、画像のゴムシールドタイプへ変更していきます。これは日産純正71Cミッションでも実施された設計変更で、アクシデントによる潤滑オイルへの異物混入に対する防衛策です。ベアリングのクリアランスは特殊クリアランで選定したものに交換していきます。
このアダプタープレートにベアリングを固定するセットプレートの固定ネジですが、71Bの初期までは十字穴つき皿子ネジで、これをショックドライバーで固定するようになっていましたが、それでは締め付けトルクのかかり具合は分かりません。で、71Cから採用されたこのヘキサボルトに変更していきます。これならヘキサゴンレンでトルク管理しながら締め付けが出来ます。
2速ですがいつものとおりポルシェシンクロのセットを分解して、シンクロリングを交換していきます。ニードルベアリングも交換していきますが、こちらは71Bで採用された一列タイプのニードルです。
ギヤやハブのスラスト受け面は私は画像の様に放射状にダイヤモンドやすりで放射状にスジを入れてオイル潤滑処理をします。
1-2速間のハブ(後ろ側)とスリーブです。ハブの3箇所のツノがスライドする溝はバリが立っていますのでダイヤモンドやすりでメントリしていきます。ハブもツノ部の全周バリ取りします。
このミッションはこのスリーブの溝の部分の爪が欠けていましたから、ここのバリが引っ掛かって破損の起点になった可能性は十分にあります。
ハンドワークなら慣れれば費用をかけずにここの面取りが出来ますが、これを機械化しようとすると莫大な費用がかかると思います。
これは3速です。
インプットシャフトのベアリングは一番負荷がかかりそうですから交換していきます。シンクロや内部に入る小さなニードルベアリングも交換です。
そしてこれらはカウンターの先端に付くボールベアリング達ですが、一番左が71Aの標準で、その右側が今回使用するシールドタイプ、その右は71Bの同じ部位のベアリングですが径が拡大されています。そして一番右は71Cの標準ですが、71Bよりさらに径が拡大されています。
このカウンター先端のベアリングはよっぽど泣き所であったらしく、このような変遷を経ています。
尚、これらすべて今現在では日産部品では入手できない製造廃止品ですので、私は昔なじみの商社に探してもらい取り寄せています。
バックのスリーブですがシフト時のギヤ鳴きで噛み合い部の舳先形状がつぶれてしまっています。
交換用に探し出したものも大差ありませんでした。
バックのスリーブですがバックギヤとの勘合部の舳先形状をひと歯毎に成形修正していきます。
スリーブと噛みあうバックギヤも同じように変形しています。
これも新品入手は難しいので、現品をハンドワーク修正していきます。
画像は修正前で右横の歯は完全に欠けているようです。
このときの71Aのバックギヤは小さいですね。この後71Bではこのバックギヤも大きくなり、取り付け方法も頑丈に設計変更されます。
バックや5速も組み終わりメインシャフトロックナットM38を締めこんでいきますが、今まで欠品していた舌付きロックワッシャーを追加していきます。これは鉄板プレス製なんですが、プレス時の曲げ癖が付いていますんで一旦目いっぱい締め込んで平面を出して落ち着かせてから、また緩めて締め加減を調整していきます。
この時代はこのM38を目いっぱい締めこむと5速などはギヤがロックする傾向にあったようです。
ですから2重ナットで締め加減を調整します。
舌付きワッシャーをはつってロックしました。
これはカウンター側のリヤベアリングですが、左が今まで付いていた71A標準品ですが、これを右側のローラーベアリングに変更していきます。ここはスラストを受けない為、軸方向荷重のみを強力に受けたいのでこれに交換します。
ここからシフトフォークの組みつけに入ります。
これは5速ーバックですがフォークはそれほど痛んでいないのでこのまま組みます。
問題は1速ー2速ですが、右側が今まで付いていたシフトフォークですが、つめが片べり傾向です。
左は71B用ですが、フォークの又の中央にスライド面が追加されています。こちらの方がよりシンクロスリーブを平行に押せます。3点支持になるということですね。
これは他の71Aのシフトフォークの例ですが、激しく磨耗しており段付きになってしまっています。
これでは上手くシフトできなかったと思います。
それで今回は先に出てきた71Bの3点支持のシフトフォーク対策品をコンバートすることにしました。今のところ1速ー2速のみこれが可能でした。そのままでは付かないので追加工が発生します。
でもやる価値はあると思います。
キーボックス部が完成です。
シフトフォーク・シフトロッドの組み付け完成です。
ギヤアッシーの精度確認です
1st 2nd 3rg 4th 5th
エンドプレイ 0.22 0.18 0.23 --- 0.12
バックラッシュ 0.13 0.09 0.13 --- 0.10
問題の無い値です。
ケース側の加工に入ります。リヤエクステンションのアウトプット部のベアリングを交換していきます。ここもベアリングはオープンタイプですが、ここは潤滑オイルに浸らないところですので、このオープンタイプでは潤滑が厳しかったと思います。おそらく長い下り坂の激しい走りではオイルが前方に偏り、オイルが切れてしまうこともあったのではと思います。ミッションオイルは粘度がエンジンオイルの2倍くらい有りますから飛沫にはなり難いはずですのでますます潤滑は難しいですね。今回ここも高性能潤滑グリース封印のシールドベアリングにしますので、オイル潤滑環境は改善されると思います。
シフトリンケージ部を分解しました。アウトリガー部の押しスプリングはは左右で異なっており、右側の方が線形が太く荷重が高くなっているようです。色も変化させて区別しているようです。
この左右シフトの中立を保つためのパーツですがプッシュピンのオーリングがへたってオイル漏れの原因になります。オーリングはすでに製造廃止と思いますが、今回いろいろ探し回って画像の様な物を入手しました。今までより線径が太いのでオイル漏れ防止になります。
ケースに組む為にどんどん準備していきますが、このフロントケースですが少し問題があります。
ベアリング受け面をよく見ると摩耗した跡があります。どうもベアリングの外輪が連れまわりしていた感じです。これはよくない兆候です。
クリアランスをいろいろ検証して、組んでいきます。ここで 余りにもクリアランスを攻めて押し気味になるとベアリングが壊れますのである程度隙間を持たせます。
基程どうり組みつけ完了して簡易試験機e-zanaraizerで試験していきます。シフトは問題ないし、異音や振動なども問題ありません。これで5速に入れて一時間回しっぱなしにします。温度上昇は10度cでした。普通の値です。