2013年5月21日 海を越えて来たサファリーなお客様
ホームページ上でお近づきになった富永さんから、サファリカラーのs30z48年式を預かって欲しいと依頼を受け、ホームステイをしてもらうことになりました。大切なお客様ですからしっかりとお預かりしたいと思います。そして何週間後か、何ヶ月後かわからないですが、そのときはさらにすばらしい状態になって戻っていって欲しいものです。これから随時、スティの進行状況をアップして行きたいと思います。
2013年5月21日
本日はるばる海を越えて、と言っても瀬戸内海から太平洋に出て千葉まで船旅をしてその後トラックに揺られて私の工房まできたのですが、サファリカラーのS30Z 48年式です。年式としては私のグリーンのZに近い年式です。
このような画像シーンはなかなか無いので撮影して見ました。
かっこいいですね。まさにサファリラリーから帰ってきたとこみたいでしょ。
こんなトランスポが有ると便利ですねー。
さあトランスポからおろし終わりましてパチリ
やはりフロントの車高が高くなっていますが、このカラーリングだとあまり違和感が無いですね。
全体的にはすばらしいコンディションです。
私は外観の細部にはあまりこだわらないほうですが、贔屓目に見なくてもほんとにこのボディーはきれいです。ちょっと見で気づくような欠点が見当たりません。
塗装は再塗装のようですが、スプレーガンで塗ったとは思えないような均一感、まるでこのキャンディー気味のレッドの塗料のプールの中にドンガラをそーっと沈めこんでまたそーっと取り出して乾かしたような膜厚感と均一感で、もちろん垂れなんて下世話なもんは見当たりません。
たとえばこういう部分ですね。
たいていの車体はこのドアの前側や後ろ側の下のほうが面が合わなくなっているのが多いですが、このZはすっきり決まっています。縦横ともチリが均一で面の出入りもぴたっと合っています。コンクールではこういうところが重要視されるようなので、これはコンクールコンディションだと思います。
なんか文句がありますか?
ここも奇跡的です。
ここもです。
一周くまなくチリと合いを見ましたが、どこにもしわ寄せがありません。
量産車より合いが良すぎますので、反則状態です。
現代の車はCADや測定器と加工機が数値ですべてシンクロしていますので、ボディーのチリは機械的に均一でごく狭く出来ていますが、逆に味がないというか作った人の価値が見出せないところがあるんですが、この73年代の車体がこのレベルでチリ合わせされているともう感動ものです。
エンブレムが過激に右上がりなのはご愛嬌ですね。
感心してばかりいても私のところへホームスティにきた効果がありませんので、もっと意地悪な目で見てゆきます。
10数分アイドリングしただけですが、マフラーのこの部分に水滴が滴っています。
さらにマフラー中間部繋ぎの固定バンドがホースバンドで固定されています。これは最近のものに良くあるやり方で、私的にみてとてもこの厚さ0.5MMくらいのバンドでこのマフラーが固定できるとは思えません。ただ締めてますよというポーズの飾りです。その隙間から水滴が・・・・。
その前にこの年代のエンジンでこんなに水滴が出るほどの完全燃焼をすることが出来るのでしょうか?
プリウスは確かにこんな風に水滴が出ますが、L型3.1Lハイカムソレックスでこんなになるでしょうか?
走って確認しなければなりません。
吊金具は?・・・
エンジンルームもきれいです。
どこにも隙が見られません。
そしてアイドリング時のメカノイズですが、タペット音がほとんどしませんし、エンジン振れもありません。
きわめて健全そうです。
ただあまりにもタペット音が小さいと、逆にタペットクリアランスはどれくらいだろうと心配になります。
こちら側も同じく隙がありません。
すべてがちょうどいい感じで変に新しすぎる部品なども見られません。
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やっと一箇所隙を見つけました。些細なことですが
アクセルリンケージのゴムブーツが破れています。雨水やノイズが浸入する原因になります。
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左側のレインフォースメントですが、塗装が板状にめくれています。ここはタコアシの熱にさらされる為塗装がやられやすいです。それにしてもその塗装片の断面の何と分厚いこと。
とその下には十分な下地処理が見られますのですぐにどうこうはないでしょう。やるならばこのめくれ上がっている部分をはつり、再塗装ですが見えない部分ですからはけ塗りでも良さそうです。
こちら側は反対側のブレーキマスター下のレインフォースメントですが、やはりブレーキ液で侵食されてぶつぶつが出来ています。左右に3本走っているガソリンチューブの下部分ですね。軽症ですからすぐにどうこう無いです。
ここはやりなおすなら2液性硬化型ウレタン系の塗料で塗ったほうがブレーキ液に対して強いと思います。
私はエスコという防錆2液型塗料ではけで手塗りで塗っていますが、色がグレーなのでこの部分だけパンダのように白く目立ちます。ボンネット開けなければいいんですが・・・。
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ブレーキマスターバック
ここが今回デフォルトのブレーキマスターバックですが、内部のゴムに穴が開いているようです。エア漏れの音がするし、ブレーキが極端に効きません。外観はまだいい状態なのですが、ゴム部分は40年目で寿命が来る時期なのでしょうか。「240Zの見る夢」でご紹介したように、48年式240Zのまったく同じ部品番号のマスターバックが穴あきとなっています。
今回は何をおいても先ずこれを直さないと試走も出来ませんので。先ずここから手をつけます。
こちらがドナーのマスターバックです。塗装剥がれがありましたが清掃エッチング後再塗装しています。
取り付け前にエンジンの吸気ラインを仮につないで機能を確認しました。
今まで付いていたものは外してゆきます。
そしてドナーを取り付けそこへブレーキマスターを取り付け、バキュームホースも取り付けます。
その後、ブレーキオイルを入れてからブレーキラインのエア抜きをやりますが、左後輪から始めて右後輪、左前輪、右前輪と進めてゆきます。
このときある程度床面についている部品類をチェックしてゆきます。
ブレーキパッドは前輪ディスク、後輪ドラムともに問題はありませんでした。
エアー抜きが終われば試走に出られます。
エアー抜きも終わり試走に出たのですがブレーキがとんでもない状態です。踏むと床までペダルが入ってしまいます。エアーが残っているとすると、ポンピングすれば踏み代出るはずですが、何回踏んでも床まで行ってしまいます。かといって効かないわけではありません。変な状態です。
仕方なくエアーが入っているほうの可能性をつぶす為に近所の知り合いの自動車工場さんへ出向きました。ここにはリフトがありますから気の済むまでエアーが抜けます。
そして再度試走に出たのですが状況はまったく変わりません。
もう一度考え直してみて今の状況はやはりブレーキの踏み始めの遊びが非常に多い状態です。ブレーキペダルはマスターバックのロッドを押していますので、一番怪しいのはやっぱり今度いじったマスターバックです。
ということで、再度マスターを外してみます。
画像のロッドがブレーキピストンを押しています。今まで付いていたものと比較すると出っ張り代が5mm足りません。ロッドはねじ込みが付いていて出っ張りが調整できそうですが、まったくネジが動かずだめでした。
結局、古い穴あきの今まで付いていたブースターを分解して内部調査をして見ましたところ、ロッドの長さはまったく同じでした。後ろに見える風車のようなものでこのロッドはブースターに固定されています。
さらに調べてゆくととんでもないことがわかりました。実はロッドのお尻にはこの画像のように5mm厚のゴムが入れられていたのです。でも何にも固定しているわけではなく、入れられているだけなので、ロッドを引っ張ると何かの拍子に脱落してしまいます。今回もその状態だったのです。ブースターの中なので見えずわかりませんでした。私のミスでは有りますが、こんな大事なところの部品が固定もせずに入れてあるというのは、私から見れば設計ミスとしか考えられません。組みつけてしまえば確かに脱落することはありませんが、組み立てラインで取り付けるまではどのように管理していたのでしょう?
少し遠回りをしてしまいましたが、再度もとどうりに組み付けて再度エアー抜きをしてブレーキを踏んで見ますとやっといつもの感触のブレーキタッチが復元できていました。
この後いつもの秘密のテストコースへ行ってブレーキテストをしたのですが、このZのブレーキは良く効きます。驚いたことにノーマルの純正対抗2ポッドキャリパーにもかかわらずフロントがロックします。また前後のロックタイミングも申し分ない状態です。たいていのZはがんばってブレーキ踏んでもロックしません。
これで、ブレーキブースターの問題がやっと解決ということになりました。
ジャッキアップしたついでに、下回りの状況を一通り見てみます。
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中央部に見える半月形の部品で押さえられているのはラックユニットの防振ゴムですが見かけがかなりひび割れが入っていて寿命っぽいです。
これが劣化するとハンドルが泳ぐようになります。かなり発生割合が多い症状です。ここのゴムは前期と後期で幅が違いますから交換時はきをつけなければなりません。たぶん、純正がまだ出ると思います。
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ここはフロントロアアームの付け根ですが、アームの支点の左右に追加でゴムブッシュが入れられています。
ロアアームの前後の動きを規制する目的と思いますが、すでにかなり劣化しています。
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そしてフロントのコンプレッションロッド支点のゴムブッシュですが、これも寿命っぽいです。クロスしたひび割れが見られます。
私はここをテフロンぐりぐりタイプに変えていますが、ハンドルがしっかりとなり、お勧めの対策です。
赤いウレタンゴムで強化品というのも売られています。
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次にリヤ回りですが、目に付くのは太い(φ21)スタビライザーです。サスペンションがノーマルならこのスタビでは太すぎると思います。(中空品ならわかりませんが・・バネレートがわからないので)
しかもフロントはノーマルφ18でしたので、この場合の操縦性はかなりオーバーステア(リヤが滑り出しやすくなる)となると思います。標準ではもともと付いていないことに対して、これを追加するのは少し極端すぎる装備です。もしもリヤスタビを付けるなら標準オプションのφ18が望ましいとおもいます。
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そしてひどく気になるのがこの部分なんですが、左リヤホイールアーチの前側下部、通常はここにはこの穴は開いていません。(右側は開いていませんでした。)そしてお伝えするのがタメラワレルのですが穴の奥には錆びた鉄板のようなものが見えます。ここは後輪で砂や水を搔きあげるところですからかなり位置がまずいです。しかもこの奥はドア下部のロッカーになっていて袋状になっているので、水が入ったら出口はありません。
どうしましょう・・・
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気をとりなおして先に進みます。
ここはサイドブレーキワイヤー端部ですが、スプリングの中にはワイヤーが入っています。ここに水がかかるとワイヤーを伝って外皮ゴム内部へ侵入して錆が発生します。特に雪道では駐車中に凍り付いてしまいます。標準ではここに蛇腹状のゴム部品が付いています。
応急的にゴムプレートを丸めて固定しました。無いよりいいかという程度ですが、私のもこれと同じでやっつけてあります。正式にはサイドブレーキワイヤーを交換ですが、これは純正がまだ出るようです。
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中央上部の茶筒状のものは燃料ポンプですが、それの固定を両サイドの汎用穴あきステーで止めていますが、そのステーが貧弱すぎます。と言うか私はあっけにとられました。材料強度と負荷の受け方をわかっていない作り方ですなぞと回りくどいこと言わなくても、直感で作ってもこれはありません。燃料ポンプはガシャガシャとひどく振動しますが、このステーではいつかは折れてしまうと思います。
もうひとつは、やはりこのポンプひとつで3.1Lをまかなえるかというこのステーに比べれば高度な悩みです。
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前にも書きましたが、マフラー中間部の繋ぎ部を固定するところですが、ラジエターホースを固定するホースバンドのようなもので固定しています。かなり無理があると思います。
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リヤのマフラータイコ吊ハンガーですが今にも切れそうで劣化しています。出口側にももう一本ありますが、たぶん同じ状況だと思います。 マフラー中間部の吊ゴムは純正ではなく、汎用品がステー追加で取り付けられていますが、こちらはしっかりしていました。
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これはリヤベルハウジングですが 手前側がブレーキ側です。向こう側がドライブシャフトでこちら側が回転する部分です。あら捜しの様ですみませんが、M8ナットが2個横並びで付いている下側、お皿状のものが付いていますが、中央部が色が変わっています。どうもこの部分を地面に落下させたようです。へこんで、ベルハウジング本体に摺りそうになっています。
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ここはすぐにドライバで戻しておきます。これで問題になることは無いと思います。摺っていると音が出たりしますから、修正は必要でした。
右下にブレーキホースが写っていますが、ひび割れが見られます。そろそろ交換時期かとおもいます。
以上、ブレーキエア抜きのついでに下回りの気が付いたところをざっとあげてみましたが、これ以外のところはすごく良いコンディションでした。どこまで直すかは微妙なところですね。今のままでもすぐにどうこうは無いような内容ですので、激しく走らない限り問題の無いレベルかもしれません。
さて、そろそろ本題の第2点目の フロントウィリー状態の解消に向けて調査してゆきます。
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フロントウィリー状態からの脱却
前に出てきた画像のとうりこのZは車体が前上がり=ウイリー状態です。このようになっているZは珍しいです。たいてい地面にこすりそうなくらいペッタンコに車高が低い車が多いですね。
車高が高くてもいいですがこれではバランスが悪いです。
前側の車高はホイールアーチの部分で700mmあります。これはほぼ後期用ストラットの場合の数値で、私のS31のノーマルのときの車高とほぼ同じです。ストラット径を計るとφ55mmでやはり後期のストラットがついています。何故48年式の前期ボディーに後期ストラットを付けたかは謎です。
こちらはリヤのホイールアーチ部ですが、650mmです。この値は前期ボディーと同じ値で正常です。ストラットもφ51mmの前期ストラットが付いており、これが標準です。
したがって前後で車高に50mmの差があることになります。
これをどう直すかですが、
1)フロントストラットを標準の前期ストラットに戻すして、フロントを下げる。
2)フロントのスプリングをカットしてリヤと同じ高さに下げる。
3)リヤのストラットを後期ストラットに交換して、車高を上げる
などが考えられます。
ご本人のご意向を聞いたところイメージはこの画像ということです。なるほど、富永さんは私と同じ様に大学自動車部出身でラリー車ファンということでわかりました。当時、ラリー車は車高が高いほどえらかったです。そしてフォグランプとアンダーガード これらが必要だったのです。
ところで、Zのようなスポーツタイプカーでラリー車仕様が似合う車って他にあるでしょうか?
国産で言えばトヨタ2000GTのラリー車てありえますか?
コスモロータリーやヨタ8やホンダS600のラリー車ってあまり想像できないし、作ったとしてもかっこよくないことが予想されますよね。
外車で言えばポルシェの車高上げサファリ仕様ってかっこよくないでしょうねーー。
モンテにはポルシェがあったような気がするけど。
でもS30Zはラリー車にしてもすごくかっこいいです。何故なんでしょう。
少し車高が高いくらいのほうが確かに精悍な感じがします。
したがって修正としてはフロントにあわせてリヤの車高を上げるということで一人で納得して進めます。
納得できないことは、作業に身が入りませんもんね。
先ずはリヤサスペンションを分解してゆきます。スタビライザーを外し、サイドブレーキワイヤーを外し、ドライブシャフトを外します。
次に、リアロアアームを下げるためにロアアームの前後を固定している24mmのネジを緩めるのですが、なんと左側の前側のこのネジはまったく締まっていませんでした。構造上まあこれが脱落してもロアアームが外れることはありませんが、ロアアームは加速する度にひどく前方にずれることになったとおもいます。
まあ何とかストラットを下げ、スプリングを縮めてストラットアッパーインシュレーターをはずしたのですが、
お皿との間にある画像右側のゴム部品が見慣れないものがついています。左側で手に持っているのが純正ですが、何故変えたんでしょうか?比較的現代的な質感ですから何か理由があるのかもしれません。でもゴム質がやわらかくストラットヘッドが暴れる可能性があるので左の純正に戻すことにします。
少し振動が増える(と言っても元に戻っただけだけど)可能性は有るかもしれません。
そしてこれがサスアッパーインシュレーターですが左が今まで付いていたもの=S30前期用で、右は後期用で25mm厚くなっています。振動対策でこのように分厚くなっているのだと思いますが、おかげで後期S31はずいぶんと振動が少なくなっています。
この厚みが異なることを利用出来るので今回の命題であるひたすら車高上げの目的にはどんぴしゃのパーツです。
車高下げすぎたZで車検が通らないときにもつかえますよ。よ、ろ、し、く
そして次に引っ張り出してきたのが、S31Z用=後期用のノーマルスプリングです。
なぜなら、前述のインシュレーターだけでは25mmしか高くならずまだ25mmフロントウイリーが残り、半ウィリー状態になるからです。
画像のようにこのスプリングは前期スプリングより20~30mm長いです。スプリング線形は11.5mmで同じでしたがバネレートはわかりません。したがってこれでどれくらい上がるのか予測が付きませんが、
むかし好きだった、そして今もなおかわらず好きな言葉 「やるっきゃない」 の一言で 進めます・・・・
そして車高ひたすら上げ対策パーツも決まったのでさくさくと分解の逆で組みつけていきます。
何の難しいこともありません。
ん!・・・・
ふと目が車体の奥に焦点が合った時に違和感を感じました。
画像は右ロアアームの後ろ側のゴムブッシュのところですが、手前右側がロアアームで、
左側ナットが見えるところがブッシュの受けです。
なんと、この両者が直接接触しているではないですか!
よく見るとブッシュは後ろ側にずれて挟まれてしまっています。
私がやったところではないからとホッテ置くわけにも行かず、仕方なく直しました。
左画像が正しいリアロアアームブッシュの取り付け方です。
あまり言いたくは無いですが修理履歴の中には蒼々たるメンバーが名前を連ねていましたので安心していたのですが、だんだん心配になってきました。
分解したときの逆の手順でストラットに車高上げ対策部品を組み込んで組み立てました。
その結果、車高はなんと18番最終ホールのホールインカップを30cmほど行き過ぎてしまいました。
当初は、650mmでしたが、アッパーマウントを+25mmさせ、スプリングを後期タイプに変えて+30mm+αとなって 結果705mmくらいの高さです。
これですとフロントが690mmですからリヤが15mm尻上がりとなったことになります。
しかして、その結果は・・・・・
昔を思い出しましたが、車高を上げるとタイヤが逆ハの字になります。
最近流行のハの字引っ張りタイヤと真っ向から対決するスタイルとなります。
富永さん 車高についてはいかがでしょうか?
今は後ろが1・5cm尻上がりの状態ですが
前後平行がよろしいようでしたら、リヤのアッパーマウントを前期タイプへ交換すれば、リヤが1cm下がりのほぼ平行になりますが、後は好みですよね。
オーナーさんからやはりこのサファリZのイメージが欲しいようで、画像がとどきました。同じくブルーバード510の画像もありましたが、大分前上がりです。
したがって現在の後ろ上がりの状態は、イメージとは違うようです。
サファリZはこの状態でスペアタイヤを2本室内リヤに積んでいるはずですし、ガソリンタンクも60Lから100Lに容量アップされており、さらに工具やスペア類も大量に積んでいたはずなので、走行時の姿勢はかなり後ろ下がりだったものと思われます。
アッパーインシュレーターを交換して車高を若干下げるために再度リヤサス分解です。やり方が決まってきたので、作業が早くなってきました。なんでもそうですが、最初が一番大変です。2回目からは楽に出来るようになり、何回もやるうちに間違えるようになります。これがパターンですね。
ですから”慣れてきたら気をつけろ”というのは昔から言われている金言です。
リヤサス再度組み付け完了で690mmですので、計算上15mm下がったことになります。おそらくあと10mmは時間を置いて下がると思います。
全体の姿を追ってまた撮影してアップいたします。
フロントが690mm弱ですから、現在ほぼ水平と言うことになります。
さあ、次はソレックスキャブ の件です。
旧車にとっては定番の悩みどころですね。
私はウェーバーのほうが慣れていますが、ソレックスも構造や理論はかなり似ていますので何とかなると思います。
ソレックスキャブの悩みを解消したい
エンジンは3.1L 東名ピストン 74度カム 圧縮10.5ということですからかなりハイチューンといえます。
しかし悩みはなんと時速120Km/H以上出ないというものです。ソレックスの専門チューニングショップで扱った仕様ということなのにです。
絶対にありえない状況だと誰もが思うと思いますし、私もそう思っていましたので半信半疑で試走してみます。
1)始動は問題ないどころか非常にいいです。セル2・3秒で始動でき。その後のアイドリングも問題なし。
2)スタート時も問題なしです。クラッチ交換したばかりということでミートも普通です。
3)加速に入りますが、私は普段はなるべく回転を上げないで走りたい人間(けち?)なので、3000RPM以下でチェンジしてゆきますが、その範囲では問題ないです。3.1Lのトルクはやはりすごいです。
4)高めのギヤから加速に入ると3000RPM付近でぐずつきが出ます。これでは加速が楽しくないです。4000RPMを過ぎるとまた調子が戻ります。ここがこのエンジンは非常に特徴的です。
これで悩みどころがはっきりとしてきましたが、3000RPMつまりアイドルジェットとメインジェットのツナガリが悪いと言うことのようです。
ここがちょうど120Km/Hで走るときの回転数に当たる為、そこから加速できなくなってしまうのだと思います。
点火系はポイント式で、トランジスター点火 つまりセミトラと言うことになりますが、この時点で特に問題と言えるような現象はありません。5000RPM以上では回り方が少し苦しそうですが点火系が影響しているかはこの時点ではまだわかりません。
点火時期をチェックしていますが、画像が上手く取れていませんが大体18度くらいで良いようです。
クランクプーリーの画像ですが、上死点刻みマークの他に黄色ペイントでなにやらマークがしてあります。何なんでしょう?
どっちが上死点位置なんでしょう?気になります。
明確にするにはピストンに直接ダイヤルゲージのセンサーを当てて調べるしかなさそうです。
さて、次に気になるのが キャブのジェットと言うことになりますが、
現状は M/J#175 A/J #200 I/J #57.5 P/J#45
というラインナップです。
他の例などと比較してみると、A/Jの#200は小さすぎる様に思います。
#240とか#260くらいで試してみたいです。
このジェットの確認の時キャブ回りをなんとなく見ているわけなんですが、このときに
とんでもないものを見てしまいました。自分の目を疑いました。
これがその画像なんですが、手でアクセルリンケージを目いっぱい押さえてフルアクセルの状態にしていますが、ソレックスの押しレバーが妙に角度が付いていません。通常ならほぼ水平の位置までレバーが動くはずなんですが、画像では60度くらいといったところでしょうか。
連結ロッドを外して手で直接押さえてみるとここまで回転します。上の画像と比べると明らかに開度不足です。
念のためこれを使ってさらに調べます。これは工業用内視鏡です。知り合いの工業系営業マンからサンプルで預かっているものです。
これでフルアクセルのときのソレックスのバタフライを観察した写真です。円形のものがバタフライ=スロットルですが、全開にしたときでも画像のようにほんの少ししか通路が開いていません。
これでは当然出力は望めませんし、しかも加速時のパワーポンプが作動するだけのアクセル開度が出ていない可能性もあります。
プロのキャブレターチューナーがこれを見逃したとするとかなりさびしい事態です。
順を追ってリンケージを見てゆきますと、先ずこの画像のエンジンヘッドの後ろにある細い棒部分ですが左側にちらりと見えている団子状のところがアクセルペダルと繋がっているところですが、この部分のアームの長さ(ロッドを押している腕の部分)と 右側の作動側の青いアームの長さとの関係に着目してください。明らかに右側の腕の長さのほうが長いです。
小学校のときに習った図形の知識でも、この場合長いアームのほうの移動距離が短くなることはわかります。(押す力は少なくなりますけどね)
ここにはわざわざアームレバー比を調整するための調整穴が最初から開けてあります。ここはすぐに一番短くなる位置に支点を移動します。
さらに見てゆくと画像の中央に縦にあるレバーはキャブのレバーとコネクティングロッドで連結して押す作動レバーですが、よーく見ると下部のボルト固定部の少し上に横に1本亀裂が見えます。
これでは、このレバーは固定できずにアクセルを踏んでもこの部分で滑ってバタフライを開くことは出来ません。
このレバーは3本ありますがそのうち2本は画像のように同じ位置で亀裂が入っています。材質はアルミニウムで形状から見て鋳造品ですから、もろいことは想像できます。このような場合アルミで強く作るには、鍛造としてさらに熱処理をかけることは重要なパーツには当然やるべき工法です。
設計的に見ても割れた部分の肉厚は3mmほどしかなく、どう見ても無理な設計です。
でも、このアクセルリンケージの不具合が直接チューナーのミスでなくて良かったです。調整したときはちゃんと合わせたんだと思いますが、そのあと強くアクセルを踏んだとたんにこのレバーが滑って、結果 フルアクセル開度が70%止まりなんて事態になったんですね。
仕方なくこのレバーについては手持ちのマニフォールドからレバーを外して仮に取り付けました。こちらのほうがどう見ても丈夫そうです。
材質は良くわかりませんが鋳物でメッキがかけられています。
これでやっとスタートラインに立てたので、キャブの内部はちゃんと整備されていることを祈りつつ次のステップへ進みます。ほんとは良いか悪いかに関わらず、キャブを分解して内部をすべてチェックしたいところですが、工数がのしてゆきますので決定的な問題が出るまではいじらないことにします。
画像はフロート室の油面高さを調べているところですが、20mmくらいを示していますので規定内でOKです。
これが無いと先に進めないので、かなり考えて今現在あるジェット類を集め、それでも足りないジェットをリストアップして行きます。準備する種類ですが、片っ端からじゅうたん爆撃していたらジェットだけで大変な金額になりますし、残ったものはすべて無駄になります。
今回はやはりエアージェットが#200は小さい=濃いと踏んで、#230と#260の2種を新規購入しました。それ以外はいままでの残骸を集めておきます。
余談ですがパッケージの裏にこのような注意書きがあります。□マークのような刻印の無いジェットは要注意と言うことのようです。よく表記された番手と実物が合致しない例を聞きます。それで、ジェットを変えたのに想定とはまったく逆の変化になってしまったなどは、確認したほうがいいかも・・・。
さあ、一番のねらい目であるエアージェットを#200から#230へ変えます。メインジェットは#175ですから、まだ濃いぐらいの組み合わせですが先ずこれで試してみます。
画像はソレックスメインジェット(ビジェタイプ)を取り外す専用工具、自作ジェットドライバーで作業しています。このジェットドライバーは当HPのオークションページで販売説明がありますので、よろしければご覧ください。スペアタイヤのナットを回すL型レンチのレバー側なんかで回しちゃだめですよ!
そして試走に行ってきましたが、3000RPMでのグヅツキは大分良くなりましたがまだ少し残っています。吹け上がりは間違いなく良くなっていまして、6000RPMまで一気にいきます。速度も140Km/Hは軽く出ました。
問題は4速50Km/Hからフル加速するときに、車体がブルルと振動するようなあの独特の感触があります。ジャンルは違いますが魚釣りで当たりが来たときのような振動です。これは時々経験する振動ですが、おそらくフル加速での燃調が薄い現象です。ということは、パワージェットが・・・・。
画像は試走後のタコアシ集合部の温度を計測しています。179.9度という値ですね。これがどう意味があるかはわかりませんが、変化を記録することで何かがわかるかもしれないのでやっています。これ以外にも各気筒ごとの温度変化も計ってその差がどれくらいあるかチェックしています。
この時のプラグの状態です。まだガイシの部分はくすぶっている状態です。熱荷はBP7ESが付いていました。
エアージェットは2種類購入しているので、やはりこの後 #260に交換して再度試走に出ました。
これがエアージェット#260でのプラグの焼けです。うっすらと煤が付いている状態です。
まだ濃い感じですが、サーキットをフル稼働で走ったわけではないのでこんなもんかなと思います。