2015年11月14日
240zの駆動系刷新
東京の方から240Zでミッションの修復依頼を受けました。年式は47年とのことで中期ボディーと判断しました。
現在は3分割の71Aミッションとのことですが、すでにギヤの入りが悪くなっているようです。(ここでなぜ71Aが付いているのかよく考えるべきでしたが後で思いもよらぬ事に・・・)
相談してゆくとエンジンは手が入っていてレストアしてあるとのことですがミッションは未レストアで調子が良くないとのこと。聞いてゆくとエンジン以降は手つかずのようです。相談の上右記画像の部品を集めました。一番上は71BコンパチCミッションα45・差し込みタイププロペラシャフト・左側軽量フライホイール(5Kg)強化クラッチカバーディスク一式・強化ミッションメンバー・クラッチレリーズ・ミッションメンバー・クラッチフォーク強化タイプ・フェアレディー用71Bシフトレバー・マフラーガスケット・他小物類一式を準備しました。これでミッションクラッチ系は安心できる内容です。またこれらは作業する上でミッション交換手順内で出来ますのでクラッチ系だけを交換する場合や、後からクラッチ系の不具合が発覚して2度手間のミッション降ろしとなることを防げます。
今回は自走して来てその日のうちにミッション載せ替え日帰りパターンですので待ったなしの対応ですので、何回もシミュレーションして漏れを最小限にするよう努めますがまだ実車を見てはいないので少し不安が有ります。
集めた部品詳細
フライホイールは○メアリの軽量タイプ5kGです。すごく薄くなっていますがSCM材にして材料に粘りを持たせています。
2015年
11月16日
いよいよ240Zがやってきました。ショートノーズでボディーはすごくきれいです。全くノーマルと言ってよいです。ボンネット内側に見覚えのあるステッカーとサインが2つありびっくり。
工房から2kmほど離れたところにあるいつもの馴染みの車屋さんでいっしょに作業を進めてゆきます。部品準備は私で、載せ替え組み付けは車屋さん分担の感じです。ここは広くてリフトが3つあるので余裕で作業が出来ます。
現在はこの通り3分割ミッション
全体にオイル汚れが有りますが程度は悪くないです。
1速と5速がひどく入りにくいとのこと。もうポルシェシンクロの限界が来ているのでしょう。
3分割ミッションのエンジンとの合わせ部からはわずかですがオイルが垂れています。
ミッションマウントメンバーですが、この時点で おや!47年式でもこのメンバー使っているのが有るんだーぐらいにしか考えていません。中期後期用のメンバー準備していたのですが使えないことになりますが、ミッションのマウント位置自体は71Aも71Bも同じため、このメンバーをそのまま使うだけです。
ついでにデフの状態もチェック
R180のオープンで、かなりオイル漏れしてますがすぐにどうこうは無いでしょう。
これまたちょっと寄り道ですがエンジンルーム。
すごく整っていて美しいです。ソレックス3連カールファンネル
ミッションマウントを外してミッション摘出に入ります。
上が前期ボディーのメンバー
下が中期後期のメンバー
初期のメンバーはまた違っていたと思います。3種類あるということですか。
おなじみの3分割ミッションが摘出されました。シフトリンケージまわりはお決まりのオイル漏れが見られます。ここの設計はすこし凝り過ぎだったのではないでしょうか?71Bでももっとずっとシンプルな設計に変わって行きます。
オイル漏れです
ここもオイル漏れですがここに漏れがあるとかなり重症ですね。接続ボルトの緩みかシールの限界か。
クラッチハウジング内。これくらいは普通だと思います。
フライホイール側ですが、当たり面がブルーのところと光って波打っている摩擦面と2重になっていますが、普通はこうではなく全面光った摩擦面になっているはずですから、どうもクラッチがうまく密着していなかった感じです。
カバーとディスクですが同じ傾向が見てとれます。クラッチカバーのディスク面はやはり内周側に1mmぐらいテーパーが付いていました。技術情報でも挙げましたが私が見た範囲でのこのタイプのカバーはほとんどその傾向にあります。
シフトレバーが刺さるトンネル部分ですがゴムに穴があいている部分以外特に気にしませんでしたが、後でびっくりすることに。
組み付けに入ります。
クランクオイルシールはやっぱり少し漏れていたので交換しました。
クランク中央に見える青銅製のブッシュも新品に交換。ここにミッションのインプットシャフト先端が保持されるので交換が無難です。
軽量フライホイール取り付け。
1500kg/cmで締めつけトルク管理。
取り付け後振れを測定します。0.05mm以内をチェックします。
クラッチもミッションも組み付けていきますがさくさくと進んでいきます。
このままいけば午前中で終了と思われましたが・・・。
シフトレバーの取り付けでコンソールをはぐってみたらこんなことに。
なんでしょうこれは・・・・。
外周側の長穴のラインは中・後期で見慣れたトンネル穴の形をしていますが、そこに当て板が溶接されて前期トンネル穴に修整されているようです。
後で改造したとすると当て板の段付け加工はかなり手が込んでいます。また取り付けはスポット溶接加工、また前に見た裏側のゴム取り付け状況ではアンダーコートで均一に上塗りされていて当て板の存在は良く見ないとわからない状態です。
これは私の想像ですがこれはメーカーの手になるものの様な気がします。
前期と中期の過渡期ではメーカーもラインをいったん止めることはできないので、いろんな部品の納期や在庫の都合で暫定処置も存在したと思います。
上の状態のままではどうしようもない状況になるところでしたが、オーナーが快諾してくれたため当て板を切り取ることにしました。
逆に言うと完全に前期ボディーだったらある程度はボディーを切らないとだめとということになります。
これが切り取った部分です。
この部分をみるとこんな薄い鉄板1枚隔てた外側でプロペラシャフトがブン回っているんだなと実感します。
暫定的に今までの前期用ゴムカバーを無理やり付けて塞ぎます。この状態でシフトレバー位置は通常の中後期と同じと思います。コンソールを付けましたがどこにも干渉はしませんでした。
(以前に初期コンソールだとやはり前側が1cmほど干渉するので加工必要との情報も有りました。スペシャルシフトレバーならかわせるかもしれません)
これが中・後期用のシフトカバーゴムですが最初からこれを準備しておけば完璧でした。これは上から鉄製の枠で押さえてタッピングビスで固定する様になっているので鉄枠部品も必要ですが、無ければ作るのも訳ないですね。形状的には当然ですが上記の追加工したトンネル穴にぴったりの形状寸法です。
なんとか組み付けしました。
クラッチレリーズも調整式が付いていたので3/4の自動調整式に交換。フォークも交換しています。
このセルですが回転力が弱っているということで画像が無いですが急きょリダクションセルに交換しました。
組み付け完了した後近所をゆっくり試験走行後、私の工房へ向かいます。
問題ないようです。
フロアトンネルにはびっくりしましたが、40年も経つといろいろと有るものですね。
でもなんとか目標どうりワンデーコースが完了しました。良かったです。
オーナーもこの日のうちに東京へ帰り、調子良くなったと評価してくれました。