2023年2月16日

240ZG LYエンジンレース仕様テスト車のミッション

 

今回は非常に貴重なミッションの修理を依頼されました。240ZGLYエンジンレース仕様テストカーで富士スピードウェイでテスト中にミッションブローしたという事です。エンジンがLY2800ですのでかなり特殊なミッションです。

 日産オプションの直結5速ミッションです。

全体的には71Bミッション直結5速ポルシェシンクロで当時物のミッションですが、大きく異なるところはフロントベルハウジングがLYエンジン用にL型とは傾きが逆の方向に設計したもので特別に制作されたものだと思います。リブの造りを見るとあのケンメリGTR2分割ミッションと同じ造りに見えます。(形はもちろん違います)

 もう一つ、通常の71Bと大きく異なるところはリヤのシフトレバーが取りつくところのストライキングブロックが4CMほども長く後ろ側に伸ばされています。(画像 青矢印部)

これは私も初めて見ました。おそらく通常の71Bミッションではシフトレバーが前側になりすぎている(ひどい場合は1速や3速のシフトでは手がダッシュに当たりそうになるほど)ので、それによるシフトミスを防ぐ目的で対策されたものだと思います。あるいは単にシフトレバーの位置がドライバーに対して合わなかったからだけかもしれませんが・・・?

フロントベルハウジングの特徴的な鋳物リブ

鋳物リブがL型に比べると非常に高く、角が四角な感じで作られています。アルミ鋳物でこのような細いリブをきれいに立てることは容易ではありません。

今回の問題ですが

このようにフロントベルの底面側に大きな穴ができてしまっています。お話によると2-3速の(このミッションは直結5速)のシンクロスリーブが割れてここに挟まってケースを突き破ったという事のようです。

 

ポルシェシンクロを今まで見た中で、シンクロスリーブのスプラインが欠けているものを何個も見てきました(スプラインがハブに対して傾いて押されるためですが、私はこの対策として3点押しシフトフォークという対策をしています)が、それがひどくなると最終的にはここまでの故障に発展するという事でしょう。この車はテストカーという事もあり限界までトライした結果だと思います。

修理に当たってまずはこの特殊なミッションケースの扱いが問題ですが、底面の穴を溶接で塞ぐことはできなくは無いですが、やはりどこまでヒビが進行しているかわからないし、将来の強度保証が難しいです。

 左にあるミッションは71Bのワーナータイプのミッションですがこれと比較してフロントベルやミッションメンバーの位置は同じことがわかります。リヤエクステンションの長さはプロペラシャフトがフランジタイプかスプラインタイプ化の違いで長さが異なりますが、プロペラシャフト毎交換すれば互換性はあります。

ミッション内部をチェックします。問題の2-3速のシンクロスリーブはすでに取り除かれているので、ここには見えていません。

 2023年2月16日

71BコンパチC Ω52クロス          240ZG   LYエンジンレーシング仕様テストカー用

 

240ZG LYエンジンレーシング仕様テストカー用としてΩバージョンを作ります。

 

 LYエンジンですのでL型とはエンジン自体はだいぶ異なりますが、ミッションとしては同じ71B系ですのでΩバージョンでミッション自体は適合します。

ただ問題はフロントベルハウジングでLYエンジンはものすごく特殊なベルハウジングです。

 

 今まではもちろん日産オプション直結5速ミッションですが、ポルシェシンクロのシンクロスリーブが割れて、ミッション破損・ミッションケースも穴が開いたというものです。何とかしなければなりません。

 レーシング仕様テストカー責任者様とご相談をして

・ミッションフロントベルハウジングケースは適合する代替パーツを探し出す。

 リヤエクステンションはスプライン差し込み用に変更、これも適合品を探し出す。

・ミッションはクロスギヤとしてワーナーシンクロ化したい。性能で優れる71BコンパチC Ωバージョン採用

・プロペラシャフトはスプライン差し込みタイプに変更する

という方針で決まりました。

フロント側のギヤ組パーツ

ギヤレシオを直結5速に近ずけるため、クロスギヤで組みます。メインシャフトからハブスリーブ・シンクロリングまでほぼ新品で組むため部品を集めています。

ギヤ組が完了したのでギヤ精度確認です。

ギヤ精度

 1ST  2ND  3RD      5TH

エンドプレイ 

0.28 0.15 0.18 ーーー 0.17

バックラッシュ

0.14 0.18 0.12 ーーー 0.12

 

素晴らしい値です。ほとんど90%が新品部品ですから当然こうなるはずなんですがね。

シフトフォークを組みました。

外観的には71cそのもので、71Bとはまったく異なります。大まかには鋳鋼製での製作から、シフトフォークの断面のサイズを大きくしてアルミ製とすることで剛性の確保と軽量化を行っていると思います。構造解析CADで計算してこちらの方向性のほうに軍配が上がったのでしょう。

新たなケースに組んだ71BコンパチC Ωバージョンです。ミッションケースは仕上げ加工をしているのでピッカピカです。

 非常に特殊なシフトレバーの後退仕様はそのまま復元していますので、シフトブロックがミッション後端とすれすれのところにあります。

 ミッションメンバー受けは今までと同じところにあります。

リヤエクステの側面にある小判型の蓋はバックチェック機構で、5速からストレートにバックギヤにシフトできないようにしているチェック機構です。5速からそのままバックに入れる場合はレバーを一度横に振ってからバックに入れます。

ストライキングブロック周りです。

 

この後回転試験を実施して問題なければ完成となります。

この後、プロペラシャフトについて今までの直結5速のフランジ結合ペラから今回71bコンパチcにしたことからスプライン差し込みペラとなるのでこのプロペラシャフトを準備してフルオーバーホールしてお渡ししました。下側のミッションメンバーはブッシュがよれよれとなったので交換してとのご要望でこちらもブッシュ交換してお渡しです。

 

この日産直結5速ミッションの代替として 71BコンパチC Ωバージョンを採用していただき製作の詳細は   詳細はこちら

つづく