2014年9月2日
71BコンパチB’ β2バージョン
71Bの前期タイプは画像の様にプロペラシャフトの接続がフランジ結合になっています。通称 フランジタイプですね。これは71A3分割ミッションの名残でこのようになっているのだと思います。
このタイプが不調になった時にはスプライン差し込みタイプに変更してプロペラシャフトも一緒に変えれば完全互換ですが、プロペラシャフトもなかなか無いしスプラインタイプも入手できないという場合はどうするか?
次善の策が、このβバージョンです。すでに”ベントレーに乗るハコスカ紳士”で1号機が稼働していますが、中身を71Bのワーナーシンクロタイプである後期型に入れ替えるというやり方で、コンパチCと同じ手法です。これによりシンクロは強力になるし、補修部品もまあまあまだ行けます。
今回この2号機を依頼されたのでアップします。
先ず分解していきますがこのミッションのフロントカバーすでにクラッチのピボットがありませんでした。
材質もアルミになっているのでかなりオリジナルと異なります。
さらにその裏側のメインインプットシャフトのベアリングですが、外周に取り付けてあるはずのCリングが入っていません。この状態では回すことはあり得ないので、部品取り用になっていたものでしょうか。
どうもすでにいやな予感がします。
気を取り直してギヤ部の分解に入ります。
今回はこれらをすべて後期型ワーナーに入れ替えるので、メインシャフト以外は使わない部品たちになりますが、一応チェックしてみます。
このメインシャフト後端のベアリングは判り易く摩耗していて、回すとゴリゴリしています。
そして、この5速ですがドライバーで差している部分、ひどくあばた状態になってしまっています。錆びのようにも見えますが色が少し違うので錆びでもないようです。しかもあばたの深さが深く通常の錆びでは無いです。
良く見てゆくとこの2速も同様だし、他のギヤも多かれ少なかれ同じ状態です。
オイル管理が良くなかったのでしょう。
メインシャフトの振れをいつも測って確認します。
これが一番高いところっと。
これが一番低いところっと。 ・・・・んーーーー?。
その差が0.1mmもあります。振れで0.1mm、曲がりが0.05mmもあることになりますので、このシャフトは使えません。通常は悪くても振れで0.04mmなのでこのシャフトにはびっくりしました。
原型となるフランジミッションを分解しましたが結局使えるのは外身のケースのみとなりそうですが、中がこれだけひどいとケースのベアリング受け面もダメかもしれませんので、それらもチェックしていかねばなりません。
これでもシンクロだけ換えてベアリングを換えて組めば組むことはできるかもしれませんが、どうなるかは想像できますよね。
結局、使えるのは何もないかもしれません。せめてケースとメインシャフトだけは使いたかった。
フランジタイプのメインシャフトも私のところに何本か手持ちあるので、それを使うこととして精度確認します。やっぱり振れで0.03mm 曲がり0.015mmで収まっています。
次にケースを確認しますが、メインインプットシャフトベアリング取り付け穴を確認してやはり0.02mmほど大き目ですが許容内と判断してこれを使っていきます。
測定で使用するのはこのシリンダーゲージですが先端の測定子の長さが段階的に数種類ありこの範囲の穴径を測れます。このシリンダーゲージを穴にセットして最大値となるところでダイヤルの目盛を0にセットします。それを取り出して、上にあるそのサイズの測定範囲のマイクロメーターでダイヤルが0になるところの寸法がいくつかを測ります。つまりシリンダーゲージは寸法を写し取るジグの役目で、直接寸法が判るわけではありません。と、あまりにも当たり前のことで済みませんが、ということはこの測定範囲のマイクロメーターが全部必要と言うことですね。
そしてさらにフロントケースについてネジ穴を確認兼ねてタップでさらいます。
こんなに切粉が出てきます。
結果8か所中3か所がネジ穴が舐めていてネジが締まらない状態でした。
この部分についてはヘリサート加工してゆきます。ゆるく締める分にはなんとか締まるのですが、既定のトルクを掛けると空回りする状態でした。
こちらも確認。なんとか合格です。
そしてこちらのセルモーター取り付けネジ。入り口側8mmくらいがずるむけているし残りの部分も深さが無いようです。エンジンに取り付けるときに初めてセル取り付けできないことが発覚しても、全部やり直しになるので、事前に修理します。
つづいてリヤエクステンションですがこちらも全分解してoリングなど交換していきます。このエクステのoリングはすでに膨潤していて径が大きくなりよれよれでした。
このストライキングロッドのところもダストブーツが破れているとこのようにゴミが入り込んでしまいます。これらも修正していきます。
右が古いタイプのポルシェシンクロ1速ギヤで左がワーナーシンクロ1速で全く異なることが判ります。今回は左側ワーナーシンクロに全部入れ替えていきます。
Ⅰ-2速の部品とメインシャフトが準備出来たので組み付けに入ります。金色のシンクロパーツは今回無条件で新品交換、ニードルベアリングも無条件で新品交換です。
ここから画像撮り忘れたので、βー1と同じ画像を使っています。内容は同じです。
かなり端折りましたがギヤ関係が無事組みつけ完了しました。
すべてワーナーシンクロです。
71Bは 初代 ポルシェシンクロフランジタイプ (初期のS30・ハコスカ等)
次に2代目 ポルシェシンクロスリーブタイプ (中期以降のS30・ハコスカ等)
次に3代目 1-4速ワーナーシンクロ+なぜか5速だけポルシェシンクロ
次に4代目 1-5速すべてワーナーシンクロ化
次に5代目 ギヤ歯厚 厚歯化など71Cのプロトタイプの様なもの
と大まかな進化をたどっています。この中にもギヤ比の変化がたくさんあります。
この中で今回は初代から4代目へジャンプしたことになります。
1ST 2ND 3RD 4TH 5TH
BR 0.15 0.06 0.13 --- 0.12
EP 0.45 0.25 0.14 --- 0.35
EPがすこし大きいところが有りますが問題ない範囲です。
(自分メモ:ロッド 3-4リヤ +4.0 1-5リヤ +2.0)
組み付け完了したので、簡易試験機 ”ezanaeaizer” で試験してゆきます。
500rpmで1時間回しっぱなしにして、その時の振動・オイル漏れ・変速状態・スピードメーターギヤ・バックランプスイッチの状態 そして1時間後の油温変化を調べます。
今回はなぜか4.2度上昇に留まり今までの最少記録を作りました。
完成です
外観は古い71Bポルシェシンクロフランジタイプですが中身は全てワーナー新品シンクロです。
これならプロペラシャフト・ミッションメンバー・ミッションマウント・シフトレバーやカバーゴム類すべて今までのがそのまま使えます。
リフトアップして見てもフランジタイプそのままですから、走ってチェンジしてみて初めてなんか違うなと感じるでしょうが、なぜかは判らないという楽しい状態になると思います。
このハコスカの持ち主ははるばる岡山からこちらまで自走してきました。そして載せ替えです。この際ですからクラッチなどの消耗品マウントゴムなど交換してゆきます。
午後一に入って夕方6時に完了しました。この日はさすがに岡山まで600kmのリターンはあきらめて、工房から徒歩1分のスパニッシュホテル(費用は高くないです)で1泊後、次の日に無事岡山までお帰りになりました。新規に組んだミッションでこの距離をいきなり走るのはいろいろ心配ですが、無事走れ、シフト感も良いと評価をいただきました。
左側がいままで付いていたものですがもう少しでリベットが出る所まで摩耗しています。ちょうど交換時期でした。
フロントケース内もオイル漏れが見られクラッチカスと混じって真っ黒です。レリーズベアリングも交換です。
フライホイール・クラッチカバーともにこのように波打ち摩耗しています。クラッチカバーは新品に交換ですが、フライホイールまでは考えていなかったので、今回はこのままです。