2013年5月15日

71BコンパチC α14号機

 

 

クラブの仲間から71BコンパチCの製作を依頼されました。すごく車を大事にする方です。

 

今回は手持ちの71Cと71Bをはるばると持参して来てくれました。長く旧車を持っている方はやはり今後のことを良く考えて必要なものは日ごろから確保しているんですね。ミッションは中身は開けてみないとわからないところがありますので、ある程度素性がわかっているものほど安心できます。

 

 

ケースから取り出してチェックしてゆきますが、この時点でまず付着しているオイルの汚れ具合で使用履歴がおおよそわかるようになってきました。このミッションはきれいですが、中には真っ黒に焼けたオイルが付着している場合もあります。 次にベアリングのガタですが、シャフトを左右に振ってみるとその振幅で磨耗程度がわかります。また、バックラッシュやエンドプレーを計ると数値で磨耗の程度が把握できます。

5-バックはリンクタイプです。

左側のカウンター側バックギヤですが、かみ合い迎えこみの山形が比較的きれいに残っていますので、前所有者は丁寧なシフトをしていたことが類推できます。ひどい場合はバックシフトのたびにギヤ鳴りさせることでここが削れてまっ平らになっている場合があります。

メインインプットシャフトの先端ですが、保管中に湿気が入ったりするとどうしても錆びが出やすいです。このミッションもさびが出ていますが、この程度なら磨けばOKかもしれません。だめなら交換です。この71Cはベアリングはすべてオープンタイプですから、71Cとしては比較的古いモデルのようです。

シフトフォーク側ですが、これはシフトフォークが3個ともにアルミになっています。71Cでも3-4速のシフトフォークは鋳鉄である場合がありますが、それよりもこちらのアルミタイプのほうが軽量です。

 

この後、いつもの手順でこれらの部品をすべて分解してばらばらの状態にして、保存ボックスへいったん収納します。

 

 

次に、持参していただいた71Bのほうですが、これはかなりレアです。

なんと全体的には71Bですが、リヤエクステンションが71B形状とまったく同じなんですが、アウトプット部は71Aのフランジタイプとなっています。これは初めて見ました。

 事情としてはなんとなくわかりますが、71Aから71Bへの過渡期にドライブシャフトが71Aのフランジタイプの車両へもつけれるように作ったんだと思いますが、たぶんすごく少ない数なのではないでしょうか?

このリヤエクステンションの後部にはボールベアリングが入っており、単純にシャフト交換ではスプラインタイプには変更できません。

 

希少性ということではかなり稀少ですが、実用的にはなんの意味もありませんので分解していきます。

 

ここで使うのはフロンとケースのみと言うことになります。

 

ちなみに中身はポルシェサーボシェシンクロでギヤ厚が厚くなった71Bのタイプです。メインドライブシャフトはフランジタイプですがおそらく71Aとは長さが異なるはずです。

 

余談ですが、これを使えばL型エンジンで71Aフランジタイプをお使いの方用にポン付けで付けれる71BコンパチCが作れそうです。

上の画像の71Bの中身です。これも程度としては良さそうです。シンクロの磨耗も少なそうです。

シンクロはやはりポルシェ=サーボシンクロですね。

シフトフォークが隠れてしまって見えないくらいに小さいですが、71Cの画像と比べるといかに小さいかがわかります。ほとんど針金細工のように見えます。

5-バック側ですが、上側の大きなナットM38の左側のワッシャー部にベアリングが設定されていませんが、71Cではここにスラストベアリングが設定され、5速のスラストを受ける様設計変更されました。それが無いと結果的にM38ネジが緩むと言う現象が起こりますが、このミッションもやはり少し緩んでいました。

左側に見えるバックギヤは通常の71Bに比べてギヤ比が大きいです。

このミッションも分解して保管しますが、その前にシャフト比べをやってみました。

上が71B240クロス

中が今回の71Bフランジタイプ

下が71Aです

 

上と中を比較するとリヤのフランジ取り付け部が長いだけで、後はまったく一緒です。

下の71Aはやはり全体が違っています。しかも短いですね。

 

 

 

さて、ここから組み立てに入りますがまずベアリングを新品を投入しますが、ここが一番負荷が多いところですので大事です。

このようにしてカウンターに曲がりが無いかチェックします。同様にメインシャフト・インプットシャフトもチェックします。まれにインプットシャフトが曲がっていて振れが大きく出る場合があります。

1-2速をメインシャフトに組み付けて行きますが、今回は3速のシンクロが消耗があったので新品に交換しました。ギヤ内のニードルベアリングはすべて新品に交換しました。

 

メインシャフトとカウンターをアダプタープレートに組みつけていきますが、これはプレスがないと出来ません。またメインシャフトサブアッシーとカウンターは同時に押し込まないと干渉して組み付けできません。

 

また1速の後ろにあるワッシャーと位置決めボールをずれなく組まないといけません。

他のギヤも同じですが、スラスト受け面にダイヤモンドやすりで油溝を入れてゆきます。

これは、スラスト面へのオイル潤滑を良くしてかじり防止を期待してやっています。

この画像は3速ギヤです。

3速はシンクロナイザー関連のリング3種を新品に交換しました。内径に入るニードルベアリングも新品です。

これは4速とインプットシャフトですが、まずベアリングを交換してゆきます。ベアリングは周囲に土星のワッカのようなものが付く特殊なものです。ここのベアリングも他のベアリングと同じく、抜きと圧入はベンチプレスが必要となります。

 

最近気が付いたのですが、このミッションのベアリングは内輪・外輪ともに圧入する使い方をしているところがありますが、圧入代によってはベアリングのクリアランスが厳しくなる傾向にあるような気がします。

 私はこのようなところへはベアリングのクリアランスを選んで使い分けをするようにしています。

アダプターに打ち込んだメインシャフトとカウンターに3-4速を組みつけていきます。まず3速のメインを組みます。次にインプットシャフトの4速とカウンターの4速を同時に組み付けていきますが、カウンター側はキー2本あるところへ打ち込みとなっています。ギヤを打ち込みながら、インプットシャフトを保持しつつ、4速のシンクロを位置決めしなければなりませんので、気を使うところです。何とか組めました。

最終精度測定値記録 

 

             シンクロ      ep                              BL

規格    (0.8~1.6) (0.1~0.4)  

1st   1.35      0.20                   0.09

2nd   1.60      0.15                  0.15

3rd   1.60new   0.25                  0.07

4th   1.35      ----                  (0.06)

5th   1.20      0.25                  (0.03)

リヤ側の5速とバックも組み付けました。

5速後ろのワッシャーとナットについてはこの71Cはスラストベアリングを使っていないタイプでしたが、S13などの71Cはすべてここにスラストベアリングが付いていてナットの緩みを防ぐようになっています。

そこで、このミッションについてもそれらの部品とコンバートして、スラストベアリング有りタイプへ変身です。

その後は、メインシャフト後端のベアリングを取り付け、最後にスピードメーターギヤを取り付けますが、71Cはこの位置が71Bと異なっているので、ある工夫をしなければなりません。

このあとシフトフォークを組み付けて、チェックボール類を取り付けます。

これで、内部の部品類の組みつけは終わりです。

71Bのフロントベルハウジングです。ほとんどの中古ハウジングは油とホコリが混じって堆積していますので、これを洗浄してゆきますがこれが大変な作業です。普通の洗剤では落ちません。また、灯油などでもだめです。またガソリンやシンナーでも油が柔らかくなってのびてしまいますます汚れがひどくなってきます。ショットブラストでやる手もありますが打ちっぱなしならいいですが、循環では油で砂が団子になりたちまちノズルが詰まりそうですし、ここまで油がひどいと砂でも効かないかもしれません。剥離剤が有効らしいですがまだやったことはありあせん。私はまず地道にスクレーパーで堆積物のはがせるところはなるべくかじり落とします。そして次にある洗剤を拭きつけ5分放置してその後ワイヤーブラシでこすります。最後はケンマロンで磨きます。

内側も同様にきれいにしてゆきます。

そしてリヤエクステンションも同様に洗浄です。ストライキングシャフトは分解してありますので、オーリングを交換してゆきます。

内部です

ケースの中にミッションギヤASSYを組み込んでゆきますが、少し問題があり一度やり直しました。リヤエクステンションの内部で少し干渉がありましたので一度開けて干渉部を削除しました。同じようにやっているのですが、個体差なのか干渉する部分がでてきます。でも、最近では回したときの感触で異常が察知できるようになって来ました。

 

そして画像は e-zanaraizer (自作ミッション試験機)に取り付けたところです。これが出来て以来やはりかなり異常の判定をしやすくなりました。手でインプットシャフトを回すだけでは感知できる異常は少ないですが、これなら気の済むまでシフトチェンジや回転音をチェックできます。

この状態で5速 60hZ=500rpm で1時間回したときの温度変化をいつも調べています。

今回は5度cの温度上昇でした。

これは今までのデーターからすると非常に少ない値です。

普通は10度cアップしていました。

今回はニードルベアリングもすべて交換しましたので、その影響なのか

あるいは、71Cがオーナー持ち込み品で素性が良い(ギヤの走行距離が少ない)物だったのか、

どちらかはわかりませんがとにかく良い傾向であると思います。

 

一応 71BコンパチC としてはこれで完成です。シフトしたときのシンクロの効きも申し分ないです。

 

後はこれを車体に搭載しての走行確認となりますが、オーナーとの話で後日こちらに車を持ち込んで私の工房で搭載の予定となりました。楽しみです。

 

 

 

 

 

 

進行に準じてアップしてゆきます。つづく

 

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