71BコンパチC α21 亀有クロス エキストリウム 2013年10月9日

 

直接 当工房へおいでになったハコスカ乗りのともさんから、いままで使っていた240クロスが壊れたのでコンパチ化したいとのご希望がありました。240クロスとは知らずに乗っていてギヤ比が調子いいナーと思っていたのですが、それが普通かなと思っていたとのことで、今度も同じようにクロスにしたいとのことで、亀有クロスにすることになりました。


いつかは使おうとR32タイプMのミッションを持っていたということで、足車で常用しているというBMWで持参してくれました。このようにドナーとなるミッションがしっかりしていると助かります。

 


分解しました。

 

しっかり保管されていたようで錆びなどは有りません。

この状態で精度を確認します。

 

エンドプレー・バックラッシュともに許容範囲内でした。

エンドプレー  0.20 0.25 0.20 --- 0.33

バックラッシュ 0.28 0.13 0.09 --- ---

外観的にももちろん欠けなどはありません。

 

71Cの2-3速ダブルコーン

バックはリンクタイプになります。

 

5速のギヤ比は0.83が希望ですから5速ギヤは変えなければなりません。

いつも苦労するバックのアイドラーギヤーですがこのミッションはほとんどダメージがありません。元の持ち主が丁寧なシフトをしていた証拠です。これで1速から5速までも丁寧なシフトをしていたことが類推でき、このミッションは大事にされていたことがわかります。


さてこのあとドナーの71cミッションはばらばらに分解してチェックして行きました。

 

そして、亀有からもおニューのクロスが届きました。

 

手前は分解したメインシャフトです。


亀有品も精度を確認しておきます。

 

画像はカウンターですがシャフトの芯ズレは0.015mmと量産品と同程度でした。表面処理してこの値ならまずまずだと思います。

1速と2速のパーツ達です。

中央にあるハブとスリーブ以外は全て新品ということになります。シンクロリングやニードルベアリングも全部新品です。左上がダブルコンシンクロリングとなります。

 

ハブには何時ものようにオイル供給溝加工をして行きます。

 

スリーブの舳先は非常に程度がいい状態で残っていますので、再使用で問題ありません。

 

ひどい使われ方をしたものはこのスリーブの舳先が丸くなってしまいます。


1速 2速までをサブアッシーした状態です。

 

亀有のカウンターは丸ごと表面処理されているのでドコモかしこも真っ黒です。

 

この表面処理は非常にすべりのいい材質でダイヤモンドやすりでも力を入れないとはじかれます。

テフロンのような感じです。

そして3速と4速インプットシャフトとなります。
右上は3速のダブルコーンシンクロリング新品です。

 

スリーブの舳先も丸まりは極少ない状態で問題なく再使用できます。

 

ハブには同じくオイル供給溝加工をして行きます。

 


そして5速ですが通常だとギヤ比は0.75となります。これはRBターボでは十分なトルクがあるため、燃費改善と静粛性向上のために採用となった設計です。

 

今回ハコスカのともさんの要望は240クロスに近付けて欲しいとのことで、何とかしなければなりません。そして探し回ってこれを見つけました。手持ちでも数少ないものですが、左側がその5速のセットです。当然 歯数が異なりますが、シンクロリングやシンクロ舳先は同一のモノです。これで、このミッションは量産品はもちろん、普通の亀有組ではありえないギヤ比のミッションとなります。

 

 

 

1st  2nd      3rd      4th       5th

2.427    1.677    1.258   1.000   0.838

 

となります。


5速関係のセットとなります。

 

このギヤは通常のR32やS13のなかでも限られた車種だけに設定されたギヤとなります。

 

あと裏技で0.85にすることも出来ますがその場合は改造がもっと大掛かりとなります。

 

私のS31Zは0.85となっています。


ギヤ部はほぼ組みあがりました。

 

シフトリンケージを組み立て中です。

 

ギヤ部の精度を測っていますが

 

 

         1ST   2ND   3RD  4TH  5TH

 

バックラッシュ 0.09  0.05  0.13  ---  0.12

エンドプレイ  0.25  0.25  0.15  ---  0.15

 

と良好です。

 


ギヤ部完成です


L型用のフロントハウジングを準備しますが、今回は洗浄のあと初めての試みですが軽く塗装してみました。完全には脱脂仕切れないのであまり塗料膜は密着していないかもしれませんが、自動車ボディのように見えるところではないのでほどほどにします。


組み付け完了してezanaraizerミッション簡易試験機へ取り付けたところです。

ちょっとフロントケースが光りすぎて前後の差が目立ちますかね。

車に取り付けて数回走ればホコリで汚れて目立たなくなるとは思いますが。


この状態で何時ものように回転させてシフトの手ごたえやオイル漏れの有無、回転音の状態、バックスイッチの機能、スピードメーターギヤなどをチェックします。

 

そして500rpmで 5速に入れて1時間回したときの温度上昇量を計りますが、今回は7度cの上昇でまずまずです。

 

完成です。

 

今回フロントケースは軽く塗装をしています。

 

このほうがきれいでしょうか。


今回の依頼主はハコスカのともさんですが、同じ静岡県内ですので出来るだけお車の取り付け後のフォローまでできたらなと思います。いろんな旧車を見れるのは自分自身の楽しみでもあります。