2016年6月5日
71BコンパチC Ω10
2-3-4速71CダブルシンクロのΩシリーズも10基目の節目となりました。4速ダブルシンクロは本家の71C(R32やシルビア)でも無かった仕様ですが、高速主体の現代ではこのほうが快適と思います。本家がダブルにしなかった理由はコスト以外には私には思い当たりません。機構的にはすべて同じやり方なので何も妨げるものはないのですから本当は1速から5速まですべて同じダブルシンクロ仕様にしたほうが良いはずです。
今回この節目のΩ10を東京のMさんから依頼されました。Mさんはメカ好きということでなるべくミッションの機構について詳細にレポートしてくれと依頼されましたので、今回は今まで以上に詳細にレポートします。
メインシャフトは新品を指示されたので準備しました。日産純正品ですがそのままではコンパチ化できないのでいろいろ追加工を実施しています。メインシャフトについては71Bでもポルシェとワーナーでは異なりますし、71Bと71Cのワーナーどうしでも異なっています。大まかにいうとギヤが厚歯になってきた傾向でギヤのベアリング受け面(円筒研磨の部分)の長さがだんだん長くなってきた傾向にあります。この設計は最終的にはメインシャフト締め込みのM38ナットをいかにしっかり締めこめるかに大きく影響しますのでそれぞれの互換性は原則無しといってよいです。(裏技はあり)
ミッション中央部にあるアダプタープレートですが、これがミッションの要となる部分です。中央部に2個あるベアリングで上側がメインシャフトが入り、下側にカウンターシャフトが入りますが、この軸間距離が71mmとしていることからこれを71系と呼んでいると思います。日産では例えば56系60系63系などがありますね。大まかには距離が長くなるほどギヤの耐久性が増すといってよいと思います。左側に生えているシャフトはバックアイドラーギヤが取りつくところでここで回転を反転しています。右側縦3列の穴はシフトロッドが通る穴です。上の大きめの穴はストライキングロッド=シフトリンケージがつながる部分のガイド穴。
異形の穴はオイル通路で年代により結構変化しています。車が加速しているときはミッションオイルはこのアダプター面に慣性力で押し付けられてこの穴からどんどんリヤエクステ側に逃げていきますのでフロント側ギヤの潤滑不足を招く恐れがあります。ここにワンウェイフラップを付けて対策したものが純正でも存在します。詳細はこちら。
しかしある程度はオイルを回さないとリヤエクステのスプライン差し込み部のプレーンガイドが焼き付きます。71系も初期フランジタイプはリヤエクステエンドにボールベアリングがありましたので潤滑は少しで良かったと思いますが、振動対策などでスプライン差し込みタイプに変更したときに先ほどのプレーンガイドに変更になり、その潤滑の対処に苦慮した様子がうかがえます。
実はこのアダプタープレートには形状は全く一緒で材質のみアルミになっているものがありますがそれを使うとすごく軽量化できそうです。鉄製が3.50kgに対してアルミ1.17kgで、2.33kgも軽いです。ただ、71Bのみの存在だと思いますのでシフトロッドの1-2速の穴はφ14です。したがってこれをコンパチCで使う場合は工夫しないと付けられません。このアルミ製はどうしても強度は低いはずですから、馬力の大きなエンジンには避けたほうがよさそうです。サニーなどのA型エンジン用63Aミッションなどはやはりほとんどがアルミだったと思います。
ベアリングを取り付けた後T字形の鉄板でできたベアリングリテーナーを組んでヘキサボルトで締めた後周囲をポンチ打ちして緩み止めのおまじないをします。71系のミッションギヤはヘリカル(はすば)ですのでスラスト分力を発生しますがそれをこの5mm厚鉄板一枚とM8ボルト6本で受け止めます。
Mさんからベアリング質問ご返答
ボールベアリングは先ず特殊クリアランスです。特殊といっても市販されている(かなり特殊なので専門商社でないと入手できません)ものですがどれを選択するかはそれぞれのエンジニアの考え方です。クリアランスは狭ければ精度が良いかといえばそうでもなく熱膨張や使用環境が関係してきます。また、撃ち込んだ時のクリアランス変化もあり、71Cのように内外締まり嵌めの場合その分ベアリングクリアランスは狭まってきます。ちょっと脱線しますが打ち込みが緩くなるとベアリングレースがベアリングと供回りするということが起こってきます。そうすると最終的にはホルダーとレースが熱で焼き付いたりします。クリアランスが緩すぎると変な回り方にになってフラッタリングコロージョンなどの異常摩耗が起こります。
また、ベアリングの玉がむき出しのオープンタイプ(71B)ほんの僅かの隙間を持ったカバーが付くセミシールドタイプ(71C)、完全に隙間をなくしたフルシールドタイプがあり、それぞれカバーがゴム製と金属製があります。セミシールドに色について黒と赤がありますがメーカーによる違いと思います。
私はミッションオイル内に金属片が出た場合の2次災害を防ぐ意味でセミシールドのゴムタイプを使いますが、フルシールドは引きずり抵抗がありそうや内部のグリースが出てしまった場合を考え使いません。機能は同じなのでメタルタイプの選択肢はあるかもしれませんが、私は71Cがゴムタイプであることに準じてゴムシールドです。
ベアリングの数量ですが71B・71Cスプライン差し込みタイプのボールベアリングの全数は6個です。
71A・71Bのフランジタイプは7個です。
またニードルベアリングは7個(5Sはダブルの為) バックシンクロタイプは8個です
スラストニードルが1個
ギヤとシンクロについてですが、この2速で見て見ます。このギヤの内側にはニードルベアリングが入り、それがメインシャフトの円筒研磨部で保持されます。つまり、このギヤそのものはメインシャフトとは動力伝達するわけでなく空回りしています。内部に画像で示したオイル穴が3か所あります。
ここにダブルシンクロの第一のシンクロリング(正式名称ボークリング)が取りつきます。
こんな感じですがこのリングも回転方向にはなんのとっかかりが無くこの状態で空回りします。外周にはテーパーがついておりこの角度はシンクロ作用の根幹をなすポイントですのでずいぶんと試行錯誤して決められたものと思われます。またその表面に刻まれたギザギザとスリットもノウハウの塊の部分だと思います。逆にいえばこれを変えると、例えばスリットを2倍に増やすとかすると何らかの変化が起こると思います。
・ここでオーナーMさんへの返答:このリングの内側を通常のシングルシンクロのようにテーパー面にすればトリプルシンクロとなるのではというアイデアですが、考え方としては成り立ちそうですが、そこまで必要性が無かったということか、またはこれでトリプルにすると今度はシンクロ解除に支障が出るや、シンクロストロークが大きくなりすぎるなどの弊害、もちろんコストもあったのではと思います。現在世の中でいわれているトリプルシンクロがどのような構造かは私はわかりません。
この上にこの鋼製のきれいに研磨されたリングがかぶさりますが、SCM材かSUJ材ぽいですが焼き入れ鋼だと思いますが、内外テーパー研磨されていて、その端面には4か所足が出ています。さぞかし作るのが面倒だと思います。
この4本の足がギヤ側に見えている4か所の丸穴に入り込むことで回り止めになっていますので、かぶせるとこの鋼製リングは回らずギヤと固定となります。
この状態で真鍮製のボークリングはまだ空回りしますが鋼製のリングの内側と摩擦を生じています。鋼製リングの底面がギヤ受け面に底付せずに浮いているのが分かると思います。
そして最後にもう一つボークリングがかぶさりますが、ダブルシンクロたる所以のところですね。このリングには内側に6か所棚みたいな面が生えています。内側面はテーパー面に加工されていて鋼製リングに密着します。
これでダブルシンクロの完成ですが、先ほどの6か所の棚面が内側の第一ボークリングとかみ合うため内外2本のボークリングが一体で回るようになり、その内側で鋼製のリングがテーパー接触しながら4本足でギヤと踏ん張って力を伝える形になっています。
さて、メインシャフトに組んでいきますがこの状態でギヤはまだ空回りします。そこへ画像のハブを組んでいきます。
はぶを組みましたが、この状態でもまだ2速ギヤは空回りする状態です。ハブは上の画像で見てわかる通りメインシャフトとスプライン勘合してますのでがっちりメインシャフトと一体で固定され、メインシャフトと一緒に回ります。
さ、次にこのスリーブを組みますが内側のスプラインはハブの外周スプラインとかみ合いますので、ハブと一体で回りますのでメインシャフトとも一体で回ります。ただ、軸方向には自由にスライドすることができます。
また、内側に3か所ついているヘアーピンみたいなの(正式名称スプリングインサート)が重要な働きをしていて、これで前述のシンクロリングのお尻を押す役目をしています。これでシンクロリングの同調のきっかけつくりをまずやっていると思います。(71Bでは形が異なります)さらに押してゆくとシンクロリング舳先とスリーブ舳先が直接押し合うようになってきてまずスリーブ舳先がシンクロの舳先とかみ合っていると思います。
ここからいくつかオーナーM様からの熱心な質問がきましたことへの返答がいくつかでてきますので、さらに続きます。さながらシンクロ機構研究会の様相を呈してきましたがおもしろいですね。
・この3か所のスプリングピンは私も最初に見たときは驚きました。全く針金細工のようです。でもこれで機能は果たしているようで、今までこれが破損しているものはめったに見ていません。つまりこれはボークリング回転時の油圧などの動きでボークリングが少し傾くことを補正しているだけで、力はあまりかかっていないのでと思います。実は、71Bではこの機構はもっとマニアックな機構になっています(右画像がそうですが完全なスライドキーがちゃんとしたスプリングで押されて構成されています)が71Cでこのピンに原価低減したものと思われ、それだけ重要視はされていなかった、もっと言えばオーナーMさんのご意見どおりこれが無くても最終的には常にボークリングの舳先はスリーブ舳先と対面する位置に来ると思います。微妙ですね。
・またMさんのおっしゃる通り、ひげの曲げ部分がスリーブスプラインに入り込む抵抗が押し力となり、また戻るときは反対側のボークリングを押していると思いますが力が小さいので問題にならないんだと思います。
スリーブをハブに組みましたがこれがいわゆるニュートラルの状態ですね。この状態でまだ2速ギヤは自由に空回りし回転できます。
そしてスリーブをさらに左側に押してゆく(実際はシフトフォークが押してゆくのですが)とこの状態でシンクロがかかった状態=さきほどのヘヤーピンがシンクロのお尻を押した状態からスリーブ舳先がシンクロを押す状態になりさらに押す力を増すことで、2速ギヤをスリーブと同じ回転数になるようにします。円錐クラッチをつないだような感じですね。同じ回転数になれば後はギヤ側の舳先とスリーブ側の舳先が呑み込みあえばよいのですが、ここでシンクロ不十分だと舳先同士が回転ずれしてギヤ鳴りします(ギヤ鳴りといっていますが実際は舳先鳴きです)。ギヤ鳴りすると舳先が変形して丸くなったり平面になったりしてきますので、今度はシンクロしていても舳先の丸まりどうしがぶつかってかみ合わなくなってきます。シンクロしても舳先と相手の谷がちょうどよく固定される確率は1/3くらいでしょうか?あとは舳先同士が呑み込みあいながらずれてかみ合うということになります。
さらに突っ込んでレポートしますと今までの動きの中でこの状態を作ろうとしてきたわけです。右側に見えるヘアーピンが軽くシンクロリングを押すことでシンクロリングが画像の位置に移動していることが分かりますが必ずこの位置に来るようになっています。この後画像上側に見えるスリーブが下りてきて舳先の斜面どうしが押し合う形になり、その分力でシンクロリングが強くギヤ側へ押し付けられます。シンクロリングの舳先斜面を通り過ぎると今度はギヤ側の舳先斜面を呑み込みずれながら歯スジを一致させています。ここで気が付くことはギヤ側舳先を呑み込むためにはシンクロは少しずれ動いてくれないとなりませんが、あまりにシンクロとギヤ側が密着しすぎるとこの少しずれ動くという動きができなくなる恐れがありますがここで前に出てきたシンクロリングの複雑な溝形状が関係していると思います。微妙ですね。
比較として例えばこのような状態になった場合はどうでしょうか?スリーブ舳先はシンクロ舳先からなんの抵抗もなくすり抜けますからシンクロリングは摩擦力を発生できなく回転同調は困難になりますね。
尚、この画像2枚は今回のMさん用ミッションの1対1の画像ではなく観察用のサンプル画像です。
上の画像からMさんから質問がきました。
写真上でギア側の底辺の幅がスリーブ側の山側の幅より
狭く見えるものがありますが、気のせいでしょうか。
ギア抜け防止対策(?)か何かで噛み合い面に傾きがあるのでしょうか?
これはその通りでかみ合い面には楔状のテーパーがついています。さぞかし作るのは難しいと思います。これはアクセル抜いた時のパーシャル時にギヤ抜けすることへの対策だと思います。71Cの途中から採用されたもので1速から5速まですべてこうなっています。
当然スリーブ側もこのようにテーパーがついていますので、かみ合ってトルクがかかるとますますかみ合いが強くなるようになりますし、パーシャル時も抜けにくくなるはずです。
これで完全にギヤが入った状態です。実際はギヤが入ったといってもスリーブと2速ギヤのスプライン舳先がかみ合っただけですけど。いままで空回りできた2速ギヤはスリーブとスプライン勘合して、スリーブはハブとスプライン勘合、ハブはメインシャフトとスプライン勘合で、メインシャフトと一体で回るしかなくなります。
フロント側1-2速まで組みました。
メインインプット・3速の部品(メインインプットはまだシングルのままです)
3速の部品たち。ダブルシンクロは同じやり方です。3速ギヤは箱入り新品使用。
シンクロスリーブとハブは、1-2速と3-4速では
同じ部品でしょうか?
シンクロスリーブは1-2速 3-4速共通です。ただし組み込み方向がありこれを間違えるととんでもないことになります。外周に目印のラインがある方を内側どうしになるように組みます。私はもちろん何度もやっているのでわかっているのですがそれでも間違う時がありました。間違えても組めてしまうので始末悪いですが、私は回転試験をやりますのでその時点で気が付きますがすべてやり直しとなります。
また、ハブについては1-2速は前後にスラスト受け面があり、3-4速は3速側のみスラスト面となっていて別物です。ただし、1-2速ハブを裏技で3-4速ハブに加工流用することはできます。尚、1-2速ハブにはスラスト面表裏でオイル溝が3本と4本と差がありますが、どちらでも組めます。取説では3本を前側に書いていますね。
5速-バックのハブとスリーブは上記とは形が全く異なっています。バックシンクロの場合、やはりスリーブの裏表の組間違い問題はあります。厄介ですね。
ダブルシンクロ化したインプットシャフト。シンクロリングに4か所丸穴があるのがダブルシンクロの特徴です。
インプットのカウンター側=4速ギヤにはこのようなシザースギヤがついていますが、一番上の丸のこの刃のように薄いギヤはこのカウンター4速より歯数が多くなっていて4速ギヤと接しているので相対的に少し回転が落ち、その分カウンター4速を常に抑えるような摩擦力が生まれメインインプットギヤとの間のバックラッシュに起因するギヤ同士のたたき合い、いわゆるガコガコ音を消す作用をしています。ギヤの直径は同じでかみ合いも同じなのに歯数が多いというのも妙ですがこれはギヤの転位係数というものを変えているから、ええいややっこしくなってきた。上から2番目のリングが皿ワッシャースプリングの大きなようなもので押さえ力を発生して、3番目のリテーナーで固定して4番目のスナップリングで抜け止めとなっています。ただこれは分解したものはほとんどが摩擦面はピカピカに光ってしまっているし皿ワッシャースプリングも摩耗してしまうので効果は?だったようです。
組んだ状態。途中から歯がずれていますが、シザースギヤのほうが歯数が1枚多いようです。
フロント側を組みました。
今度は後ろ側の部分、これはバックシンクロタイプで71系ミッションでも最終型に見られるタイプです。バックギヤは箱入り新品。(左は今までついていたもの)中心内側2重目の輪がテーパー面になっていてここにボークリングがかぶさってきます。
その外側がいわゆるシンクロ舳先で、ここにスリーブがかみ合ってきて、左上がハブです。
今までみたバックシンクロのこのシンクロ舳先はかなりの確率でひどく丸まっているものがありました。シンクロが付いたことで完全に停止する前でも簡単にギヤが入ってしまうためここに無理が来るようになったと思います。71Aからここは単純なかみ合いからリンクタイプ、バックシンクロ付きと変遷してきましたが結局人間のせっかちさには太刀打ちできなかったようです。ならば、私見では一番最初の71Aタイプ=71Bがシンプルでよろしかったのではと思います。ただ丁寧に完全に止まってからバックにチェンジできるドライバーにはバックシンクロがベスト。
5速の部分が画像が漏れてしまいましたが、これはカウンターシャフト後端を支えるベアリングですが、71Cの後期はこのようなローラーベアリングとなりました。71Bはボールベアリングですが、ここはケース側がスラスト受ける構造ではないのでローラーのほうが合理的で良いと思います。今まで一回だけですがカウンター後ろが根元から折れているのを見ましたので、ここにはラジアル荷重がかなりかかっていると思います。
ギヤ部分組み立て完成です。
ギヤ精度
1st 2nd 3rd 4th 5th
エンドプレイ 0.38 0.10(0.11~) 0.17 --- 0.19(0.24~
バックラッシュ 0.07 0.14 0.08 --- 0.15 (0.05~0.20)
5thのエンドプレイがわずかに少な目でありますが、問題ないと思います。
シフトフォークを組んでいきますが、画像中央の穴の中にベアリング玉が見えますが、これが2重かみ合い防止機構です。シフトロッッド側ニュートラル位置にこのボール半分分ぐらいの溝が切って有り、片方がニュートラル位置でロッド溝に逃げていないとこのボールが押し合ってロッドが押せない状態になります。
シフトフォーク組みました。Mさん質問で右側3-4速シフトフォークこの画像の鉄鋳物製とアルミ製がありますが、どちらも一長一短というところでしょうか。最終型はアルミです。
ただ強度が落ちるといって嫌がる人もいます。
私は相性というか製作誤差を気にするのでなるべく元のセットをそのまま使うようにしています。
また、シフトフォークの種類はという質問もありましたのでこの画像で説明しますとこれも同じく3-4シフトフォークですが71B後期~71C初期のタイプでいわゆるシングルシンクロでその径も小さく、71CでもCA18やNA系で主に使われた仕様です。外観からはわからないので、ただ71Cということで飛びついて買ったら実は中身はこうだったということはよくミッションの取り付けていた素性と車種ごとの採用データーを知っていないと起こることで、私も最初はそうでしたが今はばっちりデーターあるし、何よりすべてダブルシンクロにしてしまいますから関係ないですけど。
M38ナットはいつものように編み出した技サイドロックボルトでがっちり固定。右側にあるのがシフトロッド後端でいわゆるH型パターンたる所以のところで、3本あるキーの右が1-2速、真ん中が3-4速、左がバック5速となります。この中をストライキングレバーが作用します。
続いてケースへの組み付けに入ります。
リヤエクステンションの後部、ペラシャフトスリーブ差し込み部ですがプレーンのメタルが見えますが、その両サイドに四角い穴が2つ見えますがここがオイル供給の役目をしています。
ここはこの後オイルシールを打ち込むのでいつも見るような姿になります。
これを反対側から見るとこのようになっており右側の壁に沿ってオイルレーるがありますが、ここに5速のギヤで掻き上げられたオイルが乗って先ほどのところへオイルを送ります。原始的ですがオイルポンプなどを必要としない理にかなった方法で、私はこういうのが好きです。
ちなみに、これは71Bの中期からよく見かける仕様と思います。
そしてアダプタープレートを介したその前にはこのレールにちょうど合致した位置にこのオイルガターという部品が追加されていますが120円の部品ですがちょっと付け焼刃っぽいですね。組む時に何かに当たって曲がったり、振動でちぎれたりしているものもあります。一応全部つけていますけど効果は?かな。
シフトレバーが刺さるところです。
中に見えるベアリングのようなもので右側にあるストライキングロッドの溝をガイドして前後にはスライドするが左右には固定するような機構となっています。
後ろから見るとこのようですが、このベアリングのようなものがついているのはかなり特殊で、通常はただの四角い板のようなものがついています。機能はどちらもOKですが、ベアリングのほうが動きは軽いでしょう。
穴が2つあいているとこころ、私はウサギの耳と呼んでいますがここにはもともとは穴は下側1個しかありません。この穴にシフトレバーの支点のピンが刺さりますので、この穴から先ほどのストライキングロッドのブッシュ受け穴までの距離がシフトレバーの移動量を決めます。 クイックシフトというのはこの間の距離を何らかの方法で伸ばしたものでよくあるのは耳のところにアダプターを乗せてやる方法ですが、私はこのように単純に上側に穴を追加してクイックにしてしまいます。ただしこれができるのは耳が長いやつだけです。
組み付けるとこんな感じです。
バックシンクロの場合5速から誤ってバックに入る危険性が大きいのでここに誤操作防止機構を付けます。機能的にはワンウェイクラッチで画像の状態で先丸のとがったものが左から右に行くときは倒れるがその逆はストップします。
この場合、5速からバックに入れる場合はいったんニュートラルにしてからでないとバックには入りません。 71B後期からの採用だったと思います。
これが無くても通常はギヤが蹴られてすごい音がするので入れられないと思います。
こちら側にはスピードメーター取り出しギヤが付きます。歯数が19枚から22枚まであります。このギヤにスピードメーターケーブルがささり、室内のスピードメーターの裏までつながっています。すごくアナログですね。 現代車はほとんどセンサーがついているだけだと思います。
完成形
フロントケースの部分で、まだフロントカバーを取り付けていませんがここで上側のベアリングに土星の輪っかみたいなのを取り付ける必要があります。これでメインインプットシャフトの軸方向の位置決めをしておりますが、極端にいうとメインインプットシャフトはこのベアリングのみで支えられておりあとは宙に浮いています。(実際は前後端にそれぞれ小さなベアリングでつながっていますが支持力は少ないです)この土星の輪っかは注意しないと付け忘れやすいです。
下側のベアリングはカウンターシャフトの前側ですが、このベアリングはフロントカバーとの隙間を測定して選択シム調整が必要でガタを0.1以内にしなければなりません。ところがこのシムは現在製廃で出てきませんので、私は昔関係していたところルートでこれを入手しています。
フロントカバーは新品箱入りを探し出してきました。これはアルミ製ですが鉄製がオリジナルです。
これも鉄製のほうが丈夫という人もいますが、通常の使用ならアルミが軽くて錆びないのでよろしいしいです。
トリプルプレートクラッチの場合は鉄製がいいかな。
組付けました。
完成です。
簡易試験機e-zanaraizerで1時間回しました。
これもMさんの話の中に出てくるのですが、シンクロの労働力の話なのですが、例えば3速で走っていて2速に落とす場合シンクロはギヤの回転を上げるべく働きますがその負荷はどれくらいという話です。
このとき影響するのは
・メイン側全ギヤの回転質量
・カウンターギヤの回転質量
・メインインプットギヤの回転質量
・クラッチプレートの回転質量
・ベアリングの回転抵抗
・オイルシールの接触抵抗
・ミッションオイルの攪拌抵抗
等となると思います。重量で考えただけでも20kGを超えていると思いますが、これを1000rpmぐらいも増速するのですからかなりの負荷と思います。(ヒール&トウをするとその限りでは無い)
この中でミッションオイルを高粘度にしたりするとその負荷は相当大きいのではと思います。
内部にバッフルプレート設けるとどうなるでしょう。
またクラッチプレートをカーボンなどの軽いものにするのも良いはずです。
ギヤそのものも肉抜きなどの軽量化の余地はたくさんありますし、チタンなどの軽量材で作るとどうなるでしょう。
これもご要望がありましたので作りました。ウサギの耳にあうクイックシフト
小判型のブッシュを180度回転させることで標準もクイックも使い分けることができます。
続く